倉庫内で繰り広げられた融合使いの遊代とエクシーズ使いの襲撃犯のデュエル。遊代の戦略を悉く対処し、54000というダメージを与える所まで襲撃犯は遊代を追い詰めた。しかし遊代は最後の最後に手札からダメージ・リフレクターのモンスター効果を使い、戦闘ダメージを半分にし、襲撃犯にもダメージを与える事で辛くも引き分けに持ちこんだ。
「ぐはっ……!」
「がっ……!」
お互いに27000という桁違いの戦闘ダメージ、そしてその衝撃と爆発により勢いよく吹き飛ばされ壁に思い切り叩きつけられた遊代と襲撃犯は互いにそのその痛みと衝撃に顔を歪ませ、思いっ切り背中を叩きつけた事で肺の中の酸素が無理矢理に吐き出された。このデュエル、どちらも27000という大ダメージを喰らい両者共にLPは0、引き分けという形でデュエルは終わる。
「ぐっ!……がは……っ……いってぇー……」
そして重力により両者共に床へと落ちてまたしても叩きつける。引き分けには持ち込んだが今の遊代は実体化したダメージに加え爆発と衝撃、そして全身を打ちつけた痛みをこらえて何とか立ち上がるが、痛みの影響から立っているのが精一杯だ。辺り一面は爆発した際に生じた煙で何も見えず、焦げた匂いも充満して煙い。
「……ゅん!……こだ、隼!」
「だ、誰だ……?」
痛みに意識が傾く中で自分の声でなければ襲撃犯の声でもない声が耳に入る。それは
「……ート……!……ぜ、此処に……?」
襲撃犯がその声の持ち主に対して反応する。もし襲撃犯の名前が隼だとするならば、その名前を呼ぶこの声の持ち主は襲撃犯の仲間とみて間違いない。 そして自分が対峙した襲撃犯とは異なるエクシーズ使いにして、昨日LDSの生徒を襲った犯人である可能性が非常に高い。
「話は後だ!兎に角此処から離れるぞ!」
「なっ!逃がすか……!」
その声の主の発言から今すぐにでもこの場から立ち去ろうとしているのは明白。遊代はすぐさま止めに掛かる為に動こうとする。
「ぐっ……ってぇ……!」
しかし27000もの実体化したダメージ、爆発、その衝撃で壁に叩きつけられ床にまで落ちた遊代の体は当然痛みを訴えており動こうとするだけで痛みが彼方此方から走る。その上、爆発により生まれた煙で声はすれどもその姿が見えない。
『けど、出口は彼処しかねえ……!』
そう、出口は爆発により扉が吹っ飛んだ事で全開となっている場所のみ。幸い遊代が吹っ飛んだ所はその場所に近く、その辺りは煙を外に吐き出しているので何とか目視できる。
「魔法カード
そんな遊代の考えを遮るかの様に発せられた魔法カード発動の宣言。その声は襲撃犯の仲間の声。しかし魔法カードを発動してもデュエルは始まっていないし、何も起きていない。
「っ!しまっ……!」
今、遊代の横を『何かが飛んでいった』感覚が通り過ぎた。それに気付いた遊代はやられたと言わんばかりに思わず顔をしかめる。報告や目撃証言によれば襲撃犯の仲間もカードを実体化させていた。つまり襲撃犯の仲間は発動したカードで自分達の姿を見えなくしたのだ、追っ手に追われない為に。恐らく飛んでいった感覚は飛ぶことの出来るモンスターを実体化させてそれに乗って飛んでいったという事だろう。
「っ……!く、そ……!」
体の痛みが限界に近く、もう立っていられない。その場で壁に背中を預けると遊代はズルズルとゆっくり崩れ落ちる。誤解を解けぬまま融合次元の人間と思われ、挙げ句デュエルでも自分の繰り出す手を悉く打ち破られ、引き分けに持ち込むのが精一杯だった。
『デュエルで負けたらカードにする……か』
襲撃犯は自分を倒したらマルコもカードにすると言っていた。もし自分が駆けつけるのが少しでも遅れていたら、このデュエルに敗れていたら、マルコはカードにされていた。それを阻止できたのがせめてもの成果と言える。
『これが普通のデュエルなら、もっと楽しいのによ……』
