遊戯王ARC-V~緋色の英雄~   作:《陽炎》

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遊代は不審者とデュエルをします。

しかし遊代は融合使い、LDSの人間ではない、他の世界から来た。これだけの要素があると待っているのは……



第9話 アカデミアを憎む者

レオ・コーポレーションからの通達を受けて遊代が駆け付けたのは周りに人が余り居ない所にある大きな倉庫、扉を開けた中の光景はLDSの講師マルコがエクシーズ使いのデュエリストに倒された光景だった。

 

「貴様もLDSか!?」

 

そしてその襲撃犯は駆け付けて来た遊代もLDSの一員だと思っているのか敵意を向けてくる。その気迫と凄みは明らかに自分も倒そうとしているという気持ちが伝わってきた。

 

『コイツが例の襲撃犯か?にしちゃあ……』

 

襲撃犯は榊遊矢に瓜二つの男の筈、しかし目の前の男は目をゴーグル、口元をスカーフで隠しているが身長は明らかに遊矢より頭1つ分以上は高い。とても瓜二つとは思えない。それに目撃者の証言によれば襲撃犯が使用したエクシーズモンスターはドラゴンの筈、しかし目の前にその姿を現しているのは明らかに鳥だ。つまりこの襲撃犯は昨日の襲撃犯とは別人の可能性が高い。

 

「ならば丁度いい!貴様も片付けてやる!」

 

昨日の襲撃犯ではないにしても、目の前の襲撃犯はそうとう気が立っているのか遊代も倒そうとデュエルディスクを構え、デュエルの意志を見せてくる。

 

「……やるしかねえか」

 

とてもマルコを担いで逃げられる状況でも無いし話し合いも通じるとは思えない。それに遊代も確認したい事がある。その方法としてはデュエルがうってつけだ。

 

「いいぜ!そのデュエル受けてやる!」

 

デュエルを受け入れると遊代はマルコを床に寝かせると、デュエルディスクを左腕に着けて、ディスク部分を展開する。これで双方準備は整った。

 

「「デュエル!」」

 

斯くして遊代と襲撃犯のデュエルがスタートする。

 

「先行は貰った!オレは手札から魔法カードEーエマージェンシーコールを発動!このカードはデッキから『E•HERO』を手札に加える、オレはブレイズマンを手札に」

 

遊代の先行から始まると、遊代は魔法カードでデッキからブレイズマンを手札へと加え、準備を整えていく。

 

「オレはE•HERO ブレイズマンを召喚、ブレイズマンの効果発動。デッキからE•HERO オーシャンを墓地へ送り、ターンの終わりまでブレイズマンの攻撃力・守備力・属性は墓地へ送ったオーシャンと同じになる」

 

遊代はブレイズマンを召喚すると、融合を加える効果ではなく、デッキから『HERO』を墓地へ送り名前と効果以外をコピーする効果を発動した。1ターンにどちらか1つしか使用できないこの効果、敢えて融合を手札に加えずにオーシャンを墓地へ送ったのにはちゃんと理由がある。

 

「そして、オレは魔法カード融合を発動!」

 

「っ……!」

 

そう。既に初手の5枚の手札に融合が合ったのだ。融合素材となるモンスターを揃えるとすぐさま遊代は融合召喚を決めにかかる。その瞬間、隠された襲撃犯の顔が険しくなるがゴーグルとスカーフに隠されたそれを遊代が知りようもない。

 

「手札のE•HERO ボルテックと水属性となったブレイズマンを融合!激しき稲妻の英雄と、沸き立つ大海が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!全てを凍らす絶対零度で、この世の悪を打ち砕け!融合召喚!現れろ、E•HERO アブソルートzero!」

 

『HERO』であるボルテックと水属性となったブレイズマンを融合素材に現れたのは全てを凍り付かせる絶対零度の名を持つ氷の英雄、アブソルートzero。操る凍気は全てを凍らせ粉々に砕く。

 

