これって私だけですかね?
LDSセンターコートにて始まった異世界から来た融合召喚の使い緋紅遊代とLDSを運営するレオ・コーポレーションの社長赤馬零児のデュエル。現在は4ターン目で零児のメインフェイズ中、零児の手札は1枚でモンスターゾーンには融合・シンクロ・エクシーズを含む4体の『DDD』上級モンスター、魔法・罠ゾーンには表側表示の『契約書』4枚とそれぞれ4枚のカードが存在しLPは8100とデュエル開始時の倍以上の数値。
「融合召喚だけじゃなくて、シンクロ召喚にエクシーズ召喚……あんたスゲーよ!こんな召喚見たことねえ!」
シンクロ召喚とエクシーズ召喚という初めて目の当たりにした召喚方法に興奮を隠せない遊代の手札は2枚、モンスターゾーンにはM•HERO カミカゼ1体、魔法・罠ゾーンには2枚のリバースカード。LPは3900とデュエル開始時とほぼ変わらない
『あの反応……本当にシンクロやエクシーズ知らないのか……』
遊代の反応を見るにシンクロ召喚には僅かばかりの知識は有るように思えるが、エクシーズ召喚に至っては全く知識はない。融合次元のアカデミアならばシンクロ召喚もだが、エクシーズ召喚は知っていて当たり前の筈。しかし目の前の遊代は明らかにエクシーズは初見の反応だ。遊代の力と証言を見極める為に行っているこのデュエルだが、此処までの遊代は黒か白かでいえば白。
「では、行くぞ!」
しかしまだ確信は持てない。全てはこのデュエルでそれを見極める。異次元を統べる4体の王を揃えた零児はバトルフェイズに移る。
「私はDDD神託王ダルクでM•HERO カミカゼを攻撃!」
まずは攻撃力2800の融合モンスター、DDD神託王ダルクで攻撃力2700のM•HERO カミカゼを攻撃。神託を込めたレイピアの1突き、オラクル・チャージがカミカゼを刺し貫こうとする。
「M•HERO カミカゼは戦闘では破壊されない!」
「だが、ダメージは受けて貰う!」
「わーってるよっ!」
カミカゼは戦闘では破壊されない効果を持つ。なのでダルクの神託を込めた一突きはカミカゼに跳ね返される。しかし戦闘破壊されなくても戦闘ダメージは発生し、100のダメージが遊代のLPから引かれる。
「そしてカミカゼがモンスターゾーンに居る限り、相手はモンスター1体でしか攻撃できない!と言っても社長さん、あんたのフィールドにはもうカミカゼより攻撃力の高いモンスターは居ねーけどな」
カミカゼには戦闘で破壊されない効果と戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ればドローする効果に加えて、相手は1体のモンスターでしか攻撃できなくする効果も持っている。最も遊代の言う通り零児のフィールドにはもうカミカゼより攻撃力の高いモンスターは存在しない。
「しかし、私のフィールドにこのカードがあるのを忘れていないか?」
しかし零児の言う通りフィールドにあるカードが既に発動している。それは4枚発動している『契約書』の内の1枚である永続トラップ、戦乙女の契約書。『契約書』共通のデメリットに加えて相手ターンの間、自分の悪魔族モンスターの攻撃力を1000上げる効果の他に、1ターンに1度、手札の『DD』または『契約書』1枚を捨ててフィールドのカード1枚を破壊する効果もある。これを使われればカミカゼが破壊されて遊代の場にモンスターは居なくなる。
「戦乙女の契約書の効果を使えばカミカゼを破壊でき、残る私の3体のモンスターは攻撃が可能となる」
「確かにそーだな。けど、それならダルクで攻撃する前に発動する。違うか?」
