~学校~
「ゆ~う~が~!!」
「オーッス」
今朝はラリアットではなくヘッドロックで対応。ドスンと鈍い音をたてて地面に崩れる優斗。その後、後ろから雅紀が歩いてくる。
「おはよ、悠牙」
「オッス、雅紀」
「タンマ悠牙!ギブギブギブギブギブ!!!」
騒がしい朝を迎えて何故か嬉しいと感じる。
――今朝もいつも通りだな…
オレ達はいつもの様に教室に入り色々な話題について話す。すると教室後ろのドアが開いてアイツがやって来た。
「おっはよ!黒木君!!」
「よう西園寺」
普通の挨拶をしたつもりだったんだが、どうやらちょっとヘマやらかしてしまったのか、周りから(優斗と雅紀抜いて)嫉妬の目で見られた。
どちらにしろ、オレはそんな事を気にしないためどうでもいいんだがな……
何故学校に来ているかと言うと、意外と回復の早いオレは西園寺の力試し(?)によってつけられた傷は擦り傷程度になっており、謎の犬耳男との戦いでは目立った外傷はなかった。そのため、今こうして学校に来れている訳で。
いつもと同じ、周りに愛想笑いを振り撒きこちらにやって来る。
《ねぇ黒木君、怪我大丈夫?》
《誰のせいだと思って!……まぁ対した事ねぇよ。治るのは早い方だし》
《そう…なんだ……ゴメンね》
《気にしてねぇよ。だからあんまり落ち込むな》
そう言って念話をすぐに切り、西園寺は隣の席に座った。
「なぁ、お前いつの間に西園寺さんと仲良くなってんだよ」
「知らね」
「ま、悠牙って天然のフラグメーカーだからしょうがないけどね」
「なんだそれ?」
そう言うと学校のチャイムが鳴りホームルームが始まった。そこからの記憶は一切残っていない。何故か分からないが疲れて寝てしまった。そしてオレが起きたのは昼休みが始まる10分前だ。また例により西園寺が授業のノートを書いていてくれた。
~昼休み~
「よ~し、飯でも食うか」
一つ大あくびをかいて伸びをしてから弁当をだす、と言っても朝は作る暇が無かったためコンビニで買ったパンだ。
コンビニのビニール袋からパンを取り出した丁度その時、教室のドアが大きな音をたてて開いた。それと同時にクラス全員がびくっとする。
『!!!』
「ここに黒木って奴いる!!」
「…アリサちゃん先輩の教室なんだから静かに開けようね」
「そ、そうだよ、悠牙君ならすぐに出てきてくれるだろうし…」
「アリサ……大胆……」
ドアの向こう側にいたのは外国人とのハーフの女の子とおしとやかそうな女の子。そしてなのはとフェイトがいた。
「なのは!フェイト!」
オレはアイツらの所までダッシュで向かった。
「どうしたお前ら?」
なるべくクラスの奴らに聞こえないように聞いた。するとなのはは少し恥ずかしそうに言った。
「悠牙君、一緒にお弁当食べよ!」
~屋上~
今オレは屋上にて昼食を食べている。一緒に食べているのは、なのはとフェイト、そして友達のバニングスと月村という子達もいた。そしてなのはが誘った西園寺も来ている。
追記だが、オレが屋上に行く時、優斗が「麗しの乙女達の楽園にDive!!」などと言ってこっそり(いやもうこっそりじゃないけど)ついて来ようとした。
案の定、なのはと西園寺に見つかり
「「ついて来たら……分かるよね……?」」
と、天使のような悪魔の笑顔的な、ミッドナイト・シャッフルになったためおとなしく雅紀と一緒に昼食を食べていた。
話は戻り……
オレ以外は全員弁当だったためそれに関係する話をしていた。だからといって羨ましいという感情は一切表れない。
オレはその話をパンを加えながら聞いていた。するとなのはがオレに急に話を振ってくる。
「悠牙君はお弁当作らないの?」
「普段は作るけど、昨日は特別忙しかったから今朝は作る気が起きなかった」
そう言ってまたパンをかじる。
『昨日は特別忙しかった』と言ってはいるが、実際は昨晩は人に害成す魔獣を片っ端から倒していたら、家帰ってきた時間はすでに日付が変わっていたからだ。そんな事を言える筈もない。
するとフェイトが驚いた様に言う。
「へぇ~悠牙もお弁当作るんだ。意外だね」
「何言ってやがる。一人暮らししてんだから料理ぐらい出来ないとマズイだろ」
当たり前の事を言うとそこにいた全員が感心して頷く。
するとなのはがボソッと呟く。
「いいなぁ……食べてみたい……」
希望はあるが半ば諦めが入っている声だ。
――なんではっきり言わないのかねぇ……
オレは食べ終わったパンのゴミをコンビニの袋入れて立ち上がる。
「分かったよ、今度の休みにお前んとこの喫茶店で作ってやる!それでいいな?」
やや投げやりに言い放つ。するとなのはは途端に明るくなって喜ぶ。
「ホントに!?やったー!!アリサちゃん達も来てね♪」
「当たり前じゃない!なに1人で食べる気になってんのよ!!」
そう言うとなのはの頬をつまんで上下左右に動かして、伸ばしたところでつまんだまま一気に離す。『ブルドック』という遊びその物だ。
なのははつままれた頬をさすりながら言う。
「あぅうう~…イタいよアリサちゃん!!」
「自分のせいでしょ!」
そう言ってバニングスまたなのはに襲い掛かる。その様子を見て月村とフェイト、更には西園寺までもがクスクス笑っている。
「フェイトと月村も来ていいからな。あ、後西園寺も」
