遊戯王ARC-V~緋色の英雄~   作:《陽炎》

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今回は遊代と真澄のデュエルの後半戦です。果たして遊代はデュエルに勝ち、真澄とデートできるのか?それでは本編をお楽しみください。


第3話 英雄の仮面

「舞網中央公園にて、強大な召喚エネルギーが発生!」

 

薄暗い部屋に巨大なモニターには多数のグラフや座標等のデータが表示されている。そしてこの部屋にはオペレーターらしき女性達が複数名。

 

「召喚方式、融合です!」

 

「融合……」

 

そして召喚反応というデータがその舞網市中央公園から検出、判定。結果を映し出したモニターにはFUSION、即ち融合召喚を表す文字が表示されていた。その結果を見た1人の青年が掛けている眼鏡の奥に潜む瞳を光らせながらその結果を見ながら呟く。

 

「この召喚エネルギー、以前計測した物よりも遥かに上です!」

 

「まさか、これ程の召喚エネルギーとは……」

 

以前にも高レベルの融合召喚エネルギーが検出されたらしいが、今回のはそれをも遥かに凌ぐ様子。この計測値にはオペレーター達や黒服の男性も驚く。

 

「それにしても家のスクール生相手にアカデミアが何の目的で……」

 

黒服の男性がアカデミアと呼ぶモニターに移る少年は遊代、そして対戦相手の真澄はLDSの生徒。そう、此処はLDSを運営し、リアルソリッドビジョンを開発した大企業、レオ・コーポレーションのモニタールームである。

 

「中島」

 

「はいっ!」

 

「至急、車を出してくれ」

 

「はっ!」

 

中島と呼ばれる黒服の男性が眼鏡を掛けた青年による命令をすぐさま手持ちの端末を操作し行動に移す。

 

「社長、お車の準備整っております」

 

「よし。私は現場に向かう。この後も計測は怠るな」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

社長と呼ばれた青年は眼鏡をクイッと指で上げる動作をすると、オペレーター達に指示を出してモニタールームを後にする。彼こそが、弱冠16歳にしてレオ・コーポレーションの社長赤馬 零児(あかば れいじ)である。そして零児はモニタールームを後にすると中島と共に用意されたく車の下へと向かう。並外れた召喚エネルギーを検出した融合召喚を使うアカデミアに接触を図る為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現れろ、E•HERO Great TORNDO!」

 

レオ・コーポレーションにマークされたとは知るわけもなく、舞網中央公園にて遊代の真澄とのデュエルは続く。シャドー・ミストと風属性のエアーマンを素材に融合召喚されたGreat TORNDOは、フィールドに現れた瞬間にその名の通り強力な竜巻が効果として相手モンスターを襲う。

 

「Great TORNDOが融合召喚された時、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分にする!」

 

「なっ!?」

 

Great TORNDOが生み出す力を削る風圧タウン・バーストにより、真澄のフィールドの全てのジェムナイトの攻撃力・守備力は半減し、弱体化してしまう。

 

「更にシャドー・ミストの効果発動!このカードが墓地へ送られた場合、デッキから『HERO』1体を手札に加える。俺はE•HERO ブレイズマンを手札に」

 

そして融合召喚の素材として墓地へ送られたシャドー・ミストの効果でデッキからブレイズマンを手札に加える。しかし遊代の融合召喚はこれで終わりではない。

 

「オレは融合回収を発動!墓地の融合と融合素材となったシャドー・ミストを手札に加える」

 

「融合を回収したって事は……2回目の融合召喚をする気ね」

 

このターンドローした融合回収により融合とシャドー・ミストを回収。これでまた融合召喚するのかと真澄は思うが、遊代の狙いは少し違う。シャドー・ミストには2つ効果があるが1ターンにいずれか1つしか使用できない、なのでこのターンはもう融合素材としてもポテンシャルを生かせない。サーチしたブレイズマンを召喚し、その効果で融合を加えればフォレストマンと融合し、ガイアを融合召喚すればこのターンで決められる。

 

『けど、あのリバースカード……』

 

自分がリバースカードを使い凌いだ様に真澄もリバースカードで迎撃をしてくる可能性は高い。融合の発動やモンスターの召喚に対して発動しないとなれば、攻撃をトリガーとするカードの可能性が高い。ならばフォレストマンの効果を壁として残しつつあわよくばもう1度効果を狙おう。そうプランを練った遊代は更に動き出す。

 

「オレは融合をコストに、サモンプリーストの効果を発動。デッキからレベル4のE•HERO ブレイズマンを特殊召喚する!」

 

『今加えた融合をコストに?何を考えているの?』

 