「更に魔法カード、ミラクル・フュージョンを発動!墓地のブレイズマンとボルテックを除外して融合召喚する!灼熱の炎の英雄と、激しき稲妻が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!眩き輝き解き放ち、全ての悪を滅殺せよ!融合召喚!現れろ !E•HERO The シャイニング!」

 

ミラクル・フュージョンを発動して2体目の融合モンスター The シャイニングを融合召喚。融合とミラクル・フュージョン、そしてボルテック。この3枚にEーエマージェンシーコール、この手札なら2体の融合召喚を狙える、そこで遊代はブレイズマンをサーチしその効果でオーシャンを墓地へ、属性をコピーしzeroの融合素材にし、墓地へ送られたブレイズマンとボルテックを除外しThe シャイニングを融合召喚。

 

「The シャイニングの攻撃力は除外されている『EーHERO』1体につき300アップする。除外されているのはミラクル・フュージョンで除外したブレイズマンとボルテック、つまり攻撃力は600アップして3200!」

 

そして除外融合なのでThe シャイニングの攻撃力強化効果とも噛み合う。シャドー・ミストを手札に加え融合素材にしたりブレイズマンの効果で墓地へ送るなりすればその効果でデッキから『HERO』を加えられるが、それだとエスクリダオが融合召喚できるが変わりにzeroかThe シャイニングのどちらかが出せない。ミラクル・フュージョンはフィールド・墓地のモンスターを除外し融合召喚を行う為エスクリダオの効果と相性が良くない。だから今回は見送り、氷と光の英雄2体を並べる事にした。

 

「……」

 

一方、相手の襲撃犯は2連続で融合召喚を決めた遊代を、そして呼び出された2体の融合モンスターを見てギリっと歯軋りを立ててゴーグルに隠された瞳で睨みつけていた。そう、まるで仇を見つけ出したかの様に。

 

「オレはフュージョン・ギフトを発動!その効果でフィールドの融合モンスターの数だけドローする!そしてオレはカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

残る1枚の手札、フュージョン・ギフトを発動してフィールドの融合モンスター2体と同数、つまり2枚ドローした遊代はその中の1枚をセットしてターンを終えた。

 

「さあ、お前のターンだぜ」

 

「……俺のターン!」

 

襲撃犯のターンに移行し、襲撃犯はカードをドロー。そしてドローしたカードを確認するとすぐさま動きを見せてくる。

 

「オレはRRーバニシング・レイニアスを召喚!」

 

ドローしたカードを手札に加えて、襲撃犯が手札から召喚したのはレベル4、攻撃力1400のモンスター。その姿は鳥なのだがどこか機械じみていた。攻撃力では明らかに劣っているモンスターを攻撃表示で召喚してきた、何かあるに違いない。

 

「このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン、手札からレベル4以下の『RR』を特殊召喚できる!オレは手札からRRーミミクリー・レイニアスを特殊召喚!」

 

「レベル4のモンスターが2体……くるか?」

 

これで相手のフィールドにはレベル4のモンスターが2体揃っている。これでランク4のエクシーズ召喚が可能なのでエクシーズ召喚を行うのではないかと身構える。

 

「俺は永続魔法、RRーネストを発動!1ターンに1度、自分フィールドに『RR』が2体以上居る場合デッキ・墓地から『RR』1体を手札に加える事ができる。俺はデッキから2体目RRーミミクリー・レイニアスを手札に加える。そして、レベル4のバニシング・レイニアスとミミクリー・レイニアスでオーバーレイ」

 

そのままエクシーズ召喚を決めてくるかと思ったが、永続魔法の効果で2体目のミミクリー・レイニアスを手札に加えた後、遊代の予想通りエクシーズ召喚を行う。

 

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4、RRーフォース・ストリクス!」

 

現れたのは機械じみたフクロウのモンスター、フォース・ストリクス。ストリクスとはミミズク以外のフクロウの種類を指す。

 

『あのモンスターじゃない……?』

 

先程遊代が目にしたエクシーズモンスターはこの様なフクロウの姿はしていない。もっと勇猛な、強さを秘めた鳥だ。

 

