遊戯王ARC-V~緋色の英雄~   作:《陽炎》

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今回はタイトル通り、E•HERO使いの遊代と、ジェムナイト使いの真澄との融合対決が始まります。そして遊代を困惑させる出来事とは?


第2話 遊代困惑? 秘石の騎士との融合対決!

「ご協力ありがとうございましたっ」

 

「いえいえ。それじゃあ、俺はこれで」

 

遊代はキッチリ制服を着た真面目で好青年な雰囲気の20代半ば位の男性に見送られると、そのまま建物内をスタスタと後にする。

 

「……はあ~」

 

建物から出てくるやいなや遊代は溜め息を吐いた。今、遊代が出てきた建物は舞網市の警察署。真澄の通報によって警察がやって来てひったくり犯をがまったのはよい。が、それの関係者という事で遊代も警察署で事情を話す事になった。幸い事件の話を聞くだけで済んで良かった。もし身元まで聞かれたらどうしようかと軽く焦ってしまった。今吐いた溜め息はそんな安堵の感情も入っている。それでも折角の休日にひったくりに遭い、被害届やらを書く羽目になった真澄よりはマシだろうと納得する。

 

『もうすぐ3時か。あっという間に時間が過ぎたな』

 

チラッと近くにあった時計を見ると、もうすぐ子供が待ち望むおやつの時間帯という頃合いの時刻。この世界に来てから5時間近くは経っている。そろそろ今日の夜どうするか考えなければならない。取り敢えず寝袋はある、雨水を凌げる所を探して野宿でもしようと今夜の処遇を考えていながらも壁に背中を預け動こうとはしない。そんな遊代に声がかけられた

 

「おっ、真澄ちゃんも野暮用は終わったのか」

 

声の主が居る後ろに振り返ると、今回の被害者の光津真澄が立っていた。どうやら彼女も要件が済んで、警察署を後にしたらしい。余談だが遊代は同世代の女子は基本的にちゃん付けだ。

 

「ええ。全く、折角の休日なのにとんだ災難だったわ」

 

休みの日に気分転換をと思ったら気分転換所か気分を害されてしまう最悪の結果。こんな気分で明日から学校があると思うと折角のスクールライフが軽く憂鬱になる。

 

「ところで……ちゃん付けで呼ぶの止めてもらえないかしら?私には合わないから」

 

最初はひったくりを捕まえてくれた事から敬語で話していたが、遊代の対応から砕けた態度で接している。しかし真澄はちゃん付けで呼ばれるのは余り良く思わなかった。彼女はどちらかと言えば年の割には大人っぽく、系統で分類するならクールビューティーなタイプだ。事実彼女の事を周りは呼び捨て、もしくはさん付けで呼んでくる。自分自身にちゃん付けは違和感を覚えるし、似合わないと思っている。

 

「そーか?真澄ちゃんならカワイイから、ちゃん付けでも問題ないと思うぜ」

 

しかし遊代は別にちゃん付けでも違和感がないと思っている。褐色の肌と緑がかった黒髪をキレイに切りそろえたロングヘアーが印象的。クールビューティーで大人っぽい雰囲気を漂わせているが、彼女は自分より1つ下の14歳だしちゃん付けでも別に問題は無い。それに、バッグが無事に手元に戻ってきた時の安堵し、感謝した表情は年相応の女の子の顔だった。そんな印象もあってか初めてみた時からカワイイ子だなーと遊代は思っている。

 

「……貴方、そんな軽い事ばかり言ってるとモテないわよ」

 

「たはは、容赦ねーな」

 

冷たく返された遊代は苦笑いを浮かべながらも特に気にしてはいない。これで軽いなら自分が知ってるある人物は軽いを通り越して空気だ。その人物に女性への接し方を教えられ、後日妹が遊代に馬鹿な事吹き込まないで!と怒ったやり取りが何度かあった。遊代はその男性の影響を少なからず受けている模様。

 

「まあいいわ。それより貴方、クレープは食べられる?」

 

「ん?大好物だけど」

 