最もそれなら攻撃する前に発動している筈。なので遊代の返した言葉の様に今更効果を発動する可能性は低いのだが、それでも0ではない。
「ふっ、その通りだ。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
正解の答えだと言わんばかりの態度で零児はバトルフェイズを終えると残る1枚の手札をセットしてターンを終えた。
「オレのターン!ドロー!」
遊代のターンへと移りカードをドロー。遊代のターンとなった事で戦乙女の契約書の効果により零児の悪魔族モンスターの攻撃力は1000アップし、より戦闘で倒すのが難しくなる。
「とりあえず、ダルクだけは倒さねーとな」
零児のフィールドには自分へのダメージをライフ回復効果に変える効果を持つダルクが佇んでいる。これでは4枚の『契約書』のデメリットもメリットでしかなく次のターンで合わせて4000もライフを回復されてしまう。現在遊代のLPが3800で零児のLPが8100と倍以上の差だ、このデュエルで発生してダメージは零児が300で遊代は200。与えたダメージならば自分の方が多いのにも関わらず、ダルクのよりデメリットを帳消しにされてこの差だ。しかし今のドローしたカードならばダルクを倒す事ができる。
「墓地に眠るネクロダークマンの効果!このカードが墓地に存在する場合に1度だけ、『E•HERO』をリリースなしで召喚できる!オレはレベル7のE•HERO エッジマンを召喚!」
「成る程、ブレイズマンの効果で墓地へ送っていたのはこの為か……」
本来モンスターを2体リリースしてアドバンス召喚する必要があるレベル7の上級モンスターを墓地のモンスター効果でリリースなしで召喚、前のターンでネクロダークマンを墓地へ送っていたのはこういう意図があったのかと零児は納得する。
「俺は手札から速攻魔法、フォーム・チェンジを発動!カミカゼをエクストラデッキに戻し、同じレベルの『M•HERO』を変身召喚する!」
「ほう、変身召喚にも複数方法があるのか」
フォーム・チェンジは『HERO』融合モンスターをエクストラデッキへ戻し、元々のレベルと同じでカード名が異なる『M•HERO』を『マスク・チェンジ』による特殊召喚扱いとして特殊召喚するカード。マスク・チェンジとは違い属性が同じである必要がない変わりに対象の『HERO』が融合モンスターである必要があるが融合モンスターを呼び出す事に特化した遊代のデッキなら条件は容易に満たせる。
「神風纏いし英雄よ、数多の雨をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!天より落ちる雫にて、全ての敵を浄化せよ!M•HERO アシッド!」
カミカゼがフォーム・チェンジにより姿を変え現れたのは、同じくレベル8で酸の名を持つ水属性の仮面の英雄、M•HERO アシッド。攻撃力は2600とカミカゼより100下がっているが問題ない。何故ならその効果こそがアシッドの真骨頂なのだから。
「アシッドが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊し、相手モンスターの攻撃力は300ポイントダウンする!」
「何だと!?」
そう。M•HERO アシッドの効果は登場時に相手の魔法・罠を一層し、更に相手モンスターの攻撃力を弱体化させる効果。酸の名の通り相手フィールド全てを酸が襲うのだ。
「アシッド、相手フィールド浄化しろ!Acid rain!」
アシッドが手に持つ銃を天へと向けて引き金を引くと光線が酸の雨の様にななって零児のフィールドのカード目掛けて降り注がれる。
「トラップ発動!