「フォース・ストリクスの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから2体目のバニシング・レイニアスを手札に」

 

襲撃犯が此処まで使って来たカードは全て『RR(レイド・ラプターズ)』、そしてフォース・ストリクスの効果は指定された鳥獣族1体をオーバーレイユニットを使ってデッキから加える効果。ストリクスはフクロウ、レイニアスはモズ科の鳥類、ラプターズは猛禽類の意味。そしてレイドは襲撃と言う意味で繋げれば襲撃する猛禽類、襲撃犯が使うには相応しいカテゴリーと言える。

 

「俺は墓地のミミクリー・レイニアスの効果発動!このカードを除外し、デッキから『RR』カード1枚を手札に加える」

 

「なんて野郎だ……カードを3枚使ってんのに手札が減ってねー」

 

バニシング・レイニアスを召喚、ミミクリー・レイニアスを特殊召喚、RRーネストを発動と合わせて3枚も使用したのにも関わらず、RRーネスト、フォース・ストリクス・ミミクリー・レイニアスの効果でモンスター2枚と罠1枚、使用した3枚をすぐさまリカバーしてしまった。

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

「オレのターン!」

 

フォース・ストリクスは守備表示でエクシーズ召喚しているので襲撃犯はカードを2枚伏せてバトルを行わず、そのままターンを終えた。

 

『次のターンにはまた2体のモンスターが並ぶ……』

 

襲撃犯の手札には補充した2体目のバニシングとミミクリー、2体のレイニアスがある。そしてその2体を並べればRRーネストの効果で更に仲間を加える。しかもフォース・ストリクスにはまだオーバーレイユニットが1つ残っている。このモンスターも『RR』を呼ぶ効果がある。

 

『何とかフォース・ストリクスだけでも破壊したいとこなんだけどな……』

 

手札にはモンスター除外カードはない。効果でフォース・ストリクスを消すのは不可能。ならば戦闘で破壊するしかないが、相手の場にはミミクリー・レイニアスの効果で加えた罠カードを含む2枚のリバースカード。罠があるのは分かり切っている。

 

「オレはモンスターを裏守備表示でセット、そしてE•HERO アブソルートzeroでフォース・ストリクスを攻撃!」

 

取り敢えずと言わんばかりに前のターンにフュージョン・ギフトでドローしていた内の1枚であるモンスターを裏守備表示でセットする。この世界ではモンスターを表側守備表示で召喚できない。壁モンスターをしするには裏守備表示で出すしかない。そして壁モンスターを出した遊代は罠があると分かっていながらアブソルートzeroで攻撃を仕掛ける。

 

「凍りつけ!Freezing at moment!」

 

全てを凍らせるzeroの凍気は敵を瞬間的に氷結させる。そして凍り付いたモンスターはzeroの一撃で瞬く間に粉々にされるのだ。

 

「俺はトラップカード、RRーレディネスを発動!このターン『RR』は戦闘では破壊されない!」

 

発動されたリバースカードでフォース・ストリクスは凍り付きもせず、zeroの一撃でも粉々にならなかった。そりゃそうだろうな。遊代は攻撃が通る等とは思っていない。これでは攻撃しても意味はないのでThe シャイニングで攻撃する必要もない。

 

「オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

そしてバトルフェイズを終えるとこのターンにドローしていたカードを魔法・罠ゾーンにセットして遊代はターンを終えた。結局リバースカードを1枚使わせただけに終わってしまったが、仕方がない。取り敢えず此方も罠は貼った。次のターンで巻き返すしかないと思考を切り替える。

 

「この程度か……」

 

「んだと?」

 

「そこに倒れている奴よりは少しはマシかと思えば……どいつもこいつも期待はずれだ」

 

「……言ってくれるじゃねーか」

 

自分ターンを終えると、襲撃犯からこの程度だの、期待はずれだの好き勝手言われて遊代は軽くムッときた。まだ3ターンで互いにノーダメージだというのにこの言われよう、理不尽と言わずしてなんと言おう。

