スピード規制は守る 作:カバ
――――マグノリア
「今回はオマエ達のお陰で、ギルドマスター達を助けられたんだ。何が一体不満なんだ?」
「……オレが一番納得できねぇのは、協力し合ったのがナツとエルザの二人だってトコだ」
ジェットとグレイは先日、
現在の彼らは、ルーシィが住む家の場所をミラから聞いて向かっている最中であった。
「ミラから聞いた、ルーシィの家ってのは此処か?」
二人は商店街の近くにあるルーシィが住む家へ辿り着く。
「じゃあ、入るか」
グレイは戸惑いなくルーシィの部屋へと入っていく。
「…………いやいや、俺は入らねぇよ?」
ジェットは常識的に女子の家へ不法侵入する事はダメだろうと考え、建物の前で待つ事にした。
暫く待っていると、ルーシィを連れたグレイが貸家の中から出てくる。
「……よかった……
外で待っていたジェットの姿を見て、感涙するルーシィ。
そんな彼女の姿に若干引きながらグレイに話しかける。
「……オイ、ルーシィのヤツ……一体どうしたんだ?」
「あー……感動してるだけだ」
グレイの言葉を今一つ理解できなかったが話を続ける。
「……? まあ、大丈夫ならさっさと行こう。あの二人が決闘するなんて、面白そうなイベントを見逃すのは惜しいからな」
「あっ!! その話ってやっぱりホントなの!? ナツとエルザって決闘するって!?」
ジェットの言葉を聞いて、ルーシィは驚きを表す。
グレイがその様子を見て面倒そうに告げる。
「オレがさっきからそうだって言ってんだろ?」
「だってぇ……!」
「二人とも、言い合うのはギルドに戻ってからしないか? 早く行かないと勝負が始まっちまう」
言い争いが起こりそうになり、ジェットは忠告を足す。
グレイも彼の言葉に賛同し、足を進める。
「エルザが相手じゃあ、即座に終わっちまう可能性もあるからな。急ぐか」
「良し! グレイ、ルーシィ、走るぞ!」
「ちょ……! 二人とも、待ってよぉ~!! てか、ジェット
「さぁ! 賭け金は一万までOK! 幾ら賭けるかい!」
「カナ! オレはナツに六千!」
「エルザに八千!」
「ナツに七千五百!」
「エルザに一万だァ!」
「ナツ兄! 頑張ってー!」
「ナツー! エルザに瞬殺されろー!」
「今の誰が言ったんだゴラァ!? 出て来い!! エルザの前にぶっ飛ばしてやる!!」
「エルザ! 頼むから勝ってくれ~今月ピンチなんだ!」
「エルザさん! 是非罵ってください!」
「……今、
ジェット達がギルドに辿り着くと、既に多くの見物客で溢れ返っていた。
ギルドメンバーも多いが、一般人の姿も多く見受けられる。
マグノリアの住民はお祭りが大好きなのだ。
「ちょ……ちょっと!! 二人とも、本気なの!?」
辿り着いたルーシィが人混みを掻き分け、中央に対峙する二人に告げる。
「あら? 来たのね、ルーシィ」
ルーシィが到着した事にミラが気付く。
そんな彼女にルーシィが声を荒げる。
「ミラさん!! 決闘なんてやらせていいんですか!?」
「ルーシィは知らないだろうが、昔はこうして戦ったもんなんだぞ? まぁ結果は、全部エルザの勝ちで内容的には瞬殺で終わってたけどな」
ミラに尋ねるルーシィにジェットは何でもない様に言う。
彼に便乗する形で辺りのメンバーも語り合う。
「漢は拳で語り合うべし!」
「エルフ兄、エルザは女の子だよ?」
「女は女でも、怪物のメスさ……エルザはな……」
エルフマン、リサーナ、マックスの順で語る。
ルーシィはそれでも不安が残っていた。
「だって、最強チームの二人が激突したら……」
「はっ? 最強チーム? 何だそりゃ?」
ルーシィの言葉にグレイは鼻で笑う。
彼女はそんな彼の対応に声を荒げる。
「アンタとナツとエルザの事じゃないっ!!
「くだんねェ!! 誰がそんな事言ったんだよ?」
グレイの暴言を後ろで聞いていたミラがシクシクと泣き始める。
彼はそれに気づき、何とか慰めようと奮闘する。
グレイに代わって周りに居るギルドの皆が口々に語る。
「確かにナツやグレイの漢気は認めるが、"最強"と言われると黙っておけねぇな?
