「はあっ!!」
オレは斬月を奴の頭上から振り下ろしてみるが全て腕の鎧で受け止められ弾き飛ばされる。
「ぐッ!!………ハァ…ハァ…」
【大丈夫ですか!!】
「……あ、あァ。大丈夫だ」
……とは言ってみたものの、かなりヤバい状況に変わりはない。オレとは体つきや身長差が全く違い、圧倒的に不利だ。
そして気になる事がいくつかある。まず、相手からの攻撃はあるもののどれも手加減をしている。
そして二つ目は……
「どうした?それでは勝てないぞ!」
アイツ、さっきから挑発しかしていない。
「まだ力を隠しているのであれば出し惜しみはしない方が身のためだ!!」
これも挑発。魔力だかなんだか知らねーが、奪い方が分からない以上、攻略法は見つからない。
――乗ってみるか……
オレは斬月の柄に両手をかけて霊圧を極限まで上げる。
「――卍……解」
赤黒い霊圧が解放されて辺り一帯を包む。攻撃に移ろうとした次の瞬間、
「っ!!?」
オレの胸の辺りから人間の腕が出てきた。
「う……あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「貴様の力……貰う!!」
なんか……分かんねーけど……力が抜けていく…………っざっけんなぁぁ!!
「ウォラァァァ!!」
天鎖斬月の柄で生えている腕を思い切り叩く。パキン!という音をたてて折れ、砕け散った。
「――月牙……天衝!!!!」
「な……何……だと…!!?」
オレが放った月牙は上手い具合に直撃した。
赤黒い霊圧と共に爆煙があがる。すると男は煙の中から出て来る。
「バカな!!魔力が……蒐集できない……だと…!」
「だから何度も言わすな。魔力じゃなくて霊圧な」
「!!」
オレは煙によって姿が見えなくなった事を良いことに、相手の男が出て来るのを待っていた。
「お前らの目的はなんだ。魔力を集めて何をするつもりだ?」
「貴様には関係の無い事だ」
またそれかよ。いい加減聞き飽きたぜ、それ。
その時オレ達の頭上で赤い服の女が黄色いバインドを掛けられて捕まったいるのが見えた。その近くには見覚えの顔の少女がいた。
「フェイト!?……んだよ、フェイトも魔導師かよ…」
「捕まったか。仕方ない」
「何が?」
「ここは一時退却としよう。優先順位はあちらが上なのでな」
そう言い放って男は赤い服の奴の所に飛んで行った。
「あっ!テメェ、待ちやがれ!!」
オレも男を追って空を飛ぶ。
一方西園寺達は……
「ハァァ!」
「ぐっ!!」
私は今シグナムと戦っていて圧されている状況に陥った。刀と刀の鍔迫り合いを繰り返しては、戦闘経験豊富なシグナムに吹き飛ばされてしまう。
「――霜天に坐せ『氷輪丸』!」
大気中の水分で氷の龍を作り出して攻撃する。だが相手が炎を使うため、あっさりと溶けて無くなってしまう。
――なら使い易いコレで!!
「――卍解 散れ『千本桜景厳』」
地上に刀列が現れて散り、一瞬にして刃と化した桜の花弁はシグナムに斬りかかる。
――よし、フィニッシュよ!!
私は手掌によってシグナムを包み込むように動かす。千本桜はシグナムの周りを乱れ飛んで包み込む。
「吭景・千本桜景厳」
桜の刃が集まりピンク色の球体の形を模し、小さく圧縮されたかと思うと中心から光を発せられて小さな爆発が起きる。
「はっ……はっ……ぐっ!ここまで……とは……」
――どうだ!見たか!
