念話を切ってからしばらくしてユーノとアルフの2人と合流した。ユーノはお約束の緑色の魔法陣を展開して、オレ達4人の魔力と霊力を回復させてくれた。
「サンキュー、ユーノ。後は奴を止めるだけだ」
オレは銀髪の女性の前に立ちはだかる。
「逃げるのは止めか?」
「あァそうだな。だから、真っ向勝負でぶつかってやる!!」
オレは天鎖斬月で斬りかかるがやはり壁のような物で阻まれる。だが諦めずにラッシュをかける。
オレの卍解の長所――スピードの速さを生かして銀髪を翻弄して戦う。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
移動してはまた移動し、また移動しては移動、の繰り返し。
オレの体力がギリギリきれるかきれないかぐらいにやっと隙を見せてくれた。
――そこォ!!
「オラァッ!!」
斬りかかるがやはり壁のような物が邪魔をする。
「チィッ!なら……」
オレは斬月に霊力を流し込む。
「これでも食らえ……――月牙天衝!!!」
黒い月牙は壁を破壊した。しかし銀髪の奴は直ぐに避けて当たらなかった。だけど……
――計算通り!
なのはとフェイトが銀髪の奴の後ろをとった。
「ディバイン……バスタァァァ!!」
なのはの砲撃が銀髪に当たる。だがさほどダメージどころか汚れ一つついていない。
銀髪はそこから退いて場所を移動する。しかし……
「はぁぁぁ!!」
フェイトが待ち伏せている。
フェイトはバルディッシュを鎌状の形にして斬りかかる。だがそれも防がれる。
「かァ〜らァ〜のォ〜…弾け『飛梅』!!」
そこで西園寺が飛梅の炎で銀髪を撃ち落とす。それもダメージが無い事前提だ。だから……
「ウォラァァァ!!!」
キィン!
天鎖斬月は銀髪の手に掴まれて動かなくなったが、コレも見解の範疇だ。
オレが銀髪に斬りかかり、月牙を放つ、という算段になっていた。それも白い仮面(・・)を着けて……
「!!?」
「月牙……天衝ォ!!!」
斬月の斬撃に赤黒い霊圧を乗せて放つ。流石に虚化の月牙を受けて無傷ではいられないはず………
その時、爆煙に紛れてピンク色の光が見えた。
「全ての物に終焉の光を……」
「な、なんだ……ありゃあ……」
「スターライト……ブレイカー…」
フェイトがかなり焦っている。オレはルナにこっそり念話でスターライトブレイカーについて、どのくらいの破壊力か聞いてみた。
【情報からして、おそらく………】
ルナの情報を聞いた途端、唖然とした。
今のオレの状態は顔面蒼白というのがぴったりの顔色だろう。
「逃げるぞ!!」
オレはフェイトとアルフを抱え、西園寺はなのはとユーノを抱えてその場を瞬歩で離れる。
なのは達の飛行魔法よりオレ達の本気の瞬歩の方が速い。そのため逃げる事にもむいている。
「っ!間に合え……!」
なるべく攻撃の当たらない所、少なくとも威力が弱まっていれば月牙が虚閃で消せるんだが……
その時ルナが話しかけてきた。
【!! 悠牙、複数の民間人の反応】
「はあ?!どこだ!!」
オレと西園寺は抱えていた奴らをそれぞれ下ろして民間人捜索にはいった。
「いた!! そこの人!危ないから早く逃げて!!」
「…なのは…ちゃん……?」
「え………」
突然なのはの動きが止まった。
民間人の避難優先だってのに……なにやってんだ……!
「オイ、なにやってる!!早く――」
「ゆ、悠牙……?」
「なっ!!? 優斗……雅紀……」
そこにいた民間人、それはバニングスと月村、そして優斗に雅紀だった。
「オイ……悠牙…だよな……?なんでそんな格好してんだよ……なんでそんなにボロボロなんだよ………」
「悠牙……」
優斗と雅紀がオレに詰め寄る。
だけどオレは、何も答えられなかった
その時……
【悠牙!来ます!!】
『!!!』
振り向くとピンク色の砲撃がすぐそこまで迫っていた。
「なのは、フェイト…優斗達と自分達の前にプロテクションを張ってくれ、今すぐだ」
「……プロテクション」
「…プロテクション!」
【【Protection】】
ピンクと黄色の盾が優斗達の前に張られる。
オレはそれを確認するとピンク色の砲撃に向き直る。
「待てよ悠牙!!質問に答えろよ!!」
「………無理だ…」
「なんでだよ!!!なんで教えてくんねえんだよ!!オレはお前のなんなんだよ!!ダチ公じゃねえのかよ!!!」
大声を張り上げる優斗。いつもはおちゃらけているが、友達としては最高の友達(ダチ)だ。
……オレはその最高の友達(ダチ)に嘘をついていたんだな……
オレは優斗と雅紀を見て呟く。
――ゴメン
オレは仮面を出した。泣きたい気分を紛らわすために、心の穴を埋めたかった。
体中を虚の力が行き交い、霊圧も徐々に上がる。
「……消すぞ…ルナ…」
【了解】
オレは天鎖斬月の切っ先をピンク色の砲撃に突き出した。
そしてそこには赤黒い霊圧が集まる。
「“黒虚閃(セロ・オスキュラス)”」
ブゥン……
一閃の赤黒い光がピンク色の砲撃とぶつかる。