 

「お前達のデュエルは実戦経験のなさが現れた哀れな程薄っぺらな物だ。そいつにも、貴様にも鉄の意志も鋼の強さも感じられない」

 

「そこまで言われる筋合いねーんだけど。大体お前の言うその実戦経験ってのは一体どういう物なのかね」

 

「ならば冥土の土産に見せてやろう。戦場で磨き上げてきた俺のデュエルを!俺のターン!」

 

実戦経験が無い、デュエルに鉄の意志も鋼の強さも感じられないなどボロクソに罵られたがそこまでカチンとはこない。寧ろ何を言っているのかと考えてしまう。しかしエクシーズ使い、実戦経験、戦場、これらの単語が襲撃犯の身元をより確実な物にしていく。

 

「オレは2体目のRRーバニシング・レイニアスを召喚!そしてRRーネストの効果でデッキから3体目のバニシング・レイニアスを手札に加え、更にフォース・ストリクスのオーバーレイユニットを1つ使い、デッキからRRーファジー・レイニアスを手札に加える」

 

前のターン手札に加えたバニシング・レイニアスを召喚すると、フィールドに2体の『RR』が揃った事でRRーネストの効果で3体目のバニシング・レイニアスを、フォース・ストリクスの効果でファジー・レイニアスと2体の『RR』を手札に加える。

 

「そしてバニシング・レイニアスが召喚・特殊召喚に成功した事で、手札から2体目のミミクリー・レイニアスを特殊召喚!更にファジー・レイニアスは俺のフィールドにバニシング・レイニアスが居る時、特殊召喚できる!」

 

「あっという間にレベル4のモンスターが3体?なんて展開力だ……」

 

遊代の『HERO』デッキは融合モンスターの展開には特化しているが下級モンスターの展開にはそこまで特化していない。しかし相手の襲撃犯は瞬く間にレベル4のモンスターを3体揃えて来た。前のターンから存在するフォース・ストリクスを合わせれば4体も存在する。同じレベルのモンスターをフィールドに揃える必要があるエクシーズ召喚だからこそ、この展開力を誇るのだろうと遊代は理解しその凄まじさを感じ取っていた。

 

「フォース・ストリクスは俺の場のこのカード以外の鳥獣族1体に付き攻撃力・守備力が500アップする!俺の場にはバニシング、ミミクリー、ファジー、3体のレイニアスが居る」

 

「てことは1500アップするから、攻撃力2000、守備力3500だと!?」

 

この守備力ではThe シャイニングでも戦闘破壊できない。仲間を呼び、仲間が増えれば己が強くなるとは厄介なモンスターである。

 

「けど、わざわざフォース・ストリクスを強化する為だけに3体もモンスターを出した訳じゃねーだろ?」

 

「当たり前だ!俺がこのモンスターを揃えたのは……忌々しいその融合モンスターを叩きのめす為だ!」

 

「……っ」

 

融合モンスターに此処まで敵意と憎悪を剥き出しにしてくるとは……この男、エクシーズ次元のデュエリストに間違いない。そしてそれはエクシーズ次元が融合次元のアカデミアに襲撃されたという事だ。

 

「魔法カード、RRーサンクチュアリーを発動!俺のフィールドに『RR』が3体以上存在する場合、デッキから2枚ドローする!」

 

フィールドには4体の『RR』が存在する。魔法カードにより展開したモンスターの分の手札を2枚補充した。そして襲撃犯は手札を増やすといよいよ攻めに転じる。

 

「そして俺はレベル4のバニシング・レイニアス、ミミクリー・レイニアス、ファジー・レイニアスの3体でオーバーレイ!」

 

「来るか!」

 

3体のモンスターを素材にエクシーズ召喚するモンスターがどんなモンスターなのか、遊代はこの状況だがワクワクしていた。

 

「雌伏のハヤブサよ、逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼、翻せ!」

 

3体のモズが光となり渦へと吸い込まれていく。そして新たに現れた機会じみた一羽の鳥が翼を変化させその姿を現していく。

 