墓地から回収した融合を発動せずに召喚僧のコストにした遊代のプレイングを見て思わずプレイングミスをしたと考える真澄だが、後にこの時の遊代のプレイングの真の狙いを知る事となる。

 

「ブレイズマンの効果発動!、このカードの特殊召喚により、デッキから融合を加える事ができる。オレはデッキから『融合』として扱う置換融合を手札に加える。置換融合はフィールドのモンスターしか融合素材にできない。けど充分だ。オレは今手札に加えた置換融合を発動して、フィールドのブレイズマンとサモンプリーストを素材に融合召喚する!」

 

『融合をコストに特殊召喚したブレイズマンの効果でデッキから融合を手札に加えたのはデッキの圧縮を狙ってならわかる。だとしても、なんでわざわざフィールドのモンスターでしか融合召喚できない置換融合を……?』

 

わざわざ普通の融合より条件が不利なカードを使ってまでフィールドのモンスターを素材に融合召喚する遊代の意図が真澄には理解できなかった。只のデッキの圧縮で、狙いのカードをドローする確率を上げる為か。それが狙いなのだろうと真澄は決め付けていた。

 

「灼熱の炎の英雄と、魔術の僧が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!正しき闇の力にて、悪しき敵をその手で打て!融合召喚!現れろ、E•HERO エスクリダオ!」

 

闇属性のサモンプリーストを融合素材とした事で、闇を司る英雄エスクリダオが現れる。そしてエスクリダオの効果は既に適用されている。

 

「エスクリダオの攻撃力は俺の墓地に眠る『E•HERO』1体につき100アップする」

 

「貴方の墓地にはエアーマン、ブレイズマンの2体。つまりエスクリダオの攻撃力は200アップして2700……」

 

墓地に眠るのはエアーマン、ブレイズマン、サモンプリーストの計3体のモンスターが眠る。『E•HERO』はエアーマンとブレイズマンの2体、よってエスクリダオの攻撃力は2700となる。

 

「バトルだ!オレはGreat TORNDOでジェムナイト・パーズを攻撃!スーパーセル!」

 

パーズの攻撃力は本来1600だが、Great TORNDOの効果により半減して現状は800。Great TORNDOの攻撃力は2800なのでその差は丁度2000の戦闘ダメージが発生する。

 

「くっ……!」

 

吹き荒ぶ竜巻によってパーズは破壊され真澄は2000のダメージを受ける。これで残りライフも2000、丁度半分である。

 

「続けて、エスクリダオでルビーズを攻撃!Dark diffuson(ダーク・ディフュージョン)

 

「くぅっ……!」

 

エスクリダオの腕から具現化した闇がルビーズへと伸び、その身体を貫こうと襲い掛かる。しかし此処でも真澄はリバースカードを発動しようとせずにルビーズは破壊され、攻撃力1250となっていたルビーズと攻撃力2700のエスクリダオとの差1350がライフから奪われ、残りライフは550となる。

 

『リバースカードを発動しない……?もしかしてブラフだったか?』

 

ブラフならばガイアを召喚しておけばよかったと後悔しつつも油断はならない。まだあのリバースカードがブラフかは真澄にしかわからないのだ。

 

「オレはこれで、ターン終了だ」

 

「それじゃあ、私のターン。ドロー」

 

手札はモンスターカードのシャドー・ミストとブレイズマンのみ、魔法や罠カードをセットしようにも手札にない。遊代はバトルフェイズ終了後ターンを終えた。そして真澄のターンへと移り彼女はドローする。

 

「中々やるじゃない、まさか私と同じ融合召喚を使うなんて驚いたわ」

 

「そりゃあどうも。それで、同じ融合召喚使いとして、オレはどうだったかな?」

 

「そうね……思ったより融合召喚を使いこなしていて、正直意外だわ」

 

同じ融合召喚の使い手として客観的に見ても遊代は融合召喚を使いこなしている。真澄は素直にそう思っている。しかし幾つか気になる事もある。

 

「それにしても、貴方一体何処で融合召喚を身に付けたのよ?融合召喚はLDSでしか教えていない筈なのに」

 

「LDS……あーあ。レオ・コーポレーションって会社が経営している塾か」

 

「あら、知っていたの?アクションフィールドとかは知らないのに。やっぱりLDSは有名なのね」

 

「ああ。交番で聞いたし、CMやらチラシで見たから」

 

「……そういう意味で言ったんじゃないわよ」

 