いきなりクレープは好物かと訪ねられながらも答える遊代。食べ物に好き嫌いはないし、甘い物は好物である。クレープも昔食べた事はあるし、好きなスイーツだ。真澄のその質問の意図はすぐに遊代は知る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前から気になっていたのよね。此処のクレープ」

 

そう言って真澄はクレープを一口食べる。此処は遊代が数時間前に休憩していた公園、大通りまで戻ってきた2人は真澄が気になっていた店のクレープを買い、公園で食べている所だ。その店は公園のすぐそばに有り、最近オープンしたらしいが、パンケーキ中心のカフェらしいがクレープも店頭で販売しており女性から注目されている店らしい。その店でクレープを購入した2人は公園のベンチに座り、クレープを食べていた。

 

「おー!これは美味い!」

 

遊代も1口食べたクレープの美味さに納得する。遊代のクレープはイチゴのクレープであり、生地はモッチリとした食感ながら口溶けは滑らかで、生クリームもカスタードも濃厚だが自然な甘さでくどさがない豊かな味。主役の苺のスライスの甘さと酸味にブルーベリーのソースもいいアクセントだ。因みに真澄が頼んだのはホイップとカスタードのダブルクリームにトッピングのスライスバナナとチョコレートソースがかけられたクレープだ。

 

「うん。美味しい」

 

食べたクレープの美味しさに頬を緩ませる真澄、年相応の彼女の笑みを見てやっぱりカワイイなと遊代は改めて思う。

 

「でもホントにいいのか?クレープ奢って貰って」

 

「いいわよクレープくらい。ひったくり捕まえてくれたお礼だから」

 

そう、遊代のクレープの代金も真澄が払っている。今真澄が述べた通りひったくりを捕まえて、バッグを取り戻してくれたお礼だ。たがら遊代は自分の取り調べが終わっても動こうとはせずに警察署を出た近くで真澄を待っていたのである。

 

「真澄ちゃん、何か飲まない?飲み物位は俺が出すぜ」

 

「そうね……じゃあ紅茶をお願い」

 

「ラジャー!」

 

甘いクレープを食べて水分が欲しくなってきた遊代は何か自販機で買おうとベンチを立つ。ならばついでにと真澄にも何がいいか聞いた遊代は真澄に敬礼すると自販機へと向かった。

 

「それにしても、あれは何だったのかしら……」

 

本来なら質量を持ったソリッドビジョンでなければ物に触れたりする事など不可能。そしてリアルソリッドビジョンはアクションフィールド内でなければ発生しない筈、その事を真澄は理解していた。何故なら彼女はそのリアルソリッドビジョンを作り出したこの世界の大企業、レオ・コーポレーションが経営する業界1位のデュエル塾、LDSに所属しているからだである。

 

『あのデュエルディスクに秘密でも……?』

 

遊代のデュエルディスクは自分達が扱うデュエルディスクとはデザインが大幅に違う。もしかしたらその辺りに謎が?そんな風に真澄が考えていると。

 

「ひゃっ!?」

 

突然、頬に冷たくヒンヤリとした物が触れた。普段の彼女を知る者達が聞いたら驚きそうな高い声を上げる。真澄が振り返ってみると其処にはしてやったりという言葉を絵に描いたように表した表情をしている遊代が居た。

 

「な、なんの真似!?」

 

「ゴメンゴメン。何だか難しい顔をしていたから、はい紅茶」

 

思わず言葉が荒くなったそう言いながら遊代は買ってきたペットボトルに入った紅茶を渡す。因みに真澄の頬に当てたのは遊代が自分にと買った缶コーヒー(微糖)である。

 

「まったく、変な真似をしないで頂戴」

 

「いやー、さっきまでクレープ食べて嬉しそうにしてたのとは打って変わって気難しい顔になってたからさ」

 

「……」

 

そんなに嬉しそうな顔をしていたのかと思いたくもなるが、このクレープが美味しいのは事実。気を紛らわせようと遊代から受け取った紅茶が入ったペットボトルの蓋を開けると一口ゴクリと飲んだ。

 