思わずガッツポーズをとると、力が抜けて地面に膝をついてしまう。
あれ?……力が……入らない……
「どうやら……貴様の力には……相当なリスクが…あるらしいな……」
「う…うるさい……!!こんなのどうって事……」
口では強がりを言っているけど結構ギリギリ……ヤバい……負ける……
シグナムが私の近くまで飛んで来た。
「……ここで私が手を下してもいいが、私にも優先順位と言う物がある。だからこの勝負はお預けだ」
そう言い放つと私の横を通り抜けて行ってしまった。
「……っ……待……て…」
【無理をするな由樹。それよりもマズい事が起きた】
「何?……――えっ!?」
アンリから聞いた言葉に私は驚愕する。
「高町なのはと……フェイト・テスタロッサのデバイスが……損傷……!?」
****
オレは男を追いかけて空を飛んでいた。
「クソッ!どこまで……」
「悠牙君!」
飛んでいるオレの耳に入ったのは、緑色の魔法陣の中にいるなのはの声だった。
「なのは!」
近くに降り立ってなのはと合流する。見るとなのはのデバイス、レイジングハートはボロボロで今にも壊れそうである。
「大丈夫か!」
「うん……急いでみんなを助けなきゃ……」
「? 何をするつもりだ?」
「レイジングハートの砲撃で結界を破壊するの!」
そう言うとレイジングハートを結界に照準を合わせて構えた。
「バカ言うな!!レイジングハートがその状態で撃ったら……」
だがなのははオレの話などに耳を傾けず、すでに結界内にいる仲間と念話を繋げていた。
《フェイトちゃん、アルフさん、ユーノ君、私が結界を壊すからその間に転移魔法を!!》
《なのは…大丈夫なのかい…?》
《……大丈夫です》
そう言って念話を切り、砲撃体制に移るなのは。
「仕方ねぇな……」
オレは斬月に赤黒い霊圧を乗せて構えた。
「……悠牙君」
「その状態でお前のバカデカい魔力撃ったらレイジングハートがぶっ壊れちまう。……だから半分でいい。オレがその分をカバーして撃つから」
オレは霊圧を徐々に上げていった。
「――月牙……!!」
月牙を放とうとしたオレの目に信じられない光景が映る。
それは、オレがさっき大男との対戦中に出てきた腕だった。
「あぁ……ああ…」
なのはは呻き声をあげなから……倒れた。
「「「なのは!!」」」
「な…のは……?」
ドクン……
なのはが……
ドクン……
なのは……
ドクン……
なのは……
その時、プツンとオレの中で抑えていたのが途切れた。
ドォォォォン!!!
「ぉおおオオオォォああぁっ!!!!」
雄叫びをあげながら体中から青白い物と赤黒い霊圧が溢れ出す。二つの霊圧が合わさってオレの顔に張り付く。
――そう、この世界で初めて行った虚化(ホロウか)だった。
「全員……どけぇぇ!!」
「なんで……悠牙が…!?」
「あの子……一体何を……」
「早くしろ!!死にたいのか!!!」
「あのヤロー、何を言って……」
「!! 一旦ここから退くぞ!(なんなのだ、この威圧感は……!)」
――全員………死ぬなよ……
オレは溜まりに溜まった霊圧を解き放つ。
「――月牙ァ……天衝ォォ!!!!」
赤黒い霊圧はここら一帯の空を月が見えなくなるほど埋め尽くし、結界は粉々に砕け散る。赤い服とピンク髪はどうやら逃げ切ったようだ。
「な…なんだよ……今の…」
「分からぬ……だが今のは……人間が放てる技では無い……」
虚化月牙を撃った後、完全に息が上がっていた。
すると
パキン……
オレの虚の仮面が音をたてて割れた。それを始めに卍解ではなくなりいつもの着物になる。オレは両膝をついたと思うとそのまま地上に落ちていった。
【悠牙!】
あぁ……ヤバいなぁ… 霊圧使いすぎた……足場も作れねぇ……
眩む視界に1人の女――西園寺が近寄って来るのが見えた。
――西園寺……無事だったか……
自分が危機的状況に陥っているのに、仲間が無事でついつい微笑んでしまってからオレの意識は飛んだ。
********
三人称side&fromアースラ
先程戦闘を行っていた人達は全員アースラに転送されて束の間の休息を取っていた。
だが、由樹とフェイトはなのはと悠牙の心配をしていた。なのはは原因不明の腕が出現し、いきなり倒れた。悠牙はなのはがやられた事により怒りが爆発して、虚化月牙を放った後、地上に落ちていった。
原因がなんだか分かっていないため対応の仕方が分かっていない。
しばらくするとなのはと悠牙を看ていたエイミィが部屋から出て来た。
「「「なのはは!?」」」
「黒木君は!?」