LDS、レオ・デュエル・スクールはレオ・コーポレーションが運営する業界トップのデュエル塾。充実した設備とカリキュラムからプロ輩出も業界1位。そして何よりここ最近では融合召喚等の他の塾では習えない召喚方も教えており、真澄もLDSの融合召喚コースに所属している。しかし遊代が知ってたのは交番で教えて貰ったのと、大通りのモニターや店のテレビ等のCMや貼り紙で見たからであり、真澄のいう此処に所属しているのはエリートという意味ではない。

 

「にしても、此処じゃそのLDSじゃなきゃ融合召喚使えないのか?」

 

「そうなるわね。何せLDSでも最近取り入れたばかりの召喚法だから」

 

『この世界じゃ、融合召喚ってそんなに珍しいのか……』

 

自分の世界では融合召喚は普通に使われていただけに此処でも世界観の違いを遊代は感じた。まさか融合召喚が其処まで珍しい召喚方法となっているとは。

 

「それなのに、貴方はLDSもアクションフィールドも知らないのに融合召喚を使っている。一体どうやって融合召喚を覚えたのよ」

 

「まあ、オレの場合はオレにデュエルを教えてくれた人が融合召喚を使ってたからなー。その影響ってとこかな」

 

「ふーん。でも、貴方と私では決定的な差が有るわ」

 

「決定的な差?」

 

そこまで言われる様なプレイングミスはしてはいないけどなと遊代は感じる。確かにガイアを出さなかったのはプレイングミスと言えばそうなるが彼女はガイアの存在を知らないからそれを指摘しようがない。

 

「それはLDSで学んでいるかいないか、LDSは最高のデュエルスクールよ。此処で学んで腕を磨けたお蔭で私や他の皆も強くなったし、大会の上位陣は殆どLDSだもの」

 

「へー。いい塾だな」

 

「だからこそ貴方は私に勝てない。LDSで学んでいるかいないか、その差はそれだけ大きいの」

 

「成る程ね。確かにLDSがスゲー塾なのは分かったぜ。でもな真澄ちゃん、これだけは言えるぜ」

 

LDSがデュエルを教えている場所として優れているというのは遊代も理解できた。しかしその上で遊代は言いたい事があった。

 

「デュエルの腕は環境にも左右されるかもしれねえ。けど、自分が選んだカード達で組んだデッキならカード達は答えてくれる。そうなったら、環境の差なんか軽く埋めちまうんだぜ」

 

「そうだとしても、そのカードをデュエリストが生かせなければ埋まらないわよ。現に貴方はさっきフィールドのモンスターでしか融合召喚できない置換融合を使っていたけど、わざわざ手札融合も行える融合をコストにサモンプリーストで呼び出したブレイズマンで手札に加えるカードではないわ。『融合』として扱うから置換融合を含めても3枚しか入れられないのに、わざわざ本来の『融合』より劣るカードを入れる理由があるとは思えないけど」

 

真澄の説明の通り、デュエルモンスターズでデッキを組む際のルールは40枚以上60枚未満、同じカードは3枚まで、リミットレギレーションを守るという3点。置換融合は『融合』として扱うので置換融合を入れる際には真澄が指摘した様に本来の『融合』は2枚しか入れられないのだ。

 

「心配ご無用。オレが組んだこのデッキのカード達にはちゃんと意味がある。勿論、置換融合にもな。それをこのデュエルで証明してみせるぜ!」

 

「あらそう、でもそれは無理ね。このデュエルは……このターンで終わるから!」

 

遊代の宣言に真澄はこのターンでデュエルが終了すると宣言する。そう、彼女はこのターンのドローフェイズにドローしたカードを見て己の勝利を確信していた。

 

「トラップカード発動!ジェム・エンハンス!ジェムナイト・ガネットをリリースして墓地の『ジェムナイト』1体を特殊召喚する。蘇れ、ジェムナイト・ルビーズ!」

 

ジェム・エンハンスは『ジェムナイト』をリリースする事で『ジェムナイト』モンスターを墓地から特殊召喚するトラップ。蘇生させるのは融合モンスターでも構わない。Great TORNDOの効果でステータスが弱体化していたガネットをリリースし、先程弱体化され戦闘破壊されたルビーズが墓地より復活する。

 

 

「そして私は魔法カード秘石の宝札を発動!ジェムナイト・ルビーズを墓地へ送り、カードを2枚ドローする!」

 

真澄がこのターンドローしたのは手札・フィールドのジェムナイト1体を墓地へ送る事で2枚ドローできるドローカード秘石の宝札。

 

『けど、墓地へ送るなら普通は弱体化したガネットをコストにする筈。それをわざわざ復活させたルビーズを墓地へ送ったって事は……』

 

