光津真澄は驚いた。恩師であるマルコの見舞いに彼が入院している病室を訪れたら一昨日出会った融合使いの緋紅遊代がマルコの病室で彼とデュエルしているのだから。何故この2名がデュエルする事になったのかは少し前に遡る。
「あっ」
「キミは……」
自分の病室へと戻る途中に遊代は1人の男性と出会う。その男性は昨日襲撃犯に襲われ、自分と同じ様に負傷したLDS融合召喚コースの講師マルコだった。自分と同じ様に所々包帯を巻いているのは同じだが右足にギプスを付けて松葉杖を使い歩いているのが異なる。実はマルコは襲撃犯とのデュエルで負傷したのは遊代と同じだが、壁にぶっ飛ばされ床に落ちた際に右足を強打し骨折してしまった。なのでこうしてギプスで固定しているのだ。
「緋紅遊代クン、だね。昨日は私を助けてくれたらしいね。どうも有り難う」
「いえいえ、にしても大丈夫なんですか?足にヒビ入ってるのに歩いても」
「ハハハッ。ずっと寝ているのも退屈でね、購買で何か買おうかと思ってたんだよ。それより私よりキミの方こそ大丈夫なのかい?」
「オレはまあ打撲で済んだんで、痛むけど大丈夫です」
マルコの怪我の具合は遊代も言伝で知っているが、どうやら足が折れている事以外は問題ないらしい。逆にマルコも遊代を心配するがマルコよりも何倍のダメージを喰らい叩き付けられ打撲で済んでいる辺り遊代の頑丈さを証明している。
「それにしても立ち話もなんだね、よければこの後私の部屋に来てくれないか?」
「いいですよ。オレも退屈してたとこなんで、じゃあ荷物置いたらお邪魔します」
「ああ。ではワタシの部屋の番号を説明しておこう。それと……」
そうして遊代はマルコの部屋に訪れる話が成立すると、自身の部屋へと戻り買った食料や飲み物を冷蔵庫にしまい、教えられたマルコの部屋へと向かう。
「ようこそ」
「どうも、お邪魔します」
ドアをノックし了承を得て入ると、マルコがベットに腰を掛けて出迎える。個室に入院しているのは遊代も同じだがマルコの病室は遊代の病室よりもランクが上だ。広さもそうだが、この部屋にはテーブルに椅子、ソファーまである。
「じゃ、準備はオレがしますんで」
「悪いね。ワタシの方から誘っておいて」
「いえいえ、オレの方が軽傷なんで」
マルコは松葉杖が無ければ歩けない状態だ。ならば体は痛むが四肢の自由が効く自分が準備をするのは当然だと言わんばかりの態度で遊代は部屋にあるテーブルをマルコの座るベットの側にまで運ぶ。キャスターが付いているタイプなので運ぶのは楽だ。
「よっと。これでよし」
そして同じく備え付けの椅子を運び終えると遊代はその椅子に腰を掛ける。マルコは遊代を部屋に誘う際にデュエルをしないかとも誘われていた。勿論遊代もその誘いを快く受けてこうしてデッキを持ってきたのである。流石に病院内でデュエルディスクのソリッド・ビジョンを使う訳にはいかない。
「所でどうデュエルします?流石に病室でソリッド・ビジョン使うのは……」
「大丈夫。このデュエルボードを使えば病室でも小さいけどソリッド・ビジョンを使ってデュエルできるよ」
「へえー、そんなのがあるんですか」
マルコがテーブルの上に用意したのはデュエルボードというアイテム。これはこういう狭い室内で臨場感あるデュエルをする為に開発された物で、人形位の大きさだが目の前でモンスターがソリッドビジョンにより現れる。モンスターのみこのデュエルボードに出し、魔法や罠を使用したりカードを墓地へ送る場合はデュエルボードとリンクさせたデュエルディスクを使い普段の様にプレイする。負傷している2人が座りながらデュエルできるの有り難い。マルコのデュエルディスクは昨日の事件で壊れてしまったがLDSが回収したデッキと共に新しいディスクを支給されている為問題はない。
「そう言えば、赤馬社長に聞いたのだけど……君は真澄クンに勝ったらしいね」
「はい。そうですけど……」
「聞いた時は驚いたよ。彼女はワタシが受け持つジュニアユースの融合召喚コースでは1番の実力だからね、しかもキミも融合使いときている」
「マルコ先生だって、融合召喚使うんでしょ。しかも真澄ちゃんを育てた恩師なら実力もあるんじゃ……」
「ハハハッ。確かにワタシもLDSの講師をしているからね、腕にそれなりの自信はあるよ。けど、我がスクールの各コースのトップは直にワタシ達講師を超えるデュエリストになると確信している」
互いにデュエルディスクをデュエルボードとリンクさせ、備えられた機能でデッキをシャッフルしながらそんな雑談を交わす。マルコもデュエルに長らく携わっているので自分のデュエリストとしての腕前には自信はある。しかし最近LDSが教えだした融合・シンクロ・エクシーズ、この3つの召喚方法により更にLDSのスクール生の実力は飛躍的に伸びた。それに業界1位の我がスクールで学ぶスクール生はすぐにでも自分達講師を超えてプロデュエリストになるだろうと確信を持っている。