「ねえ、1つ聞いてもいいかしら?」

 

「おう。オレが答えられる範囲なら。あっ、因みにオレはフリーだぜ」

 

「貴方、何でアクションフィールドでもないのにソリッドビジョンを実体化できたの?」

 

『見事なまでにスルーっ!』

 

真澄は単刀直入に自分の疑問を遊代へ聞いた。遊代はというとアピールを物の見事に無視されたが、別にへこたれてはいない。

 

「貴方、なんでアクションフィールドもないのに実体を持つモンスターを出せたの?」

 

「えっ?」

 

真澄の質問に遊代は目をぱちくりとさせる。どう答えるのか?素直に答えるのかはぐらかすのかと考える彼女だが、遊代の答えは予想だにしない物だった。

 

「アクションフィールド……ってなに?」

 

「……はぁ?」

 

そう、遊代はそもそもアクションフィールド自体を知らないのだ。予想にしていなかった遊代の返答に思わずすつてんきょうな声を真澄は上げてしまった。

 

「あ、貴方デュエリストでしょ?」

 

「勿論!現役バリバリのデュエリストだぜ」

 

「なのにアクションフィールドを知らないって……どういう事よ」

 

「だってなー、オレの居た所にはなかったし」

 

そう、遊代の言っている事は嘘ではない。真澄に呆れ気味に驚かれても本当に遊代の過ごした場所にはアクションフィールドなどそもそも存在していないのだ。知らなくて当たり前なのである。

 

「貴方日本人でしょ?なら普通は知ってる筈よ」

 

「いやーそうだけど、かなり遠い所のモンだから」

 

「なんでそんな遠い所の人間が此処に居るのよ」

 

どれもこれもはぐらかしているが本当だ。遠いを通り越して別世界の人間なのだし気付いたらこの世界に飛ばされていた。しかし本当の事など言えないし、言ったところで信じてくれる訳がない。普通別世界から来たなんて言えば間違いなく変な奴確定だ。

 

「真澄ちゃんと出会う為。って言ったらー」

 

「……………」

 

「……ごめんなさい。気付いたらこの街に居ました」

 

無言のジト目でふざけるなとその表情が言っていた。ジト目もカワイイと思う遊代だが、真澄を怒らせるのは得策ではないと素直に謝った。

 

「……貴方、ひよっとして」

 

「えっ?」

 

バレたのか?いや今の所バレる要素があったとは思えない。もし今ので見破られたら真澄ちゃんは超能力者だ。と思ったが自分が似たような物だったとノリツッコミを心の中で遊代がしていた。

 

「密入国者?」

 

「いや、違う違う!」

 

断じて密入国などはしていない、神に誓ってもいい。そう思う遊代だがいきなり別世界に飛ばされた場合、パスポート見せても密入国者じゃないと信じて貰えるだろうか?まあ日本人だから日本でパスポート見せろと言われる事などないかと結論づけた。

 

「……話が逸れたわね。改めて聞くけど、何でモンスターを実体化できたのかしら?」

 

ズレた本題を真澄が修正に掛かる。流石に自分の能力ですとは言える訳がない。そんな事いったら痛い奴と見られる事間違いない。どうしたもんかと遊代は考えるが、これと言って良い案が浮かばない。このデュエルディスクのお陰とでも言うのが一番得策か。

 

「まあいいわよ。答えたくないなら答えなくても」

 

「えっ?いいのか?」

 

「ええ。貴方は恩人だから、話したくない事を無理矢理聞き出したりはしないわよ」

 

別に真澄も問い詰めるつもりは毛頭ない、遊代は自分の大事な物を取り返してくれた恩人なのだから。自分が疑問に思っている事とはいえ深く切り込む真似はしない。

 

「その代わり、私とデュエルしてくれない?」

 

「デュエル?勿論!全力で受けて立つぜ」

 

その代わりと持ち掛けられたのはデュエルの対決だ。デュエルが大好きな遊代は断る訳もなく、即座に了承した。

 

「なら決まりね。言っておくけど、私強いわよ」

 

「へえー、そいつは楽しみだ。ワクワクするぜ」

 