「「うん(はい)!」」
「ちょっと!私はオマケか!!」
西園寺が言うとコイツを抜いた奴らから笑いが巻き起こる。
オレ達はそんな平和な日常の1コマを過ごしていた。
~その夜~
オレは家に帰って宿題をしていた。我ながら小学生の宿題を真面目に取り組んでいる事に呆れている。
【悠牙、クロノさんから通信です】
「クロノ?……あぁフェイトの兄貴だっけか?」
【はい。どうやらビックリする様な朗報らしいですよ】
「ビックリ…ねぇ……」
通信を繋ぎ、内容を聞くとオレは驚いた。
「何!?奴らを見つけた!?」
『そうだ。これからソイツらの居場所に行くが、今から来るか?』
「……ヘッ!行かない理由が見つからねぇな!!」
『フッ……そう来ないとな。場所は――……』
「――了解、今から行く!」
オレはルナをひっつかみ家を出た。
~フェイト達の家~
オレは家に入るとクロノに案内されてリビングに出る。そこには既になのはとフェイトと西園寺がいた。
「なんだ、お前ら来てたのか」
「うん」
「もちろんだよ」
「いてもたっても、ってやつかな」
なのはとフェイトと西園寺は完全に戦闘モードになっていた。
オレはそれを確認してからクロノに尋ねる。
「それでどこにいるんだ?」
「今からそこへ行くためにゲートを通る」
そう言うとクロノの言うゲートという物が現れる。
「ここを通ればすぐだ」
「了解。それより、なのはとフェイト、お前らデバイスは?」
そう言うと2人は自分のデバイスを出してオレに見せる。
「ちゃんと修理してもらったもん♪」
「抜かりなし!」
2人揃ってVサインをする。
「そ、そうか。じゃあ行くぜ」
オレ達は敵地に足を踏み入れた。
~某場所~
ゲートをくぐり抜け奴らの居場所に到着した。
「あそこか……」
上を見上げるとそこには赤い服を来た奴とピンク髪の奴。そして犬耳の大男と以前見たことがある金髪の女性がいた。
オレは無意識の内に体が小刻みに震える。武者震いというやつだ。
「シグナム……」
西園寺はピンク髪を見るなりバリアジャケットを展開する。
「……見つけた…!」
オレはバリアジャケットを展開して相手を見据える。
『なのはちゃん、フェイトちゃん!デバイスに新しい機能を追加したの。新しい名前を呼んであげて!』
「「はい!!」」
そう言うと2人はデバイスを持って自分のデバイスの名前を呼ぶ。
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
「「セットアップ!!」」
2人がそれぞれピンクと黄色の光に包まれる。その中にいる2人を見てオレは思わず目を背ける。
――セットアップするのに何故男の前でやる!!?
大抵バリアジャケットを展開するときは一旦自分の服は無くなる。そのため一瞬だけ裸になってしまう。
オレの場合は自分の霊力で見えなくするからいいんだが、他人の事となるとちょっと……
なのは達がバリアジャケットを着たのを確認してから2人を見る。
大きく変わった所は無いが、2人のデバイスの形が少し変わって、以前戦った奴らと同じ雰囲気がする。
「これって……」
『ベルガ式のデバイスを参考にカートリッジシステムを導入したのよ!』
エイミィが通信の向こう側で胸を張っているのが目に見える。
【言っておきますが私は…「カートリッジシステムは無いんだろ?」…はい】
――今のオレのこの状態でカートリッジシステムが搭載されたら……
そう考えただけでも背筋を悪寒が走る。
【おそらく原爆並の破壊力です】
「言わないで!!?」
オレの心を読むんじゃない!そして真面目に計算もするんじゃない!
「私には何か付いてないの?」
【私はあの時以降、由樹の手元から離れておらんぞ】
「そ、そう言えばそうだね……」
西園寺のデバイスにも新機能は無しか……ま、とにかく奴らを潰さなきゃな。
オレはなのは達と合流した。
そしてフェイトと西園寺を前にして言った。
「すまないが、今回はピンク髪はオレに譲ってくれ」
「えっ……」
「なんで!?」
フェイトと西園寺は驚いた。……ま、当たり前か。
「以前戦った事があるし、ちょっと聞きたい事もあるから」
そう言って有無を言わさずにオレはシグナムの所に向かった。
「黒木君……」
「悠牙……」
「よぉ、アンタ『シグナム』って言うんだな」
「そうだ。私は君の名を聞いていないがな」
――あ、いっけね。名前言ってなかったか。
「悪りぃ、忘れてた。オレの名前は黒木悠牙だ」
「黒木…悠牙…か。良い名前だな」
「そうか?初めて褒められたかもな。けど……」
オレは背負っていた斬月を構えた。そして霊圧を上昇させる。
「戦いじゃ、容赦はしねえぜ?」
「無論、こちらも同意見だ!」
そしてオレは斬月を握る力を強める。そして黒い霊圧が溢れ出てオレの体を包む。それを振り払ってシグナムを見据える。
「卍解…と言ったか?いつ見ても凄まじい魔……霊圧だな」
「お!初めて間違えない奴見つけた!」
そうおどけてみたがシグナムは真剣その物。それを見るとこちらとしてもそれ相応の対応をしなきゃな。
「行くぜ、シグナム」
「…来い!!」
オレ達を沈黙が包む。
次の瞬間
キィン!!
天鎖斬月とシグナムの剣がぶつかり、高い金属音が響いた。
第2回戦、開始……