デュエルがない話なのになのに何故、9000字を越えているのか?私が一番驚いています。
第1話 緋色の邂逅 舞網市での出会い
「舞網市……?」
遊代は大通りの看板に書かれているこの街の名前を疑問視しながら口に出した。先程まで自分が居たのは舞網市などという街ではないし、何より舞網市などいう市名は聞いた事がない。
「……取り敢えず、交番でも探すかな」
拾ったカードが光った途端に訳の分からない所へ飛ばされた遊代だが、慌ててもどうにもなるまいと行動に移す。街ならば交番くらいあるだろう。そこで聞けば何かが分かるかもしれない。取り敢えず、誰かに交番の場所を聞こう。そう思った遊代の目に2人組の男女が映る。年は自分と同じか少し下辺りだと遊代は思う。ならば話しかけて場所を訪ねても大丈夫だろう。遊代はその2人組の男女に近寄って訪ねた。
「すいませーん。交番を探してるんですけど、知りませんか?」
「交番ですか?それなら、この道を真っ直ぐ歩いて突き当たりを右に回った先にありますよ」
遊代の訪ねにピンク色の髪をツインテールにした少女が丁寧に答えてくれる。これなら迷わず遊代も交番に辿り着けそうだ。
「ありがとう、助かるぜ。……そういえば、君達もしかしてデュエリスト?」
「えっ?はい」
「そうですけど……」
遊代の問いに道を教えてくれた少女は肯定し、買い物袋を両手に持ったゴーグルを額に付けた赤の上に緑が重なった髪をした少年も相槌を打つ。
「ならさ、デュエルアカデミアって学校知ってるかな?」
「デュエルアカデミア?遊矢、知ってる?」
「いや。聞いた事ないけど……」
遊代の問いに、2人は知らないと答える。どうやら少年の名前は遊矢、少女の名前は柚子と言う名前らしい。
「そんなに有名な学校なんですか?」
「ん。まあ、それなりに有名な筈なんだけど……」
『アカデミアを知らない?まさかとは思うけど、もしかして……』
デュエルアカデミアを知らないという遊矢と柚子の答えに遊代は疑問と1つの『答え』が同時に脳裏に浮かぶ。デュエルアカデミアは自分達デュエリストにとってはデュエルモンスターズの生みの親、ペガサス・J・クロフォードが所有し生活するペガサス島。伝説のデュエリストの1人にして海馬コーポレーションの社長、
「重ね重ねも悪いけど、海馬コーポレーションって知ってる?ソリッドビジョンを作った、あの」
「海馬コーポレーション?」
「申し訳ないけど、聞いた事ありません」
「……マジで?」
まさかとは思っていたが遊矢と柚子の返答に遊代は面食らってしまった。海馬コーポレーションを知らないのは幾ら何でも有り得ない。ソリッドビジョンを開発し、デュエルモンスターズの発展に多大な貢献をした世界的な企業を知らないのは流石に可笑しい。遊代の中の『疑問』は『確信』に変わっていた。
「……ごめんな。何か変な質問して、交番教えてくれてありがとう」
もう答えは大方確信が出ていたが、わざわざ親切に教えてくれた善意を無駄にはできない。遊代は念の為に交番でも聞いてみようと交番へ向かおうとする。
「あの、何だかごめんなさい。余り力になれなくて……」
「いいって、そんな事気にしなくても。寧ろこっちこそ道だけじゃなくて他にも変な聞いてごめんな。折角のデート中だってのに」
「「デ、デート!?」」
申し訳なさそうにする遊矢と柚子を気遣った遊代だが、デートという単語が出た途端に2人揃ってすってんきょうな声を上げる。
「あれ?仲良さそうに買い物してたから、てっきりカップルなのかと思ったけど……もしかして違った?」
「そ、そんな。別に私達そんな関係じゃ……遊矢とは幼なじみで、一緒の塾で……」
「そうだよ!これは塾の買い出し!大体なんでこんなガサツなストロング女とデートしなきゃ……」