「では、始めようか」
「はい」
そしてカットし終えると遊代とマルコは各々デッキから手札を5枚ドロー。これで準備は完全に整った。
「「デュエル!」」
「オレのターン!オレは魔法カード融合を発動して、手札のE•HERO シャドー・ミストとE•HERO オーシャンを融合!姿無き影の英雄と、広大なる海が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!全てを凍らす絶対零度で、この世の悪を打ち砕け!融合召喚!現れろ、E•HERO アブソルートzero!」
こうして遊代とマルコのデュエルがマルコの病室内で始まったのである。そして先攻を獲得した遊代は手札のシャドー・ミストとオーシャンを素材に、『HERO』モンスターと水属性のモンスターを素材に融合召喚できるzeroを融合召喚する。目の前には普段とは異なり30㎝程の大きさのzeroが目の前に現れる。
「シャドー・ミストが墓地へ送られた事で効果発動。デッキから『HERO』モンスター、E•HERO ネクロダークマンを手札に加える。そしてモンスター1体を裏守備表示でセット。カード1枚伏せて、ターンエンド」
「では、ワタシのターン。ドロー!」
モンスターこそデュエルボードに展開するがそれ以外は普段のデュエルと変わらないので遊代が多少の違和感を覚えながらも何の問題なくデュエルは続く。
「ん?」
「誰だろう?看護師さんか?」
マルコがドローした後に手を進めようとするとドアをノックする音が部屋に響く。もし看護師や医者ならばデュエルを一時中断する事も検討しなければならない。
「遊代クン、いいかな」
「はい。検査とかならそっちが優先ですし」
「ありがとう。はい、どうぞ」
遊代もこの状況で中断するのが嫌だと駄々を捏ねる様なガキではない。遊代の了承を得たマルコが来訪者の入室を許可する。するとドアを開けて入室してきたのは看護師でも医者でもなく、マルコにとっては教え子であり、遊代にとっては一昨日偶然出会った可愛い女の子、光津真澄であった。
「おや、真澄クン。キミだったのかい」
「あれ?真澄ちゃん」
その真澄の顔は心配からか必死の形相となって居たが遊代を見るなり仰天へと変わっていった。
『おっ、セーラー服。制服姿も似合うなー』
真澄は学校から直に病院へ訪れた。故に服装は初めて会った時の半ズボンの下にスパッツを穿いた動きやすそうな服装と異なり彼女が通う中学の制服である黒を基調として胸元に白いリボンをしたセーラー服である。その制服姿を遊代は真澄に問い詰められる少しの間、しばし堪能していた。
「ナルホド。ワタシが襲われたのを聞いてお見舞いに来てくれたのかい。ありがとう。嬉しいよ」
「いえ!マルコ先生は私の恩師なんですからこれぐらい当然です!」
教え子が自分を見舞いに来たと知ったマルコは素直に喜んで真澄を向かい入れる。一方真澄は見舞いの品として持ってきたフルーツの盛り合わせをベットの隣の棚の上に置くとマルコとデュエルしている遊代を見た。
「それにしても、まさか貴方がマルコ先生を助けたなんてね。ありがとう、私からもお礼を言わせて」
「いやー、それ程でも」
マルコから事の顛末を説明された真澄はその事実に驚きながらも自分の恩師を救ってくれた遊代に心から感謝の意を表す。一方遊代も真澄に感謝された事を喜びながら顔がややニヤケていた。
「貴方がマルコ先生とデュエルしている理由も分かったわ。マルコ先生を助けてくれた事は感謝してるけど、私はマルコ先生を応援させて貰うから」
「ええー、そりゃねーぜ。オレも応援してくれよー」
自分よりもマルコを応援すると宣言した真澄に遊代はブーブー言いながら自分も応援して欲しいと要求した。恩師を応援する気持ちは自分もよくわかるがそれでも自分の事も応援はして欲しい。しかしそんな願いは虚しく真澄は運んできたソファーに座りながらマルコを応援している。
「マルコ先生、勝ってください!」
「ハハハッ、勿論そのつもりさ。ワタシは手札から魔法カード、増援を発動してデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える!ワタシはダークヒーロー・ゾンパイアを手札に」
マルコはレベル4以下の戦士族をデッキからサーチする魔法カード増援を発動してデッキからレベル4のダークヒーロー・ゾンパイアを手札に加える。レベル4でありながら攻撃力2100を誇る戦士だが直接攻撃できず、モンスターを戦闘で破壊する度に攻撃力が200下がる2つのデメリットを持つのでその高い攻撃力の割には戦闘には余り向いていない。
「そして魔法カード、ライトニング・ボルテックスを発動!手札のゾンパイアをコストにキミのフィールドの表側表示のモンスターを全て破壊する!」
「げっ!」