「エクシーズ召喚!現れろっ!ランク4!RRーライズ・ファルコン!」

 

「こ、こいつは……!」

 

フィールドに現れたのは一羽のハヤブサ。この倉庫に突入した時に目の当たりにした襲撃犯のエクシーズモンスターである。

 

「攻撃力100……?」

 

3体のモンスターを使ってエクシーズ召喚したモンスターにしては余りに貧弱な攻撃力だ。そのモンスターを攻撃表示で呼び出したには何か狙いがあるに違いない。遊代の本能がそう警告を鳴らす。

 

「ライズ・ファルコンの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分、自らの攻撃力を上げる!」

 

「なにっ!?」

 

「ライズ・ファルコンの攻撃力はE•HERO The シャイニングの攻撃力分、3200アップする!」

 

ライズ・ファルコンの攻撃力は貧弱だが相手の特殊召喚されたモンスター1体を対象にその攻撃力分ライズ・ファルコンの攻撃力が上がる。ライズとは昇る、増大するという意味の他に反乱、暴動という意味もある。

 

「そして墓地へ送られたファジー・レイニアスの効果、このカードが墓地へ送られた場合、デッキからファジー・レイニアスを手札に加える」

 

「またデッキからカードを……」

 

自分もシャドー・ミスト、エアーマン、ブレイズマン、Eーエマージェンシーコール等の特定のカードをデッキから手札に加えるカードは幾つか採用しているが相手はそれを上回っている。4ターンの間で7枚のカードをデッキから手札に加えている。

 

「更に魔法カード、フォースを発動!The シャイニングの攻撃力はターン終了まで半分となり、その数値分、ライズ・ファルコンの攻撃力をアップする!」

 

「攻撃力4900……!」

 

自分が使うガイアの効果と同じ効果を持つ魔法カード、フォースによりThe シャイニングの攻撃力は半分の1600にダウン。しかしライズ・ファルコンは自身の効果でThe シャイニングの攻撃力に加え、フォースの効果で更に1600アップしており、その差3300。これを食らえば一溜まりも無い。

 

「そしてライズ・ファルコンのもう1つの効果、このモンスターは相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てに1度ずつ攻撃できる!」

 

「なんだと!?」

 

特殊召喚されたモンスターの攻撃力を自らに加えてその力で特殊召喚されたモンスターを殲滅する。雌伏のハヤブサとはよく言った物だ。雌伏には実力を養いながら活躍の機会を待つという意味もある。召喚時の言葉通り力を磨き上げ逆境を覆し、反逆の翼を翻している。そしてこの効果は特殊召喚でのみフィールドに現れる融合モンスターには相性抜群と言える。

 

「バトルだ!行け!RRーライズ・ファルコン、全ての敵を殲滅せよ!ブレイブクロー・レヴォリューション!」

 

ライズ・ファルコンが機械仕掛けの翼を広げ、全身に炎を纏って遊代のフィールドのThe シャイニングとアブソルートzero、2体の融合『E•HERO』を殲滅せんと突っ込んでくる。このままでは攻撃力1600のThe シャイニングと攻撃力2500のアブソルートzeroは倒され、合計5700のダメージを受けて敗れる。

 

「くっ、トラップ発動!ガード・ブロック!The シャイニングとの戦闘で発生するダメージは0となり、1枚ドロー!更にThe シャイニングがフィールドから墓地へ送られた事で効果発動、除外されているブレイズマンとボルテックの2体を手札に加える!」

 

しかしThe シャイニングへの攻撃時に先行1ターン目に伏せていたガード・ブロックを発動しダメージを0にして1枚ドロー、そしてThe シャイニングの効果でミラクル・フュージョンで除外したブレイズマンとボルテック、2体の『E•HERO』を回収した。

 

「だが貴様のフィールドにはまだモンスターが残っている!やれ、ライズ・ファルコン!」

 

そう。特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できるライズ・ファルコンの攻撃はまだアブソルートzeroに攻撃が行える。1回目の攻撃こそ何とか凌いだが今回は