カップルという単語に照れをかくせずに否定する柚子を見てこれはホの字だなと察した遊代だが、必死に弁解する遊矢だが、その瞬間スパーン、と何が遊矢の頭をはたき倒した。
「は、ハリセン……?」
その正体は少なくても自分が産まれた頃には存在していたであろうツッコミの神器ハリセンだった。持ち手の先には名前と同じ果物、柚子の飾りが付いていた。
「まったく!何よ遊矢は……この前といい、そこまで言うことないでしょう……!」
「イテテ……おい、待てよ柚子!何そんなに怒ってるんだよ!?」
「知らないっ!遊矢の馬鹿っ」
「お、おい!柚子っ、待てって!」
柚子はプンスカ怒りながらその場を去っていき、ツッコミを食らって立ち直った遊矢は柚子が怒った理由が分からないまま荷物両手に追っかけて行く。どうやら柚子の片思いに遊矢が気付いていない様だ。それを何となく察した遊代は夫婦漫才を終え舞台の袖へ引っ込んでいくコンビを見届けたような気持ちになりながら交番へと歩きだした。
『そーいえば、あのハリセン……どっから出したんだ?』
何て事を疑問に思いつつも、交番へと道を歩んでいく。そして柚子の教えてくれた道案内通りに歩いた結果5分もかからずに遊代は交番に着いた。
「はあ……」
あれから1時間程時間が経ち、現在遊代は交番にて教えて貰った公園のベンチに座り、自販機で買った缶コーラを一口飲んだ後、溜め息混じりに息を吐く。思った通りだったが、交番で聞いてもデュエルアカデミアも海馬コーポレーションもこの街は愚か聞いたことすらないという返答が返ってきた。遊代の『疑問』は『事実』となった。
『まさか別の世界へ飛ばされてたとはなあ……流石に驚きだぜ』
そう。遊代の予想通り、此処舞網市は『自分が本来居た世界とは異なる世界』だからこそ自分の世界にある筈の物がこの世界には存在せず、逆に自分の世界にない物がこの世界に存在している。海馬コーポレーションがない変わりにこの世界にはレオコーポレーションなる大企業が存在しているらしい。人当たりのよい交番の中年お巡りさんがそう説明してくれた。
「まあ、でも……この世界でもデュエルモンスターズが有るってのはラッキーだな」
もしこれでデュエルすら無かったら遊代は落ち込むどころの騒ぎではない。デュエルはカードゲームという枠を超えて自分に大切な物を多く与え、教えてくれた財産だ。これが無ければ生き甲斐を無くしたと言っても過言じゃない。
「さてと、これからどするかな……」
連絡を取ろうにも持ってきたパソコン等の通信機は県外を通り越して世界外、つまり連絡不可能。手持ちの金がこの世界でも使えるのが不幸中の幸いだが、クロノスや自分の恩人達が遊代の為にとお金を貯めてくれている預金通帳は、引き出そうにも口座が別世界では意味をなさない。遊代は飲み終えたコーラの空き缶をゴミ箱に捨てると、悩みながらも公園から出て宛はないが、取り敢えず交番で聞いておいた場所にでも行ってみるかと歩き始めた。旅とはこういう宛てのない物だ、昔からそうだったと思い返しながらこれからを考えつつ歩を進めていった。
「全く柚子の奴……何であんなに怒るんだよ……?」
自分が在籍する塾の買い出しを終えて、自宅の部屋へと帰宅した遊矢は柚子が怒る理由が分からないと隣にいる少年に愚痴を零した。もう直ぐ昼という事もあり昼食を食べて少ししたら自分が所属する塾へ向かう予定だ。
「遊矢わかんないの?ニブチンだな~」
柚子の好意に気付かない遊矢をニブチンと評した遊矢達より小柄な少年は板チョコの銀紙を剥がしながら遊矢を見て笑っていた。
「まあ、遊矢も大人になればわかるよ。きっと」
「素良だって子供だろ」
「中身は遊矢より大人かもよ」
自分だって子供の癖にと隣の少年
「そういえば道を聞いて来た人、大丈夫かな……」
「大丈夫なんじゃない?交番に行けばなんとかなるでしょ」