「何!?」
しかし零児は伏せていたトラップカード契約洗浄によりアシッドの効果ではなくそのカードの効果で自分フィールドの4枚の『契約書』を破壊する。
「この効果により私は契約を全て破棄し、破棄した『契約書』と同じ枚数カードをドローし、更にドローしたカード1枚につき1000ポイントLPを回復する!」
「4枚ドローした上にライフを4000回復だとぉ!?」
これには遊代も驚かざる得ない。アシッドの効果で零児の魔法・罠を一層しようと思ったら手札を4枚増やしライフまで4000回復。これで零児のLPは12100、遊代の3倍以上の差が開いてしまった。
「だけど、モンスターの攻撃力・守備力は下げさせて貰うぜ!」
しかし魔法・罠は破壊出来ずともアシッドの効果は発動する。4体の『DDD』に光線が直撃し、攻撃力が300ポイントダウンする。結果的には戦乙女の契約書も姿を消した事で更に『DDD』の攻撃力は1000ダウンしダルクの攻撃力は2500。戦闘破壊が可能となった。
「バトルだ!オレはE•HERO エッジマンでDDD神託王ダルクを攻撃!パワー・エッジ・アタック!」
エッジマンを召喚し場に2体の上級ヒーローが揃った遊代はまず召喚したばかりのエッジマンでダルクを攻撃する。その腕から仕込まれていた刃を出現させた一殴りはダルクに直撃、エッジマンの攻撃力は2600に対してダルクの攻撃力はアシッドの効果で2500にダウンしておりこの戦闘で破壊。100のダメージが零児のLPから引かれる。
「そしてM•HERO アシッドでDDD怒濤王シーザーを攻撃!Acid bullet!」
「くっ……」
アシッドが銃の引き金を引いた事で光線が放出。そのレーザーはシーザーを打ち抜き破壊、弱体化したシーザーの攻撃力は2100。アシッドとの差500のダメージが零児を襲う。
「怒濤王シーザーの効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから『契約書』1枚を手札に加える。私は再雇用の契約書を手札に」
しかしシーザーが墓地へ送られた事で効果が発動。零児はデッキから新たな『契約書』を手札に加える。
「オレはセットしていた速攻魔法、マスク・チェンジ・セカンドを発動!手札を1枚捨てて、オレのモンスターを墓地へ送り、そのモンスターよりレベルが高い同じ属性の『M•HERO』に変身喚する!」
2体のヒーローは攻撃を終えたが遊代はセットしていたマスク・チェンジ・セカンドを発動。このカードは手札コストもあるが墓地へ送るモンスターは『HERO』でなくても良い。今回は『HERO』しか存在しないが、例えば遊代のデッキだとサモンプリーストを『M•HERO』に変身召喚させる事もできる。
「オレはエッジマンを墓地へ送り、同じ地属性でレベルの高い『M•HERO』に変身召喚する!」
残る1枚の手札を捨て、エッジマンを対象にその効果を発動。レベル7・地属性のエッジマンを墓地へ送ったので呼び出せるのは、レベル8以上で地属性野『M•HERO』となる。
「鋭き刃携える英雄よ、神秘の力をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!女神の加護をもってして、大軍だろうと薙ぎ払え!M•HERO ダイアン!」
エッジマンを変身させて呼び出したのは地属性の仮面の英雄ダイアン。先程の真澄とのデュエルではその勝負を決める攻撃を放ったモンスターである。
「ダイアンでDDD疾風王アレクサンダーを攻撃!ディスバーション!」
「くっ……」
現れたダイアンは己が武器であるランスを構えアレクサンダー目掛けて駆け寄り、その一撃を見舞わせる。アレクサンダーの攻撃力は2200にダウンしており、2800の攻撃力を持つダイアンの攻撃によりそのまま戦闘破壊された。そしてその差600のダメージが零児のライフから引かれる。
「ダイアンのモンスター効果発動!戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキから攻撃力1000以下の『HERO』1体を特殊召喚できる!」