マルコは手札1枚を捨てて相手フィールドの表側表示モンスター全てを破壊する破壊カードライトニング・ボルテックスを発動。zeroはその雷により破壊されてしまう。しかもマルコのフィールドにはモンスターが居ないのでzeroの効果も不発となる。
「そして沼地の魔神王のモンスター効果を発動!手札のこのカードを墓地へ送り、デッキから『融合』を手札に加える」
「……成る程。流石は融合召喚を教える講師だ」
沼地の魔神王は融合を手札に加える効果の他に指定されている融合素材モンスターの代わりとなる効果も持つ。このカードは素材を指定する融合モンスターを扱うデュエリストならば必須とも言えるカード。それを使用する辺り融合召喚を教える講師というだけはあると納得した。
「ワタシは魔法カード、戦士の生還を発動して墓地の戦士族モンスター、ダークヒーロー・ゾンパイアを手札に加える」
戦士の生還は墓地の戦士族ならば何の制限もなく手札に加えられる。 戦士族使いには有り難いカードだ。
「そして沼地の魔神王の効果で加えた融合を発動して、手札のダークヒーロー・ゾンパイアと魔力吸収球体を融合!呪われた悲しき戦士よ、魔を打ち消す生命よ、今1つとなりて新たな姿を見せよ!融合召喚!現れよ!レベル7、異星の最終戦士!」
「そのモンスターは……!」
「いきなり出たわ!マルコ先生のエースモンスター!」
融合召喚された異星の最終戦士はマルコの切り札。真澄はこれまで何度も目にしてきたからそれがマルコのエースモンスターだと言う事も把握している。一方遊代も異星の最終戦士は知っている、無論その効果も。
「異星の最終戦士は特殊召喚した時、このカード以外のワタシのモンスターを全て破壊する。しかしワタシのフィールドには異星の最終戦士以外存在しないので誰も破壊されない」
現れた時に味方を全て破壊するなど不利な効果。しかも異星の最終戦士の攻撃力は2350。このデメリットだけを見るとまだ融合素材に指定されているゾンパイアを通常召喚した方がまだマシに思える。
「けど、異星の最終戦士の恐ろしさはもう1つの効果にあるのよ」
「その通りだ。異星の最終戦士がワタシのフィールドに存在する限り」
「お互いにモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない……」
真澄も教え子だけあって異星の最終戦士の効果は勿論把握している。それはフィールドに居る限り他のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚を全て封じる強力な効果。このモンスターが場に出された後には最早モンスターをフィールドに出すにはセットするしかない。この効果は融合召喚を主軸とした遊代だけではなく多くのデュエリストのデッキに突き刺さる強力な制約となる。
「さて、気掛かりなのはそのリバースカードだけど……」
遊代のフィールドには裏守備モンスターとリバースカードが1枚ずつ。リバースカードを罠と見ているマルコはそれをも対策してくる。
「速攻魔法、サイクロンを発動!そのリバースカードは破壊させて貰うよ」
「くっ……」
「魔法の筒……破壊して正解のカードね」
サイクロンによりセットしていたリバースカードが破壊される。破壊された魔法の筒は相手に攻撃された時、その攻撃モンスターを対象に発動してその攻撃を無効にして攻撃力分のダメージを相手に与える罠。破壊せずに攻撃していたらマルコは異星の最終戦士の攻撃力2350のダメージを喰らっていたので破壊して当然のカードだ。
「では、遠慮なく行くよ!」
もうリバースカードはないので遠慮なく攻撃できる。マルコは己のバトルフェイズにへと移行した。
「異星の最終戦士で裏守備モンスターを攻撃!」
攻撃力2350の異星の最終戦士ならば普通に裏守備でセットされたモンスターは楽に破壊できる。事実遊代のセットされていたモンスターは改造により強化された異星の最終戦士の右腕から繰り出されるパンチで呆気なく倒される貧弱な守備力のモンスターだ。
「攻撃された事でこのモンスターは裏守備表示から表側守備表示になる」
「そのモンスターは……!」
しかしそのモンスターはただの貧弱な守備力のモンスターではない。裏守備表示から表側表示になった時、リバースした時にこそ力を発揮するモンスターだ。
「メタモルポットがリバースした事で効果発動!互いに手札を全て捨ててデッキから5枚ドローする!」
セットしていたのはメタモルポット。裏守備表示から表側表示になる事で互いの手札を入れ替えさせるリバース効果を持ち、リバースモンスターの中でも強力な効果を持ち、制限カードにしていされている1枚だ。
「オレは手札を2枚墓地へ捨てて5枚ドロー!」
「ワタシに手札は無いから捨てるカードは無い。けど、カードは5枚ドローさせて貰うよ!」
