Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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書き溜めがないと不定期になってしまう病……
P.S:全ルートルナクラクリア達成(尚暗夜終章で犠牲が出た模様)


第11章:疾風と清流(前)

遠方から次々と放たれる狙撃を、ランサーは建物の陰に隠れながらなんとか避ける。

しかし、遮蔽物があれば安心という訳でも無く、アーチャーの狙撃は木の壁等容赦なく貫く。

その為、遮蔽物に出来る壁も限られており、慎重に動かざるを得ない。

弓兵を相手に遠距離での戦い等自殺行為でしかない。

かといって、一気に距離を詰めようと前に出ようものならば次の瞬間には蜂の巣にされているだろう。

故に、ランサーは遮蔽物で身を隠しつつ接近していくしかない。

また、何時までも隠れていてはアーチャーがマスターを狙う為に移動を始めてしまう。

状況は極めてランサーに不利と言える。接近戦に持ち込めば

白兵戦ではランサーに分があるが、簡単には近づかせてくれない。

 

「さっきの矢の角度からアーチャーの狙撃ポイントは恐らく……あそこね」

 

ランサーが遮蔽物から飛び出る。その瞬間をアーチャーも見逃さず、

ランサーに向かって矢を放つ。

矢が到達する前に、ランサーは近くの木の後ろへと身を隠す。

しかし、木程度ではアーチャーの弓を防ぐ遮蔽物にはならない。

アーチャーが矢を放ち、木ごとランサーを討ち取ろうとする。

ランサーもそれを予測していない訳がなく、木の上に登る事で狙撃を回避する。

木の幹に穴が開き、狙撃の跡がくっきりと残る。

 

「さっきと狙撃位置がずれている……っ少しまずいわね」

 

木に空いた穴から、アーチャーが矢を放った位置が先程と

違うポイントである事を理解する。アーチャーはこのまま

移動しながら狙撃を行い、ランサーを牽制しつつマスターが

見える位置まで移動し、そのまま士郎を狙撃するつもりなのだろう。

当然、ランサーがそれを許す訳がない。

 

アーチャーの注意が少しでもランサーから逸れた瞬間を利用して、

ランサーは遮蔽物から飛び出ては隠れてを繰り返し、少しずつ接近する。

また、接近の仕方もアーチャーに士郎達を狙撃出来るポイントへの移動を妨げる形になるように移動している。

このままアーチャーが同じ方向に移動すれば、マスターを狙撃出来る位置に辿り着く前に

ランサーとの対面は免れない。ランサーはそうなるように考えて、接近しているのだ。

当然、距離が近づく程アーチャーの矢が飛んでくるまでのタイムラグは短くなる。

そうなればますます、避けるのは困難になる。

やがて然るべき距離からアーチャーの矢がランサーを射抜かんとばかりに飛んでくる。

見てから避ける、というのが間に合う距離ではない。

回避行動をとろうにも間に合わない状況では、貫かれるしかない。しかし、

英霊にも昇華された身であるランサーはそんな常識を簡単に覆す。

 

「ふっ!」

 

キィン!!

 

何が起きたのかを理解できるのは、アーチャーとランサーのみ。

アーチャーが放った矢を避けるのが間に合わないと勘付いていたランサーは、

あろうことか所持していた薙刀の穂先で矢の軌道をずらし、命中を免れたのだ。

 

ここまで来れば、後は電撃勝負。ランサーは薙刀を構えて一気に接近を試みる。

狙い撃つには、敵が近すぎる。両者が敵の姿をとらえている状態で牽制を放とうが、それを弾くのは難しくない。

やがて、ランサーとアーチャーがお互い対面し合う形で対立する。

 

「ご自慢の狙撃はここまでかしら、アーチャー?」

 

一方的な距離から一転、攻撃が届く距離まで近づいたランサーは挑発するようにアーチャーに言葉を投げかける。

 

「チッ……目障りなんだよ」

 

対するのは、やすやすと近づかれて忌々しく舌打ちをするアーチャー。

しかし、これで決着がついた訳ではない。

むしろここからが、アーチャーとランサーの本当の闘いの幕開けである。

 

 

「よく僕の前に姿を表せたね。その度胸に免じて……正面から戦ってやるよ」


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