蒼の彼方のフォーリズム ~少年たちの物語~   作:舞翼

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本編に入る前に一言。
窓果ちゃん。策士だね(^O^)


第3話 再び空へ

翌々日の放課後。

窓から外を見てみると、何故か晶也がFCのコーチをしていた。

おそらく、誰かが、晶也に再び空を飛ぶ楽しさを見せたらだろう。

まだコーチだが、何かの切っ掛けがあれば、晶也は選手に戻ることが出来るだろう。

 

「ま、俺には関係ないけど」

 

俺はそう言い、昇降口の下駄箱から、通学用のグラシュに履き替える。

昇降口を出たら、そこには、2年のFC部一行が俺を待っていた。

 

「翔。 FC部に入ってくれないか?」

 

と言い、晶也は俺に深く頭を下げてきた。

 

「翔のセコンドの指示を見て、オレは、翔がFC経験者だと思ったんだ。 だから――」

 

いや、何というか。 晶也ってこんなに熱い性格だっけ?

もしかして、晶也の中のFC熱が蘇ってきたのか?

 

「まあ確かに、俺はFC経験者だ。 だがな、俺は空に背を向けたプレイヤーだ。 その証拠に、俺はこの数年間グラシュを起動させたことは一度もないんだ。 いつも俺が歩いて登校してるのは、見てるだろ」

 

「で、でも、何で飛ぶことが嫌いなんですか? 空を飛ぶのはあんなに楽しいのに……」

 

倉科さんも、俺に食いついてくる。

そして実感する。 この子は、本当に空を飛ぶのが好きなんだと。

晶也が、FCのコーチになる切っ掛けを作ったのは、きっとこの子なのだろう。

俺は笑みを浮かべた。

 

「倉科さんは、初めて空を飛んだ俺みたいだな。 その心は大事にしろよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

倉科さんは、あたふたしながら答える。

 

「そうだ。 その心を持ち続けている限り、倉科さんの可能性に限界はないよ。 でも、努力することも忘れるなよ。 日々の積み重ねも重要になってくるから。――あと、絶対に空を嫌いになるな。 それは、自身の可能性を捨てると同じことだからな」

 

「は、はい! わかりました!」

 

そう言い、倉科さんは俺にぺこりと頭を下げる。

てか、何で俺はコーチみたいな助言をしてるんだ。 早く帰りたい。

 

「翔やん。 私にはないのかにゃ~」

 

「私にもください!」

 

今、みさきと有坂が助言を求めたが、俺はソッポを向く。

 

「知らん。 俺は帰りたい! コーチなら晶也がいるだろ」

 

「「え~」」

 

「翔、FC部に入ってくれないか、オレはあそこまで踏み込んだ助言は出来ない。 頼む!」

 

「断る。 俺はFC部には入らない、追いかけて来ても答えは変わらないからな」

 

そう言い、俺は学校を出る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「ねぇ、翔君のことは私に任せてくれないかな?」

 

「窓果?」

 

みさきが、眼をぱちくりしながら言う。

皆の視線を集める中で、窓果は答える。

 

「……実は、私知ってるんだ。 翔君がFCを拒んでる理由」

 

「そ、それは何なんだ!?」

 

晶也が食いついてくるが、窓果は首を左右に振った。

 

「……ゴメン。 それは教えられない。 約束だからね、翔君たちと」

 

「そうか」

 

「でも、私は翔君の空を飛んでる姿を見たいんだ。 だから――」

 

「いいんじゃない、窓果に任せて。 私たちの勧誘じゃ、ビクともしないよ。 彼」

 

みさきが軽い口調で言う。

 

「……ま、窓果ちゃん。 私、如月さんの教えをもっと聞きたいです! 晶也さんの教えと合わせたら、より速くなれるような気がします!」

 

明日香は、眼をきらきら輝かせながら、グイっと顔を近づけて言う。

たしかに、晶也と翔の助言を合わせたら、レベルアップするのは間違いないのだ。

 

「あ、明日香ちゃん。 近い、近いよ」

 

「あ、ごめん。 窓果ちゃん」

 

「じゃあ、窓果先輩に任せると言う事で、よろしいでしょうか?」

 

真白がそう言い、

 

「「「異議なしー」」」

 

晶也、明日香、みさきが同意する。

満場一致で、窓果が、翔の勧誘を一任することが決定したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

時間は経過し、翌日の放課後。

俺は教室を出、下駄箱で通学用のグラシュに――。

 

「翔君、一緒に帰ろう」

 

「何言ってんだ。 窓果は部活があるだろ?」

 

「いやいや、今日は合宿に向けた準備をしないとでね。 救急備品買いに行くんだ。 救急関係は私より、翔君の方が詳しいかなーって。 一緒に来てくれないかな?」

 