墓地へ送るならば手札にルマリンが居る、にも関わらずトラップで蘇生してまで蘇らせた融合モンスターのルビーズを墓地へ送り秘石の宝札を使用したという事は何かしらの意図がある。遊代の直感がそう告げていた。

 

「更に秘石の宝札で墓地へ送った『ジェムナイト』が融合モンスターなら、デッキから『ジェムナイト』カード1枚を墓地へ送る事ができる。私は2体目のジェムナイト・ラズリーを墓地へ送る」

 

「そーいう事か!ラズリーを墓地へ送ってその効果を使う為に、融合モンスターのルビーズを蘇生させたのか」

 

そう、秘石の宝札には墓地へ送った『ジェムナイト』モンスターが融合モンスターならばデッキから『ジェムナイト』カードを墓地へ送れる効果がある。そして今その効果で墓地へ送られたジェムナイト・ラズリーの効果は既にこのデュエルで披露されている。

 

「ジェムナイト・ラズリーが墓地へ送られた事で効果発動!墓地の通常モンスター、ジェムナイト・ガネットを手札に加える。そして私はジェムナイト・フュージョンを発動!手札のジェムナイト・ルマリン、エメラル、ガネットを融合!」

 

「3体融合!?」

 

モンスターを3体素材に融合召喚するという事はそれだけ強力な融合モンスターを呼び出すという事だ。同じ融合使いとして遊代はその事はよくわかっている。

 

「雷帯びし秘石よ、幸運を呼ぶ緑の輝きよ、紅の真実よ、光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、全てを照らす至上の輝き!レベル9、ジェムナイト・マスター・ダイヤ!」

 

3体の秘石の騎士を素材として融合召喚れたのは地上で最も固く美しいダイヤモンドの如く至上の輝きを放つモンスター、ジェムナイト・マスター・ダイヤ。真澄のエースモンスターである。

 

『ジェムナイトって名前だけあって宝石のオンパレードだな。あの人を思い出すぜ』

 

宝石をその名の由来とするジェムナイトを見て思わず遊代は思い出す。自分にデュエルを教えた人の仲間であり、デュエルモンスターズの精霊と心を通わした宝玉の力宿したカードの精霊達を家族と呼び、デュエルを楽しむ男を。

 

「マスター・は貴方のエスクリダオと同じく、私の墓地の『ジェムナイト』モンスター1体につ100ポイント攻撃力が上がるのよ」

 

「真澄ちゃんの墓地のジェムナイトは合計6体。って事は600ポイントアップか」

 

遊代の言う通り真澄の墓地にはルマリン、エメラル、ガネット、ラズリー、パーズ、ルビーズ、合計6体のジェムナイトが存在している。これにより攻撃力2900のマスター・ダイヤは更に600アップしその数値は3500。

 

「ジェムナイト・マスター・ダイヤの効果発動!1ターンに1度、墓地のレベル7以下の『ジェムナイト』融合モンスター1体を除外して、ターン終了時まで、除外したモンスターと同名カードとして扱い、その効果を得る!私はパーズを除外」

 

「パーズを除外して、マスター・ダイヤがその効果を得る……って事は」

 

ジェムナイト・パーズは1度のバトルフェイズに2回攻撃でき、モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送れば破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える2つの効果を持つ。墓地のジェムナイトが1体減った事でマスター・ダイヤの攻撃力は100下がり3400となったが、変わりにパーズの2つの強力な効果を得た。

 

「バトルよ!ジェムナイト・マスター・ダイヤでE•HEROエスクリダオを攻撃!」

 

もしパーズの効果を得たマスター・ダイヤの2回攻撃が通れば戦闘ダメージ+効果ダメージ。エスクリダオとGreat TORNDOが戦闘破壊されれば合わせて6600、フォレストマンを破壊されても4200のダメージが確定。余裕で遊代のライフを削りきれる。

 

「トラップ発動!エレメント・カウンター!マスター・ダイヤの攻撃を無効にし、墓地の『E•HERO』

モンスター1体につき500のダメージを与える!」

 

しかし遊代は攻撃を無効にし、墓地の『E•HERO』の数だけ相手にダメージを与えるエレメント・カウンターを発動。墓地に存在する『E•HERO』はエアーマン、ブレイズマンの2体。つまり1000のダメージが真澄に発生。遊代のライフを0にする前に真澄のライフが0となってしまう。

 

「甘いわね、手札から速攻魔法輝石の回復(アッセンブル・リカバリー)を発動!フィールドの『ジェムナイト』1体の攻撃力か守備力の高い方の数値分、私のライフを回復する!」

 

「ライフを回復したか……」

 

