夜兎語   作:JOKER off

4 / 6
今更だけど、オリ主の容姿とその他諸々

 東雲 秀樹(しののめ ひでき) 年齢 9歳(享年22歳)
 
 身長135cm
 体重 34kg
 頭髪 黒
  瞳 青

 好きな物 美味い飯、ドラゴンボール
 嫌いな物 ……………太陽……………
 
 まぁ小さい頃の神威くんを想像してもらえればいいです。


登場!? 白い魔法少女!!

「もう勘弁してください………」

「まだや! 次はコレとソレとアレや!!」

 

 アリシアの当面の衣服と生活用品を揃えるため、海鳴市のデパートに足を運んだ秀樹。

しかし、秀樹は試着室の中で鏡に映る自分の姿に悶えて縮こまっていた。

 

(なんでこんなことに………)

 

 自分の居る服屋(女性専門)の試着室の中で数分前までのことを振り返る。

ここに来る前に気付くべきだったのだ。

 

 〝八神はやて〟という少女が自分の〝天敵〟になる〝子狸〟であるということを……

 

 

〇約2時間前〇

 

「うわぁ♪」

「おい、あんまり走るなよ」

「せやで。はぐれると大変や」

 

 秀樹は、はやてが座る車椅子を押しながら、走るアリシアを軽く注意した。

自分達が居るのは、多くの人が行き交う海鳴デパートのショッピングモール。

精神的に落ち着いている秀樹とはやてに対して、アリシアは年相応にはしゃいでいる。

既に〝アリシア迷子フラグ〟が建築されたも同然だった。

 

「凄いね! ここ!! 色んな物がたくさんだよ!!」

「はいはい。まずは用事を済ませよう。その後に色々と見て回ろう、な?」

 

 秀樹は、自分に寄ってきたアリシアの頭を優しく撫でた。

 

「アリシアちゃん、迷子になったら大変やから、お姉ちゃんと手を繋ご?」

「はーい♪」

 

 ここで秀樹はとりあえず胸を撫で下ろす。

はやてがアリシアを迷子にさせないために手を繋いでくれたからだ。

 

「さて、服から買いに行くか?」

「待ちや。まずはご飯が先やろ?」

「あー……そうだよな。もう1時をとっくに過ぎてるもんな」

 

 はやく買い物を済ませようとした秀樹に対し、はやてが待ったをかけた。

デパートに買い物しに行くと決めた直後に出発したため、3人は昼食を摂ってない。

自分はともかく、アリシアを空腹にさせるのは如何なものか……?

 

「アリシア、ご飯何がいい?」

「好きな物を言いや?」

 

 まるでお父さんとお母さんのように、優しくアリシアの希望を二人が聞いた。

 

「お兄ちゃん、あっちでクルクル回ってるのは?」

「クルクル?」

「あぁ! 回転寿司やね」

 

 アリシアが指を指した方向に顔を向けてみると、回転寿司を発見した。

どうやら、アリシアは回転寿司を見たことがないらしく、純粋に好奇心を擽られたようだ。

秀樹とはやては、互いに顔を見合わせて異論がないことを確認する。

 

「アリシアちゃん、生のお魚大丈夫やろか?」

「何事も経験だって、な?」

「なー♪」

 

 秀樹とアリシアが調子よく笑うのを、はやては微笑ましく見守る。

そして、回転寿司屋の女性店員に話しかけ、店の奥のテーブル席を用意してもらった。

車椅子のはやては、秀樹に手を貸してもらい、アリシアの隣に座る。

秀樹は、二人の向かいの席に座り、二人にドリンクの希望を聞く。

 

「アリシアはオレンジジュースでいいか?」

「いいよ」

「はやては?」

「私はウーロン茶や」

「ウーロン茶ね。じゃ、俺はビー……じゃなかった。コーラで!!」

「「?」」

 

 秀樹は、危うくビールと言いかけた自分と目の前で首を傾げる二人に焦りを感じた。

 

