ガンダムブレイカー to entertain hopes 作:みなび
本当の初心者かもしれない
これは、また、ダメか。
出撃した機体はその体躯に似合わぬGNソードIIIを携えたジムだった。紛れもなく、ガンプラをスキャンせずにプレイしたときに出てくる初期機体だった。
先は初心者でも引きずり込もうという覚悟だったが、考えてみればタイムリミットまで残り少ない。そんな期間で初心者育成などできるわけがないだろう。諦めなければならないのか、そんなことを考えていたから、モニターを見ていなかった。
気がつけば彼は既に乱入プレイヤーと交戦に入ったようだ。
ガンプラバトルシミュレーターではいくつかのモードがあり、今彼がプレイしているのはアーケードモード。つまりCPU戦だ。ルールは単純、ステージに出てくるCPU機を全滅させればクリアだ。
だが、乱入設定をONにしていたため同じステージをプレイしていたプレイヤーとオンラインマッチングし、乱入戦、つまり対人戦が始まったのだ。
数は二。機体はシャア・アズナブルとララァ・スンを再現したのだろうか。面白い格好をしている。しかし携えた武器はシャアがレイピア、ビームライフル、ララァがビームライフルとビット二基。振りの大きいGNソードIIIでは相性が悪いだろう。
これはもう終わったなと、ため息を洩らしながらもモニターを眺めた。
正直に言って舐めていた。
一所懸命に作り、父にも褒められた「シャア・アズナブル号」を駆る少年は毒づきながら鍔迫り合いをする。
ビットが二基、左右を取り囲み、ビームライフル二丁で捉えたはずだった。撃った弾が防がれたところまでは予想の範囲内であったが、ビット二基が流れるように撃ち抜かれたのは予想外であった。
はっとした瞬間に肉薄され、なんとか反応は間に合ったものの、レイピアとGNソードではあまりにも不利すぎる。
さっとジムが飛び退いた。「ララァ」の援護射撃のためだろう。だがまずい。「ララァ」には近接武器も盾もない。接近されればなす術もなくやられるだろう。なんとしても接近させてはならない。レイピアを構え、「ララァ」に狙いを変えたジムに接近し、鋭い突きを繰り出し、防がれ、そして、砕けた。
「パチリと言うまで嵌めないから!」
敵の声が聞こえ、そして流れるように二機とも斬られた。
「やった!?」
宇宙ステージだから音は聞こえないが、振動は起こる。間違いなく目の前の敵を倒したのだ。
人心地つき、よくあれだけのことができたと自画自賛する。最後は敵の作りの甘さに助けられた。ビットを落としたのは見事だった。そんなことを考えながら歩を進める。
そんなときに外部から通信が入る。誰だろうか、心当たりはない。他にこのゲームをする人がいないから少し離れたこのゲーセンまで来たのだから。
「君!すごいね!」
回線を開いた瞬間だった。
「はい?」
「あぁ、突然ごめんね。私はミサ。君は?」
「僕はノゾムです。」
「よろしく、ノゾムくん!」
「ええと、よろしく。」
「おい!」
会話に気を取られ、目の前に乱入プレイヤーがいることに気が付かなかった。ガーベラテトラの腕パーツにドムだろうか、大きな足パーツのついた虎柄の派手な機体である。
「お前、この辺じゃ見ないヤツだな!俺はタイガーってんだ。この辺でガンプラやるならよぉ、まず俺に挨拶してもらわねぇとなぁ!」
そう言いながらグランドスラムを振りかぶり突進する。
思わずうわぁと言いながらも回避に成功する。
「なんなんですか、アナタは!」
「なんだ、タイガーか」
ミサが興味無さげに言う。
「知ってるんですか?」
「この辺で初心者狩りしてるタチの悪いヤツなの。でもまぁ、そんなに強くないから落ち着いて。」
「お前、外から邪魔すんなよ!」
タイガーというらしい男が焦ったように言う。
「いい加減初心者カモるのやめなよ、私が相手になるよ。」
会話をしている間にも剣閃が交える。パワーは圧倒的な機体だが、なるほど、可動範囲と機動性はよろしくない。正面から打ち合えば負けるが、ミサのアドバイス通り冷静に戦えればやれない相手ではないだろう。そう考えている間にもタイガーが自分の得意な戦いにしようと猪突猛進してくる。これならば、とノゾムはGNソードを構えた。
「俺は女とは戦わねぇ!俺よりも強い女とはな!」
そう言いながらグランドスラムを振るう。
「はぁ、キミ、さっさと片付けちゃっていいよ、こんなの。」
「言われなくとも!」
グランドスラムを右側に飛んで回避し、タイガーの機体の懐に潜り込み、シールドを左肩にねじ込む。ねじ込まれた勢いでややこちら側にタイガーの機体が傾き、無防備になった胴体をソードが容赦なく切断した。
「嘘だろ、ちっくしょう!」
その言葉も言い終わらない内に、タイガーの機体は爆散した。液晶はブラックアウトし、ノゾムは勝ったのだと確信したが、出てきた文字はDRAW。つまり、引き分けだった。
「な、なんで?」
思わず声が出てしまう。間違いなく無傷で勝利したはずなのに、と。
「あ〜最後の爆発に巻き込まれちゃったかー、惜しかったね。」
ミサの言葉でようやく気づく。敵の機体のド真ん中にいたのだ。爆発に巻き込まれないわけがない。
「ちっくしょ〜」
項垂れながら、ガンプラバトルシミュレーターを出た。