「……そういえば、素良は余所から来たんだよな」
「そうだけど?」
素良は舞網市とは違う所から来たと言っていたのを遊矢は覚えている。そして此処では珍しい『融合召喚』を使う事も。
「ならさ、デュエルアカデミアって知らないか?」
「っ!?」
『デュエルアカデミア』その名前を聞いた途端に素良の顔が険しさを増したように見える。
「デュエルアカデミア?知らないなあ~そんな所」
素良はアカデミアなんて知らないと答えてチョコをポリポリと食べている。
「そうか……にしても素良、もう直ぐ昼飯なのに甘い物ばっか食べてると……」
「遊矢ー、素良ー。ご飯できたわよー!」
「はーい!ほら遊矢、ご飯だよっ!」
遊矢の母親、洋子の食事の知らせを聞いた素良は下の階へと降りるポールを滑るように降りていった。
「おい素良!ったく……昼飯食べられなくても知らないからな」
掴みどころのない素良にやれやれと思いながらも自分もポールを慣れた動作でスムーズに降りて、昼食が待つリビングへと向かった。
『……何でこの世界に、アカデミアを知る人間が居るんだ?』
神妙な面持ちでアカデミアを知っている人間が居る事を疑問に思う素良の考え等、遊矢は知る由も無かった。
時刻は昼を過ぎた頃、遊代は空腹感を訴える己の腹に悩みながらもフラフラと歩いていた。手持ちの金は予め口座から引き出しておいたので、10万近くはあるが、どう倹約して過ごしても2ヶ月が限界だろう。何時戻れるのかもわからない、高等部の入学式までに戻れるのかもわからない。自分の世界とこの世界では日付も曜日も違う。本日の舞網市は日曜日らしく、何処も人が多い。
「あそこでメシにするか」
取り敢えず、この空腹を止めよう。腹の虫がぐーぐー鳴いて考えが纏まらない。そんな遊代の目に入ったのは1件のとんかつ屋。空腹時に食欲をそそる揚げ物は反則感すら抱かせる。すっかりとんかつに惹かれた遊代はあそこで昼食を食べようと。遊代はその店に入る。どうやら精肉店と併設する店舗のようだ。
「いらっしゃいませー!1名様ですか?」
「はい」
「じゃあ、此方のカウンター席へどうぞ」
店に入ると活気よく出迎えの声が上がった。
休日なので中々繁盛して混んでいたが、何とか座れた。カウンター席に案内された遊代は椅子に座るとメニューを見て何を食べようか考える。
「いらっしゃいませ。ご注文の方お決まりになりましたらお呼びください」
『どれも美味そーだな、何を食べるかな……』
ふくよかな女性店員が水を運んで遊代の目の前に置いた後も遊代は何を食べようか考える。腹が減っている時に食欲を煽る揚げ物はどれも頭を悩ませ誘惑してくる。そんか遊代の目にあるメニューが飛び込んだ。
「これにしよう。すいませーん!」
「はーい!」
注文が決まった遊代は店員を呼ぶと、決まったメニューを注文して、そのメニューがくるまで暫し、空腹との戦いに望むのであった。
『しかし、これからどうすっかなー。今はいいけどこのままじゃ金無くなるし、仕事しようにも、オレみたいなの雇ってくれる何処ねーだろうし』
頼んだ物が来るまで手持ち無沙汰の遊代の頭には否が応でも今後の事が浮かんでくる。このままではどれだけ倹約しても確実に手持ちの金は尽きる。仕事をしようにも本人の言う通り、中卒な上に身元も保護者もこの世界では存在しない。そんな遊代の下に待望の昼食が運ばれてきた。
「お待たせ致しました。ロースカツ定食エビフライ付きです」
『……取り敢えず今はメシを食べよう』
ふくよかな女性店員が持ってきたお盆の上には千切りキャベツを布団とした揚げたてのロースカツ一枚とエビフライ2尾が盛られた皿。そしてホカホカの白米がよそわれた茶碗に、味噌汁ときゅうりの漬け物。これでご飯、キャベツ、味噌汁おかわり自由で1000円を切るのだからランチ時はお得だ。これを見たら今は悩むより食べる事が大事、遊代は思考を今後から食事へとを切り替える。