緊迫した状況下でのデュエルだったが、襲撃犯との手に汗握るデュエルは確かに楽しかった。まだ見ぬエクシーズ召喚の可能性やそのタクティクスはあの様な状況下でも遊代は楽しいと思った。しかこ心は晴れない、他の次元を狙う融合次元のアカデミア。そしてそのアカデミアによって全てを奪われたエクシーズ次元、そんな陰謀や憎しみが渦巻くデュエルなければもっと楽しい筈なのに。遊代の心はこの倉庫に立ち込める灰色の煙の様に心がもやもやとしたままだった。
「現場の状況はどうなっている?」
遊代と襲撃犯のデュエルが引き分けとなり襲撃犯が逃走した直後、所要の為に会社を出ていた零児が急いでレオ・コーポレーションに戻りモニタールームへと駆け付けて状況を確認する。
「はい!G地区倉庫内にてマルコが何者かに襲われた後、駆け付けた緋紅遊代が襲撃犯と交戦。現場からの報告によるとマルコ、緋紅遊代の両名共に負傷している模様です」
「すぐに2人を病院へ運べ」
「了解!」
たった今現場から受けた報告を零児に報告すると今度は零児からの命により2人を病院に運ぶように現場に連絡する。
「今回の召喚反応は?」
「昨日と同じくエクシーズ召喚です。それも昨日の物と引けを取りません」
「そうか……」
マルコと遊代と交戦したのは昨日の襲撃犯と同じくエクシーズ召喚を使うデュエリスト。その話を聞いた零児と零児や中島と共にモニタールームに入ってきた赤いスーツを着た奇抜な女性が口を開いた。
「それでは零児さん、榊遊矢は今回の襲撃事件の犯人ではないと?」
「そう考えて間違いないでしょう、母様。彼とデュエルして思いましたが、現在の彼にはエクシーズ召喚を使うタクティクスはありません」
零児が母様と呼ぶこのハートの様な奇抜な髪型と赤いスーツを着る女性は
『榊遊矢が犯人でないと分かった今、決着が付かなかった事は幸いしたな』
結果は1勝1敗1引き分け、日美香は引き下がらず延長戦を要求。密かに遊勝塾に来ていた零児が遊勝塾で唯一勝った遊矢とデュエルする延長戦を行っている最中にマルコの襲撃事件が起きたのである。
「社長、緋紅遊代より報告がある模様です」
「……繋いでくれ」
「はいっ」
遊代から報告があると聞いた零児はその話を聞くために連絡回線を現場と繋ぐように命じた。
「社長さん、か。すまねえ……襲撃犯は取り逃した……」
「そうか……君の方こそ大丈夫か?」
「まあ、何とかな……人より頑丈なんでね……」
大丈夫とは言えないが人より頑丈な体なのか遊代は意識は保っている。マルコの方は気絶しているらしく担架で車へと運ばれている。
「今回の犯人だけど……榊遊矢と瓜二つとは思えねえ、使うモンスターもドラゴンじゃなくて鳥のモンスターだった。けど…… 」
「けど?」
「襲撃犯に仲間が居るのは間違いねえ……そいつがオレとデュエルした奴を連れて逃げやがった……」
「成る程……」
今回の襲撃事件と昨日の襲撃事件の少ない情報を合わせると現段階で襲撃犯は2名存在し、それぞれドラゴンと鳥獣族のエクシーズモンスターが切り札、そして片方が榊遊矢に瓜二つの可能性が大と言うこと。
「それと……社長さんやオレの推測通り、奴はエクシーズ次元の人間だ」
「……やはりそうか。これからマルコと共に君は病院へ運ぶ。今日はもう休んでくれ。詳しい話は後日聞く」
「……ああ、そうさせて貰うぜ……」
そのやり取りを最後に中継を切ると、遊代とマルコを車へと乗せて病院へと運ぶ。そして零児と日美香は今回の事件の事後処理を済ます為に各々仕事へと取り掛かりに向かった。
「まさか零児さんが既にペンデュラムを作り出していたとは……」
理事長室で日美香は書類を確認しながら今日のデュエルで零児がペンデュラム召喚を既に使っていた事に驚いた。日美香はLDSを拡大する為に今日まで海外のデュエル塾を買収する等の取引を行っており帰ってきたのは今日の昼前。そこで零児から新たな召喚方法ペンデュラムを聞かされ、LDSの生徒がそのペンデュラム召喚の始祖榊遊矢に怪我をさせられたという事を聞いた日美香は遊勝塾をLDSに取り込みペンデュラム召喚を我がスクールの物にして教えようと画策していた。
「しかし零児さんが既に使えるのであれば遊勝塾を我が傘下に置く必要はありませんね」