だが真澄はライフ回復効果を持つ輝石の回復を発動。これによりマスター・ダイヤの攻撃力分、3400ライフを回復し、エレメント・カウンターの効果で1000ダメージを受けても残りのライフポイントは2950にまで戻った。

 

「攻撃を無効にされてもマスター・ダイヤはもう1度攻撃できる!私はマスター・ダイヤでフォレストマンを攻撃!」

 

そしてパーズの効果を得たマスター・ダイヤはもう1度攻撃の権利を残している。遊代のフィールドにリバースカードは無く、フォレストマンはマスター・ダイヤの宝石が装飾せれた大剣に切り倒された。

 

「そしてパーズの効果を得たマスター・ダイヤの効果発動!破壊したフォレストマンの元々の攻撃力、1000のダメージを与える!」

 

「くっ!」

 

「悪いけど、フォレストマンの効果は使わせないわよ」

 

戦闘ダメージこそ発生はしなかったが効果ダメージにより、1000のダメージを遊代は受ける。これにより遊代のライフは3000。ライフポイントはほぼ互角となった。そしてフォレストマンが破壊された事で次のターンのサルベージ効果も使えなくなる。

 

「ジェムナイト・フュージョンの効果発動。墓地のエメラルを除外し、墓地のこのカードを手札に加える。エメラルが除外された事でマスター・ダイヤの攻撃力は100ダウンする」

 

「バトルフェイズの後に回収……?何かあるな」

 

バトルフェイズが終了し、メインフェイズ2に移行。真澄はエメラルを除外してジェムナイト・フュージョンの回収効果を発動。しかし手札は回収したジェムナイト・フュージョンを含めて2枚。マスター・ダイヤを素材に今更融合召喚を行うとは思えない、何か別の狙いが有ると遊代は予想する。

 

「その予想辺りよ。墓地の輝石の回復の効果発動!手札を1捨てて、このカードを手札に戻す。私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

真澄がジェムナイト・フュージョンを回収したのは、同じく回収効果を持つ輝石の回復を墓地から回収する為。そして回収した秘石の回復ともう1枚の手札を伏せて、真澄はターンを終えた。

 

「オレのターン!」

 

『あのリバースカード……』

 

1枚は輝石の回復、もう1枚は恐らく罠だろう。輝石の回復まで伏せたという事は何か仕込んである。遊代はそう疑念を持つ。

 

「オレはブレイズマンを召喚。ブレイズマンの効果発動。召喚成功時デッキから融合を手札に加える。そして今加えた融合を発動!Great TORNDOとブレイズマンを素材に融合召喚する!嵐巻き起こす英雄と、灼熱の炎が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!激しく燃える正義の炎で、仇なす悪を焼き尽くせ!融合召喚!現れろ、E•HERO ノヴァ・マスター!」

 

炎の属性ブレイズマンと融合した事で、炎を操る達人ノヴァ・マスターが融合召喚される。そして『E•HERO』が2体墓地へ送られた事でエスクリダオの攻撃力は更に200アップし、2900となる。

 

「トラップカードオープン!激流葬!」

 

「やっぱりな!」

 

トラップは予想していたがこれには遊代も顔をしかめる。激流葬はモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できるトラップ、その効果はフィールドの全てのモンスターを破壊するという強力な除去。しかし全てのモンスターを破壊するという事は真澄のフィールドのマスター・ダイヤも破壊されるという意味だが、真澄は変わらず冷静な顔をしていた。

 

「更に速攻魔法、輝石の回復を発動!マスター・ダイヤの攻撃力3300、私のライフを回復する。そしてこのターン、マスター・ダイヤは破壊されない!」

 

「マジかよ……って事は」

 

輝石の回復にはライフ回復効果には対象とした『ジェムナイト』を破壊されなくする効果を持っている。前のターンではそもそも破壊される機会がなかったが、今回は違う。だからこそ真澄は前のターン回収したこのカードを伏せておいたのだ。

 

「よって破壊されるのは貴方のモンスターのみ!」

 

「くっ……やるなー真澄ちゃん。なら」

 

自分のフィールドのモンスターだけ見事に激流葬で一層されてしまった。しかも3300ライフを回復した真澄のライフポイントは6250。が、まだ手は残されている。

 

「オレは墓地の置換融合の効果を発動!このカードを除外して墓地の融合モンスター、Great TORNDOをエクストラデッキへ戻し、カードを1枚ドローする!」

 

「あのカード、そんな効果を……!?」

 

「さっき言っただろ?置換融合にも、どんなカードにも意味があるのを証明してみせるって」

 

