Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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第10章:波紋を起こす風(前)

「学校にマスターがいる可能性があるわ」

 

そう、遠坂から告げられたのは藤ねぇや桜に質問攻めにあった日の夜だった。

遠坂の話によると、先日街を調査していた時に、謎の奇襲を仕掛けられたらしい。

その時の攻撃は、セイバーが辛うじて反応出来た為事なきをえたが、

見えない位置からの狙撃だった事から、アーチャーであると推測されている。

攻撃が飛んできた方向を辿った先に存在していたのが、俺達が普段通っている学校。

そこの屋上に魔力の残滓が微かに残っていた事から、学校にアーチャーのマスターがいる可能性がある。遠坂の話を纏めると、こんな所だ。

 

「けど、本当に学校にマスターがいるのか? たまたま、アーチャーが学校の屋上に陣取って狙撃していた可能性だってあるだろ?」

「その可能性も否定は出来ないわ。けれど、学校から狙撃する位ならもっと狙撃に適した場所は探せばいくらでもあるわ。にも拘らず学校から狙撃してきた。恐らくだけれど、アーチャーが攻撃を仕掛けた時、マスターが近くにいたんじゃないかと私は睨んでいるわ」

 

本来、サーヴァントは魔力を供給しているマスターから大幅に離れる事はできない。

距離が離れすぎると、魔力の供給に支障が出るからだ。その為、サーヴァントは

マスターの近くにいる事がほとんどだ。最も、単独行動と呼ばれる特性を持っている

サーヴァントは、マスターから離れて単独で自由な行動を行える為その限りではないが。

 

「それで、学校にマスターがいる可能性があるって言い出したのか」

「えぇ、それも有力な候補ではある。問題は、誰がマスターなのかが分からない事ね」

 

学校にマスターがいる、しかし誰がマスターなのか分からない。

当然だ、学校には何百、何千人もの生徒が集まる上に生徒に限らないのであれば教師や事務員、清掃スタッフ等も候補に含まれる。

その中からマスターを探せというのは、本来無謀な話である。

 

「それじゃあ、虱潰しにマスターを探すしかないって事か?」

「そうね、魔術師は本来魔術師特有の魔力を纏っている。聖杯のマスターとして選ばれる以上は魔術の適正がなければそもそも選ばれないから、完全な一般人は除外出来る。それに、マスターの証としては令呪がある。令呪の有無さえ確認できれば、その時点でマスターかそうじゃないかも分かるわ」

「そうなのか、だったら魔術師の中から令呪を持っている人を探せばいいんだな?」

「あのね、そう簡単に行く訳ないでしょう? 学校にいる魔術師は把握しているし、該当している人物に接触もした。けれど、その人物の手に令呪は見当たらなかったのよ」

 

つまり、遠坂が認知している学校の魔術師でマスターの証である令呪を持っている人間はいないという事になる。

では、やはりたまたま学校に陣取っていただけでアーチャーとそのマスターは学校に全く関係ない人物なのだろうか?

 

「そこで、ここから候補に出てくるのは魔術師じゃない、もしくは魔術の適正はあるけど魔術を学んでいない人。一般人に近いから魔力だけで辿るのは困難だし、候補が多すぎてキリがない。けれど、衛宮君みたいな例がある以上、可能性はあるわ」

 

結局の所、虱潰しに探すしかないという訳だ。

気が遠くなるような作業になるが、根気よく探し続ける事でしか、アーチャーとそのマスターの手がかりは得られない。

これでアーチャーがたまたま学校に陣取っていただけで、学校とは全く関係の無い人物がマスターでしたというオチならば、この苦労は完全な徒労に終わってしまうが、それでも何もしないよりはマシだろう。

それならそれで、学校にマスターはいないという情報が得られるのだから。

 

「だから、明日は学校の人達から虱潰しにマスター候補を探っていくわ。衛宮君も心当たりのある人物はどんどん尋ねていって」

「分かった。令呪があるかないかで判断すればいいんだな?」

「一番分かりやすい目印はそれね。相手が相当の魔術師で令呪を上手く隠蔽していた場合気付けないけど、その場合は確実に魔術師。そんな人物がすぐ傍にいて私が気付かない訳がないから、そこは気にしなくていいわよ」

 

こうして、この日の会議は今度こそ終わった。

明日は学校を片っ端から調べてアーチャーとそのマスターの手がかりを探らなければいけない。

学校に俺達以外のマスターがいるなんて信じたくないが、信じたくないからと目を背けていては取り返しの付かない事になるかもしれない。

そうなってからでは遅い。だから、何としても手がかりを手に入れなければ。

解散してから一人になって思い浮かべるのは、友人の慎二や生徒会長の一成、慎二の妹の桜、弓道部部長の美綴先輩、そして藤ねぇ。

学校で事件が起きれば、真っ先に被害に遭いかねない皆を守らなければいけない。

明日への決意を硬くして、士郎は床に着いた。


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