アレクサンダーを戦闘で破壊した事でダイアンの効果が発動。この効果により遊代はデッキから攻撃力1000以下の『HERO』を呼び出す事ができる。
「オレは2体目のE•HERO シャドー・ミストを特殊召喚。シャドー・ミストが特殊召喚に成功した事で効果発動!デッキから『チェンジ』速攻魔法1枚を手札に加える!」
「『HERO』だけではなく変身召喚のキーとなるカードまで加える事ができるのか」
遊代はダイアンの効果でデッキから2体目のシャドー・ミストを特殊召喚。シャドー・ミストには墓地へ送られた場合にデッキから『HERO』を加える効果に加えて、特殊召喚に成功した場合に『チェンジ』速攻魔法を加えられる効果も持っている。しかしこの2つの効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。つまりこのターンはもうシャドー・ミストの効果を発動できないのだ。
「オレはシャドー・ミストの効果でデッキから速攻魔法、フォーム・チェンジを手札に加えて、発動!アシッドをエクストラデッキに戻して同じレベルの『M•HERO』に変身召喚する!」
シャドー・ミストの効果で2枚目のフォーム・チェンジを手札に加えると遊代は直ぐ様発動。アシッドをエクストラデッキへ戻しレベル8の『M•HERO』へと変身させる。
「全てを浄化する英雄よ、神風の加護をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!再び現れ、世界を守れ!M•HERO カミカゼ!」
1回目のフォーム・チェンジとは異なり今度はアシッドをエクストラデッキへ戻し、風を操る仮面の英雄へと姿を変え、カミカゼが再び現れる。
「カミカゼでDDD烈火王テムジンを攻撃!ディバイン・ウインド!」
「ぐっ……!」
カミカゼの攻撃力は2700。アシッドの効果で弱体化したテムジンの攻撃力は1700、当然の如くテムジンはその掌からはなたれた神風を込めた攻撃で破壊され、零児に1000のダメージが襲う。
「DDD烈火王テムジンの効果!このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合、墓地の『契約書』1枚を手札に加える事ができる。私は地獄門の契約書を手札に加える」
「ただではやられてくれねーか。けど、カミカゼが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った事で効果発動!オレは1枚ドローする!」
零児はテムジンが破壊され墓地へ送られた事で墓地の冥王の契約書を回収、遊代はカミカゼが戦闘でテムジンを破壊し墓地へ送った事でカードをドロー。互いに手札を1枚増やす。
「そしてシャドー・ミストでダイレクトアタック!」
「くっ……!」
零児のフィールドにモンスターが存在しなくなった事で直接攻撃が可能となった。シャドー・ミストの蹴りが零児を蹴り飛ばし、零児はシャドー・ミストの攻撃力1000のダメージを直に喰らった。
「……見事な攻撃だ。まさか1ターンで私の『DDD』4体を全て倒すとはな」
「そいつはどーも。そんじゃあ、お褒めのお礼にまだまだ行かせて貰うぜ!トラップ発動!スピリット・フュージョン!ライフを1000払い、墓地のモンスターを除外して融合召喚する!」
「ほう……墓地のモンスターを使用して融合召喚か」
遊代は1ターン目にセットしていたトラップカード、スピリット・フュージョンを発動。このカードは墓地のモンスターを除外し、尚且つ1000のLPを払う必要があるが遊代が使用するミラクル・フュージョンをバトルフェイズ中に発動できると思えばこのコストは割り切れる。
「オレは墓地のE•HERO エアーマンとE•HERO ボルテックを除外し、融合!疾き風の英雄と、激しき稲妻が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!眩き輝き解き放ち、全ての悪を滅殺せよ!融合召喚!現れろ !E•HERO The シャイニング」