フィールドのモンスターでしか融合召喚できない代わりに墓地の融合モンスターをエクストラデッキへ戻し、そしてドローする。そんな効果を持っていたのか、遊代は融合モンスターの再度の融合召喚と、手札増強も考えて置換融合を入れていたか。真澄は今置換融合を採用していた意図を理解する。

 

「でも、融合召喚しようにも、もう貴方は融合を使いきった。エクストラデッキに戻しても融合召喚できないわよっ」

 

「それにどうかな?それはこのドロー次第だ!」

 

真澄の言う通り最早遊代は融合を使い切り、融合召喚しようにもできない。しかし遊代には関係ない、まだ自分のデッキには融合召喚を行えるカードは何枚もあるからだ。

 

「よっしゃきたぜ!オレは魔法カード、ミラクル・フュージョンを発動!墓地のブレイズマンとエアーマンを除外して融合召喚する!」

 

「墓地融合!?そんなカードを引くなんて、運がいいわね」

 

最早通常召喚もできない、手札も2枚しかなく、そもそも融合召喚しようにも融合は全て使用し手札にもデッキにも存在しない状況で墓地のモンスターを除外して融合召喚するとは、引きの強い男だと真澄は感心する。真澄も墓地のモンスターを除外して融合召喚を行うカードは持ってはいるから除外融合に関しては驚きはしない。この劣勢化でそれをドローした事には驚きだが。

 

「再び現れろ、強大な竜巻を操る英雄、Great

TORNDO!そしてその効果で相手モンスターの攻撃力・守備力は半分になる!」

 

再び融合召喚されたGreat TORNDOのタウン・バーストによりマスター・ダイヤの攻撃力は1650・守備力は1250と半減してしまう。しかしこのターン、マスター・ダイヤは戦闘でも効果でも破壊されない。

 

「そしてオレは魔法カード、ヒーローズ・エピックを発動!オレの墓地にレベル5以上の『HERO』融合モンスターが2体存在し、フィールドに『HERO』モンスターが存在する場合、カードを3枚ドローする!」

 

更に遊代はこのターンにドローしていた魔法カードヒーローズ・エピックを発動。条件こそ厳しいカードだがそれを満たせば3枚ドローと、手札消費の激しいこのデッキには有り難いカード。

 

「っ、激流葬で破壊したのが裏目に……」

 

「それもあるけど、あのタイミングで激流葬の発動は間違ってないぜ。それに、置換融合の効果でミラクル・フュージョンをドローできてなければこのカードは発動出来なかったしな」

 

真澄の言う通り激流葬で遊代のヒーロー達が破壊されていたからこそ、墓地の発動条件が満たされており。ブレイズマンの効果で置換融合を加えていたからこそミラクル・フュージョンをドローでき、全ての条件を満たせた。

 

「なるほどね。確かにあのカードを採用していた意味はわかったわ……でも、まだデュエルは私が優勢よ!」

 

確かに真澄は手札こそ0だが、ライフは6250。そしてマスター・ダイヤも弱体化こそしているが、このターン破壊はされない。つまり次のターンが回ってくる確率は高い。対して遊代のライフは3000だが、フィールドにはGreat TORNDOのみ。手札も現在はシャドー・ミストしかなく、『融合』は全て使用しデッキにも残っていない。

 

「そーかもな。でも、このドローしだいじゃ……まだ分からないぜ!」

 

しかしヒーローズ・エピックによる3枚のドローカード次第では分からない。遊代は墓場に眠るヒーロー達が残した遺産という名のカードをドローする。

 

「よしっ!」

 

遊代はドローした3枚のカードを見て頬を綻ばせる。何故なら、このデュエルに勝利できるカードが舞い込んできたからだ。

 

「オレは魔法カード、ミラクル・フュージョンを発動!墓地のノヴァ・マスターとフォレストマンを除外して融合召喚する!」

 

「またそのカードを!?」

 

ヒーローズ・エピックにより引いた1枚は2枚目のミラクル・フュージョン。それにより墓地のを除外し、融合召喚を行う。

 

「新たな炎の英雄と、偉大なる自然が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!大地を揺るがす偉大な力で、如何なる敵でも薙ぎ倒せ!融合召喚!現れろ、E•HERO ガイア!」

 

地属性のフォレストマンを融合素材とし、大地を揺るがすE•HERO ガイアが融合召喚される。

 

「ガイアの融合召喚成功時、効果発動!ジェムナイト・マスター・ダイヤ攻撃力をターンの終わりまで半分にして、その数値分ガイアの攻撃力はアップする!」

 