黒虚閃の大きさはピンクのそれより小さい。だが威力はデカいためピンク色の砲撃を打ち消して銀髪の奴に直撃する。
「ぐっ!!……なんだ…この力は……!」
オレは仮面の前に左手を持って行き振り払う仕草をした。
仮面は赤黒い霊子となって消えた。
「すごい……」
「なのはのスターライトブレイカーを一撃で……」
「褒めるは後だ。ユーノ、先に優斗達をアースラに転送してくれ」
「分かりました」
ユーノはそそくさと転移魔法の準備を始めた。
「西園寺」
「何?」
「……優斗と雅紀を頼む」
「………うん、分かった。任せて!」
――よし…これで…安心して戦える……
オレは銀髪の奴との戦うために空に飛ぼうとした。その時優斗が後ろから声をかけてきた。
「悠牙……」
「……なんだ?」
「帰ってきたら、カラオケ行こうぜ!!」
「!!………あァ…約束だ…」
優斗はいつもの笑顔を残して雅紀、バニングス、月村、そして付き添いのユーノ、アルフ、西園寺はアースラに転送された………
「バレちゃったね…」
「そうだね…」
「…………」
残されたオレ達3人。
『3人とも聞こえる?』
「エイミィさん!!」
「どうした?」
『あの二人は安全なところに転送したよ。それからクロノ君から闇の書に投降するように呼びかけてって』
「分かった」
オレはエイミィに返事をしてから念話を切る。
そしてオレ達は無駄かもしれないが銀髪――闇の書に投降を促す。
「闇の書さんお願いです!投降してください!」
「シグナム達と私たちは――」
だが闇の書は聞こうとしない。ただ冷たい表情を崩さずに続けた。
「私の願いは…主の願い…主の願いは自分の愛する者たちがいなくなった世界が夢であるようにという願い…」
「そんなの…!」
「そして…愛する者たちを奪った者たちには…永久の眠りを…」
「ざっけんな!!!そんなんではやてが喜ぶと思ってんのか!!主に尽くしてるんならそれぐらい察しろ!!」
「我は魔導書、ただの道具だ」
――この野郎……人の話聞いてんのか……!?
「でも…本当に道具って思っているなら…泣いたりなんかしないよ!」
「この涙は…主の悲しみ…私は道具だ…悲しみなんか無い…」
――カッチ〜ン……頭(あったま)きた
「バリアジャケット……パージ……」
オレがそう思うのと同時にフェイトが呟く。
するとバリアジャケットの至る所が薄くなり見るからに軽くなっている。
オレは天鎖斬月のスピードで闇の書に向かう。フェイトもオレの隣に並び飛んでいる。
「悲しみなんか無い…?…そんな顔で言っても誰が信じるもんか!」
「てめえが何を言ってたって、てめえの目からはちゃんと流れてんじゃねえか!!」
その時何もない周りから突如として火柱が発生した。
「早いな…もう崩壊が始まったか…あと少しで私の意識も消える…」
闇の書はやはり表情一つ変えずに呟く。
「闇の書さん!」
――なんで……なんで分かろうてしねえんだよ!!!
オレとフェイトはほぼ同時に闇の書へと向かって行った。
「「この……」」
『ダンッ!』と強く足に力を入れてオレ達は跳んだ。
「「駄々っ子!!!」」
フェイトとオレは異口同音に言葉を叫ぶ。
今のフェイトはオレの卍解状態とほぼ同等の速さを手に入れており、武器が届くのも同時だった。
ギィン!!
鈍い金属音が鳴り響き天鎖斬月とフェイトのデバイスの鎌は受け止められた。
「チィッ!」
「クッ……」
「悲しき者よ……」
すると闇の書の胸部に黒い魔力が集まる。
――この感じ……マジでか…
【虚閃です!!】
「分かってる!!」
オレは左手でフェイトの首根っこをひっつかみ一刻も早く闇の書から距離を取ろうと離れた。だが……
「……滅ぼせ…黒虚閃(セロ・オスキュラス)」
ブゥン…
黒い閃光がオレ達目掛けて飛んでくる。
「……クソッ!!バルディッシュ!!飛行魔法!!」
【了解】
フェイトの足に黄色の羽が生えた。
「ちょっ……!何してるの悠牙!!」
フェイトの言葉を無視して離れた所に放り投げる。
「キャッ!!」
投げた後直ぐにオレは虚の仮面を出す。
黒い閃光がオレを飲み込む。虚化で耐えられる……そう考えたオレが甘かったのかもしれない。
パキン!!
オレの虚の仮面は粉々に砕け散り、黒虚閃によって死覇装は右腕と下半身を残して破れ落ちた。
攻撃を受けたオレはそのまま下に落ちる。
「く………そ…ッ…」
落ちながらオレはなんとか体制を立て直し、霊子で構成した床に立つ。
「はっ……はっ……ハァ……ゲホッ!……」
黒虚閃により体は傷だらけで、体中から血が吹き出している。
「はぁぁ!!」
フェイトが闇の書に斬りかかっているのが見えた。
「お前も……私の中で眠るがいい……」
「えっ………」
――……やべぇな、ありゃあ……
「フェイト!!」
オレはありったけの力を足に入れてフェイトの所まで飛ぶ。
フェイトを押しのけるとオレの体が徐々に光になって吸収される。
「悠牙ァ!!」
フェイトの呼ぶ声を聞きながらオレの意識はブラックアウトした。