「お寿司なんてホンマに久しぶりや♪」

「美味しいの?」

「美味いよ。まぁアリシアはエビとかタマゴとかから食べた方がいいかもな?」

「アリシアちゃん、お刺身食べれる?」

「お刺身?」

 

 そこからか…と秀樹とはやての二人は顔を見合わせる。

 

「アリシア、こういう生のお魚が刺身って言うんだぞ」

 

 丁度通りかかったサーモンの握りを取って、秀樹は自分なりに説明する。

お手本を見せるため、小皿に醤油を垂らし、サーモンに醤油を少し付ける。

そして、秀樹は大きく口を開けてサーモンの握りを口へと運んだ。

 

「ふぁってに?」(やってみ?)

「うん……」

「アリシアちゃん、まずはエビからチャレンジや。

あとあんな風に食べながら話したらいけんよ?」

 

 はやては、秀樹の真似をしないようにアリシアに注意し、アリシアのために回ってきたエビをテーブルに置いた。アリシアは、目の前に置かれたエビをジッと眺めたあと、ゆっくりとエビに手を伸ばし、小皿の醤油にエビをゆっくりと付けた。

 

「っ!」

 

 アリシアは、自分にとっては未知の体験であるエビを自分の口に入れた。

たった一貫を食べる些細なことでも、秀樹とはやては固唾を飲んで見守る。

 

 もぐもぐ……もぐもぐ……

 

 アリシアは、ただ黙ったまま、俯きながらエビを噛んでいる。

 

(も、もしかして……)

(く、口に合わんかったんやろか?)

 

 顔を上げてくれないアリシアに、秀樹とはやては心配になる。

やはり、無理に食べさせるべきではなかったのか?と少しばかり後悔した。

 

 しかし…………

 

「美味しいーーー!」

 

 それは杞憂に終わった。

エビの味を覚えたアリシアは、回ってくるエビに早速狙いを定めている。

秀樹とはやては、苦笑いしながら店員にエビを追加注文するのだった。

 

(寿司で2000円前後失うと仮定して、アリシアの服とその他諸々……)

 

 秀樹は、買い物し終わった後の残金を軽く考えてみる。

どう考えても今回の買い物で今月の残金は致命的な出費になるだろう。

そして、明日からアリシアのための飯代とその他諸々を考えれば………

 

(ハァ……)

 

 心の中で溜め息を吐いてしまう秀樹だった。

はやては、何処か浮かない顔をしている秀樹を不審に思う。

 

「どうしたんや?」

「別に?」

「別にじゃないやん。悩みあるんやろ?」

「そんな気にすることじゃないさ」

「それが〝お金〟のことでも?」

 

 はやてが言った〝お金〟という現在のNGワードに秀樹は眉をピクリと動かした。

 

「なんのことかな?」

「惚けん方がえぇよ。兎ちゃんが隠し事を出来ん子やと分かったわ」

「………なんで分かったんだよ?」

「女の勘やで!」

 

 はやては、ドヤ顔で胸を張る。

 

「……正解だよ。今月厳しいんだ」

「兎ちゃん、一人暮らしなんか?」

「そうだよ。親は……海外で働いてる」

 

 この世界に両親がいない事実を、秀樹は軽い気持ちの嘘で誤魔化した。

 

「兎ちゃんも一人暮らしなんやな……」

「? そういえば、はやての親は?」

「おらんよ。私が物心つく前に……」

「悪い……嫌なことを………ゴメン……」

 

 そう一言謝罪する。

秀樹は、自分が軽い気持ちで両親のことを聞いたことを後悔した。

 

「気にせんでえぇよ。今、めっちゃ楽しいんやから」

「?」

「私な、昨日までは想像もしとらんかったんよ。

今みたいに妹みたいな娘と優しい男の子と楽しい時間を過ごせるなんて……」

「優しい? 俺が?」

 

 優しいと言われ、秀樹は照れ隠しに右頬を軽く掻いた。

 

「優しいと思うで。普通、記憶喪失の女の子を匿う男の子はおらんよ」

「返す言葉がねぇな……」

 

 親の話題で秀樹は直視しようとしなかった現実と向き合う。

今、侵略イカ娘の如くエビを食べるアリシアの現状についてだ。

この娘の親はどうしてるんだろう? こうしてる今、不安に心を押し潰されているのか?