ガイアの融合召喚成功時に相手モンスター1体を対象として発動できるフォース・ドレインにり。1650となっていたマスター・ダイヤの攻撃力は更に半減し、825。ガイアの攻撃力はその数値分上昇して3025となる。

 

「マスター・ダイヤの攻撃力が更に下がって……」

 

「バトルだ!Great TORNDOでジェムナイト・マスター・ダイヤを攻撃!スーパーセル!」

 

「ぐうっ……っ!」

 

Great TORNDOの起こす凄まじい竜巻がマスター・ダイヤを襲う。破壊こそされないがその差1975のダメージが真澄のライフを奪う。

 

「そしてガイアでマスター・ダイヤを攻撃!コンチネンタル・ハンマー!」

 

マスター・ダイヤの力を奪い取り強化されたガイアによる大陸を揺るがす鉄槌がマスター・ダイヤに振り下ろされる。攻撃力の差は2200、破壊されずともダメージは通り、真澄の残りライフは2075。

 

「くっ……やってくれたわね。でも、これで貴方のフィールドに攻撃できるモンスターはいないわ!」

 

これで2体のヒーローは攻撃を終えた。最早遊代のフィールドに攻撃できるモンスターは存在せず、バトルフェイズは終了すると真澄は告げた。

 

「確かにもうGreat TORNDOもガイアも攻撃できない。だけどな、真澄ちゃん。1つ教えてあげよう。オレのヒーロー達は仲間と融合して戦うけど、変身して戦う事だってできるんだぜ!」

 

「……?何言ってるの?」

 

「それを今、見せてやるよ!オレは手札から速攻魔法、マスク・チェンジを発動!」

 

理解できないという真澄の返答に、遊代はこれがその答えだと言わんばかりにバトルフェイズ中に発動したのはヒーローズ・エピックの効果でドローした1枚のカード。速攻魔法、マスク・チェンジ。

 

「マスク・チェンジはオレのフィールドの『HERO』1体を墓地へ送り、同じ属性の『M•HERO』融合モンスターをエクストラデッキから変身召喚させる!」

 

「変身召喚!?」

 

遊代のマスク・チェンジの説明に真澄は仰天し、驚きを隠せない。モンスター1体だけでエクストラデッキからモンスターを呼び出す召喚などスクールで習った事も聞いた事もない。

 

「大地を揺るがす英雄よ、神秘の光をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!女神の加護を持ってして、大軍だろうと薙ぎ払え!」

 

ヒーローを新たな姿に変えるマスク・チェンジにより、1人の英雄が新たな力を身に纏った仮面の英雄が遊代のフィールドに見参する。

 

「現れろ、M•HERO ダイアン!」

 

現れたのはガイアと同じく地属性の英雄、ダイアン。真澄のジェムナイト・マスター・ダイヤと同じく、ダイヤモンドが名前の由来、仮面や装甲部分は輝き、肩やベルトにはダイヤモンドの装飾も施されている。そしてその攻撃力は2800。弱体化を重ねたマスター・ダイヤとの現在の攻撃力の差は『2075』だ。

 

「そんな……!?融合モンスターをモンスター1体で特殊召喚するなんて……」

 

真澄にはまだ信じられない。本来2体のモンスターを融合する事で特殊召喚できるモンスターを、1体のモンスターのみで呼び出して来た事に驚きが隠せない。

 

「言ったろ?オレのヒーローは融合する事も変身する事もできるってさ」

 

遊代の言葉通り、元素の名を持ち、融合する事でフィールドに見参するのがE•HERO。そして、仮面の名を持ち、文字通り変身する事でフィールドに見参するのが遊代と共に戦うもう1つの英雄、M•HERO(マスクド・ヒーロー)である。

 

「さあ行くぜ!M•HERO ダイアンでマスター・ダイヤを、攻撃!」

 

「くっ……!」

 

バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターに攻撃の権利がある事くらい当然真澄は知っている。しかし苦虫を潰した様な顔をしているのはダイアンの追撃を予想だにしていなかった訳ではない。輝石の回復の効果で破壊はされないがこのターン攻撃されるのは3回目だ。そしてこの戦闘を含む全てで真澄に戦闘ダメージが発生している。1度目はGreat TORNDOの竜巻を受け、1975のダメージを、回目はガイアの鉄槌を下され2200のダメージ。このターン既に合計4175のダメージを既に負っている。

 

「ディスバーション!」

 

ダイアンのランスがマスター・ダイヤを貫く。破壊されはしないが、戦闘ダメージは与えられる。そしてこのダイアンとの戦闘でその差2075のダメージが真澄に発生。

 

「……私の負けね」

 