そう言葉を交わしながら互いにデュエルディスクを左腕に装備する2人。真澄も自分の実力には自身は持っている。

 

「けど、強いのはオレも同じだぜ」

 

それは遊代とて同じ。デュエルアカデミアで学び、磨き上げた融合召喚は誰にも負けないと自負している。

 

『ディスク部分が実体化した?この世界のはああなってるのか』

 

この世界のデュエルディスクはモンスターを出すディスクの部分が使用する時にのみ、ソリッドビジョンの様に展開されるのか。そう遊代は思いながら自分のデュエルディスクを起動させる。

 

「変わったデュエルディスクね」

 

「まあな」

 

しかし真澄達この世界のデュエリストからすれば遊代のデュエルディスクの方が変わったデザインである。モンスターゾーンの部分も常時存在し、魔法・罠ゾーンもその下にセットする部分が存在している。

 

「それじゃあ始めるわよ!」

 

「ああ!」

 

「「デュテル!」」

 

緋紅 遊代と光津 真澄のデュエルが今始まった。奇しくもこの両者には『ある共通点』がある事に気付くのはこのデュエルにて明らかとなる。

 

「それじゃあ先行は貰うぜ!オレのター」

 

先行は遊代から。意気揚々と何時も通りドローをしようとする。デュエルを10年はやっているから自然とスムーズにその動作へと移れる。

 

ブー!ブー!

 

「えっ?」

 

しかし、いざデッキの1上のカードに触れドローとした瞬間、液晶部分にERRORと表示され、警告音が鳴り渡る。何時も通りに始めようとしただけなのにどういう事かと遊代は困惑するしかない。

 

「貴方ねえ……先行は最初のターン、ドローできないわよ。デュエリストなら常識でしょ」

 

「マジ!?そうだったのか……」

 

迂闊だった。所変われば品変わるという諺がある、世界が異なるならデュエルのルールが違うというのも充分あり得る。今更ながら遊代は理解した。

 

「貴方、本当は初心者なんじゃないの?」

 

「んな訳ねーだろ、ちょっとルールの違いを理解してなかっただけだ。じゃ、改めてオレのターン」

 

そんな遊代の返事に対して堂々と返す言葉ではないでしょうと真澄が返した。兎も角、出鼻は挫かれたが仕切り直してデュエルは遊代のターンから始まった。

 

「オレは召喚僧サモンプリーストを召喚!自身の効果でサモンプリーストは守備表示になる」

 

ドローができずに予定が軽く狂ったなと感じながらも遊代は現在の手札から最善の手を模索する。そして遊代が最初に出したのは召喚僧サモンプリースト。攻撃力は800だが召喚しても自身の効果で守備表示となるのでその低い攻撃力を晒す心配はない。

 

「そしてサモンプリーストの効果発動!1ターンに1度、手札の魔法カード1枚をコストにデッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚できる!」

 

遊代は手札から魔法カードを墓地へ捨てて、サモンプリーストの効果でデッキからレベル4モンスター1体を呼び出す。

 

「オレはE•HERO フォレストマンを守備表示で特殊召喚!」

 

「これでレベル4のモンスターが2体……」

 

サモンプリーストもその効果で呼び出されたフォレストマンは攻撃力・守備力も種族も属性も違うが、レベルは同じ4、真澄はもしかして『ある召喚方』をするのではと予想する。

 

「オレはカードを2枚セットしてターンエンド」

 

『セットして終わり?エクシーズじゃないの?』

 

自分の予想していた『エクシーズ』ではなく、特に何もせずに遊代はリバースカードをセットしてターンを終えた。これによりターンは真澄へと移り変わる。

 

「さ、真澄ちゃんのターンだぜ!」

 

「わかってるわよ……ねえ。1ついいかしら」

 

「ん、なに?」

 

「このデュエル……私が勝ったら、ちゃん付けで呼ぶの止めて貰えないかしら」

 

ドローする前に真澄から提案されたのは、自分が少量したらちゃん付けで呼ぶのは止めてという要求だった。

 