それとも……この娘がいなくなって清々しているのか?

 

「?」

「なんでもない。しっかりよく噛むんだぞ?」

 

 秀樹が無意識にアリシアの顔を見ていると、アリシアは視線で「なに?」と聞く。

秀樹は「何も気にしなくていい」という意味合いを込め、優しく笑顔を返した。

 

「なぁ、本当は警察に任せるべきなんとちゃうん?」

「分かってるさ。そのときはちゃんと……」

「そのときっていつや? こういうことは早めに……」

 

 早めに警察に相談するべきだ。

そうはやてに諭される自分に、秀樹は若干嫌な気持ちになる。

今の自分が気軽に警察に相談出来る立場なら、どれだけ心が楽になるだろう。

転生し、両親なんて存在しない秀樹は天涯孤独の身の上だ。

しかも、学校にも通わずにフラフラとのんびり毎日を過ごしていただけ。

きっと警察に相談してしまえば、自分の想像を遥かに越えて面倒になるのは明らかだ。

個人的な問題なのは分かってはいるのだが、警察に相談するというのは気が進まない。

だが、いつかはアリシアのためにも相談しなければならないのも事実で……… 

 

「どうしたんや? 急に黙り込んで……」

「なんでもない。大丈夫」

「本人がそう言うんならえぇけど、気軽に私に相談してや? 力になるよ」

「……ありがとな」

 

 秀樹は、はやては芯がしっかりしてるんだなと素直に感心した。

見たところ、まだ小学校低学年のはずなのに、大人顔負けの心意気というか……

きっと将来はまっすぐで強い良い女になるんだろうか?と秀樹は呑気に考えた。

 

「なんの話?」

「アリシアが良い娘だって話」

 

 なにか誤魔化されたような気がしたアリシアは、ぷぅとリスみたいに頬を膨らませる。

 

「さて、そろそろ出ようか?」

「じゃ、私が払うわ」

 

 そろそろ回転寿司を後にしようとした矢先、秀樹は男の面子に関わることを聞いた。

 

「待って。え? 今……なんて?」

「じゃ、私が払うわ」

「ダメに決まってるだろ!!」

「なんでやねん!?」

「アホか! 俺を女に飯代を払わせる情けねぇ男にさせる気かよ!?」

「出たわ~……男のそういうつまらん意地が……」

「な、なんだと……」

「提案や。お互いの財布の中身を見せ合いっこしよ?」

「フッ……俺の財布には諭吉さんが4人いるんだぜ!!」

 

 そう自分の(情けない)勝利を確信した秀樹は、勢いよく財布の中を披露する。

しかし、はやての財布の中身を見た途端、秀樹は絶句した。

 

 はやて:財布 108283円  秀樹:財布 46301円

 

「うわぁあああああああん!!?」

「お兄ちゃんが壊れた!?」

 

 経済的に、精神年齢22歳は8歳の少女に完敗していた。

 

「バ、バカな…… 貴様、どうやってそこまでの戦闘力(金)を………」

「言うてへんかった? 実は親戚のおじさんに生活資金を援助してもろうとるんよ。

せやけど、毎月ありえへん額を口座に振り込んでくるから困ってて………」

「クッ!? これが格差社会というヤツか!!」

 

 人目を気にせずに両手を床に着ける秀樹。

その眼には、格差社会を思い知った男の涙があった。

 

「今月厳しいんやろ? ここは私に任せたらどうや?」

「い、いや! やっぱり払わせるのはどうかと……」

「兎ちゃん、お隣さん同士助け合わんといけんやろ」

「はやて……」

「大丈夫や。私のお願いを一つ聞いてくれるだけでえぇ」

「お願い?」

「無理難題やないよ。それで私は満足するから……」

「分かった。絶対に借りは返すよ」

 