防げない。

 

「ぐっ……ぐあぁぁ!」

 

獲物を狩る隼の爪が壁や床を切り裂きながらアブソルートzeroを捉え破壊、その差2400のダメージが遊代を襲い遊代を吹き飛ばす。この衝撃、痛み、本物だ。ソリッドビジョンではない。本当にモンスターが実体化している。

 

「くっ……やってくれたな。だけどこの瞬間アブソルートzeroの効果発動!zeroがフィールドを離れた時、相手モンスターを全て破壊する!」

 

アブソルートzeroにはこのカード以外の水属性モンスター1体につき攻撃力が500アップする効果の他にもう1つ効果がある。その効果こそ今発動した効果でありアブソルートzeroの真骨頂。フィールドを離れれば相手フィールドのモンスターも全て凍り付かせ道連れにする。絶対零度の名を持つ英雄は例えやられても敵を全滅させる。

 

「甘い!トラップカード、RRーバリケードを発動!このターン『RR』カードは破壊されない」

 

「なっ……」

 

しかし襲撃犯は伏せていた残り1枚のリバースカード、RRーバリケードを発動。この効果により襲撃犯のフィールドの『RR』カードはこのターン戦闘・効果では破壊されない。よってzeroが散り際に発動した絶対零度の凍気も難なく耐え抜いてしまった。

 

「先程倒したそいつと比べれば幾分マシな腕をしてはいるが、それでも温い!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド。この瞬間フォースの効果が切れ、ライズ・ファルコンの攻撃力は3300に下がる」

 

襲撃犯はカードを2枚伏せてターンを終える。何とかガード・ブロックで凌いだが、それでも2400のダメージを食らってしまった。しかも普通のソリッドビジョンではない実際の攻撃だ、衝撃も痛みは比べものにならない。寸前の所でzeroを実体化させて衝撃を減らしたがそれでも凄い物だった。だからこそ納得のいかない理由が沸いてくる。

 

「お前……こんなデュエルをあの人とやったのか?」

 

「なに?」

 

「モンスターを実体化させたデュエルで人を傷付けて、お前楽しいのかよ?」

 

自分はまだ防ぎようがあるからまだいい。しかし襲撃犯に倒されたマルコはそうはいかない。現に気絶し、普通のデュエルなら有り得ないダメージを負っている。それが遊代には許せないし、気に入らない。例えどんな理由があったとしても。

 

「楽しい?ふんっ、くだらん」

 

「んだと!」

 

「俺にとってデュエルは戦争だ!デュエルをする以上其処は戦場と同じ、楽しむ必要などない!」

 

「デュエルが戦争だぁ……!?」

 

遊代の意見に襲撃犯はデュエルは戦争であり、それを楽しむ等くだらないと一蹴する。それは遊代の世界ともこの世界とも明らかに異なる価値観。間違いないこの男はエクシーズ次元のデュエリストだ。

 

「……それがお前の、エクシーズ次元でのデュエルのスタンスなのかよ」

 

「ふっ、やはりLDSはエクシーズ次元を知っていたか。そこでノビている奴はしらばっくれていたがな」

「何勘違いしてんだ。オレはLDSの人間じゃない」

 

「なにっ?……っ!まさか貴様アカデミアか!?」

 

LDSの人間ではない。自分が把握している知識ではこの世界で融合・シンクロ・エクシーズを使えるのはLDSのみの筈。融合使い。LDSの人間ではないのに融合召喚を使うとするならエクシーズ次元の人間である襲撃犯が辿りついた答えは1つ。目の前の遊代は融合次元、アカデミアの人間である。その答えがすぐに浮かんだ。

 

「……先に言っとくぞ、オレは確かに別の世界から来た人間だけど融合次元の人間じゃねーよ」

 

「ふざけるな!融合召喚を使う別の次元の人間ならばアカデミアに違いない!」

 

「話を最後まで聞けよ!オレは」

 