「えー、そんなにイヤなのか?」

 

「私のキャラじゃないのよ」

 

いくら恩人でもちゃん付けは余り好ましくない。自分には違和感があるし恥ずかしい。そう真澄は感じている。

 

「んーそうだなー……わかった。じゃあオレからも提案させて貰ってもいいかな」

 

「いいわよ」

 

自分だけ要求するというのも不公平だし、遊代の要求を呑むのが平等な条件という物だ。どんな条件を要求してくるのかと真澄が考えていると遊代からの要求が提案される。

 

「じゃあ、オレが勝ったら街案内がてらデートして貰おーかな」

 

「……貴方、本当に女好きね」

 

「そりゃねーな。オレは真澄ちゃんだから言ってるんだぜ」

 

「女好きはみんなそう言うのよ。」

 

そんな要求をしてくるとは……軽く軽蔑した眼差しで真澄は遊代を見つめた。遊代の言っている事は本心だが、悲しくもそれは真澄が言う通り女たらしが女性口説く常套手段のそれと大差ないのだ。

 

「いいわよ。私に勝てたらデートくらいしてあげても」

 

「マジ!?よっしゃー、燃えてきたぜ!」

 

しかし意外にも真澄はその要求を受け入れた。遊代は喜びながら女性への接し方やテクニックを教えてくれた師匠とも言える男に感謝する。その師匠の妹は遊代に変な事を吹き込むなと阻止していたが努力虚しく少なからず影響は受けてしまっている。

 

「ええ。私に勝てたら、ね」

 

真澄は遊代に自分に勝てたらと冷静に告げる。真澄には自分がこのデュエルで勝利するだけの自信がある。そしてそれを可能とするカードはほぼ手札に揃っている。上手く行けばこのターンで勝利を手にする事ができるという手札だ。

 

「私のターン!」

 

もうターンは真澄のターン、なのでドローフェイズにカードをドローする。ドローしたカードを見てそのそしてドローしたカードを手札に加えるとある魔法カードを発動する。

 

「私は魔法カード、ジェムナイト・フュージョンを発動!手札のジェムナイト・ルマリンとジェムナイト・ラズリーを素材に『ジェムナイト』モンスターを融合召喚する!」

 

「融合召喚!?」

 

遊代はそれを聞いて驚いた。まさか自分と同じ融合召喚の使い手だったとは。そう、真澄のデッキは宝石をモチーフとしたカテゴリー『ジェムナイト』、そしてそのメイン戦術は遊代と同じく融合召喚による強力なモンスターの展開。奇しくもこの2人の対決は『HERO』と『ジェムナイト』の融合対決となった。

 

「雷帯びし秘石よ、永遠の煌めきよ、光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ、レベル6。勝利の探求者!ジェムナイト・パーズ」

 

融合召喚されたのはレベル6、攻撃力1800のジェムナイト・パーズ。ルマリンの雷帯びし秘石という口上の通り、雷族の融合モンスターである。攻撃力は低いがそれを補うだけの能力を秘めたモンスターだ。

 

「ジェムナイト・ラズリーの効果発動!このカードが墓地へ送られた場合、墓地の通常モンスター1体を手札に加える事ができる。私はジェムナイト・ルマリンを手札に加える。更に、墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!墓地のジェムナイト・ラズリーを除外して、このカードを手札に戻す」

 

「手札に戻る融合カード?そんなカードがあるのか」

 

ジェムナイト・フュージョンには融合召喚を行うだけではなく、墓地の『ジェムナイト』モンスターを除外する事で墓地から手札に戻る効果も持つ。融合使いの遊代だが、アカデミアには融合使いはそこまで多くなくアドバンス召喚が中心だった。融合召喚を使いこなし精通している身として融合召喚の強みと弱点も熟知いる。融合召喚の弱点は融合カードが必要、そしてカードの消費が激しい事。つまり最低でも3枚のカードが必要なのだ。だからこそ遊代も消費の激しさを補うカードを複数採用している。

 

「始めてみたぜ、何度も使い回せる融合カードなんて」

 