我が息子でありLDSを経営するレオ・コーポレーションの社長である零児がペンデュラムを使えるのであれば最早遊勝塾など不要。我々だけでペンデュラムを広めていけると遊勝塾も榊遊矢も度外視していた。
「それにしてもマルコの代わりはどうしましょうか……」
負傷したマルコに代わってジュニアユースの融合召喚コースの講師を立てなければならない。これに関しては明日は融合コースを休校にする等の処置も検討しなくては……最高の設備と最高のカリキュラムで学べるのがLDSの売りの1つなのだ。それに頭を悩ませながら日美香は今日まで貯まっていた目を通さねばならない書類を確認するのを再会した。
「社長、マルコと緋紅遊代、共に病院へと搬送されました」
「そうか」
一方零児は自社で制作しているペンデュラムモンスターの次なる段階へと計画を動かしていた。現在自分の使う『DD』のみがペンデュラムモンスターとして存在している。しかし今後は他のカテゴリーのペンデュラムも制作していくつもりてある。
「それにしても、まさかエクシーズ次元の人間がLDSの人間を襲うとは……」
「……………」
確かに本来ならば融合次元に襲撃されたエクシーズ次元のデュエリストが何故このスタンダードへやって来て我がLDSの人間を襲うのか謎、中島の疑問は最もだった。しかし零児には心当たりが1つある。それはLDSを運営するのはレオ・コーポレーション。そしてレオ・コーポレーションを築き上げたのは先代社長にして現在アカデミアのプロフェッサーとして君臨する赤馬零王、そして自分はその息子。自分を狙う可能性は有り得る。
「中島、開発部門に開発を急がせてくれ」
「はっ!今すぐ開発部門の尻を叩いてまいります!」
「頼んだぞ」
自身の使うペンデュラムモンスターの他にも融合・シンクロ・エクシーズも今後の戦いを増やしていく必要がある。しかしペンデュラムモンスターは多く作り出さねばならない。アクションデュエルとペンデュラムこの2つがスタンダード次元の精鋭達、ランサーズの切り札となりうる力なのだから。
「どうしてマルコ先生に会わせて貰えないのよ!マルコ先生だって私の顔を見れば喜ぶ筈なのに……」
LDSのロビーで光津真澄は憤っていた。彼女はLDS融合召喚コースの生徒、つまりマルコは彼女にとって恩師に当たる存在。そんなマルコが襲われ負傷したと消えて居ても立ってもいられず、面会を希望するも遮絶されてしまった。
「沢渡みたいに包帯ぐるぐる巻きになってみっともない姿になったから会いたくないんじゃないの?」
「マルコ先生をあんなド下手と一緒にするな!」
マルコは真澄にとって尊敬してやまない大切な恩師、沢渡という人間と一緒くたにされるのは彼女には我慢ならない。因みに沢渡とは昨日襲われたLDSの生徒である。
「にしても普通のデュエルで怪我するって……おい真澄!」
「何処に行くつもりだ!?」
「真相を確かめるに決まってるじゃない!」
真澄は今回の事件で何があったのか確かめて真相に辿り着こうと独断で行動を開始しLDSを後にする。
「おい、どうする北斗?」
「真澄1人じゃ突っ走って危ないだろ。追うぞ刃」
「だな!」
北斗と呼ばれる紫色のエリンギみたいな髪型をした少年と刃と呼ばれる侍と忍者を足して2で割った風貌の少年は共に真澄を追った。
「人手は多い方がいいだろ?」
「僕達が協力すれば百人力さ」
「刃、北斗……」
この2名は融合召喚コースの生徒ではないのにも関わらず自分に協力してくれるその事は真澄は嬉しかったが少し心配な点もあった。
「……今日の遊勝塾のデュエルで引き分けた人と負けた人が言っても説得力ないわよ?」
グサッ
「ぐふっ!」
「オイ真澄!そりゃねーだろ!負けた北斗と一緒にすんじゃねーよ!」
グサッ!
「がはぁ!」
そう。今日遊勝塾を賭けてLDS代表としてデュエルしたのは真澄を含めたこの3人のジュニアユースクラスの生徒である。融合召喚コースから真澄がデュエルを行い見事勝利を収めた。シンクロ召喚コースからは
「お、お前達、その言い草はないだろう!?」
「だって……なぁ?」
「負けたのは事実だし」
グサグサッ!