そう、真澄に残っていたライフは『2075』。ダイアンとマスター・ダイヤの戦闘によって発生する自分へのダメージと同じ。真澄のライフポイントは0丁度となり、素直に負けを認める。これによりこのデュエルは遊代の勝利で終わりを迎えた。

 

「どうだ真澄ちゃん。オレのヒーローデッキは強えーだろ?」

 

「そうね……融合召喚だけならまだしも、モンスター1体を融合モンスターに変えるなんて予想外だったわよ」

 

「なっ?スゲーだろ」

 

正直融合召喚を使うだけでも予想外だというのに、その上モンスター1体を融合モンスターに変える変身召喚まで出されるなどとは、バトルフェイズ中の融合召喚ならまだしも変身召喚など想定しようがない。エリート意識のある真澄だが、このデュエルは完全に自分の負けだと認識している、あれだけライフを削る手段を繰り出しながら遊代のライフは3000も残ったままデュエルを終えたのだから。

 

「それで、私は何時、貴方とデートすればいいのかしら?」

 

「おっ。そーだなぁ、真澄ちゃんってケータイ持ってる?」

 

勝利は遊代となったので、デュエル中に取り付けられた約束による真澄が負けたら遊代に待ち案内がてらデートをするという約束が執り行われる。真澄が勝てばちゃん付けで呼ばない約束だったが、遊代の勝ちの為それは施行されない。

 

「ケータイって、連絡ならデュエルディスクでできるわよ」

 

「えっ?マジで!?」

 

「ええ。電話もメールもネットもこれでできるからケータイなんていらないのよ」

 

「信じらんねー、オレのディスクにはそんな機能一個もねーぞ……」

 

遊代はまたもカルチャーショックならぬ、ワールドショックを受ける。まさかデュエルディスクにまでここまでの違いがあるとは、形だけではなく機能まで大幅に違う。自分のデュエルディスクには電話機能もメール機能も無く、当然ネットもできない。というより元々デュエルをする為のデュエルディスクにそんきの機能が備わっている事に驚いた。

 

「じ、じゃあ……アドレスとか教えてくれねーかな?オレから連絡するからさ」

 

「いいけど……貴方連絡する方法あるの?……ん?」

 

「どーした?真澄ちゃん?」

 

などと遊代と真澄がやり取りをしていると公園の入り口前の道路に車が1台止まるのが真澄の目に入った。その車は普通の一般車ではなく、高級車でありとてもこの公園に止まるには違和感がある。そしてその車のドアが開き、車内から出てきた人物に真澄は更に驚く。

 

「赤馬社長!?なんで此処に!?」

 

「赤馬って……確かレオ・コーポレーションの社長か」

 

「そうよ、普段滅多に人前に出ないのに何で……」

 

車内から降りて此方に近付いて来たのは真澄が所属するLDSを運営するレオ・コーポレーションの社長、赤馬零児。遊代も交番で教えては貰ったので知ってはいる。しかし真澄の言う通り普段は人前に滅多に姿を表さない、その零児が何故公園に来ているのか真澄にはわからない。

「まあ、公園に遊びに来たって訳じゃなさそーだな」

 

「当たり前でしょ!」

 

クールな風貌通りに冷静な男である零児が公園で砂場やら滑り台やらブランコやらで遊んでる姿など想像できないし、見たくもない。遊代の発言に真澄が突っ込んでいると、零児が遊代の目の前に立ち、歩を止めた。

 

「君に話がある、我が社に来て貰えるかな?」

 

それは赤馬零児による招待。これが遊代を次元を超えた争いに関わる切欠となる等、本人は知る由もなかった。

 

 

 




遊代、勝利するも赤馬零児によりデートの話が持ち越しに……

「オレは許さない……レオ・コーポレーションを、赤馬零児を!」

などと冗談は置いておいて、私は赤馬零児好きですよ、初期の人格者振りとか遊戯王のライバルには珍しい人間できた人ですし、基本私は遊戯王は全作品もキャラも、みんな好きですから。

そして遊代はこのデュエルでM•HEROを初使用。遊代のデッキは融合召喚と変身召喚を使う『HERO』デッキとなっております。この世界の人からすれば、融合召喚だけでも驚くのに、変身召喚なんてもっと驚きますよ、融合モンスターだけど、ほぼ別の召喚方法ですから。

赤馬零児は遊代に何を聞き何を話すのか?そして遊代は真澄の連絡先を聞き、デートの約束を取り付けられるのか?次回以降をお待ちください。

2016年11月22日

HEROの遺産のOCG化により小説内に登場していたHEROの遺産をヒーローズ・エピックという名前に変更しました。
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