Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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第7章:強襲(後)

炸裂する魔術と響き渡る金属音。

傍らではリーゼリットが大斧と思われる何かを担いだ透明なナニカと戦っており、その近くでは透明の魔術師とセラが魔術による弾幕戦を繰り広げていた。

 

「こうも魔術が連続で飛んでくると反撃の隙もままならない…アレは高速詠唱でも使っているのですか!?」

「しかもこいつら、見えないから面倒くさい」

 

リーゼリットが斧を振れば、すぐ傍にあった木はいともあっさりと両断される。

こうも容易く木を両断する辺り、リーゼリットの怪力具合が窺えるのだが、それは相手も同じ事だった。

見えない所から飛んでくる大斧による攻撃が一度でも直撃してしまえば、リーゼリットは無残な肉塊へと変貌する。

だから、見えないながらも気配に敏感になり、敵の攻撃を察知する。肉眼だけならば出来ない所業だが、二人はそれぞれのやり方で、敵の気配を捕える事で戦えていた。

 

「姿を消すとは卑怯な! それでアインツベルンに挑むならば堂々と挑みなさい!」

「セラ、戦いに卑怯も何もない」

「お黙りなさい!!」

 

 

その時、敵が再び動き出すのを同時に察知する。

二人はそれぞれ別方向に飛び、飛ぶ前に二人がいた場所には雷撃が降り注いだ。

間一髪の所で攻撃を避けた二人は、それぞれ先程までとは逆の敵と対峙した。

 

「リーゼリット、この無礼な蛮族にはアインツベルン直々に礼儀というものを叩き込んで差し上げましょう」

「分かってる。こいつら、敵。敵は倒す」

 

 

 

 

 

 

 

ライダーが交戦している敵は、巧みに距離を取ってライダーに接近させないように戦っている。

狡猾な動き、綿密に罠へと誘導する戦略性から、その敵が相当場馴れしている事が分かる。

ライダーだけならば、多少の無茶をしてでも突撃すれば或いは決着が瞬時についていたかもしれない。

しかし、ライダーが騎乗している馬にはマスターであるイリヤも共に乗っている。

無理に突撃すればイリヤも危険に晒す事になるし、だからと言って今ここでイリヤを降ろせば、あの敵は容赦なく守り手のいなくなったイリヤを狙って来るだろう。

故に、膠着状態が続く。ライダーの持ち前の耐久力により、敵の攻撃によるダメージは軽傷で済んでいるがこのままでは、敵の罠が底をつくか、その前にこちらがジリ貧になってしまうかのどちらかであろう。

そんな状態が続いていた時、戦況は突然大きな変化を見せた。

 

 

 

「おぉおおおおおおおおお!!」

 

敵がライダーに注意を割いていた横側から、士郎が夜刀神を持って大きく接近する。

それに遅れて気付いた敵は咄嗟にナイフを取り出し、夜刀神を防いだ。

 

「シロウ!?」

「加勢に来た、まずはこいつらを叩くぞ!」

 

歌の加護はまだ続いており、敵の姿がぼんやりと視認できる。

こちらが剣を振り、首を獲ろうとすれば敵はナイフでそれを防ぐ。

数度の打ち合いの後、大きく後退した敵は銃による弾幕で攻撃を仕掛けてきた。

咄嗟に、すぐ傍にあった木の裏側に隠れる事で弾幕をやり過ごす。ライダーと違い、人間でしかない士郎があの弾幕の内一発でも当たってしまえば一気に致命傷となる。

故に、それだけは避けねばならなかった。

だが、敵を追い詰めるのは士郎だけではない。

 

「どこを見ている!」

 

士郎からそのまま距離をとろうとした敵を、ライダーが追撃する。

その攻撃に咄嗟に対応出来ず、敵の脇腹をライダーの剣が切り裂いた。

 

「…………っ!!」

 

辺りに流血が飛び散り、見えない敵がよろめいたのが分かる。

敗北を悟った敵は、そのまま存在が消えてしまうかのようにその場で姿を消してしまった。

辺りに敵の気配はない。

撃退した、のだろうか? 辺りを見回すが、特に攻撃が飛んでくる気配はない。

 

「やった…のか?」

「そうね、これで一安心……っ!?」

 

安堵仕掛けた瞬間、イリヤの表情が再び険しくなる。

 

「イリヤ?」

「どうやら、またお客様がやってきたみたいね。今度は、サーヴァントよ」

「サーヴァント…まさか!?」

「相手は……セイバーみたい。私達はこのままセイバーを倒して来るから、シロウは先にお城に戻って待ってて」

 

そう言って、イリヤとライダーが森を駆けだしてしまう。

セイバー……つまり、遠坂がこの森に来ている。

このままでは、イリヤと遠坂が殺し合ってしまう。

 

「待ってくれ、イリヤ!」

 

嫌な予感がする。このまま待ってなんかいられない。

俺は、イリヤ達を追いかけてすぐに駆けだした。


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