スピード規制は守る 作:カバ
魔法を扱う者を世間では『魔導士』と呼びそれを生業とした職業組織である『魔導士ギルド』に所属する者が多い。ギルドに加入している魔導士は、依頼主がギルドに発注した
ここで語られる
物語の始まりは、今より十年以上前に遡る。
「……なぁドロイ?」
少年は真剣な表情で語り出す。
「ん~? どした、ジェット?」
対する少年は眠そうにしながら相槌をうつ。質問する少年はその対応を気にせずに話す。
「――
「………………はっ?」
魔導士ギルド『
「いや……何となくなんだけどさ? オレの『
話し合いと言うよりお悩み相談と言った方がこの場合は正しい。彼等も普段は周りに居る子供に混じって遊ぶ事が多いが、相談を持ち掛けた彼が真剣な表情で話があると告げてきた為、こうして話し合いの場を設けているのだ。
「あー……まぁ言いたい事は大体分かるぞ? でも、速さを知るって具体的に何を知るんだ?」
相談を受ける彼の名はドロイ。相談する彼の名はサルスケ。通称ジェット。ドロイは開始早々、ジェットの相談に乗った事を後悔する。
「そう、そこが問題なんだよ! 何を知れば良いのかさっぱり分からないから困ってるんだ!」
彼の口から飛び出す言葉に頭を痛める。しかし、会話を続けなければ何時までも話し続ける為、仕方なく会話を続ける。
「……何でオマエはそんな事を得意げに語ってるんだよ?」
「ん~……オレにもよく分かんねぇ!」
「………………はぁ」
本格的に頭が痛くなってくるドロイであった。
思わず言葉が漏れる。
「……ジェットって基本バカだよな」
「んっ? 何か言ったか?」
「……何も言ってねぇよ」
ドロイは深い溜息を吐く。彼は別にジェットの事が苦手な訳ではない。寧ろ好ましく思っている存在だ。ただ、時々バカになるのだ……こんな風に。この状態のジェットを相手するのがドロイにとって少なからず面倒なのだ。故に、頭の中では何して遊ぼうかと既に別の事を思案していた。
「で? 結局、オレに相談したい事ってその事についてなのか?」
「ああ、ドロイならきっと良い答えを言ってくれるって思ったんだ!」
「オイ、無駄にハードル上げるんじゃねえ」
「大丈夫だって! 自分を信じろ、ドロイ!」
「オマエが言うな。……分かったから、まずそのウザい笑みを止めろ」
「ありがとう! やっぱりドロイは頼りになるぜ!」
「………………」
また出そうになる溜息をグッと飲み込み、考えを巡らす。ドロイはそれっぽい事を頭の中で考え付いてジェットにこう告げた。
「
「…………オレにとって、憧れ?」
ジェットはドロイの言葉をオウム返しの様に呟く。
「ああ。ジェットがさっき言ったみたいに、
「あ、ああ、そうだな。少なからずオレにとって速さは、オレを語る上で重要な要素だな……」
「なら、やっぱり憧れで合ってるだろ?
「――――――――」
正しくその通りだった。気付いていた……ジェットは自分でも理解していた。でも、思考がその解答を拒否した。
自分を死に追いやった、スピード違反の車。鮮明に思い出せる、最後の光景。彼は死を恐れた。だが同時に、憧れにも似た感情を得た。
そうだ。ジェットと呼ばれる人間は、あの
自分は正常だと思いたかった。
(――俺は無意識の内に、
ドロイの言葉はジェットの胸にストンと入ってきた。パズルのピースが合わさる様だった。
「――ドロイ、ありがとう」
ジェットの口から自然と感謝の言葉が出てくる。ドロイはそんな彼に疑惑の瞳を向ける。
「改まって気持ち悪いな……まぁいっか。用が済んだならさっさと遊ぼうぜ!」
ドロイは既に立ち上がっておりこちらを急かしていた。感謝の言葉に彼は何でもないと言った。なら、この話は終わりで良いだろう。
ジェットは気持ちを新たにしながら、自身の相棒に提案する。
「ならさ、今日はナツとグレイも誘って一緒に遊ぼうぜ!」
「え~、あの二人を一緒にしたら絶対ケンカになるだろ? それにあの二人がケンカしだしたら、エルザもやって来るぞ?」
「エルザが来ても、こっちに穂先が向かない様にデザートを献上すれば大丈夫だって!」
「そんな上手くいくか?」
「任せろ! このジェット様の華麗な策を魅せてやろう!」
「……不安だ」
今まで話していた事など忘れたかの様に二人は遊んだ。ドロイは話に興味が沸かなかった故に。ジェットは新しく見出した想いを整理する為に。
これから先の時代、世界は大きな転換期を迎える。その時代の中に彼は存在する。
胸に掲げた想いが、どのように成長していくのかは彼にしか分からない。未来とは誰にも理解が及ばないもの。
人が抱く小さな想いでも、繁栄と滅び、両方の選択が決まる時だってある。だが、今は、素直に世界の平和をその身で体感しよう。
余談だが、