「はわばぁー!」
北斗の心に今日何度か解らない程言葉という武器が突き刺さった。もう心のライフポイントはとっくに0である。
「でも、ありがとう。北斗、刃」
「へっ。良いってことよ」
「……あ、ああ。さあ、行くぞ!」
しかし2人に感謝しているのは真澄の本心である。それは北斗も刃も分かっている。ただもう少し素直に感謝して欲しいと思いながら2人は真澄を追った。
遊代が襲撃犯と退治して一晩明け、舞網市は火曜日。平日である今日は皆学校なり仕事なりあるのだが異世界から飛ばされた遊代はそのどちらもない。そもそも自分の世界ならば本来はまだ春休みの最中だ。そんな遊代は平日の真っ昼間にベットの上で寝ころんでいた。
「イテテ……まだ痛むな」
まだ彼方此方痛む体を抑えながらベットから額や腕には包帯、頬には絆創膏、背中や足には湿布が張られて如何にも怪我人という出で立ちをしている。此処は零児から提供されたホテルではなく、舞網市の病院の入院病棟の一室だ。あの後すぐにLDSの関係者が駆け付けて負傷した遊代とマルコはそのまま病院送りとなりこうして入院している。診断の結果遊代は全身打撲+擦り傷や切り傷複数。数日は痛むがそれ以外で問題はなく3日もすれば退院できるとの事。
「……………」
零児が気を使ったのか個室を用意してもらっており、テレビに冷蔵庫、トイレもある。今も用を足しに立ち上がったのだが全身を打ちつけて1日もたっていないのでまだ動く度に痛む。それでも昨日と比べて劇痛までは行かないのでまだマシと思う事にした。
「……まだ腹減ってるな」
ベットにもたれながらテレビを見ている遊代はふと空腹を感じる。時刻は3時を回った所、入院患者なので病院食は出る、遊代も昼食も食べたのだが3時ともなれば小腹が空く。腹の虫がもっと食い物を寄越せと鳴いている。
「何か食いに行くか」
痛みを訴える体を起こして立ち上がると病室を出ると食料を求めて病院内を歩く。確か食堂とコンビニが合る、其処で何か食べよう、金も零児が用意してくれている。そうして遊代は考えた結果食堂へと向かい、券売機でおやつ変わりの天ぷらソバの食券を買いカウンターで注文を済ます。出来上がったそれを食べ終えると、今度はコンビニへと向かった。部屋には飲み物がないのでこの機会にコンビニで色々と買っておこうと考えていた。
「これと、これ……あとこれも……」
お茶やジュースといった飲料、菓子パンや菓子といった小腹を満たす食料に、退屈しのぎの為のマンガ雑誌と結構買い揃える。遠慮がないように思えるが、零児が電話にて
『君が負傷したのは頼んだ私にも責任はある。その報酬とは言わないがある程度の金銭は用意させて貰った。必要な物があればそれで買ってくれ』
と午前中に部下が渡しにきたのは金銭が入った封筒。封筒の中には札が万札が5枚入っていた。これなら退院までの3日間は充分過ぎる程。
「おっ、このプリン旨そうだな。これも買うか」
冷蔵食品を置くコーナーにそのプリンはプリンの上に生クリームが絞られており苺とチョコソースがトッピングされている。残り2個のそれを2つとも遊代はカゴに入れた。
「食料は仕入れたし、部屋に戻るか……」
レジにて会計を済ませ購入した商品が入ったビニール袋片手に遊代は自室への道のりを歩む。
「あっ……」
その道すがら遊代は自分と同じく入院患者が着る入院衣を着た人物と出会う。この世界に来て間もない遊代だが、自分と同じ入院患者の人物は初対面の人間ではなかったのだから。
「落ち着けよ、真澄」
「そうそう。そんなに焦らなくても」
「急ぐにきまってるじゃない。私は先にいくから」
学校が終わり病院へと駆け足で向かうのは光津真澄、刀堂刃、志島北斗の3人。真澄のその手にはよくお見舞いへと持っていくフルーツが盛り合わせられた籠が持たれている。そうこの3人は昨日襲われた融合召喚コースの講師マルコを見舞う為に病院へと向かっている。特に真澄は一刻も早く見舞おうとこうして急いでいるのだ。この3人がマルコの入院先をしったのは今日の昼頃に遡る。
「真澄、今日も犯人を探しに行くのか?」