「ジェムナイトしか融合召喚できないけどね。でも私のデッキには何の問題もないわ!」

 

そう、普通の融合は殆どのモンスターを融合召喚できる。遊代の持つ融合でもジェムナイトは融合できる。ジェムナイト・フュージョンはジェムナイトしか融合召喚できない制約の代わりに回収能力が備わっている。たが、『ジェムナイト』で構成されている真澄のデッキにはデメリットにはならない。

 

「まだまだ行くわよ!ジェムナイト・フュージョン発動!手札のジェムナイト・ガネットとジェムナイト・オブシディアを融合!紅の真実よ、鋭利な漆黒よ、光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ、レベル6。赤く輝く優雅な光!ジェムナイト・ルビーズ!」

 

現れた2体目のジェムナイト融合モンスター、ジェムナイト・ルビーズ。ルビーの名を含む通り、赤い炎族のモンスター。レベル6で攻撃力2500と高い。

 

「ジェムナイト・オブシディアの効果、このカードが手札から墓地へ送られた場合、墓地のレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚できる。ジェムナイト・ガネットを特殊召喚!そしてジェムナイト・フュージョンの効果、オブシディアを除外し、このカードを手札に戻す」

 

オブシディアの効果により、共に融合素材として墓地へ送られたガネットが復活。攻撃力は1900と通常モンスターだが、融合モンスターのパーズより攻撃力は高い。

 

「1つ教えてあげる。パーズは1ターンに2回攻撃できる上に破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える効果があるわ」

 

「てことは、サモンプリーストをパーズで戦闘破壊して800ダメージ、そしてルビーズでフォレストマンを破壊しても、ガネットともう1度攻撃できるパーズが控えているから……」

 

「どうやら気づいたようね」

 

そうこのままでは遊代の推測通り効果ダメージ800と、攻撃力1800のパーズと攻撃力1900のガネットの直接攻撃で合計4500のダメージが発生する。

 

「後、ルビーズは守備モンスターを攻撃しても攻撃力が守備力を上回った分だけ戦闘ダメージを与えるわ」

 

「その上、貫通効果持ちのモンスターも居るのか……」

 

ルビーズがフォレストマンを攻撃しても効果による貫通効果で戦闘ダメージが発生する。レベル4の中ではトップレベルの守備力2000を誇るフォレストマンだがルビーズには適わない。上回った500の攻撃力がダメージとして襲う。そのダメージ、合計5000。見事に後攻ワンターンキルだ。

 

「残念だけど、私とのデートは諦める事ね。バトルよ、私はジェムナイト・パーズで召喚僧 サモンプリーストを攻撃!」

 

そしてメインフェイズからバトルフェイズへ以降。ジェムナイト・パーズのサモンプリーストへの攻撃が宣言される。しかし遊代はワンターンキルされるかもしれないというのに冷静だった。

 

「トラップ発動!和睦の使者!このターンオレのモンスターはバトルで破壊されず、オレに発生する戦闘ダメージは0になる」

 

「なにっ!?」

 

遊代が発動したのは和睦の使者のより、争いを収める使者が出現。サモンプリーストはパーズに攻撃されるが破壊されない。

 

「パーズの効果は戦闘でモンスターを破壊する必要がある。そしてルビーズの貫通効果で与えるのは戦闘ダメージだ」

 

「くっ、これじゃあ攻撃しても意味が……」

 

和睦の使者により戦闘破壊できず、ダメージも0。パーズの効果ダメージも、ルビーズの貫通効果も全て意味をなさない。真澄が口にした様にこれではもうこのターン攻撃しても意味はない。

 

「そう焦るなよ、お楽しみは、これからだぜ」

 

「なによそれ、榊遊勝の真似?」

 

「えっ?誰だそれ?始めて聞く名前だぜ」

 

「……そう」

 

榊遊勝を知らないとはと呆れそうになったが、嘗てはアクションデュエルのチャンピオンであり、その決め台詞が『お楽しみは、これからだ!』であった。しかし3年前より突如として行方不明。まあ、この街に来たばかりでアクションフィールドすら知らない遊代ならば榊遊勝の事も知らないか、そう真澄は自己解決した。