遊代はネクロダークマンともう1体のモンスターの2枚の手札を捨てて5枚ドロー、単純に手札が3枚増えて墓地にネクロダークマンを送る事もできた。しかしマルコは手札が無い為寧ろ手札を5枚増やしてしまう。しかしどの道異星の最終戦士の効果で反転召喚できないから自分でリバースさせる事はできないの効果を発動できるタイミングは此処しかないのだ。そして効果を発動したメタモルポットはそのまま殴り飛ばされて破壊された。
『このカードは……!』
マルコはメタモルポットの効果でドローした5枚のカードを見てマルコはよしっ!と思う。この手札ならばこのターンで勝利を決める事も可能だと。
「ワタシは速攻魔法、融合解除を発動!異星の最終戦士をエクストラデッキへ戻し、融合素材としたゾンパイアと魔力吸収球体を墓地から特殊召喚!そして魔力吸収球体でダイレクトアタック!」
融合解除により素材としたダークヒーロー・ゾンパイアと魔力吸収球体は墓地から復活。バトルフェイズ中の特殊召喚により攻撃の権利を持つ魔力吸収球体は遊代に直接攻撃を決めてライフを900削る。
「けど、ダークヒーロー・ゾンパイアは直接攻撃できないぜ」
「勿論分かっているさ。更に速攻魔法、瞬間融合を発動!」
「そのカードは!?」
ゾンパイアによる直接攻撃はないと安心したのも束の間、マルコは瞬間融合を発動する。瞬間融合は遊代も所持しているのでその効果も使い方も熟知している。そしてこの発動タイミングが最適である事も把握している。
「ワタシのフィールドのダークヒーロー・ゾンパイアと魔力吸収球体を融合!再び現れよ!異星の最終戦士!」
瞬間融合は置換融合と同じく自分フィールドのモンスターを素材に融合召喚するカードだが、このカードは速攻魔法。つまりバトルフェイズ中に融合素材モンスターで攻撃した後にそのモンスター達を素材に融合モンスターを呼び出せるのだ。ただし融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊されるデメリットがある。
「そして速攻魔法、虚栄巨影を発動!ターン終了時まで異星の最終戦士の攻撃力は1000アップする!」
「これで攻撃力は3350、このダイレクトアタックが通ればマルコ先生の勝ちよ!」
攻撃が1000上がった事により異星の最終戦士の攻撃力は遊代のLP3100を上回った。この攻撃が通れば遊代のLPは尽きる。
「異星の最終戦士でダイレクトアタック!」
「これで決まりよ!」
遊代のフィールドはがら空き。先程の魔力吸収球体のダイレクトアタックも何もしなかった。この攻撃が通りマルコの勝ちが決まる。真澄もマルコもそう確信していた。
「墓地のネクロ・ガードナーの効果発動!このカードを除外して、1度だけ攻撃を無効にする!」
「なっ!」
しかし遊代は墓地からネクロ・ガードナーのモンスター効果を発動する。その効果は自身を除外した後、1度だけ攻撃を無効にする効果。亡霊の如くフィールドその姿を現したネクロ・ガードナーは異星の最終戦士の攻撃を受け止めてその姿を消した。
「何時の間にそんなカードを……」
「真澄クン、メタモルポットの効果を発動した時に遊代クンが捨てた手札は何枚だったかな?」
「えっ?メタモルポットの効果で捨てたのは2
枚……っ!あの時に墓地へ!?」
そう。遊代がメタモルポットで捨てた手札の内1枚はネクロダークマン。もう1枚が今除外してその力を発揮したネクロ・ガードナーである。ネクロダークマンの下に置かれていたので気付かないのも無理はない。
「しかしやられたよ。ワタシもこのターンで決められると思ったんだけどね……」
「悪いなマルコ先生、真澄ちゃん。そんな簡単にワンターンキルを決められる程オレは甘くねーぜ」
「くっ……」
その言葉を聞いて真澄は遊代と初めてデュエルした時の事を思い出した。あの時も自分がパーズとルピーズ2体の融合モンスターを含む3体のジェムナイトを呼び出して一斉攻撃し勝負を決めるつもりが和睦の使者に阻まれ1ダメージも与えられず、結果デュエルに負けた事が脳裏に浮かぶ。
『このターンのエンドフェイズには異星の最終戦士は瞬間融合の効果で破壊される。そうなりゃオレは次のターンにはモンスターを召喚できる』
自分の手札5枚を見て次のターンでの戦略を遊代は練っている。厄介な異星の最終戦士はデメリットによりこのターンで消える。そうなれば次のターンは攻め込むチャンス。今の手札はそれが可能な5枚なのだから。
「これでワタシのバトルフェイズは終了だ。でも、まだワタシのターンは終わらない。ワタシは強欲で貪欲な壺を発動!デッキの上からカードを10枚裏側表示で除外し、カードを2枚ドローする!」
メタモルポットの効果でマルコがドローしたのはモンスターが1枚と魔法カードが4枚。内3枚はバトルフェイズで発動した速攻魔法、そして残る1枚の魔法カードがこの強欲で貪欲な壺である。