「当たり前でしょ。見つけるまで虱潰しに探してやるんだから」
「オー、怖い怖い……」
この3人はクラスこそ違うが中学も同じ、昼休みの今はこうして生徒が食事を食べたりする為に設置されたテラスに集まって昼食を食べている。
「電話か……誰からだ」
購買で買ったパンを持ちながら北斗は空いた手でデュエルディスクをホルダーから取り出す。其処に記された名前を見て北斗はげんなりする。
「げっ……沢渡だ」
液晶には電話を掛けてきた沢渡シンゴの名前が表示されている。確か一昨日襲撃されて包帯ぐるぐる巻きになって入院している筈なのに何故電話を掛けてくるのかと北斗は思った。同じLDSに所属している縁から一応登録しているが仲は余り良くない。それは刃も真澄も同様だ。
「無視しちゃえば?沢渡なんだし」
「だな。沢渡だし」
「けどあいつ無視しても面倒くさいからな、一応出るよ」
散々な言われようである。しかしこうボロクソなのも理由はある。沢渡シンゴというのは次期市長最有力の議員の息子、言うなればボンボンだ。甘やかされて育っており、偉そうな上にナルシスト。デュエルの腕は有ると3人共に思ってはいるがそれを口に出す気にさせない男と認識している。
「よぉ、志島。楽しくない学生生活をエンジョイしてるか?」
「……何だよ、沢渡。入院してるんじゃなかったのか」
「オイオイ、何だその言い方は?折角良い情報を教えてやろうと思ったのによぉー」
「良い情報……?」
開口一番からいけ好かない態度なので電話を切ってやろうとも思ったが良い情報という単語に北斗は引っ掛かった。
「どうせお前、刀堂や光津といるんだろ?光津に変われ」
「はあ?」
「い・い・か・ら・変・わ・れ!」
何やら沢渡のいう良い話とは北斗ではなく真澄にらしく真澄に変わるように求める。因みに真澄に直線電話を掛けないのは真澄から連絡先を教えるのを拒否されたからだ、刃は北斗と同様一応登録はしている。
「ったく……真澄、沢渡がお前に変われってさ」
「えー!?嫌よ!昼休みが無駄になるわ」
「何か良い話があるって言ってたぞ」
「良い話?……くだらない事だったら文句言ってやる」
北斗のデュエルディスクを借りて渋々沢渡からの電話に真澄は応じる。くだらない事だったら退院した時にコテンパンにしてやろうと考えている。
「……もしもし」
「いきなり不機嫌だな。折角マルコ先生の事で電話してやったのによ」
「マルコ先生の事!?一体どういう事よ!」
『『うわー、分かり易い』』
渋々電話に出ましたといわんやばかりの態度の真澄だったがマルコに関する話が沢渡の口から出た途端に態度が一変した。それを見た北斗と刃は分かり易いと思って真澄を見ている。
「俺が入院している病院にマルコ先生も入院してるんだよ。俺と同じで襲撃されたらしいが、お前達は知らないんじゃねーかと思ってこうして電話してやったのさ」
「マルコ先生はどうなの!?早く教えなさい!」
「わーった、分かったからデケー声出すな!確か足を骨折したから暫くは入院するって言ってたぜ」
「そんな……」
大きな声で問い詰めてくる真澄に沢渡は文句を言いながらも沢渡はマルコの容態を掻い摘まんで説明する。真澄はマルコの怪我やその容態から暫く彼の授業を受けられないという事にショックを抱きつつある疑問を沢渡にぶつける。
「そ・れ・で、その話の何処が良い話なのよ!マルコ先生も襲われて入院したのが良い話だとでも言うならぶっ飛ばすわよ!」
「落ち着け!良い話は此処からだ、だからデケエ声で叫ぶな耳がイテーんだよ!」
真澄にとって恩師のマルコが入院したなど良い話である訳がない。沢渡の性格からそれを良い話として電話してきたのではと勘ぐったが沢渡は良い話はこれからだと怒鳴る真澄を窘める。
「マルコ先生が言ってたぜ。入院してても退屈だから生徒の顔が見たいって。お前が見舞いにでも行ってやればマルコ先生も喜ぶんじゃねーか」
「お見舞い……沢渡、あんたにしては良いアイデアね!」
「『お前にしては』は余計だ!」
こうして沢渡の話を聞いた真澄は沢渡から入院してる病院を聞き出すと放課後見舞いの品のフルーツやらを買い揃えてマルコが入院している病院へと向かう因みに沢渡の俺様の見舞いに来てもいいんだぜという提案は3人の満場一致で却下となった。