 このとき秀樹は瞬きをしてしまって見逃していた。

はやての口元が玩具を見つけた子供のように不気味にニタァ……♪笑ったことに。

目の前のチャンスを無駄にしないためか、はやては演じたのだ。

自分が秀樹の味方だと油断させるため、聖母の微笑みで秀樹を騙す。

 

「じゃ、行こか?」

 

 はやてにとっては天国。秀樹にとっては地獄の場所に………

 

 

〇現在〇

 

「似合っとるよ♪」

「お兄………お姉ちゃん、可愛いよ♪」

「違うんだアリシア。頼むから今の俺を見ないで……」

 

 そして、現在に話は戻る。

試着室のカーテンが開かれ、出てきたのはゴスロリ服を来た兎ちゃんだった。

恥ずかしがる兎ちゃんの様子を、はやては満足そうに眺めて携帯のシャッターを連打する。

アリシアは、変わり果てた秀樹……もとい兎ちゃんの様子に笑いを堪えている。

 

「もういいだろ!!」

「駄目や! まだ巫女さん、婦警さん、メイドさんが残っとるんやで!?」

「もう制服、ナース、キャビンアテンダント、スーツを着たのに!?」

 

 今にも泣きそうな顔で反論する兎ちゃん。

アリシアの服を買いに店に入り、アリシアの服を選び終えたところまでは何も疑ってはいなかった。しかし、アリシアのファッションショーから途中で雲行きが怪しくなったのである。

 

『はい、これを着てな?』

『えっ?』

 

 突然に、はやてから女子生徒の制服を手渡されたのである。

 

『ボク、はやく着てみて!!』

『えっ? えっ!?』

 

 テンション高い女性店員に背中を押され、秀樹は逃げ場を失い……

 

『兎ちゃんに女装してもらう。それが私のお願いや!!』

『はぁぁああああああ!!?』

 

 はやての真の狙いに気付けなかった秀樹は、黒歴史に新たな伝説を残すことになった。

 

「もう嫌だ……」

「何を言うとるん? 女の子やろ?」

「普通は男の子でしょって言う場面だよな!?」

「男の娘?」

「なんかニュアンス違う!?」

 

 もう兎ちゃんが何を叫ぼうと全てが無駄だった。

 

「ねぇねぇ♪ 次はお化粧してみない?」

「アンタもズイズイくるな!?」

 

 女性店員もノリノリで、兎ちゃんの美への追求にこだわりを見せる。

他の女性店員達も此方を楽しそうにチラチラ覗き、完全に黙認していた。

というか、何故コスプレがあるのかを問い正さねばならないのだが、聞いてしまえば後悔しそうなので、兎ちゃんはスルーすることに決めている。

 

「もういいだろ! もう着ないからな!」

「えぇ? なんでもお願い聞いてくれる言うたやんか?」

「限度ってもんがあるわ!!」

「…………アリシアちゃんの服代………」

「うっ!?」

 

 試着室の中でゴスロリ服を強引に脱ごうとした兎ちゃん。

しかし、はやてに痛いところ突かれたせいか、動きがピタッと止まる。

 

「私にこれだけお金を使わせておいて………」

「分かったよ! でも、次で最後にしてくれ!!」

「聞き分けの良い男の娘は好きやで」

「だからニュアンス違うよね!?」

 

 などと終わらない漫才を繰り返す兎ちゃんとはやて。

そんなとき突然大きな地震がデパートを襲った。

 

「!? なんだ!?」

「お客様、落ち着いてください!」

 

 さっきまでの楽しい雰囲気が嘘のように慌ただしくなる。

 

「平気か!? 二人とも!!」

「私は大丈夫や」

「アリシアは!?」

「平気や! アリシアちゃんは無事やで!」

 

 秀樹は、自分の今の姿を忘れ、二人の安否を確認するために試着室から飛び出た。

 

「嫌だ……」

 

 はやてから自分達は無事だと聞かされたことに一安心した秀樹だったが、アリシアの様子が何処かおかしかった。

 

「アリシア?」

「怖い……」

「大丈夫。お兄ちゃんとお姉ちゃんが……」

 