 

「それにしてもやるじゃない。てっきり口だけかと思ってたわ。私はカードを1枚セットして、ターンエンド」

 

リバースカードも2枚存在していたので、ワンターンキルで決まる事はまずないだろうとは思っていた。しかしそれでもパーズかルビーズの効果でダメージは与えられると考えていたのだが、まさか攻撃できるのにした所でダメージを与えられなくなるとは……少し計算が狂ったが、自分のモンスターをトラップで破壊されなかっただけマシだと結論付け納得した真澄は魔法・罠ゾーンに1枚伏せてターンを終了した。

 

「よしっ。オレのターン!」

 

ターンは遊代のターンと移る。このデュエルを始めた時は先行ドローができずにリズムが狂ったが、今はそんな事を気にする素振りを見せず漸くドローできると思いを馳せていた。

 

「ドロー!」

 

そしてこのデュエル初めてのドローを意気揚々と行った遊代のターンはドローフェイズからスタンバイフェイズに以降。そしてこの瞬間フォレストマンの効果が発生する。

 

「E•HERO フォレストマンの効果発動。オレのターンのスタンバイフェイズにデッキ・墓地から『あるカード』を手札に加える」

 

「あるカード……?」

 

そう、フォレストマンは自分のスタンバイフェイズに『あるカード』を手札に加える効果を持つ。そのカードとは遊代と真澄の召喚方に必要なキーカード。

 

「オレは墓地から融合を手札に加える!」

 

「融合!?」

 

そのカードとは融合召喚を主軸とするデュエリストには必要不可欠なキーカード、融合。遊代はサモンプリーストの効果の発動のコストとして墓地へ送り、融合を手札に加える効果を持つフォレストマンを特殊召喚。そしてフォレストマン達を守る和睦の使者を伏せて、モンスターを展開しつつ次の自分のターンへの布石を整えていたのだ。

 

「貴方も融合使いだったの……?」

 

「ああ、お揃いだな。オレ達」

 

これには真澄も素直に驚いた。融合召喚はこの世界ではメジャーではない珍しい召喚方法。にも関わらず目の前の遊代は自分と同じ融合使い。

 

「さあ、今度はオレの番だ。オレの融合召喚、見せてやるぜ!」

 

遊代の言う通り、手札にキーカードの融合が墓地から手札へと戻り準備は整った。自分のヒーロー達を呼び出す準備が。

 

「オレはE•HERO エアーマンを召喚!エアーマンの効果発動、召喚に成功した時、デッキから『HERO』1体を手札に加える。オレはシャドー・ミストを手札に加え、融合を発動!手札のシャドー・ミストとフィールドのエアーマンを素材に融合召喚する!」

 

エアーマンを召喚し、その効果でシャドー・ミストを手札に加えると、フォレストマンの効果で手札に戻した融合を発動。シャドー・ミストとエアーマンを素材に融合召喚が行われる

 

「姿無き影の英雄と、疾き風が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!嵐の如き激しき力で、全ての敵を吹き飛ばせ!融合召喚!現れろ、E•HERO Great TORNDO!」

 

融合召喚によって、全てを吹き飛ばすGreat TORNDOが遊代のフィールドに現れた。遊代のターンはまだ、始まったばかりである。

 




今回は遊代と真澄とのデュエル前半までをお届けしました。これ以上書いてると最長くなるので……半分程で10000文字越えって……小説始めた頃は1000文字越えるのでヒーコラ言ってたのに……

そして困惑というのはルールの違いでした。先行ドローがなくなったのはARC-Vからですので、この点を生かしてみましたが如何でしたか?遊代からすればえっ?となりますよね。

そして分かる人には分かるのGXの登場人物ネタ、クロノス先生はボカシようがなかったので名前が出ていますが他の面々は名前は出していません。いずれ名前は出るでしょうが、暫くは名前は出さずに描写していこうと思っています。

次回でこのデュエルは決着を迎えます。果たして勝つのはどちらか?

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