俺は暫し悩んだが、

 

「まあ、そういうことなら」

 

「じゃあ、決まりー!」

 

俺と窓果は、通学用のグラシュに履き替え学校を出る。

この間も、空を飛ぶことは一切しない。

俺と窓果は、歩いてドラックストアに向かっている。

目的地に到着し、自動ドアを潜り店内に入る。

 

「さて、まずは包帯関係だな。 6番通路だ。 行くぞ、窓果」

 

「ちょ、翔君待ってよ~」

 

俺と窓果は、6番通路の真ん中に陳列されている包帯を眺める。

 

「たくさん入ってて、長いのがいいのかな?」

 

「そういうのは、すぐに緩んだりするんだ。 あんまり入っていなくても頑丈なものを選ぶんだ。 値段が高くても、選手の体のケアの方が重要だからな」

 

「なるほどねー。――買い物が終わったらアイスが食べたいなー」

 

これは、前の約束のアイスだろうか?

じゃあ、パフェも入っていると言う事か?

 

「おう、パフェでもいいぞ」

 

「それは、次回ということで」

 

次回だと。 てか、これって傍からみるとデー……。

いやいやいや、そんなことは考えるな如月翔よ。 クールにいこうクールに。

 

「おう、パフェは次回な。 ところで、アイスはどこのだ?」

 

窓果は、人差し指を唇に当てた。

 

「うーん、コンビニでもいいかな」

 

「……窓果がそれでいいなら」

 

まじか。 デパートの三段アイスとか、本格的な、北海道バニラアイスなど注文がくると思ったんだが。 コンビニのアイスでOKだとは。

 

「んじゃ、一通り買ってから、コンビニ行こうぜ」

 

「OK」

 

俺と窓果は、救急用の備品を一通りカゴに入れてから会計し、コンビニへ向かった。

ちなみに、買った物の荷物は俺持ちだ。

コンビニでアイスを買った俺と窓果は、浜辺の階段に座り食べていた。

 

「海が綺麗だねー」

 

「だな。――もうちょっと贅沢な物を買ってもよかったな」

 

海は、夕焼け空の光を浴びて、綺麗な光を反射していた。

 

「この空の下で、飛んだら気持ちいいんだろうな」

 

窓果は、そう無意識に呟いていた。 窓果は空の話題を出してしまった為、ハッとした。

 

「ごめん、今のは無意識に……」

 

「いや、構わないよ。 飛びたいのか?」

 

窓果は小さく頷いた。

 

「……翔君、一緒に飛ばない?」

 

「…………いや、俺は」

 

「そろそろ我慢は終わりにしよう。 一緒に飛ぼうよ」

 

窓果は、笑みを零しながらそう言う。

 

「……今日は、やけにグイグイくるな」

 

「ん~、だって翔君は飛びたいのに、それを必死に我慢してるんだもん。 拗ねてる感じで」

 

俺は、ぐっ、と言葉を詰まらせる。 たしかに窓果の言う通り、無意識に意地を張っているのかもしれない。 蓮も、俺が空を飛ぶことを願っているのに。

数秒考え、――――俺は覚悟を決めた。

 

「…………今日だけだぞ」

 

窓果は、満面の笑みで答える。

 

「OKOK。 じゃあ、飛ぼうか」

 

俺と窓果は立ち上がり、俺は息を吐いた。

 

「何年ぶりだろうな。 飛ぶのは」

 

「はいはい、そんなこと言ってないで、手を貸して」

 

俺が右手を、窓果が左手を出し、ゆっくりと繋いだ。

俺と窓果は、空を飛ぶ魔法の言葉を紡ぐ。

 

「「――Fly!!」」

 

俺と窓果の体が、ゆっくりと空中に浮かんでいく。

久しぶりの空は、とても爽快感があった。 空中から見える夕焼け空も、とても綺麗だった。

 

「どうかな。 久々の空は」

 

「ま、まあ、あれだな」

 

俺は上手く答えられず、口籠るだけだ。

 

「蓮さんに報告しないと、翔君が空を飛びましたって」

 

「そうか。 蓮は見えない呪縛に囚われているのか……。 俺のせいで。 だが、今後も飛ぶとは決まってないぞ」

 

「でも、飛んだんだよ。 蓮さんもこれで一安心だよ」

 

「……まあ確かに。 蓮を呪縛から解放できるのは大きいな」

 

「これで蓮さんも、選手として再スタートできるね。 あ、そうだ。 今度蓮さんと練習しなよ。 飛ばなくても、陸上トレーニングならできるでしょ」

 

窓果の意見は尤もだった。

陸上でなら、蓮と昔に戻ったようにトレーニングできるのだから。

 

「そうだな。――もしかしたら、例の浜辺で練習してるかもな」

 