「いただきまーす」
空腹だった遊代は割り箸を勢いよく割ると、まずはキャベツにドレッシングをかけて一口、二口。そしてこの定食の主役である揚げたばかりのロースカツにソースをかけると、端の一切れを箸で取って頬張る。揚げたてサクサクの衣とジューシーで柔らかなロースの旨味と肉汁が噛む度に広がる。
「うめーっ!」
ただでさえ美味いロースカツ、そこに白米を掻き込めば美味さは何倍、丸でカード同士のハイレベルなコンボにより切り札のモンスターの攻撃力が何倍にも跳ね上がったようだ。
『カツ丼もいいけど、やっぱりとんかつにはソースだよな。そして白い飯が美味さを跳ね上げる!パワー・ボンドで融合召喚したサイバー・エンド・ドラゴンにリミッター解除をしたレベルの美味さだ!』
遊代の言っていることを訳すると、とんかつがサイバー・エンド・ドラゴン。そしてソースがパワー・ボンドでリミッター解除が白米という意味。説明すると長くなるので簡潔に言うと、とんかつの攻撃力が4000だとすると、ソースで2倍、白米で更に2倍の美味さとなり、攻撃力16000レベルの美味しさと言いたいらしい。
「エビフライも美味いなー」
エビフライもサクサクの衣に身は甘くプリプリ。このメニュー否、この店にして良かった。遊代は心からそう思う。
『あの人もエビフライ好きだったよなー……』
自分の恩人である人もエビフライが大好きだったのを遊代は思い出す。だからこそこのエビフライがセットのこの定食が彼の目に入ったのだろう。エビフライを巡ってデュエルをした事もあった。
「すいませーん!ご飯と味噌汁、キャベツもおかわりください!」
「はーい!」
あっという間にご飯と味噌汁、そしてキャベツも食べた遊代は残ったとんかつとエビフライを撃破するべく、おかわりをする。そう、まだ遊代の食事というデュエルのバトルフェイズは終了していない。
「はあー!食った食った……」
あれから残りのとんかつとエビフライで一杯、そして味噌汁、キャベツ、漬け物で一杯。合計でご飯を3倍も平らげた遊代は満腹の腹をさすりながら満足感に浸る。何度かおかわりしたお茶を飲み終えると、遊代は席を立ち、会計を済ませる。
「ありがとうございましたー!」
ふくよかな女性店員に見送られながら遊代はとんかつ屋を後にする。精肉店の方を見てみると、店内の女性店員と似たふくよかな男性が居る。恐らく夫婦で経営しているのだろう。その男性にぺこりと頭を下げられると遊代も軽くお辞儀をしてその場を後にする。
「良い店だったなー。できればまた来たいもんだ」
これが自分の世界ならばもう一度必ず訪れる。しかしこの世界ではそうはいかない。だがそれでももう一度は此処で食事しようと遊代は、原田精肉店に併設するとんかつ原田を後にし、放浪を再開した。余談だが店前の幟やポスター店内のポスターを見るに、この店の名物は旨辛チキンらしい。キャッチコピーは辛さと美味さに痺れる~!との事だ。
「しかっしこの街……やたらデュエルの塾があるな」
食事後、宛もない探索を続ける遊代は余り人が通らない川沿いの道を歩いている。周りに店や家がないこの通りは休日でも人が余り通らないらしい。そんな遊代が気になっているのは塾の宣伝、それもデュエルの塾だ。この街に跳ばされてかれこれ数時間は経過しているが、目に付くのはデュエルを学ぶ塾の宣伝だ。看板果てにはGMでデュエルの塾を宣伝している。デッキ破壊、儀式、ユニオン……随分多くの塾の宣伝を目にした。
『オレの世界じゃデュエルを教える所なんてアカデミアしかなかったんだけどなー』
遊代の世界ではデュエルモンスターズを教えてくれる所はデュエルアカデミアしか存在しなかった。だからアカデミアへの入学倍率は高かった、故にアカデミアに合格したのは遊代の自慢だ。
