伝説のポケモンマスターは面倒くさがり 作:ただの面倒くさがり
「ジムリーダー、挑戦者共に手持ちポケモン二体使用、シングルバトル。道具の使用は無し。このルールでよろしいですね?」
両者顔を見合わせ、頷く。
「——これより、サンヨウジムジムリーダー・デントと挑戦者アリスのバトルを始めます!」
「バトルよ、エンペルト!」
「行け、ヤナッキー!」
これから試合が始めるという高揚感と、ポケモンの相性からのスリルで背中がゾクゾクする。これだ。私が求めていたのはこれだ!
実況が話し始める。
「ジムリーダーはヤナッキー、それに対して挑戦者はタイプ相性では不利なエンペルトを繰り出しました。どちらも最終進化系、そして強者のオーラを醸し出しています。試合の行方が気になりますね!」
エンペルトとヤナッキーは睨み合い、そのトレーナー同士も睨み合う。
「ヤナッキー、エナジーボールだ!」
「避けなさい、エンペルト!そのままつるぎのまいに繋げるのよ!」
「おっとぉ!ヤナッキーのエナジーボールを避けたままつるぎのまいへ!無駄が無い!」
ヤナッキーがエナジーボールを放った瞬間エンペルトは動いた。動いた体制のままつるぎのまいを舞う。
「当てるんだ、ヤナッキー!」
「続けるのよ!」
エナジーボールに当たらないよう避けながらのつるぎのまい。三回分は積めただろう。
「エンペルト、れいとうビーム!」
「しまった、ヤナッキー逃げろ!」
氷タイプの技は草タイプに効果抜群。デントはそれを危惧しているのだろう。
ヤナッキーは素早く逃げ回り、外れたれいとうビームはフィールドを凍らせる。既にフィールドのあちらこちらが凍りついていた。
「エンペルト、ふぶき! 目的はわかるわね!」
エンペルトが吠えて返した。作戦は伝わったようだ。
ふぶきで視界が覆われる。
「ヤナッキー、ギガインパクトだ!」
「跳ぶのよ、エンペルト!」
何も見えない中、ヤナッキーがエンペルトに向かってギガインパクトを放つ。
上手くいっていると良いが——。
「どうなっているのでしょうか。トレーナーの指示から推測すると、ヤナッキーはふぶきの中にいるエンペルトに向かってギガインパクトをし、エンペルトが跳んだ、これは何を意味するのでしょうか?」
フィールドを見つめること、数秒。ヤナッキーを抱えたエンペルトが、弱まったふぶきの中から出てきた。ジャッジがヤナッキーの状態を確認する。
「ヤナッキー、戦闘不能!エンペルトの勝ち!」
デントがヤナッキーを戻す。
「傷一つ負わせずにヤナッキーに勝つなんて——君の作戦勝ちかな?」
「まだわからないですよ?」
「種明かし、期待してるよ。次のポケモンは——モロバレル!」
「そのまま行けるわね、エンペルト!」
「草・毒タイプのモロバレルと、先ほどから引き続き水・鋼タイプのエンペルト! お互いに不利な相性です!」
実況の声が遠くに聞こえる。ああ、楽しい。周りのトレーナーとでは見出せない、旅に出たばかりの頃のようなバトルの楽しさ。
——こんな楽しいもの、最後は勝ちの味で締めようじゃないか。
そういうエンペルトの声が聞こえそうだ。
そうだ。エンペルトの言う通り、ここで勝ち星を、人生の宝となる勝ち星を一つ増やそうではないか!!
「モロバレル、どくどく!」
「させないわ!みずのはどうで撃ち落とすのよ!」
エンペルトのみずのはどうと、モロバレルのどくどくがぶつかり合った。混ざり合い、互いに向かって毒液が——
「モロバレル、避けろ!」
「なみのりで移動よ!」
毒状態を避けるため、両者ともポケモンを動かす。咄嗟の判断、デントは「避けろ」と言った。つまり、
「有利よ、エンペルト。そのままモロバレルに突っ込んで!」
「そうくるか!まも——」
「遅いわ!」
「なんと、波に乗ったエンペルトがそのままモロバレルに突っ込んだ! なみのりとたいあたり、両方が合わさったダメージと思われます。挑戦者アリス、防御からそのまま技に繋げるとは——感動だぁっ!」
「モロバレル、みがわり!」
「叩き潰せぇっ!」
みがわりを壊してしまえばこっちのものだ、と思いきやーー
「モロバレル、どくのこな」
背後からゼロ距離でやられた。避ける暇も無い。
「なんと! モロバレル、エンペルトの背後からどくのこな! エンペルトに効いている模様です!」
「そのままギガインパクト!」
「あっ」
思わず声が漏れる。エンペルトは大きなクレーターを残して倒れた。
戦闘不能の判定がなされ、エンペルトをボールに戻す。
「お疲れ様、エンペルト」
労いの言葉を掛け、新たなモンスターボールを取り出す。
「ジャローダ、出番よ」
「挑戦者はジャローダを繰り出した! 何か作戦があるのでしょうか?」
「ジャローダ、終わらせてきなさいっ!」
ジャローダはモロバレルに巻き付いた。
「モロバレル、ギガインパクトだ!」
「耐えて、ジャローダ!」
「モロバレル、またもギガインパクト! 対して巻き付いているジャローダはそのまま堪え——!」
「そのままかいりきよ。締め付けて!」
実況を遮るように指示を出す。
モロバレルのギガインパクトは不発に終わった。
「最後よ! マジカルリーフ!」
「決めろ! エナジーボール!」
同時に発せられた指示。立ち込める砂煙。結果は——
「モロバレル、戦闘不能! ジャローダの勝ち! 」
モロバレルが、倒れていた。
「——よって勝者、アリス!」
勝った、んだ……私……勝ったんだ!
「ジャローダ、勝ったよ!」
ジャローダに抱き付き、労ってボールに戻す。
「負けちゃったな」
「ジャローダが、負けるはず無いです」
「だけど、最後の攻撃はどう見ても、モロバレルを落とせる程の威力は無かった。なのに——」
「ああ、エンペルトのお陰です」
もし、モロバレルのギガインパクトと同時に、エンペルトが何か攻撃していたら?すぐにはわからないものの、後から体力を削る何かを。
そう聞いてみると、デントは納得したようだった。
「どくのこな、だね」
ギガインパクトを受ける直前、エンペルトはどくのこなという置き土産を残していったのだ。だから勝てたと言っても過言ではない。
エンペルトとヤナッキーのバトルでは、凍ったフィールドを全速力で走ったヤナッキーが転び、滑ったところをジャンプしたエンペルトが勢いよく乗っかっただけだ。
「トライバッジだ。受け取ってくれるね?」
「はい。今回は色々とありがとうございました」
ぺこりとお辞儀し、私はジムを出た。