「話ならばデュエルが終わった後に聞いてやる!貴様を倒し、アカデミアの情報を吐き出せた後、そこで這いつくばってる男諸共カードにしてくれる!」

 

「なっ?人間をカードにする……だと!?」

 

自分の話を聞く様子も見せず自分を倒すと宣告した襲撃犯の口から発せられた衝撃の一言が遊代を驚愕させる。

 

「ふざけんな!デュエルで負けた相手をカードにするだと?そんな真似許されると思ってんのかよ!?」

 

「ふざけるななど!?俺達の世界を襲撃し、俺の仲間やデュエリストのみならず、赤ん坊や年寄りといった無抵抗な多くの人間をカードとした貴様達アカデミアがそんな事を抜かす資格があるか!」

 

「なっ……!?」

 

その言葉を聞いて遊代は言葉を失った。自分の知らない世界のアカデミアとはいえ、他の世界への襲撃を目論んでいるだけでも許せなかったというのに。実際にエクシーズ次元を襲撃し多くの人間をカードにしたなど、絶句するしかない。言いようのない融合次元のアカデミアへの怒り、悲しみ、失望の念が込み上げる。

 

「あの日から俺は決めた!どれだけ奪われようが、どれだけ苦痛を味わおうが、アカデミアを殲滅し全てを奪い返すと!」

 

「……………」

 

その凄みは妄言、まやかし、その場の勢いで言っているのではない。計り知れない辛さ、憎しみ。大切な物を多く奪われた悲しみ、怒り。そしてどんな手段を用いてでも奪われた物を奪い返す確固たる覚悟が現れている。本人が口にしていた鉄の意志、鋼の強さとは正にこの事かも知れない。

 

「……お前の覚悟はよく分かったよ。融合次元を、アカデミアを憎むのは痛い程伝わった。けどなあ、その怒りや憎しみをこの世界にぶつけるな!」

 

例えどれだけの理由があれど、その感情を融合次元にぶつけるならまだしもこの世界の人間まで巻き込む暴走は見過ごせない。そして遊代には目の前の怒りと復讐心に駆られる襲撃犯が辛く悲しく見えて心が痛む。

「黙れっ!貴様のターンだ、さっさと進めろ!」

 

自分をアカデミアだと決め込んだ襲撃犯は最早此方の話を聞く様子など見せない。これでは自分が融合次元ではないアカデミアの生徒だと説明しても成り立たないだろう、寧ろ火に油を注ぐだけだ。

 

「くっ……!オレのターン!ドローっ!」

 

このデュエル負ける訳にはいかない。負けたら自分どころかマルコまでカードにされる。そんな事絶対にさせない。マルコの為にも、そして目の前の悲しき復讐者の為にも。

 

「オレは魔法石の採掘を発動!手札のブレイズマンとボルテックを捨てて、墓地からフュージョン・ギフトを回収。そしてカードを1枚セットして、モンスターを反転召喚する」

 

まずは襲撃犯のターンにガード・ブロックでドローした魔法石の採掘をThe シャイニングの効果で回収した2体のモンスターをコストに発動し、フュージョン・ギフトを墓地から回収。そしてカード1枚を伏せ、セットしておいたモンスターを裏側守備表示から表側攻撃表示に変更する。

 

「オレが反転召喚するのはメタモルポット!そしてメタモルポットが表になった事でリバース効果発動!互いに手札を全て捨てて、デッキから5枚ドローする」

 

反転召喚したメタモルポットは裏側守備表示から表側表示になった際に効果が発動するリバースモンスター。その効果は互いの手札を全て捨て去り新たに5枚のカードを引く強力な効果。遊代の手札はこのターンドローした1枚、対する襲撃犯はバニシング・レイニアス、ファジー・レイニアスを含む3枚。

 

「さあ、お前も手札を捨てて貰うぜ」

 

「ふんっ、貴様に言われるまでもない。ファジー・レイニアスが墓地へ送られた事で効果発動、デッキから3体目のファジー・レイニアスを手札に加える。」

 