『そーいや、あの2人も塾の買い出しとか言ってたな』
自分に道を教えてくれた2人も塾に属している様子だった。この世界ではデュエルは塾で教わるのがポピュラーなのだろうか?そんな事を考えながら歩いていると。
「オラァ!そこどけー!」
「うわっ!?…ったく、アブねーだろーか!」
後ろから2人乗りのバイクが結構なスピードで走り抜けていった。どうやらどちらも男の様だ。マナーも守れない運転手程達の悪い物はない。慌ててよけ、怒る遊代だが気になる事があった。後方に乗っていた男のその手にはフルフェイスの黒ずくめの格好には似つかわしくない女性が使うバックが抱えられていた。
「待てぇ!そこのひったくり!」
それから誰かが荒げながらその2人乗りを動きやすい服装をした1人の少女が自分を通り越して追いかけていく。そして叫んだ内容からひったくりにあったと想像できた。
「成る程ね。なら、手助けしねえとな!」
いくら何でもバイクに走って追い付くのは不可能だ。しかし自分なら手助けできる。遊代は引いていた赤いキャリーケースをぱぱっと開けると、仕舞っていたデュエルディスクを取り出し即座に左腕に装着し、起動。そしてデッキの上からカードを一気に5枚ドローし、その中から1枚選ぶ。
「頼む!エアーマン」
そう言ってまるでデュエルで召喚する様に遊代はエアーマンを攻撃表示でモンスターゾーンに出した。モンスターゾーンに出された事でエアーマンが現れる。
「お、おい!何かモンスターが近付いてくるぞ!」
「安心しろ。此処ら辺はリアルソリッドビジョンの対応外。ただのソリッドビジョンじゃ何も……」
運転する男はそう冷静に話している。確かにソリッドビジョンは実体を映し出す。しかし男の言う通り、レオコーポレーションが開発したリアルソリッドビジョンでなければ実体も衝撃も起こらない。しかもこの辺りはリアルソリッドビジョン対応外。何もできない、ただの悪あがき。そう確信していた。
「エアーマン、あのひったくり達を捕まえてくれ!」
だがしかし、それは遊代が呼び出したエアーマンが『ソリッドビジョン』ならばの話だ。
「な、なにいー!?」
「ば……馬鹿な!?」
ひったくり達が仰天するのも無理はない。ただのソリッドビジョンだと思っていたモンスターが一気に近付いてくると、なんとそのままバイクを持ち上げてしまったのだから。軽く持ち上げられたバイクの車輪は無情にも空回りを続けている。
「こ、これはどういう事……?」
ひったくり犯の被害に遭い、必死に追いかけていた少女も驚きを隠せない。何故ただのソリッドビジョンのモンスターが実体を持っている。その謎の現象に驚いていた。
「さて、ひったくり共、この子から取った物返して貰うぜ」
「ふ、ふざけんな!返すくらいなら……こうしてやらぁ!」
「あっ!?」
自分達が劣勢だが、『はい。わかりました』と素直に返そうもせず男は少女のバックを川目掛けて投げ捨てた。無駄に勢いよく投げられたバックはよく飛んでこのままでは川に水没して流されてしまう。
「エアーマン!あのバックを頼む!」
「ぐえっ!?」
「ぎゃっ!?」
遊代の声を聞いたエアーマンは持っていたバイクを放り投げる。それによって投げ捨てられたひったくり達は地面に落ち悲鳴をあげる。エアーマンはと言うと、両翼に内蔵されたプロペラを回転させ加速。そのスピードで投げ捨てられたバックの下まで接近すると、そのままバックを受け止めた。
「サンキュー。エアーマン!はい、これ」
「あ、ありがとうございます!」
エアーマンからバックを受け取るとそのバックを持ち主の少女へ返す。少女は現状に軽く同様しながらも遊代に感謝の言葉を述べた。
「いってー、あのヤロー!」
「テメー、こんな真似して只で済むと思うなよ……!」