「よしっ!ワタシは異星の最終戦士を対象に速攻魔法、禁じられた聖衣を発動!ターン終了時まで攻撃力が600ダウンするが、効果の対象にならず、効果では破壊されない!」
「げっ!って、ことは……」
「そう!瞬間融合の効果で異星の最終戦士が破壊されるのはエンドフェイズ、禁じられた聖衣の効果でターン終了まで破壊されないから次のキミのターンも異星の最終戦士はフィールドに残る!」
強欲で貪欲な壺の効果でドローした1枚は攻撃力を下げる代わりに効果の対象にならず、効果で破壊もできなくなる速攻魔法、禁じられた聖衣。瞬間融合によるデメリットを見事に回避してしまった。
「流石マルコ先生!瞬間融合のデメリットを見事にかわしたわ!」
「……全くだ、見事としか言いようがねーぜ」
「ハハハッ。褒めてくれてありがとう。ワタシはモンスターを裏守備表示でセット、カードを1枚伏せてターンエンド。ターン終了と共に虚栄巨影の効果は終了して異星の最終戦士の攻撃力は元に戻る」
マルコとて人間だ。自分のプレイングを絶賛されたのだから当然気分はよくなる。そのまたモンスターを裏守備でセットして更にリバースカードもセットし、ターンを終えた。
「オレのターン!ドロー!」
遊代にとってこれはかなり不利な状況だ。手札にはモンスターを除去するカードは存在しない。異星の最終戦士を何とかしなければモンスターはセットしかできない。
「っ!このカードは……!」
『なに?何のカードを引いたの?』
ドローしたカードを確認した遊代の様子から一体何のカードを引いたのか、ギャラリーの真澄も対戦相手のマルコも気掛かりである。
「オレは今ドローしたこのカードを使うぜ!速攻魔法、融合解除を発動!」
「融合解除!?」
「このタイミングでそのカードを引くとは……」
遊代がドローしたのはマルコもこのデュエルで使用した速攻魔法、融合解除。その効果や利点は此処にいる全員が理解していた。
「融合解除の効果で異星の最終戦士はエクストラデッキへ戻る!」
「融合解除で融合モンスターをエクストラデッキへ戻して融合素材としたモンスターがフィールドに特殊召喚されるのは『自分の墓地』に存在する場合のみ……」
「マルコ先生の墓地には融合素材にしたダークヒーロー・ゾンパイアも魔力吸収球体も揃ってる。けど……」
「そう!融合解除を発動したのは『オレ』だ、発動したオレの墓地に異星の最終戦士の融合素材モンスターは存在しない!よってマルコ先生、あんたのフィールドはがら空きになる!」
融合解除は自分の墓地に融合素材1組が揃っていれば自分のバトルフェイズに発動すれば連続攻撃に、相手のターンに発動すれば壁とする事もできる。しかしそれはあくまでも『自分の墓地に揃っていれば』の話、今回の様に相手の融合モンスターをエクストラデッキデッキに戻しても自分の墓地には融合素材とした1組が揃っていないので復活しないのだ
「融合解除は融合使い同士のデュエルでは攻撃・防御において反撃のカードとなる。見事にそれを証明されてしまったね……」
これでマルコのフィールドから異星の最終戦士は消えた。つまり遊代はモンスターを呼び出す事が可能となったのだ。
「それじゃあ、飛ばして行くぜ!オレはライフを半分払って魔法カード、ヒーローアライブを発動!オレのフィールドに表側表示のモンスターが存在しないならデッキからレベル4以下の『E•HERO』を特殊召喚する!」
発動したのはライフ半分と引き換えにデッキから『E•HERO』を特殊召喚するヒーローアライブ。ライフという命を代償に呼び出した英雄が勝利し生きる道を紡ぎ出す。
「オレはE•HERO ブレイズマンを特殊召喚!ブレイズマンは召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから融合を手札に加えられる。オレは『融合』扱いの置換融合を手札に加える」
「そのカードは……」
遊代が手札に加えたのは置換融合。フィールドのモンスターしか融合素材にできないが、墓地のこのカードを除外すれば墓地の融合モンスターをエクストラデッキへ戻してカードを1枚ドローできる効果を持つ。真澄は遊代とデュエルした時にはフィールドのモンスターしか融合素材にできないこのカードを融合より劣るそのカードを融合を差し置いてデッキに投入する意味はないと酷評した。
『けど…』
しかし遊代にこのカードもデッキに入れる意味はあると説明し、それ証明するかの如く後にもう1つの効果を発動された事で勝利を掴まれた。
「墓地のネクロダークマンの効果、このカードが墓地に眠る時、1度だけ『E•HERO』をリリースなしで召喚できる!」
「墓地に存在する時に上級モンスターをリリースなしで召喚できる効果?そんな効果があるなんて……」
これには真澄も驚かされる。墓地に存在すれば発動する訳でもなく上級モンスターをリリースなしで召喚できる永続効果など見た事もない。
「オレはE•HERO エッジマンをリリースなしで召喚!
