Two heads are better than one (三人寄れば文殊の知恵)
~???~
「うっ……イテテテ………ここは?」
周りを見渡すと辺りは真っ白で、何も無かった。
とりあえずオレは自分の装備を確認する。
服装は先ほど闇の書に撃たれた黒虚閃によって破られた卍解の死覇装と天鎖斬月のみ。
そして最後に記憶に残っているのはフェイトを庇い、闇の書によって吸収された事だ。
「誰も……いない、か……」
ペタッ…ペタッ…と裸足で一歩ずつ確かめながら歩く。
ボロボロになった草履と足袋は邪魔になったため捨ててきた。
しばらく歩くと誰か人が倒れていた。目を凝らして見ると、その人は見覚えのある人だった
「あれは……はやて!」
瞬歩を使いはやての所まで一瞬で移動する。そしてはやての肩を掴んで揺する。
「はやて!しっかりしろ!はやて!!」
するとはやてはゆっくりと目を開けた。
「うっ……悠牙君…か…」
はやてが目を覚まして落ち着いた頃、闇の書は本当の名前ではなく、正しくは『夜天の書』が本当の名前だという事を聞いた。そして夜天の書は寂しそうにしていた事も聞いた。
「そうだったのか……」
「せや……」
はやてが黙りこくってしまい辺りは静かになった。オレは一番気になっている事を尋ねる。
「夜天の書の事……許せるか?」
「当たり前や!あの子はウチの家族なんや……シグナム達と同じなんや!!」
すぐに返ってきた回答にオレは満足した。
……なんとも偉そうな言い方だが、はやてならこう答えるという確信が心のどこかにあったのかもしれない。それと同じ答えが出たため、嬉しかったんだと思う。
すると背後に巨大な魔力を感じた。
「てめえは……」
「夜天の書……」
後ろを振り向くとそこには銀髪の奴が立っていた。
「ほう……我が主と会う事が出来るとは……」
褒めてんのか貶してんのかよく分からない言い方をする銀髪。
だが、以前の様にイライラしなかった。
「なぁ夜天の書…」
「!? そうか…我が主から名前を聞いたか……何だ?」
「……お前、どう思う?」
「……どういう意味だ?」
怪訝な顔で聞き返してくる夜天の書。意味が分からないのも当たり前だな……
「だからつまり……ホントにお前ははやての道具に過ぎないとか思ってんのか?」
「!?……当たり前だ。私は魔導書、道具にすぎない」
少し悲しそうな顔をして言う。しかしそれは、自分自身に言い聞かせているかの様にも見えた。
「……最初からそうは思って無かったんだろ?」
「!!?」
夜天の書の目が見開き、そしてオレを睨む。
「黙れ!!お前に……お前に何が分かる!!」
「分かるさ。少なくとも、お前がはやてを慕ってる事ぐらい」
「……!?」
「ウチを……慕ってる……?」
はやては立てない足を庇い、腕だけの力で必死にオレの死覇装にしがみつく。オレははやてを抱えて夜天の書と同じ位の目線にしてやる。
「はやては確かに愛する者を奪ったこの世界を恨んでるかもしれない、憎んでるかもしれない……」
オレは抱いているはやてをしっかり抱えてから続ける。
「……けど…コイツにはシグナム達っていう家族が出来た!なのははフェイト、バニングスに月村、西園寺っていう友達が出来た!それを見てお前に抱かれた感情は喜びより憎しみが強かったんじゃないのか!!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェ!!!!」
「黙るかよ、お前が自分の気持ちに正直になるまでな!!」
息を切らしながらオレを睨む夜天の書。だがその目にはさっきほどの威圧感は無く、弱々しく、そして涙に濡れた目だった。
「お前に……お前に何が分かるッ!!お前の様な低能な人間共に何が分かるッ!!」
「その低能な人間に心情を悟られたお前はなんなんだ?」
嘲笑うかの様に夜天の書に言う。
夜天の書はギリッと歯軋りをしたかと思うとものすごいスピードで向かってきた。
オレははやてを庇う様に天鎖斬月で夜天の書を止める。
「悠牙…君……?」
「大丈夫だ、心配すんな」
オレは心配するはやてに笑いかける。
そして天鎖斬月で受け止めたまま夜天の書に言う。
「言えよ……自分はどうしたいんだ…」
「!……私は……」
一瞬、相手の力が弱くなった
それを見計らい夜天の書との距離を離す。
ザザザザァ!!!
「……私とて、主と離れたくない…!だが…私がいると……」
「……はやてがダメなら、オレでいい」
「!!?」
夜天の書は驚いた顔でオレを見る。同じくはやてもオレを見る。
「なんかはやてと一緒にいられない原因があんなら、オレと来いよ。それなら間接的ではあるがはやてと一緒にいられるぜ」
そう言って笑うと夜天の書は下を向いて俯いた。
「……本当に……いいのか……?」
「あァ、お前の全て、受け入れてやらァ!!」
「………………」
夜天の書は小さく肩を震わしている。
「それではもう一度聞くぞ。 一緒にいたいか? 離れたいか?」
そう言うと夜天の書は俯いていた顔を上げた。その目からは本物の、自分自身の涙が流れていた。
「一緒にいたい……主と家族に……なりたい……」
オレはそれを聞いてから言い返した。
「ヘッ!お前らもう家族だろ!!」
「………そうだったな…」
するとはやてがオレの死覇装を引っ張る。
「……話すか?」
「……うん……お願いや…」
オレははやてを夜天の書の所まで連れて行った。夜天の書の前にしゃがむとはやては彼女に抱き付く。
「我が…主……」
「ウチは…怒ってないよ……だけど悠牙君と外の人達に後でちゃんと一緒に謝ろうな……『リィンフォース』……」
――……え?本名リィンフォースなの!?夜天の書じゃなくて!?