ユーノ、アルフ、フェイト、由樹がエイミィに詰め寄る。
「落ち着け。まず状況報告だエイミィ」
「分かったわ」
エイミィによると、なのはのリンカーコアが少しに減っており、体に異常は無いがしばらくの間は魔法を使う事は出来ないらしい。
「悠牙君の方だけど、ちょっと魔力の質が違って原因はちゃんとは分からなかったの」
でも、と付け足すと
「考えられる理由は、なのはちゃんが倒れた事で何らかのリミッターが外れて魔力の急激な上昇に体がついて行けなかったたもの疲労困憊だと思う」
と長い長い説明が終わった。
「どちらも回復は早いからもう大丈夫だよ」
「……だ、そうだ。誰か会いに行く奴、挙手!」
「「「「はい!!」」」」
4人が手を挙げた。
「ハイ、残念ながら面会は2人までだからジャンケンだ」
『そういうの早く言って!!?』
息ピッタリでクロノにツッコミを入れる4人。
結局ジャンケンした結果、面会できるのは由樹とフェイトだった。
~悠牙side~
「…っ
【どうやら“時空管理局”と言う組織の船艦らしいですよ】
枕元にある小さな机の様な所に花瓶に刺さっている花とリング状態のルナが置いてあった。
【まったく、何の前触れもなく霊圧が急激に上がる虚化(ホロウか)を勝手に使って!一歩間違えたら私だけでなくアナタも死んでしまいます!!】
ルナの口調が珍しく怒っていた。それ相応の事をしたんだ、言い訳や反論もしない。
朝露に濡れた花弁から水が滴り落ちてルナに当たる。それを見てなんだか急にやり切れない気持ちになった。
「ゴメン…ルナ……悪かった」
オレも久しぶりに本気で謝る。ホントに久しぶりだ。今までにも謝った事はもちろんあるが、心のどこかではなんとも思っていなかった。だが今回は違った。心の奥底から、謝罪の念が溢れ出てくる。
【いいですよ。アナタという主に従った以上、無茶するのはなんとなく分かっていましたから】
分かってたなら言うなっての。
そう言ってオレは
そんなやりとりをしながら隣のベッドを見る。そこにはオレが怒る原因を作り出した栗色の髪をした少女、なのはが気持ちよさそうに寝ていた。
「……なのはの容態は?」
【エイミィさんという方の話では、リンカーコアと呼ばれる魔法の核となる部分が小さくなっているとの事】
ルナの説明を聞きながらなのはのベッドの横に行ってそこにあったイスに腰掛ける。
【命に別状は無いため、すぐに復帰できます。と言っても魔法は使えませんけどね】
「でもまあ、働き過ぎなコイツにはいい薬だろ」
暴走体が出現する度にコイツはやって来る。何度も『来なくていい』と言っても必ず現れる。
――なのはには酷かもしれないが、今だけはゆっくり休めよ……
オレはなのはの手を握り、もう片方の手で彼女の頭を撫でる。
握った手は微弱ながらもギュッと握り返してくれた。頭を撫でた時には表情は少し柔らかくなり安心した様な顔になった。
――よかった……無事、とは言えないけど生きていてくれて……
オレはその小さく柔らかい手を二度と離さない事を誓った。
するとほんの少ししかめっ面になってからなのはがゆっくりと目を開ける。
「…っ……ぅうん……ほえ……?」
なんとも間抜けな声を出して起きた後、オレの顔と握られている手を見てからみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。
「ゆ、悠牙君!?」
「おはよ、なのは」
そんなに驚くなよ。そう言ってなのはの額を小突く。
なのはは小突かれた所をさすりながら悠牙を見る。
「どうした?」
そう言うとなのはは目から涙をこぼしながらゆっくり抱き付く。
「えっ、なのは?どうs「怖かった……」っ……」
オレの病院服をギュッと掴み、胸の所に顔をうずめる。
「悠牙君と……話せ…なくなると思うと……」
「なのは……」
オレの服が胸元から徐々に濡れていく。それは時に暖かく、冷たくも感じた。
そんななのはに出来たのは頭を撫でてやる事と、謝る事しかできなかった。
その後フェイトと西園寺が見舞いに来た。
なにやらなのはがサッパリとした顔になっていた顔を見てフェイト達は恨めしそうにオレを睨む。俗に言う嫉妬の目である。オレにはアイツらが嫉妬する理由が分からない。
そしてオレはフェイトに自分が魔導師だという事を話した。なのはに話した時と同様に話すと、なのはに話した時と同様に質問責めになった。
コイツら変なとこで息ピッタリだな……
そんなこんなで病み上がりの初仕事、フェイトの質問に答えて体力を大幅に使ってしまった今日この頃である。