墓地に眠る『E•HERO』エアーマンと、光属性のボルテックを除外し、E•HERO The シャイニングを融合召喚される。そして『E•HERO』が除外された事でThe シャイニングの効果が生きる。
「The シャイニングは除外されている『E•HERO』1体につき300ポイント攻撃力がアップする。除外されている『E•HERO』はエアーマンとボルテックの2体、つまり攻撃力は600アップ!」
「除外したモンスターをも呼び出したモンスターの効果に役立てるとは……」
本来なら除外して融合召喚するだけの所を、除外されている『E•HERO』の数だけ攻撃力を上げるThe シャイニングを融合召喚する事でその効果による攻撃力強化に繋げてきた遊代のプレイングに素直に零児は驚き関心する。
「The シャイニング、プレイヤーにダイレクトアタック!オプティカル・ストーム!」
「ぐおっ!っ……!」
攻撃力が600アップしたThe シャイニングの攻撃力は3200。その全身から放たれる視覚を眩ます輝きの波動は嵐の様に零児に襲い掛かる。実体化したモンスターの攻撃だが、先程のシャドー・ミストの非ではない攻撃がモロにその肉体に直撃した事で、零児はその衝撃の強さに顔を歪ませながら、ズザザザと足が地面と摩擦を起こしながら後ろへと飛ばされる。
「オイオイ大丈夫か?もう実体化させる必要はねーんじゃねーか?」
「大丈夫だ、気にしなくていい。フフフッ……やるじゃないか。私の想像以上に君は融合召喚を巧みに使いこなしている」
「よく言うぜ、こんだけやってもまだライフはそっちが上じゃねーか」
遊代の融合召喚を使いこなしている実物を誉める零児。だが遊代の指摘通り、このターン遊代が融合モンスター5体を含めた6体のヒーロー達の攻撃で合計6400のダメージを与えたにも関わらず零児のLPはまだ5700もある。遊代はこのターンスピリット・フュージョンを発動する際にLPを1000払っており残りのライフは2800と半分以下だ。
「与えたダメージはこっちが圧倒的に多いってのによー」
このデュエルでこれまで遊代が受けたダメージは200、対して与えたダメージは6700。にも関わらずこれだけやって倍以上の差が開いている。ダルクの効果と契約洗浄の効果によりこのデュエルで8400もライフを回復されたのがまだ響いている。
『その上、契約洗浄のドローとシーザーとテムジンの効果で手札も6枚だしな……』
しかも相手のターンにも関わらず零児は0枚だった手札をこのターンで一気に6枚にまで増やしている。フィールドに1枚もカードがなくても6枚もあれば次の自分のターンへの布石には十分だ。これは明らかに零児の実力が自分と同等かそれ以上だという現実を遊代に突き付けるには十分過ぎる内容だ。最もそれを当の遊代は楽しんでいるのだが。
『まあ、ダルクは破壊したし、もうダメージを回復に変えられる事がなくなっただけマシか』
取り敢えず、効果ダメージをライフ回復に変えてしまうDDD神託王ダルクを含む4体の上級モンスターを倒しただけマシだと遊代は結論付けた。
「ところで、もうバトルは終わりかな?」
「ん?ああ」
零児の推測通り遊代はもうこのターン攻撃できる手段は残されていない。よってこのターンの遊代のバトルフェイズは終了する。
「そうか……ならば蘇るがいい!異次元を統べる王達よ!」
「なっ……なにっ!?」
「DDD烈火王テムジン!DDD疾風王アレクサンダー!DDD怒涛王シーザー!DDD神託王ダルク!」
その零児の宣言に遊代は驚愕せざるを得なかった。何故ならこのターン倒した『DDD』全てが零児の墓地から復活し再びフィールドに姿を現したのだから。
「なっ……どうなってんだよ……!?」
「このターンのバトルフェイズ中に、私はDDD怒涛王シーザーのオーバーレイ・ユニットを使い効果を発動させていた」
「オーバーレイ・ユニット……?」
この状況に加えてオーバーレイ・ユニットという聞いた事もない単語に遊代は驚きと困惑を隠せない。