「……全く、せっかちな奴だ。なあ」
「だな。けど、しゃーねーか。アイツはマルコ先生の事尊敬してるしな」
自分達を置いていく勢いの速さで病院へと駆けていった真澄に遅れながらも北斗と刃の2も真澄を追い掛けて病院へと向かう。この2人は融合召喚コースではないが共にLDSのスクール生。ぶつくさ言いながら昨日は犯人探しに協力したり今日は共に見舞いに同行したりしている事から3人の仲は良い。
『マルコ先生……!』
走った甲斐もあり2人より先に病院へと辿り着き受け付けでマルコの病室を訪ねた真澄は彼の病室へと向かう。本当は走って行きたい所だが病院内を走る訳には行かない。昨日マルコが襲われたと聞いた時には今すぐにでも合って安否を確認したかった。しかし面会謝絶のまま一晩明け、ずっと彼女は不安だった。そして怪我をして入院しているという情報聞いた時には居ても立ってもいられずにこうして見舞いに駆けつけた。
「此処ね……」
マルコが入院している病室の前へと到着した真澄は覚悟を決めて扉をノックする。面会謝絶の札は張り出されていない。だから大丈夫、大丈夫だ。そう焦る自分の心に言い聞かせる。
「はい、どうぞ」
返事を返したこの声は間違いなくマルコの声だ。間違いない、これまで何度も聞き親しんだ恩師の声である。
「マルコ先生!」
病院という事も忘れて真澄は勢い良くドアをガチャリと開ける。しかしそこには予想外の光景が広がっていた。
「おや、真澄クン。キミだったのかい」
部屋に入ってきたのが教え子の真澄だった事に多少驚きを見せるマルコ。しかし真澄が驚いたのはそこではない。
「あれ?真澄ちゃん?」
「緋紅遊代!?なんで貴方が此処に居るのよ?」
真澄の目に映ったのはベットに腰を掛けているマルコが部屋に用意さへているテーブル遊代と向かい合いながらデュエルしている光景だったのだから。
「なっ……ロイヤルプリンがねーじゃねーか!」
その頃購買へおやつを買いに来た沢渡はこのコンビニで売っている自身のお気に入りであるロイヤルプリンが無いことに怒っていた。それは先程遊代が買った残り2つのプリンであった事を誰も知る由はない。
「ったく……ついてねーぜ」
店員に聞いたら今日の分はもう売り切れ。このプリンは1日に作る数が決まっているので売り切れたらまた明日までまたねばならない。しかしそれを我慢出来ないのが甘やかせれて育った甘党の沢渡シンゴだ。すぐに手を打つ。
「おっ、沢渡さんからメールだ」
「何々?見舞いに来る前にコナミマートのロイヤルプリンを買ってこい……?」
「ったくあの人ホントにワガママだな……」
沢渡からのメールを確認するのは彼の取り巻き3人。これから彼の見舞いに訪れようとした矢先にこれだ。しかし普段からこんな人間なのでもう慣れている。
「しゃーねー。手分けして買ってくるか」
「そーだな」
「買って来なかったら益々ワガママになるし」
ぶつくさ言いながらも沢渡の為に注文の品を手分けして買おうとする取り巻きトリオ。一昨日の襲撃事件でも沢渡を見捨てず助けて逃げ出した事から意外にも取り巻きからは慕われている。それが沢渡シンゴ、LDSジュニアユースクラスの総合コースのスクール生である。
実は今回の話でマルコとのデュエルの決着まで書ききろうと思ったのですが、予想以上にデュエルシーンが長引いたのでデュエルシーン以前のシーンにLDSの面々の出番を付け足して今回の話が出来上がりました。したがって沢渡さんと取り巻きも僅かながら登場。未だに権ちゃんの出番がないとは……遊矢達と関われば権ちゃんも出番は増えるのでもう暫くお待ちください。
そして次回は遊代とマルコのデュエル。本編では一言のセリフもないままカード化されたマルコの実力は?異星の最終戦士は出されると、どのキャラのデッキにも厄介だ!
不審者「ゴットバードアタック」
零児「戦乙女の契約書」
マルコ「いや、あの……」
遊代「グラン・モールをセットしておくか」
いや、君のデッキには入ってないから。