そして置換融合を発動してフィールドのエッジマンとブレイズマンを融合!鋭き刃携える英雄と、灼熱の炎が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!激しく燃える正義の炎で、仇なす悪を焼き尽くせ!融合召喚!現れろ!E•HERO ノヴァ・マスター!」
ヒーローアライブでデッキからブレイズマンを特殊召喚すると、そこからブレイズマンの効果に繋げネクロダークマンの効果でエッジマンをリリースなし召喚。手札に加えた置換融合を使いフィールドの2体でノヴァ・マスターを融合召喚して見せた。
「そして墓地の置換融合の効果、墓地のこのカードを除外して融合モンスターのzeroをエクストラデッキに戻して1枚ドローする」
そして置換融合もう1つの効果を発動してデッキから1枚ドローを行う。
『このカードは……!』
そのカードを見た遊代は驚いた。そのカードは勝利をもたらすキーとなりうる1枚のカードなのだから。
「また?相変わらず引きが強いわね」
ドローしたカードを見て目を見開く遊代を見てまたタイミング良くカードをドローしたのかと感づいた真澄は遊代の引きの強さに感心してしまう。
「あはは、バレたか。まっ、お楽しみは取っておくとして、オレは手札からミラクル・フュージョンを発動!墓地のブレイズマンとオーシャンを除外融合!再び現れろ!E•HERO アブソルートzero!」
そして遊代は置換融合の効果でドローしたカードが良いカードだと見破られた鋭さに感心しながらドローしたそれを手札に加えると、ミラクル・フュージョンを発動、今さっきエクストラデッキへ戻したzeroをすぐさま融合召喚する。
「バトルだ!ノヴァ・マスターで裏守備モンスターを攻撃!ボルケーノ・ナックル!」
ノヴァ・マスターの攻撃でモンスターを破壊すれば更なるドローが行える。しかしマルコとて何の考えも無しにカードをセットしていた訳ではない。
「そうはいかないよ!トラップ発動、魔法の筒!ノヴァ・マスターの攻撃を無効にしてその攻撃力2600のダメージを跳ね返す!」
「やった!」
マルコが伏せていたリバースカードはこのデュエルで自身が破壊した魔法の筒。遊代の魔法の筒は破壊したが自身は破壊されずに発動した。
「これで決まりねっ、マルコ先生の勝ちよ」
遊代のフィールドにはセットしているリバースカードはない。このままノヴァ・マスターの攻撃を跳ね返した2600のダメージを受ければ残りライフ1550の遊代は敗北する。
「それはどうかな?」
確かに遊代のフィールドには魔法の筒に対処しうるモンスターもリバースカードも存在していない。しかし
だからと言って何もできない訳ではない。
「手札から速攻魔法、フォーム・チェンジを発動!」
そう、今は遊代のターン。つまり手札からはモンスターの効果か速攻魔法なら発動できる。
「フォーム・チェンジの効果でノヴァ・マスターをエクストラデッキへ戻す。これで魔法の筒は対象を失って不発だ!」
「くっ……融合モンスターを戻して攻撃を中断するとはね……」
「でもこれでフィールドにはアブソルートzeroだけ」
「いいや!フォーム・チェンジの効果は単に融合モンスターをエクストラデッキへ戻すだけじゃない!」
遊代の言う通りまだフォームェンジの真骨頂である効果の処理の最中。勝手に自分の場をzeroだけと決め付けるのには早過ぎる。
「真澄ちゃんならフォーム・チェンジの効果はわかると思うぜ」
「フォーム・チェンジの効果?……っ!まさか!?」
自分ならば見た事のないフォーム・チェンジの効果がわかると言う遊代に何を言っているのやらと思う真澄だったがふと遊代とのデュエルを思い出し、そして気付いた。遊代が自身に勝利を掴むキーとなったのはマスク・チェンジ、そして今発動したのはフォーム・チェンジ。どちらも同じ『チェンジ』と名の付く速攻魔法だ。
「そのカードも『M•HERO』を変身召喚すると言うの!?」
「その通り!フォーム・チェンジは『HERO』融合モンスターをエクストラデッキへ戻す事で戻したモンスターと同じレベルの『M•HERO』を変身召喚するのさ!」
真澄の導き出した答えは見事に正解している。それに遊代は指をパチリと鳴らしてリアクションを取るとノヴァ・マスターを変身させる。
「新たな炎の英雄よ、神秘の力をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!女神の加護をもってして、大軍だろうと薙ぎ払え!M•HERO ダイアン!」
「このモンスターは……!」
炎属性のノヴァ・マスターから同じレベルで地属性のダイアンへと変身召喚させる。そしてこのダイアンは真澄にトドメを差した自分が初めて知った『M•HERO』である。
「これが、変身召喚……」
「M•HERO ダイアンで裏守備モンスターを攻撃!ディスバーション!」
初めて目にする変身召喚をおどろくマルコに遠慮せず裏守備モンスターを攻撃。表側表示になるもリバース効果は持たずダイアンのレイピアによる一撃で沈んだ。
「ダイアンの効果発動!戦闘でモンスターを破壊した時、デッキからレベル4以下の『HERO』を特殊召喚できる。オレはデッキからE•HERO ボルテックを特殊召喚!」
「あのモンスターそんな効果を?」