「そりゃこっちのセリフだ。このひったくり共!」
人の物を盗んでおいて、あまつさえ返そうともせずに捨てようとする奴らにそんな事を言われる筋合いはない。遊代はこのひったくり達に怒りを覚えていた。
「うるせえ!ひったくられる方がわりぃんだ!」
「稼ぎの邪魔しやがって、覚悟はできてんだろーな!?」
「なによ、コイツら……!」
「……………はあ、呆れて何も言う気になんねぇ」
此処まで身勝手で頭が悪いとは思わなかった。世界は違えどもこういうろくでもない輩は存在するらしい。知りたくもない共通用件に少女は怒り、遊代は軽く頭痛がしてきた。
「んだと!?テメーら!」
その発言にキレた片方の男が遊代に殴りかかって来た。しかし遊代はそのパンチを軽く避ける。そして避け相手の手首を掴み、一本背負いの要領で投げ飛ばした。
「うわぁ!?」
「エアーマン、トドメは頼んだぜ」
投げ飛ばしされた男をエアーマン目掛けて投げ飛ばす。そして飛んできた男の鳩尾にエアーマンのキックがクリーンヒット。威力は加減してあるとはいえ男は、がはっ!と呻いて気絶した。
「さてと、後1人……」
「う、うわぁぁー!」
怖じ気づいてやられた相方もバイクも捨て逃げ去ろうとする男だが、そうは問屋が卸さない。
「待て!」
遊代が追うよりも先にバックをひったくられた少女がこのまま済ませるかと言わんばかりに逃走しようとするひったくり犯に走り寄る。バイクならまだしも、殆ど距離のない状態でならば流石に少女でも追いつける。
「な、なんだ。小娘の方か、だったら返り討ちにしてやらあ!」
「それはどうかな」
「えっ?ちょ、待っ……」
訳の分からない遊代ではなくひったくった方の少女が相手なら返り討ちにできる。そう目論んで振り返った男だが身動きは取れない。何故なら予め追っていたエアーマンがその瞬間に背後に周り、羽交い締めにされていたのだから。
「これでも、喰らえ!」
「ぐえっ!」
「うわぁ……」
少女が放ったその蹴りが男の急所、所謂金的に勢いよく直撃してした。効果音があるならば、めりっという音がしそうだ。同じ男として遊代はその痛みは想像したくない。だからと言って犯人に同情する気はないが。とりあえず、これでひったくり犯2人はノックアウトとなった。
「あの、本当にありがとうございます。お陰で助かりました!」
「いえいえ、どうたしまして。後、別に敬語使わなくていいぜ。オレ、キミとそんなに年変わんないから」
少女からお礼を述べられる遊代は気にしないでくれよという素振りを見せながら返事を返す。恐らく自分と同じ年くらいの少女に気をつかわせないように振る舞う遊代に少女は訪ねた
「あの、貴方の名前は……?」
「オレは緋紅 遊代。遊代でいいぜ。キミは」
「私?私は……」
遊代の対応から先程までよりやや砕けた態度で接する様になった少女に自己紹介を軽く済ませた遊代は少女の名前を尋ねる。褐色の肌に、切りそろられた緑がかった黒髪のロングヘアーが印象的な少女の名前を。
「私は、
ひったくりが縁で出会った少女の名前は光津真澄と言った。遊代は此処、舞網市に来てから遊矢、柚子、そして真澄と次元を超えた出会いを果たした。これから起こる未来はまだ誰も見えていない。
第1話いかがだったでしょうか?今回は舞網市を回る過程で遊矢と柚子、そして最後に真澄に出会いました。そして昼食を食べたあのとんかつ屋、感のいい方は誰の家かお気づきでしょう。
遊代が宛もないのにいきなり外食しているのは気分転換も兼ねてです。流石に落ち着きたかったりんですよ、いきなり別世界に飛ばされましたから。まあそれでも前向きに行動していますが(笑)
このまま遊代はホームレス暮らしとなるのか如何に。
次回はデュエルがあります。ので、その分文字数が増えて更新遅れ……更新が遅い事は知ってる人は知ってますよね