スピード規制は守る   作:カバ

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カナの四度目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――私は一体、何をしてんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が酒を飲み始めたのは、国が定めた規則より二年も早かった。

 切欠はマカオ達に勧められたのも理由にあるが、本当の理由は自身の不甲斐無さを誤魔化す為。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入って、もう十一年。

 当時は私も六歳の子供だったのに、今年でもう十七の大人。

 

(ホント、私は何やってたんだか……)

 

 そう自虐の笑みを浮かべる彼女の名は『カナ・アルベローナ』。

 今年のS級昇格試験に選ばれた魔導士だ。

 

 ギルドの皆が憧れ欲す、称号を得る機会(チャンス)

 だが彼女の心中に、喜びの感情は浮かんでいなかった。

 

「……………はぁ」

 

 三回。それは、彼女が今までS級昇格試験に挑んだ回数。

 皆が焦がれる試験に三回挑み、彼女は成果を挙げていなかったのだ。

 

 最初に選ばれた時は、それはもう嬉しかった。

 しかし、いざ試験に挑んでみれば、結果はエルザだけが受かる形で終わった。

 

 その結果に彼女は、"仕方ないか"と自分を納得させた。

 "何故?"と問われれば、それはカナ自身がエルザの強さを良く理解していたからだ。

 

 力量、意思の強さ、気高さ。どれを取っても自分はエルザに負けていると彼女悟った。

 だがそれは、一種の救いでもあった。

 

 何故なら、自分が受からなかった言い訳が立つからだ。

 "相手がエルザだったら仕方ないよね?"……と。

 彼女はこうして心の平静を保った。

 

 二回目に選ばれた際、彼女の中に最初程の勢いはなかった。

 それは、相手がミラだったからだ。

 

 ミラはカナやエルザに比べたら、最近ギルドに入って来た新人の方だ。

 だがその力量は、一年前にS級に上がったエルザと見比べても遜色なかった。

 そして試験の結果は、ミラが合格して自分が落ちる結果となる。

 

 まだ、まだ、カナの心は折れなかった。

 "エルザと同等の実力を持つミラなら、自分が負けても普通だよね"……と。

 まだ、彼女は大丈夫だった。

 

 そして、運命の三回目。自分の他に選ばれた参加者は、正体不明のミストガン。

 ……………いける。顔を見た事もなければ実力さえ分からない相手だったが、それでもエルザやミラ以上ではないだろうと高を括った。

 彼になら、自分は勝てるかも知れないと希望を抱いた。

 そして結果は、ミストガンだけが受かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――『カナ・アルベローナ』の心は、もう既に壊れかけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カナ!」

 

「……………ジェット?」

 

 カナの目の前に、一人の青年が姿を現す。

 それは今回の対戦相手(てき)である、チーム『シャドウ・ギア』のジェットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――S級(きぼう)に縋りつく女の子(カナ)スピード(あこがれ)を愚直に目指す男の子(ジェット)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――彼らが語り合うのは、感動もない、普通の御話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――だが、知って欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――普通(ありふれたモノ)こそ、世界が必要とするのだと……

 

 

 

 

 

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