お互いに手札を墓地へ捨てて新たにデッキから5枚ドロー。間接的に襲撃犯の手札はファジー・レイニアスの効果を含め3枚増やしたが、遊代は4枚増やした。しかも2体のモンスターも墓地へ送ったのは大きい、墓地へ送られた場合に効果を発動できるファジー・レイニアスは兎も角、3体目のバニシング・レイニアスはこれで墓地送り、しかもバニシング・レイニアスがいなければファジー・レイニアスは自身の効果で特殊召喚できない。

 

「オレは永続トラップ、リビングデッドの呼び声を発動し墓地からブレイズマンを特殊召喚!そしてブレイズマンが召喚・特殊召喚に成功した事でデッキから置換融合を手札に加える」

 

前の自分のターンで伏せていたリビングデッドの呼び声の効果で魔法石の採掘のコストとして墓地へと捨てられたブレイズマンを特殊召喚し、その効果で『融合』扱いの置換融合をデッキから加えた。メタモルポットによって捨てる手札を最小限に留めながら手札を増やす。

 

「そしてオレは今加えた置換融合を発動してフィールドのE•HERO ブレイズマンとメタモルポットを融合!灼熱の炎の英雄と、魔岩の壺が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!大地を揺るがす偉大な力で、如何なる敵をも薙ぎ倒せ!融合召喚!現れろ!E•HERO ガイア!」

 

メタモルポットは地属性、その地属性のモンスターが元素の英雄と融合する事で大地を揺るがす力を持つガイアが融合召喚されるのだ。

 

「さっきのお返しだ、E•HERO ガイアのモンスター効果発動!ライズ・ファルコンの攻撃力をターンの終わりまで半分奪い、それをガイアは吸収する!フォース・ドレイン!」

 

ガイアの効果は襲撃犯も使用した魔法カード、フォースと同じ効果。それをお返しとばかりにライズ・ファルコンの攻撃力を半分奪い、ガイア自身の力とする。

 

「攻撃力が上回ったならさっさと攻撃したらどうだ?」

 

これでガイアの攻撃力は3300の半分1650アップし3850。攻撃が通ればその差2200のダメージが通り、前のターンで受けたダメージと同等のダメージを与えられる。

 

「そう急かすなよ。お楽しみは、これからだぜ?」

 

「……なんだと?」

 

こんな負けられない劣勢での状況下ではあるが遊代はデュエルを楽しんでいる。それに自分のターンはまだまだ続く、このままガイアで攻撃だけでは終わらせない。そして勝ってみせる、遊代はそう決めて手を更に進め出す。

 

『あの言葉は……』

 

遊代の言葉を聞いて襲撃犯の脳裏に浮かんだのはまだ

平和だった頃に自分達の世界に現れた1人の男。その男がデュエルを行う度に言っていた2つの言葉がある。そのその中の1つが遊代が今口にした言葉に非常に似ていた。

 

『お楽しみは、これからだ!』

 

そう。それはある日突然エクシーズ次元にやって来た記憶を失っていたデュエリストの決め台詞であった。




今回は遊代と不審者とのデュエルの前半でした。尚あ後書きでは不審者と書いておりますが本編では襲撃犯と描写しています、流石に本編内で不審者扱いはアレですので。

そして遊代とばっちりを喰らうの巻。融合次元の人間ではないですが、融合使う上にアカデミアの生徒ではありますから尚更面倒くさい事に。それを説明しようとしてもスタンダードに来たばかりの不審者は怒り・憎しみ・殺意MAXのアカデミア滅ぼすモードですので遊代の話など聞いてもくれません。

そして最後の方で少し書かれたエクシーズ次元に現れた『お楽しみは、これからだ!』が決め台詞の記憶喪失のデュエリスト。何れ描写しますが、それはかなり先、シンクロ次元へ旅立つ前辺りでエクシーズ次元での彼の事を、そして物語の合間に少しずつ描写していこうと思います。

恐らくこのデュエルは次回で決着を迎えると思います。零児みたいにLP回復しまくりませんから、ではまた次回。
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