「じゃあ、飛んで行こうよ」

 

「今日だけだぞ」

 

「わかってるって」

 

そう言い、俺と窓果は、蓮がいつも練習してる浜辺まで飛翔した。

その間、風がとても心地よかった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

浜辺で、タオルで汗を拭いていた蓮は、目を丸くしていた。

何故なら、飛ぶのを拒んでいた俺が、空を飛んでいるのだから。

俺と窓果は、蓮の眼の前で着地する。

 

「蓮、ごめんな。 今まで待たせて」

 

「……ホントに長かったぞバカ野郎。 また飛んでくれて嬉しいよ」

 

「今後も飛ぶかはわからないけどな」

 

「でも、前みたいに断固拒否はしないんだろ?」

 

俺は、目をきょろきょろさせる。

 

「ま、まあ、そうかもな」

 

「……それで構わないよ。 ゆっくり空に慣れていけばいいさ」

 

蓮は、何か憑きものが落ちたようだった。

今まで縛られていた呪縛から、解放されたのだろう。

 

「陸上練習なら、いつでもOKだ」

 

「本当か!? でも、お前。 基礎体力とか大丈夫なのか?」

 

蓮が心配するのは当然だった。

いきなり厳しい陸上のトレーニングをして、大怪我をしました。とか洒落にならない。

 

「走りこみ、腹筋、背筋はいつもやってたからな。 問題ないぞ」

 

蓮は、俺の言葉を聞き笑みを零した。

 

「そうか。 FCから離れても、基礎体力作りは欠かさなかったんだな」

 

「まあな。 基礎体力作りは、俺の生活に組み込まれてたからな」

 

「お前は、やっぱり空が大好きなんだな」

 

「……否定はしない」

 

蓮は、窓果に向き直った。

 

「窓果ちゃん、ありがとう。 翔を再び空に飛ばせてくれて。 何かできることはあるかな? できる範囲なら応えるよ」

 

「んーと。 じゃあ、翔君にコーチを頼みたいな。 蓮さんは、次の大会で賞をとって欲しいです」

 

「うっ、そう来たか」

 

予想通り、コーチの件が来たか……。

さて、どうしようか?

 

「オレは構わないよ。 次の大会で必ず賞をとるよ。 翔は、時々でいいから練習につきあってくれ」

 

俺は腕を組んだ。

 

「うーん、わかった。……空の練習もか?」

 

「そりゃもちろん。 翔のトップスピードに追い付くのが目標でもあるし、トップスピードをばねにしたエアキックターンの技も盗みたいしね。 あれ、今の所FCの選手で出来るのは、翔だけなんだよ」

 

「マジッ!?」

 

「うん、マジだよ」

 

「ほへ~、翔君って、ホント凄い選手なんだね」

 

窓果は、俺を見て感嘆な声を洩らす。

たしかに、俺みたいな子供が、FCトップクラスの選手とは想像もつかないだろう。

 

「ま、まあ、俺もコーチの件は了解したよ。 俺の恩人の頼みは、無下に出来ないからな。 何かわからないけど、弱みも握られた気もするが……」

 

「にゃははは、気のせい、気のせいだよ!」

 

「……そういうことにしとくよ」

 

俺は肩を落とした。

蓮は頷き、

 

「翔がコーチか。 教える人は経験者なの?」

 

俺の代わりに、窓果が答えてくれた。

てか、俺はその場にいなかったから、何もわかっていないのだが。

 

「えっと、明日香ちゃんと真白ちゃんは初心者で、みさきちゃんは経験者だね」

 

「初心者が二人いるんだ。 三人のスタイルは?」

 

「明日香ちゃんがオールラウンダー、真白ちゃんがファイターを希望してて、みさきちゃんは、ファイターで決まりかな」

 

「三人は、自身にあったグラシュを選ばないとね。――翔たちが、この三人にどんな翼を与えるのか、楽しみだよ」

 

俺は唇を尖らせた。

 

「……ハードル上げんなよ。 まあ、晶也もいるから大丈夫だと思うけど」

 

「夏の大会、楽しみにしてるよ。 そろそろ時間だし、オレは帰るな」

 

「俺らも帰るか」

 

「そうだね」

 

俺、窓果、蓮は立ち上がり、帰路についた。

久奈浜学院と蓮のFCは、始まったばかりだ――。




翔君が空を飛びましたー。
窓果ちゃんの誘導凄いね(笑)あんなに拒んでいた空を飛ぶとは。
まあ、作者も早く飛ばせてあげたかったんですが。
てか、翔君のトップスピードをばねしたエアキックターンって、めっさ早くね(笑)
全ての力を吸収してますからね(笑)
荷物やゴミ等々も、ちゃんと持ちかえってますよ~。

ではでは、エネルギーになる感想、よろしくです!!
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