 自分とはやてが傍に居るよと励まそうとした矢先だった。

デパートの窓ガラスを大きな影が覆い込んだのだ。

 

「アレって……樹の根か?」

 

 その場に居合わせた客の誰かがそう呟いた。

巨大な樹の根がデパートのビルに張りつき、徐々に根を伸ばしていっていた。

僅かな窓の隙間から町の様子を覗いてみると、巨大な樹木に町が侵食されていた。

当然パニックになる人々。秀樹は、絶対にアリシアとはやてとはぐれないように、二人の手を強く掴む。

 

「落ち着いて避難してください。安全な場所に誘導します!」

 

 さっきまで秀樹の女装姿を楽しんでいた店員達は、お客様を安全に避難させるために動く。

 

「君達も!」

「分かりました。アリシア、はやて、行こう」

「アリシアちゃん、逃げるで!」

 

 自分達も避難する人々の跡に続こうとする秀樹とはやて。

しかし、アリシアが何かに怯えているのか、その場に塞ぎ込んで動こうとしなかった。

 

「アリシア?」

「怖い………」

 

 このままじゃ避難出来ないと判断した秀樹は、アリシアをお姫様抱っこする。

 

「逃げるよ。お兄ちゃんにしっかり掴まって、な?」

「うん……」

 

 秀樹がアリシアを抱き抱えている間、女性店員がはやての車椅子を掴んでいた。

 

「はやく避難しましょ。さぁ私についてきて!」

「はい!」

 

 女性店員が車椅子を押して歩き出し、秀樹もその跡に続こうとした。

しかし、また地震……否、巨大な樹木が動き出し、秀樹の前を塞いで壁になってしまった。

 

「しまった!?」

「大丈夫!? 無事なの!?」

 

 巨大な根の壁の向こう側で女性店員が心配の声を上げる。

 

「平気です! そちらは大丈夫ですか!?」

「無事や! そっちも無事なんやな!?」

「無事だ! でも………」

 

 逃げ道……退路が完全に絶たれてしまっている。

 

「どないしたらええんや……」

 

 此方側にはアリシアと自分だけ。

幸いにも他の人達は全員避難し終えているようだった。

 

「………店員さん、はやてを連れて先に避難してください」

「なっ!? バカなことを言わないの!! 君もはやく……」

「大丈夫です。レスキューの人達が来るのを待ちますから」

「そうじゃないやろ! 兎ちゃん達を残して行ける訳ないやんか!!」

「バカ! はやて達まで避難出来なくなってからじゃ遅いんだぞ!!」

 

 そう強い口調で秀樹が言った言葉に女性店員はハッとなる。

 

「せやけど……」

「分かったわ」

「店員さん!?」

「はやてちゃんを逃がしたら君達を必ず助けに行くからね?」

「………ありがとうございます」

 

 苦渋の判断だった。

女性店員は「止まって! お願いやから!!」と繰り返すはやての声を無視し、避難していく。

秀樹は、遠くなるはやての声に耳をすませながら避難してくれたことに安堵した。

 

「どうしたもんかね………」

 

 さっきまで騒然としていたのが嘘のように静寂になった。

今ここにいるのはアリシアと秀樹の二人だけ。

 

(俺がしっかりしないとな……)

 

 自分の胸に顔を埋めて震えるアリシアを強く抱き締めながら、助けが来るのを待つ。

自分がパニックに陥れば、アリシアを助けられないんだと、秀樹は何度も言い聞かせた。

 

「Zzz……Zzz……」

「あんなに怯えてたのが嘘みたいだな……」

 

 いつの間にか、アリシアは秀樹の胸に顔を埋めたまま眠ってしまった。

 

(ハァ……サイヤ人だったら舞空術で一発だったのに……)

 

 そんなことを思い、秀樹はアリシアの頭を撫でながら割れている窓から外を眺める。

自分があのときにハッキリとサイヤ人という単語を口にしていれば、この状況は一変する。

しかし、無いものねだりをするだけ無駄であり、アリシアの頭を優しく撫で続けた。

 

「……………ん? あの娘、いったい彼処で何してんだ?」

 

