Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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本編最大の、物語のターニングポイントです。
ここで士郎が下す決断は、そのまま未来を大きく分ける。
選べる道は唯一つ。果たして、士郎が選ぶ道は?


第8章:運命の選択

アインツベルンの森を突き進む。

ライダーと共に新たに表れた敵の迎撃に向かったイリヤとライダーを放っておく訳にはいかない。

それに、このまま見送っただけでは取り返しの付かない事になる。

根拠こそないが、何となくそんな確信が士郎の中にはあった。

息が切れても走る。身体が酸素を求めて止まるように警告しても尚走る。

走り続けて頭が真っ白になりそうになりながらも走り続けて、ようやく追いついた。

追い付いた先では戦闘が繰り広げられている。そこで戦っていたのは……

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」

「はぁあああああああああああああ!!」

 

鳴り響く金属音、吹き飛ばされる周囲の木々。

その中心で戦っていたのは、セイバーとライダーだった。

圧倒的な実力を持つ二人は森の中で壮絶な戦いを繰り広げている。

セイバーがいる、という事は今ここにいる人物は……

 

「チッ、さすがに強い。アインツベルンもとんでもないマスターを送り込んで来たわね」

「当たり前でしょう、凛。私は10年間地獄のような修行を積んできたのだもの」

「あぁ、そう。けれどね、こっちだって生ぬるい修行を積んできた訳じゃないのよ!」

 

セイバーとライダーが戦っている傍らで魔術で応戦を行っているのは、イリヤと遠坂だった。

世話になった恩人と、唯一の実の妹がお互い殺し合っている。

そんな現状を見過ごせるはずがない。

 

「二人とも、何やってるんだ!」

 

息を整えながら叫び、二人を止めに入る。

俺がやって来た事に気付いた二人は、お互い攻撃を止めてこちらを振り向く。

 

「衛宮君、無事だったのね!」

 

遠坂が俺の無事を確認して安堵したのか、険しい表情を少しだけ和らげる。

やっぱり、遠坂は俺が思った通り、他人の心配が出来る優しい人間だ。

 

「遠坂!」

「さぁ、行くわよ。貴方も戦いに加わりなさい、衛宮君。貴方がいてくれればライダー達との戦いもすぐに決着がつくわ」

「遠坂……俺は……」

「気を付けろ、士郎。あの男は俺と互角の実力を持っている」

「セイバー……」

「桜も待っているわ、早く戻らないと心配しているわよ?」

 

しかし、遠坂の言葉を聞いて迷いが生じる。

戻れば、桜が待っている。藤ねぇも一緒に笑ってくれる。俺の周りの、大切な日常が待っている。

だが、遠坂はイリヤと戦っている。遠坂と共に戦うという事は、イリヤと戦うという事だ。

 

「何を言うの、シロウは私の家族よ。貴方達なんかに奪わせない」

「どの口が家族って言うのかしら? 衛宮君、騙されちゃ駄目よ」

「騙してなんかいないわ、凛こそシロウの何を知っているの?」

「貴方こそ、衛宮君の何を知っているの? あいつの周りの日常を平気で壊すのが家族なのかしら?」

「なんとでもいいなさい。やっと見つけた私の大切な家族を誑かして、都合のいいように扱おうとする凛に言われたくないわ」

「私は、誑かしてなんかいないわ!」

「どうだか。シロウ、私と一緒に来て……私と、きょうだいで一緒に戦いましょう」

 

イリヤも負けじと俺に手を伸ばす。

切嗣の実の娘、俺に遺された唯一の家族。10年間、一人ぼっちのまま耐えてきた実の妹。

しかし、イリヤと共に戦うという事は、遠坂と戦うという事だ。

 

 

「戻って来なさい、衛宮君!」

「シロウ!」

「衛宮君!」

 

遠坂とイリヤがどちらも必死に俺を呼ぶ。

双方は敵同士、どちらかにつくという事は、どちらかを裏切るという事。

 

「こっちだ、少年!」

「シロウ!」

 

ライダーがこちらに向かって手を伸ばす。

そのすぐ傍では、イリヤが不安そうにこちらを見つめている。

唯一残された大切な家族の手を取れば、遠坂は敵に回る。

今までの日常には終止符が打たれ、家族を守る為に戦う事になる。

 

「衛宮君!」

「戻って来い、少年!」

 

セイバーと遠坂がこちらに向かって手を伸ばす。

向こうに戻れば、藤ねぇや桜、慎二達とわいわいやっていた

日常がある。今まで出会った大切な人達がいる。

遠坂と共に戦う道を選べば、俺は日常を守る為に戦う事になるだろう。

しかし、それはイリヤと……唯一の家族と戦う事を意味する。

今までの日常を守る為に、大切な家族を見捨てる事になる。

 

どちらも、俺にとってはとても大切だ。出来れば、どちらとも争いたくないし

どちらかを切り捨てたくもない。

しかし、どちらかを選ばなければならない。どちらかを選び、どちらかを棄てなければいけない。

 

(誰かを助けるという事は、誰かを助けないという事なんだ)

 

爺さんが昔言っていた事を思い出す。全部を助ける事なんて出来ない。

片方を助ければ、必然的にもう片方を見捨てなければいけなくなる。

今この瞬間こそがそうなのだ。遠坂や学校の皆を守る為に、家族を見捨てるか。

家族を守る為に日常を見捨てるか。

俺に用意されているのは、その2択。どちらかを選び、どちらかを棄てなければいけない。

この選択は、俺の未来を大きく左右する。それでも、悩む時間なんてない。

今ここで、決断を下さなければいけない。日常か、家族か。

 

「遠坂……イリヤ……俺は…………俺は……………………」

 

 

 

 

選べる道は、一つだけ。

 

 

 

 

 

今まで築いてきた日常を棄て、切嗣の遺したものを守る為に家族と共に戦うか。

 

 

唯一の家族を見捨てて、今まで築いてきた日常を守る為に遠坂と共に戦うか。

 

 

 

 

 

 

俺が……衛宮士郎が選んだ選択は…………


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