スピード規制は守る 作:カバ
――フィオーレ王国の北東『オークの街』
歴史ある城下町でその中心にそびえ立つのは、魔導士ギルド『
国内に数多くの支部を持ち、魔導士ギルドの中では大陸一と呼び声が高い。
しかし、その実態は他者を傷つけるのを楽しむギルドとは名ばかりの無法者の集団であった。
「だっはー!! 最高だぜー!! 妖精の
「ガジルの野郎がやったらしいぜ?」
「ヒュー!!」
「「「わっはっはっはっ!!!」」」」
いま彼等の間では、ガジルが起こした
「惨めな妖精に乾杯!!」
「今頃、羽をすり合わせて震えてるぜ」
テーブルに置かれた酒を飲み干しながら
そんな中、一人の男が浮かない表情で呟く。
「でもよ、ガジルの野郎がやられたって噂……ホントなのか?」
彼の発言に近くに居た大柄な男がバカにする様に告げる。
「そんなの妖精の
「……ガジルを倒したのは、あの『神槍のジェット』らしいぞ?」
その発言に先程よりもバカにした面持ちに変化する大男。
「はぁ? 神槍だァ? あんな逃げ足だけが速いヤツなんかにガジルがやられる訳ねぇだろう」
「だがよぉ……神槍はあの『
「ははっ! オマエはケツの穴が小せぇ野郎だな……あんな妖精どもオレ一人でも倒せるぜ!」
「……まっ、オレの考えすぎか。良し! オレも酒を飲んで今日は騒ぐか!」
「そうそう! 今日は飲んで騒いで楽しめってんだ!!」
ギルド内では今回の一件で
それは、今まで
彼等のギルドは規模だけで見るならば、大陸随一。
世間ではファントムに喧嘩を売るなど自殺行為に等しいと言われている。
それ故、彼等はこれまでに大きな敗北というのを経験した事が無い。
今回もいつもと同じ様に相手が降伏すると皆は考えていた。
だが、その考えは実に浅はかだった。彼等は怒らせてはいけない者達を怒らせた。
それを今から身を以て知るだろう。
――
――
――
――己が全てを以て、
――愛する
――――
「おっ! いけねぇ~もうこんな時間か、オレは行くぜ」
酒盛りを続けていた連中の一人が席を立つ。
それを見た別の男が汚い笑みを浮かべながら訪ねる。
「女かよ?」
「まぁまぁいい女だぜ、依頼人だけどな! あと脅したら報酬を二倍にしてくれてよォ」
嘲笑の笑みを浮かべながら男は告げる。
「オレなら三倍までいけるぜ?」
「へっ! 言ってろ、タコ助」
「がははははっ!」
男はギルドの扉に手を掛ける。
そして、
――ドゴォン!
外側からの衝撃により、男は扉ごとギルドの奥の方へ吹き飛ばされる。
この異常事態に、ギルドの人間は爆発した入り口に視線を送る。
視線の先に居たのは、彼等が今まで散々侮辱していた――
彼等が
そんな事はあり得ない。
”――それでこそ、
――
「――――
『ウォオオォォォオオオオォオーーーーー!!!!!!!』
――走る
――奔る
――趨る
ジェットは後の戦闘にギリギリ支障がでない速度で移動する。
彼はギルドの皆が向かった支部ではなく、
捕まえたルーシィがそこに居る可能性が一番高いと考えた為だ。
(――アイツ等に好き勝手させねぇ……ルーシィは絶対に取り返す)
捕まったルーシィと傷つけられたレビィ達の姿が脳裏で重なる。
自然と彼の
(――落ち着け。金目当てならすぐには手を出さない筈……大丈夫だ……)
自分自身に言い聞かせる様に心中で呟く。
だが、頭の中にある冷静な部分が最悪の結果を考え出す。
――もしも……ルーシィに身に何かあったら……
「――何もかも、壊しちまいそうだ……」
彼は自身を抑える事が出来そうに無かった。
「
「調子にのるんじゃねえぞッ!!」
「やっちまえーーッ!!」
襲撃して来た
手始めに彼等は、先頭に立つ人物に狙いを定めて攻撃する。
――だが、
「――火竜の翼撃!!」
地に降り立った
「――誰でもいい……かかってこいやーーーッ!!!!」