「はい……分かりました」
「よし!ええ子や!!」
「仲直りしたのはいいが、どうやってここから出る?」
「うーん……いっそのこと中から壊したらええんちゃう?」
「………よし、やってみっか」
そう言うとオレは残り少ない霊力で虚化を行う。リィンフォースは今までの戦いで見ているため大丈夫。だが、はやては初めて目の前でやるため、少し不安だったが……
「なんやそれ!メッチャカッコえーやん!!」
……心配は無かったようだ
気を取り直してオレは真っ直ぐに技を放つ。
「――月牙天衝!!!」
シーン………
「ダメだな」
「みたいやね」
「………」
オレとはやては完全に開き直っている。リィンフォースはやっちゃった感全開のオーラを出していた。
黒い月牙はどこにもぶつかる事もなく遠くの場所に見えなくなるまで飛んでいって、やがて消えた。
――こりゃあ外にいるなのは達に出してもらう必要があるかもな……
「はやて、外に念話やら通信できるか?仮にもお前管理人だろ?」
「仮にもって……分からへんけどやってみるわ」
そう言ってはやては目を瞑る
「外にいる方聞こえますか!」
*************
三人称side
こちらは闇の書――もとい、夜天の書との戦場。
「…ゼロ距離からのエクセリオンバスターの直撃……これでダメなら…」
「無茶し過ぎだよなのは!」
「っ!……でも……」
なのはは先ほど、夜天の書に近付く事に成功し、近距離でピンク色の砲撃魔法を撃った。
しかし、近距離で撃つという事は自分にも被害が及ぶのは衆知の沙汰。そのせいでなのはのバリアジャケットは所々破れていた。
「頑張ろう、なのは」
「うん……もっと頑張らないとね…フェイトちゃん」
「うん……」
2人は上を見上げる。すると無傷の闇の書様子がおかしい事に気付く。
『外にいる方聞こえますか!』
「この声……」
フェイトがボソッと呟く。
『私はそこにいるこの保護者の八神はやてです!』
「はやてちゃん!」
「はやて!」
2人は思わず叫ぶ。
『その声はなのはちゃん!フェイトちゃん!』
「うん、理由があってその子と戦ってたの」
『ごめんな…なのはちゃん…お願いやその子を止めてくれへんか!』
「それってどういう…」
『その子がいると管理者権限が使えへん……だからお願いや!』
「でも…どうやって…」
唐突に『止めてくれ』と言われどうしていいか分からなくなるなのは。
その時はやての声が違う人に変わる。
『何迷ってんだ!!いつものお前らしくねえじゃんかよ!!』
「その声……!」
「悠牙!!」
なのはとフェイトが驚く。
「無事だったの!?」
『あァ、夜天の書との戦いでの傷はあるが無事っちゃー無事だ』
「…良かった……ホントに……良かった………」
フェイトはギュッと肩を両手で抱いて涙を流していた。
『心配かけて悪かった。けど今はオレ達の脱出兼破壊が先だ!!』
「なにそれ?」
なのはが聞き返す。
『どうやら中から脱出する方法は無いらしい……だから外からの攻撃でコイツを壊し、その内にオレ達が脱出する……しかなさそうだ。それには火力が大きい奴――なのはが適任って訳だ』
……それ、敵の前で言う?
それとは関係なく、なのはは黙る。
自分の砲撃魔法で悠牙達を傷つけないか心配なのである。それを察したかの様に悠牙が続ける。
『大丈夫!どんな事が起こってもはやては必ず守るし、オレは絶対死にやしなーいよ!だからお前はいつも通りやればいいんだ!!』
「悠牙君………分かった……絶対…帰ってきてね…」
『分かってる』
するとなのははレイジングハートを構え、夜天の書に照準を合わせる。
それを邪魔しようと魔力弾を放つ夜天の書。
だが黄色い光がそれを邪魔する。
「邪魔は……させない……」
その時なのはに強力な魔力弾が飛んでくる。フェイトは防ごうと飛んでいくが、途中、動けなくなった。
夜天の書がフェイトにバインドを掛けていたのだ。
「くっ……!」
なんとか抜け出そうとするがびくともしない。そうこうしている内に魔力弾がなのはに近付いていく。
「なのは!!」
魔力弾がなのはに襲い掛かろうとした時、フェイトの目の前を桜の花弁が舞っていた。
「卍解……散れ 千本桜景厳」
桜の花弁の壁が魔力弾を易々と防いだ。
すると黒い着物を着た女性がフェイトのバインドを解いた。
「……お待たせ…フェイトちゃん」
「…由樹……」
なのはを守ったのはアースラからの援軍である由樹、アルフ、ユーノが戻ってきたのだった。
「事情は全部聞いてた……なのはちゃん!全力全開で撃っちゃえ!!」
「はい!!」
するとなのはのデバイス、レイジングハートの先に集結していた魔力の充填が完了した。
「エクセリオン・バスター、ブレイクシュート!!!」
なのはが夜天の書に向かって砲撃を放つ。夜天の書は逃げようとするも身動き一つできない。体の所々から赤黒い霊力が漏れ出ている。
『逃がすかよ……』
夜天の書の内側では悠牙が残りの霊力を使って虚化をしていた。そのため内側からの禍々しい力のせいで動けなくなっていた。
身動きが出来なくなった夜天の書をピンク色の砲撃が襲い掛かり、包み込んだ。