 しばらく割れた窓から空を眺めていると、近くのビルの屋上にフェレットを肩に乗せた茶髪の女の子がいるのを発見してしまった。様子を観察してみると、フェレットと何かを話しているようにも見える。そして何かを決意したのか、首から提げていた赤い宝石が付いたネックレスを取り出した。

 

「レイジングハート、セーットアーップ!!」

「へ?」

 

 赤い宝石が付いたネックレスを天高く掲げたと思った次の瞬間、女の子の体をピンク色の目映い光が包む。秀樹は何がなにやらサッパリで、黙って見守ることしかできない。ピンク色の目映い光が晴れると女の子が私服から白い制服のような姿に変身していた。まるで漫画やアニメのような魔法少女のように……

 

「探して! 災厄の根源を!!」

【エリアサーチ】

 

 今度は女の子を中心に魔方陣?が展開された。

 

「見つけた!」

「なのは、ここからじゃ……」

「大丈夫。ね? レイジングハート?」

【シューティングモード】

 

 秀樹が理解するのよりも先に女の子が行動を起こす。

レイジングハートと呼ばれた赤い宝石が変化した杖は、ガシャコン!と銃を連想させる形態になり、その銃口は一際大きい巨大な樹木へと向けられる。

 

「ディバィイイン………バスターーーーーーーー!!」

 

 女の子は使命感に燃えた瞳で、躊躇いなく引き金を引く。

すると、レイジングハートからピンクの砲撃が放たれ、一際大きい巨大な樹木に直撃した。

秀樹は口をあんぐりと開け、その一部始終を不本意だが目撃してしまった。

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード封印!」

 

 女の子のターンはまだ終わらない。

銃形態になったレイジングハートが元の杖の状態に戻ると、赤い宝石の部分からピンク色の帯が何本も伸びていき、砲撃が直撃した部分に集中していく。そして秀樹が何も理解出来ないまま女の子の使命は終わり、町を侵食していた巨大な樹木は完全に姿を消したのだった。

 

「やったね、なのは!」

「うん、でも……私があのとき気付いていれば……」

「なのはのせいじゃないよ! ボクが君に代わりを頼まなけ……れ……ば……」

「ユーノくん?」

 

 「ユーノ」と呼ばれたフェレットの顔を「なのは」と呼ばれた女の子が覗き込む。

ユーノは、とある方向に視線が釘付けになっており、ガクガクと震える小さい指でとある方向を指す。

 

「……………………こ、こんにちは?」

 

 ようやくここで秀樹とアリシアの存在に気付いたなのは。

自分の今やったことを見られた!?というショックで固まってしまった。

 

「こ、このことは他言しないんで……それじゃ!!」

 

 秀樹はアリシアをお姫様抱っこしたまま、通れるようになった逃げ道へ全力で走る。

ああいう類いに関わったら駄目なんだと秀樹の理性と本能が全力で叫んでいた。

 

 ろくなことにならないと…………

 

「にゃあああああああ!!? ど、どうしよう!? ユーノくん!!?」

 

 と、背中からなのはの声が聞こえるが、秀樹は完全に無視して走る。

階段を全力で駆け抜け、あっという間に避難し終えていたはやてに合流した。

 

「よかった! 無事やっ…………」

「帰ろう!? すぐに帰ろう!?」

「ど、どうしたんや?」

 

 秀樹とアリシアが無事なのを心の底から喜んだはやて。

しかし、秀樹の明らかな挙動不審さに戸惑いしかなかった。

 

「さぁはやく!!!」

「ちょっ!?」

 

 眠るアリシアをはやての太ももの上に移動させ、秀樹ははやての車椅子を押して走る。

自分の今の姿が女の子ということを忘れるくらいの衝撃が、秀樹から冷静さを奪っていた。

 

「ど、どどどどどどどどうしよう!? ユーノくん!?」

「なのは、落ち着いて!? あの娘のことよりも今日は身体を休めるんだーーー!!」

 

 こちらもこちらで、秀樹と同様に冷静じゃなかった………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。