「ヒッ!? 何だコイツ!?」
「火の魔導士か!!」
「今ので少なくとも十人前後がやられたぞッ!?」
「別のヤツを狙え!! ソイツは残った連中で後から仕留めるぞ!!」
ナツの猛威を見ていた後方部隊は別の者へ狙いを変える。
そんな彼等に一人の男が近づく。
「――別のヤツでイイなら、オレと戦えよ……!」
「――アイスメイク ”
その攻撃に敵は更に焦る。
「コイツ、造形魔導士だ!!」
「属性は氷か!!」
「炎を使える魔導士は
周りに注意を足していた男の前に鎧を纏った女が現れる。
男はそれだけで表情を青くする。
その人物が誰であるのか理解したが為に……
女性が男の言葉を引き継ぐ。
「――でないと、死ぬぞ? ハァーッ!!」
黒羽の鎧に換装した
彼女の登場に動揺が奔る。
「
「
「一人で絶対に挑むな!! 複数で囲めッ!!」
「マカロフだッ!!」
「聖十の魔導士を打ち取れッ!!」
一人その場を動かずに立ち尽くすマスターの姿を、
だが突如、小柄だったマスター・マカロフがその姿を巨人へと変化させる。
それだけで彼等の歩みは止まる。
しかし、
「かぁーーーっ!!!」
巨大化した拳の一撃が地を揺らす。
攻撃の下敷きになった敵が喚く。
「ばっ……化け物!!?」
「――貴様等はその
「ヒッ……ヒィィィィーーーーッッッッ!?!?」
「これが、聖十大魔道のマスター・マカロフ……!!」
「つ……強ェ!?」
「兵隊共もハンパじゃねぇ!!」
マスターは攻撃の手を緩めてエルザへ話し掛ける。
「ここはオマエ達に任せるぞ!!
「――マスター! ……どうぞ、お気をつけて……!」
エルザにそう告げて、マスターはその場を後にする。
残ったエルザも皆に指示を出しつつ、
道中、襲い掛かって来る敵を一撃で葬りながら最上階へ進む。
その際、怒りに呼応して魔力が雷となり周囲に被害を齎す。
そして最上階に難なく辿り着く。
視界には椅子に座って寛ぐジョゼの姿が映った。
その姿を見て更に怒りが増す。
「ジョゼ……あれは何のマネじゃ……お゛?」
「これはこれは……お久しぶりですね、マカロフさん」
「――――――――」
ジョゼの言葉に返事を返さず黙する。
その反応を気にせずに話を続ける。
「こうして顔を合わせるのは、六年前の定例会以来ですかね? あの時は参りましたねぇ……ちょっとお酒が入っていたもので……」
ジョゼはその先を喋ろうとしたが、マスターの巨大化した腕が座した椅子を一撃で粉砕する。
「――こっちは世間話をしに来た訳じゃねぇんだよ、ジョゼ」
「――ほほほ! それはそれは……申し訳ない」
ジョゼはマスターの一撃を受けながら無傷だった。
代わりに姿が途切れ途切れの状態になる。
マスターはその時点でやっと理解する。
「思念体じゃと!!? 貴様……このギルドから逃げたのか!?」
「
「何処におる!! 正々堂々来んかい!!」
ジョゼはマスターの反応に笑みを浮かべながら自身の足元に注目する。
すると、視線の先にルーシィの姿が浮かび上がってくる。
マスターがその状況に驚きの表情をみせる。
「ッ!? ルーシィ!!? な……なぜ……!?」
マスターの驚愕にジョゼが”白々しい反応だ”と鼻で嗤う。
「まさかギルドの仲間だというのに、ルーシィ・ハートフィリア様が何者かご存じないと?」
そう告げて、ジョゼはルーシィに手を翳す。
マスターは直感で危ないと感じるが如何する事も出来なかった。
――ならば、
本部で今まさにルーシィを害そうとするジョゼに、何者かの跳び蹴りが深々と食い込む。
ジョゼは唐突の事で対応できずに壁へ吹き飛ぶ。
『「「「マスターッ!!?」」」』
ジョゼの傍らで待機していた
彼等が動揺する中、ジョゼに蹴りを入れた人物が呟く。
「――少し、
「――それは……
――ジェットにとって、厳しい戦いが始まろうとしていた。