ダイアンの攻撃により自身が敗れた際には自身のモンスターは戦闘破壊されずそもそもデュエルが決着したのでダイアンの効果を初めて目にした真澄。モンスターを倒した上にデッキから仲間を呼ぶその効果に驚く。
「ワタシもグリズリーマザーの効果発動!戦闘で破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の水属性モンスターを1体特殊召喚できる。ワタシはデッキから2体目のグリズリーマザーを守備表示で特殊召喚!」
マルコはモンスターが戦闘で破壊された事を起点に、遊代は戦闘でモンスターを破壊した事を起点にそれぞれモンスターを1体ずつデッキから特殊召喚する。
「まだまだ行くぜ!E•HERO アブソルートzeroで2体目のグリズリーマザーを攻撃!」
「グリズリーマザーの効果でデッキから3体目のグリズリーマザーを特殊召喚!……したい所なんだけど、強欲で貪欲な壺で除外されてしまったようでね。ワタシは2体目の魔力吸収球体を守備表示で特殊召喚する」
マルコは攻撃を防ぐ壁要員且つ、異星の最終戦士の融合素材となる魔力吸収球体と融合召喚をサポートする沼地の魔神王をデッキからリクルートする為にグリズリーマザーを3枚投入している。しかし強欲で貪欲な壺で除外した10枚の中に3枚目のグリズリーマザーがあるらしく、デッキにはもう存在しない。よって2体目の魔力吸収球体をデッキから呼び出す。
「成る程。ならオレは速攻魔法、エネミーコントローラーを発動!魔力吸収球体を攻撃表示に変更する!」
「くっ……」
「魔力吸収球体の効果は相手ターンに自身をリリースする事で魔法カードの発動を無効にして破壊する効果……だけど」
マルコは遊代が速攻魔法による変身召喚を使うデュエリストだという情報は零児から連絡を受けていた。だからこそ、このバトルフェイズにこれ以上の変身召喚をさせない為に守備力の高い沼地の魔神王ではなく魔力吸収球体を特殊召喚した。
「けどこれに対して魔力吸収球体の効果は使えねえよな。使っちまったらダメージが増えるんだからよ」
そう、エネミーコントローラーの効果で攻撃表示にされボルテックの攻撃を受けてもダメージは100、しかしこの発動を無効にしてしまうとダイレクトアタックでボルテックの攻撃力1000のダメージをモロに喰らう。つまり発動しても意味がないのだ。『M•HERO』の変身召喚を妨げるマルコの戦略に対して完全に裏をかいたエネミーコントローラーの発動。これに魔力吸収球体の効果は発動せず魔力吸収球体は攻撃表示となる。
「ボルテックで魔力吸収球体を攻撃!」
「くっ……だけどダメージはたったの100。焦る数値ではないさ」
魔力吸収球体がボルテックの放つ稲妻を受けて全身に稲妻が走り倒される。そして攻撃力の差100の戦闘ダメージがマルコのライフから引かれるが無傷のままだったマルコのライフはまだ3900もある。
「この瞬間、ボルテックのモンスター効果発動!」
「なっ……」
しかし遊代の狙いは其処ではない。狙いはボルテックの戦闘で相手に戦闘ダメージを与える事にある。
「ボルテックが相手に戦闘ダメージを与えた場合、除外されているオレの『E•HERO』を特殊召喚できる! 」
「なんだって!?」
「オレは除外されているE•HERO ブレイズマンを特殊召喚!ブレイズマンの特殊召喚成功によりデッキから融合を手札に。ブレイズマン、ボルテックに続け!」
「くっ……」
ボルテックに続くレベル4のブレイズマンの直接攻撃によりマルコのライフは更に1200削られる。確かにこの劣勢下では痛い数値だ。
「さあ、これで決めるぜ!」
『あのカードは確か……』
更なる攻めにより勝負を決めようと遊代は右端から2枚目のカードに手を掛ける。真澄はそのカードは置換融合によりドローされた1枚である。その事はマルコも把握していた。
「やれやれ、また変身召喚を決めてくる気かい?」
「その期待に応えたい所なんだけど……次にオレが決めるのは融合召喚だ!」
「バトルフェイズ中に融合召喚……まさか!?」
今の遊代の手札にはブレイズマンの効果で加えた融合、E•HERO バブルマン、そして今から発動しようとしている融合召喚を行うカード。マルコの感が正しければ恐らくは速攻魔法に違いない。そしてバトルフェイズに融合召喚を行える速攻魔法ならば前のターン、自分自身が使っている。
「そのまさかさ!オレは速攻魔法、瞬間融合を発動!」
「瞬間融合!?このタイミングで!?」
遊代が置換融合の効果で引き込んでいたのはマルコも使用して追撃を決めに来た速攻魔法、瞬間融合であった。融合召喚を扱う遊代もバトルフェイズ中に融合召喚を行える瞬間融合は採用していたのだ。それを置換融合で引き込んでいた辺り、本当に引きが強い。
「フィールドのブレイズマンとボルテックを融合!灼熱の炎の英雄と、激しき稲妻が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!眩き輝き解き放ち、全ての悪を滅殺せよ!融合召喚!現れろ !E•HERO The シャイニング」
「攻撃力2600……だがこのダイレクトアタックを受けてもライフはまだ100残る!」
The シャイニングの攻撃は2600。対してマルコのライフは2700。この直接攻撃を受けてもライフは風前の灯火とはいえど100は残り次のマルコのターンに繋げられる。そう真澄は思っていた。