「
「最強の
「
シャドウ・ギアの面々も意見を言い合う。
「……てか、ジェット。オマエもその中の一人に入ってるだろ?」
そんな中、ミラの慰めに成功したグレイがジェットに告げてくる。
グレイの発言にジェットは苦笑する。
「――オレは駄目だ。
「――冗談は止めろ。ここ最近で、オマエに攻撃が入った所なんて見た事ねぇぞ……」
グレイは面白く無さそうに言ってくる。
彼の様子にルーシィは首を傾げる。
「……ねぇ、レビィちゃん。ジェットってそんなに凄いの?」
ルーシィは隣に居るレビィにその訳を聞く。
彼女の言葉にレビィは合点がいく。
「……あー、ルーちゃんはまだ知らないか?
「――S級魔導士!!?」
ルーシィはレビィの隣に立つジェットを見据える。
彼女の視線に恥ずかし気に告げる。
「S級魔導士の中でも大した事はねぇよ。オレ以外にS級の称号を持ってる五人の方が十分強いさ」
そんな卑屈な表現をするジェットにエルフマンが憤る。
「ジェット!! そんな弱腰でどうする!? 漢ならば常に上を目指すべきだ!! それにオマエは、オレを止めてくれたじゃないか!?」
「エルフ兄……」
リサーナはエルフマンを複雑な表情で見つめる。
ルーシィは彼が語った言葉の意味を理解できなかったが、その瞳に強い感情を感じる。
ジェットも自身の考えを述べる。
「――アレは、オレだけじゃ無理だった。レビィとドロイが居なかったら最悪の結末になってた。まだまだ、オレは弱いさ……」
「――ジェット……」
辺りにしんみりした空気が一瞬流れる。
『では、始めいっ!!!』
『ウォオオォォォオオオオォオーーーーー!!!』
そんな空気の中、エルザとナツの勝負が始まる合図が響く。
話し合いをしている最中に始まる時間帯になってしまったらしい。
その場で話し合っていた皆は中央で戦う二人に目を向ける。
「だりゃっ!!!」
「ふっ!」
勢いよく突撃するナツに、炎帝の鎧を纏ったエルザがタイミング良く剣を振るう。
ナツはその攻撃を器用にしゃがみ込みながら回避し、蹴りを入れる。
エルザもステップをする要領でその攻勢を躱し、次いでとばかりに斬撃をお見舞いする。
ナツも負けじとバク転で躱すが、回避中にエルザから蹴りを入れられ、身体のバランスを大きく崩し、空中にへと身を投じる。
その隙を突こうとエルザは接近を試みるが、ナツの口が膨らむのを見て身体を直線上から外す。
エルザの回避が済んだその直後、
「――火竜の咆哮ッ!」
ナツの口内から、全てを焼き尽くす炎のブレスが繰り出される。
「アチチッ!?」
「コラァ!! ナツ、テメェ!?」
見物客にもその被害が及ぶが、その程度の事で二人は視線を外さない。
「……凄い!!」
ナツ達の戦いを間近で見物したルーシィは驚きを示す。
「な? いい勝負してるだろ」
「どこが」
エルフマンが得意げに答えるが、グレイはその発言にへそを曲げる。
ナツとエルザの両者が接近し、互いの大技を決め様とした、その時……
――パァン!
軽快な音が響き、両者はピタッとその場に留まる。
辺りに居た見物客も音の発信源に目を向けると、
「全員、その場を動くな。私は評議員の使者である」
二足歩行をしたカエルが視界に入る。
「評議員!!?」
「使者だって!!?」
「何でこんな所に!!?」
「あのビジュアルについてはスルーなのね……」
ルーシィだけが評議員の容姿に注目するが、他の面々は使者の登場に驚きを示す。
皆が注目する中、使者はバックから書状を取り出し、淡々と読み上げる。
「先日のテロ事件において、器物損壊罪 他11件の罪の容疑でエルザ・スカーレットを逮捕する」
「……えっ?」
エルザは使者の言葉に呆ける。
辺りに一同も言葉の意味を少し理解できず、多少の間が空く。
「何だとおおぉっ!!!?」
そんな中で一番初めに復帰したナツが大声を上げる。
(――この戦い、結構楽しみにしてたのになぁ……)
ジェットは皆が驚く中、一人だけ別の事を考えるのであった。