Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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2016/3/24 誤字があったので訂正しました


前章:英霊召喚-暗夜-

「どんな事があっても、大切な人を信じる事だけは忘れないで」

 

少女は、待っていた。

己の父と母が、必ず迎えに来てくれると信じて。

どんなに遅くなっても、必ず自分を迎えに来てくれる。

ずっと、そう信じ続けて待っていた。

しかし、何時まで待っても父と母が迎えに来てくれる事はなかった。

それでも、少女は待ち続けた。いつか、必ず迎えに来てくれると。

その一心だけで、少女は待ち続けた。

そうでなければ、壊れてしまいそうだったから。

そうでなければ、これまで受けてきた過酷な仕打ちに耐える事が出来なかったから。

そうでなければ、全てを恨んでしまいそうだったから。

 

そうでなければ……ココロをバケモノに喰われてしまいそうだったから。

 

 

 

 

 

「此度の聖杯戦争でこそ、必ずやアインツベルンは聖杯を手にして、第三魔法を取り戻さなければならん。その為だけにお前が調整を受けて来た事、忘れるでないぞ。イリヤスフィールよ」

 

「はい、お爺様」

 

目の前に立っているのは、アハトお爺様。私が住んでいる(閉じ込められている)アインツベルンの当主にして、私が知っている世界で誰よりも偉い人物。

私を、今回の聖杯戦争に参戦させる為に10年間過酷な仕打ちを施して来た張本人。

 

目の前に展開されている魔法陣の中心に置かれているのは、禍々しい神秘を放つ漆黒の剣。

これが、お爺様の用意した聖遺物なのだろう。剣だけでも、圧倒的な神秘を秘めているのが見ただけで分かる。

これ程の聖遺物をどこからお爺様が用意してきたのかは、分からない。

だけど、そんな事はどうでもよかった。これから私が行うのは、サーヴァントの召喚。

アインツベルンのマスターとして聖杯戦争に参戦する為に、私は存在している。

 

「此度の聖杯戦争でこそ勝利を収める為に、前回をも凌ぐ超一級品の聖遺物を用意させた。この剣は暗黒剣ジークフリート。この聖遺物があれば、暗夜最強の騎士を召喚する事が出来るはずだ」

 

暗夜最強の騎士……その人物に、私は心当たりがあった。

10年前、父……切嗣が召喚したサーヴァントと、一度だけ話をした時に聞いた名前。

私が、今まで希望を捨てずに……全てを恨まずにいられたのも、あの人のおかげだ。

あの人が話していた、暗夜王国の兄弟。その長男のマークス。

その人を、この聖遺物で呼べる。その事実が、少女を突き動かした。

 

「よいか、イリヤスフィールよ。暗夜最強の騎士をバーサーカーのクラスで召喚するのだ。神話最強の英霊をバーサーカーのクラスで召喚出来れば、更に強化がかかり……どんなサーヴァントであろうとねじ伏せる事ができる究極の布陣が完成する」

 

お爺様は、私に暗夜最強の騎士をバーサーカーのクラスで召喚させようとしている。

建前上はああ言っているが、少女は聞いている。

前回の聖杯戦争でアインツベルンが雇った最強の魔術師殺し、衛宮切嗣が最優のセイバーを召喚し、後一歩で聖杯を手に入れる事ができる土壇場でアインツベルンを裏切って逃走した事を。

バーサーカーのクラスは、能力が強化される代わりに理性を失ってしまうクラス。

理性がない狂戦士と意思疎通等出来ない。狂戦士ができるのは、暴れる事のみ。

お爺様は、用意したサーヴァントに裏切らせない為にバーサーカーとして召喚させようとしているのだろう。

理性が無ければ、裏切る心配も一切ないのだから。

 

閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)閉じよ。(みたせ)

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

少女が、サーヴァントを召喚する為の詠唱を始める。

魔法陣が反応し、魔力が集まっていくのがわかる。

すぐ傍では、お爺様も見守って(見張って)いる。

               

Anfang(セット)

「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

詠唱を進めていくごとに、荒れ狂う魔力の風が部屋を蹂躙する。

バーサーカーのクラスで召喚する為には、詠唱に……この後に、

特殊な詠唱を挟む必要がある。その詠唱を交えれば、狂戦士の

クラスでサーヴァントが召喚される。お爺様に従うなら、その呪文を

このタイミングで詠唱するだけ。しかし私は……

 

「汝三大の言霊を纏う七天」

 

その、特殊な詠唱を無視した。私は、自らの意思でお爺様の命令に逆らって、

狂戦士以外のクラスでの召喚を試みた。

何故、お爺様の命令に逆らってバーサーカーを指定しての召喚ではなく、

普通の召喚にしたのか。お爺様に逆らえば、待っているのは地獄のような調整(拷問)なのに。

純粋な反抗心か、それとも、これから召喚するサーヴァントから理性を奪いたくないという思いか、それとも……

 

「待て、イリヤスフィール!!」

 

お爺様が私の命令無視に気付き、召喚を中断させようとする。

しかし、それを無視して私は最後まで召喚の呪文を詠唱し、サーヴァントの召喚を実行する。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

詠唱を完了すると共に、魔法陣の輝きが一気に増大した。

身体の魔力を根こそぎ持っていかれる感覚、そして目の前から感じる圧倒的な気配。

召喚の成功を確信した少女は、ゆっくりと目を開ける。そこには……

 

 

 

 

「問おう、お前が私のマスターか?」

 

圧倒的な威圧感。黒い騎馬に跨る一人の騎士が、こちらを見つめていた。

私を止めようとしていたお爺様も、無言で騎士を見つめている。

そんなお爺様をよそに、私は一歩前に出て騎士に告げる。

 

「えぇ、私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。貴方を召喚したマスターよ」

 

私を見て、騎士が一瞬驚愕したかのような表情を浮かべるも、すぐに元の表情に戻る。

 

「いいだろう、契約は此処に成立した。これより私は、マスターの剣となり、盾となり、その手に聖杯を掴ませよう」

 

「よろしくね。えっと……」

 

騎士を呼ぼうとした所で、名前を聞いていなかった事に気付く。と言っても、聖遺物から真名の予想はついている。だが、肝心のクラスはなんだろうか?

剣を携えている事からセイバーかもしれないし、馬に乗っているからライダーのクラスかもしれない。

 

「ごめんなさい、貴方のクラスと真名を確認させてもらってもいいかしら?」

 

「私のクラスはライダー、真名はマークス。暗夜王国第一王子だ」

 

「そう……よろしくね、ライダー」

 

 

 

 

聖杯戦争の開催は近い。

少女は、自らが召喚したサーヴァントと共に、聖杯戦争を勝ち抜く事を決意した。

その原動力はただ一つ、少女は……




ここまでが前章です。次回から本編に入ります。
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