「……ふっ」
「マルコ先生?」
「ワタシの負けだね」
しかしそんな真澄を余所にマルコはThe シャイニングを融合召喚されるなり自らの負けを悟る。
「何を言っているんですか!このダイレクトアタックを受けてもライフはまだ……」
「確かにそうだね。でも真澄クン、それなら遊代クンはボルテックの効果でブレイズマンではなくオーシャンを特殊召喚している筈さ。そうすればワタシのライフは2400になっているからThe シャイニングの攻撃でライフを0にできる」
確かにマルコの言う通りだと真澄は思った。万が一にと次のターンに備えてかブレイズマンを特殊召喚していたが攻撃力が300高いオーシャンを特殊召喚していればこのターンで勝負を決められた筈。次のターンに備える事に気を取られてこのターンで勝負を決めそびれた等というプレイングミスをする様なデュエリストではない。それは真澄も遊代とデュエルした事で理解している。
「遊代クン、The シャイニングにも効果はあるんだろう?」
「その通り、The シャイニングの攻撃力は除外されているオレの『E•HERO』1体につき300アップする!」
「つまりThe シャイニングの攻撃力は……2900!」
効果に攻撃力は300上がりマルコの残りライフ2700を上回った。そう遊代はオーシャンだろうがブレイズマンだろうが特殊召喚していれば勝利を決められたのだ。手札とフィールドにカードが無く、マルコの墓地にも対処方法はないのは明らかだろう。しかし全力を尽くすのがデュエリストの礼儀、だからこそ次のターンに備えてブレイズマンを特殊召喚する事を選んだのだ。仮にこのターンで勝てないとしても瞬間融合のデメリットでThe シャイニングは破壊される、そうなればThe シャイニングが墓地へ送られ除外されているエッジマンを手札に加えられ、次のターンで融合召喚を行える。
「E•HERO The シャイニングでダイレクトアタック!」
The シャイニングの全身から放たれたオプティカル・ストームがマルコに直撃。その攻撃力はマルコのライフを上回り全て削り取る。
「マルコ先生……」
「……ふっ、お見事。流石は赤馬社長が太鼓判を押すだけの事はあるよ」
ライフが0となり敗北したマルコだが、その表情は晴れやかで素直に勝者である遊代の実力と勝利を称えていた。
「いやいや、異星の最終戦士を出された時は少し焦りましたよ」
遊代とてマルコの実力には納得した、融合召喚を教える講師というのも頷ける。もし融合解除をドローしていなければカードをセットするしかできなかった。もし引けていなければどうなっていたか……1ターンは凌げても次のターンはわからない。そう考える引きの強い遊代も同じだ。
「はい。どうぞ」
「また見舞い客か?」
そんな中またしてもドアをノックする音が部屋に響く。今度こそ看護士か、またまた見舞い客が訪れたのかと遊代やマルコが考える中、真澄だけはノックをした人間の見当がついていた。
「やっと来たわね」
ドアを開け訪れた人物を見て予想通りと言わんばかりのリアクションを取る真澄。何故なら此処に来るまでに自分は急いで来たので置いてけぼりにしていた2人が漸くやって来たのだから。
「オマエが急ぎ過ぎなんだよ、真澄」
「全くだ。マルコ先生、僕達もお見舞いに来ました」
「おお!志島クン、刀堂クン、キミ達も来てくれたのかい!」
見舞いに訪れたのは北斗と刃の2人、同じLDSとは言えども違う召喚コースの生徒も見舞いに来てくれた事にマルコは大いに喜んでいた。
「……遅いっ!何やってんだアイツら!」
その頃病室で寝転がっている沢渡はまだ見舞いに来ない取り巻き3人に文句を垂れていた。元はと言えば自分が限定プリンを買って見舞いに来いとメールしたのが限定なのにこの態度だ。取り巻き達が腹が減ると益々ワガママになるというのは当たっている。流石は取り巻き、彼の性格を良く理解している。
「おい、やっと買えたぞ!ロイヤルプリン!」
「そうか!よしっ、直ぐに見舞いに行くぞ」
「ああ、あの人の事だから今頃文句言ってる頃だしな」
各々バラけて探した結果何とか目当てのプリンを購入できた、デュエルディスクで連絡を取り合うと取り巻き3人は直ぐ様病院へと直行する。しかしプリンがグチャグチャにならない様に丁寧に急ぐ。そういう所にも五月蝿い人間だという事もこの3人は分かっているのだ。沢渡シンゴ、つくづく取り巻きに恵まれた男である。
今回はマルコとのデュエルとなりましたが、そもそも本編でマルコが一言も喋っていないキャラなので口調も性格も謎で
融合召喚コース講師
真澄は恩師と慕っている
異星の最終戦士を使う
位しかわからないので私の解釈でマルコという人物を書きました。間違いなく今後本編でも喋る事はないですし。異星の最終戦士……出されると案外厄介ですね。
しかしマルコとのデュエル3ターンなのにここまで文字数が増えるとは、ホントよくクロノス先生とのデュエル6ターンやって1話で収まったなと未だに書いた本人が謎です。
では、また次回お会いしましょう。
追記
何気にこのデュエル、この小説で初めてオリカを使わないデュエルとなりました。マルコが使わないのなら遊代も使わない方がいいなとOCGのみを使用したデュエルを展開しましたがOCGのみでデュエルするのがこんなに大変とは……特にマルコの使うカードには何を使わせるか苦労しました。