「オーバーレイ・ユニットとはエクシーズモンスターを呼び出す際にエクシーズ素材となったモンスターの事だ。エクシーズモンスターはオーバーレイ・ユニットを使用する事でその効果を発動できる。DDD怒涛王シーザーはオーバーレイ・ユニットを1つ使用する事で、このターン破壊された私のモンスターをバトルフェイズ終了時に可能な限り墓地から特殊召喚させる効果を持つ」
「成る程な……それがエクシーズモンスターの効果って訳か、やってくれるじゃねーか」
零児のエクシーズモンスターの説明により4体の王が復活した事に納得がいった。せっかく倒した上級モンスター全てを復活させられたのは予想外だが、ここのまますんなりとターンを終えるつもりはない。
「オレは魔法カード、フュージョン・ギフトを発動!フィールドの融合モンスターと同じ枚数、デッキからカードをドローする!」
「君のフィールドにはカミカゼ、ダイアン、The シャイニングの3体、そして私のフィールドにはダルクとテムジンの2体……」
「よってオレはカードを5枚ドローする!」
カミカゼの効果によりドローしていた手札増強カードにより手札を5枚増やす。シーザーが融合モンスター2体を復活させてくれたお陰でドローするカードが2枚増えた。転んでもただては起きないのは遊代も同じだ。
『げっ……』
ドローした5枚のカードを見て、思わず心の中で、『げっ……』と呟いた。何故なら遊代が今ドローしたカード全てが魔法・罠カードだったからだ。モンスターと魔法・罠をバランスよく採用しデッキを組んでもこういう事が起きるのもデュエルモンスターズだ。最も遊代のデッキは魔法・罠がやや多めだが。
「……オレはカードを3枚セットして、ターンエンド」
取り敢えずドローした5枚の魔法・罠カードの内、相手ターンでも使える3枚を魔法・罠ゾーンにセット、残る2枚は通常魔法なので次のターンにと温存して遊代はターンを終える。5ターンを終えた現在、フィールドには上級融合モンスター3体と下級モンスター1体にリバースカードが3枚。手札は残り3枚。対する零児は4体の『DDD』、リバースカードこそないが手札には『契約書』2枚を含む合計6枚。そして残りLPは遊代が2800で零児が5700。まだまだ零児が優勢であるが、遊代も守りは怠っていない。
「ったく。ここまで攻め込んだってのに、折角倒したモンスターをこうも簡単に全部蘇らせちまうとはな……あんた強いな」
「君の方こそ融合召喚を巧み使いこなし融合モンスターを生かすタクティクスは非常に素晴らしい。融合召喚に関して言えば私を凌いでいるだろう」
「そっちこそ、融合召喚だけじゃなくてシンクロ召喚にエクシーズ召喚……デュエルしてるこっちまでワクワクするぜ」
互いに相手のデュエルを褒め称え合う、デュエリストとしてこれ程素晴らしいデュエルはない。片や融合召喚を巧みに使いこなし、片や3つの召喚法を使いこなしている。もしこれが大会のワンマッチならば興奮必死、歓声が湧きに湧いた事だろう。
「ふっ、確かに私は融合・シンクロ・エクシーズを使いこなす。しかし、私が使うのはこれだけではない!」
「なんだと?」
「それをこのターンで見せてやろう!私のターン」
零児は操る召喚法はこれだけではないと宣言し、自分のターンへと入る。そう、零児が扱う召喚法は融合・シンクロ・エクシーズの他にもう1つ存在している。
「ドロー!このスタンバイフェイズ、怒濤王シーザーの効果によりシーザーの効果で特殊召喚したモンスター1体に付き1000ポイントのダメージが私に発生する」
しかし前のターンに発動したシーザーの効果により蘇生したモンスター×1000のダメージがスタンバイフェイズに発動する。蘇生させたのは4体、つまり4000のダメージが零児に発生。
「って、ダルクが居るんだからダメージ発生しねーだろ」
「ああ。DDD神託王ダルクの効果により私に発生する効果ダメージはライフ回復効果に変わる。よって私はライフを4000回復する!」
「くそっ、前のターン与えたダメージがほぼちゃらじゃねーか」
しかし零児のフィールドにダルクが存在する事でダメージがライフ回復に変わるのでこのデュエルで既に立証済み。よって零児のLPは4000回復して9700となり、またしても3倍以上の差が開いてしまう。
「永続魔法、再雇用の契約書を発動。そして地獄門の契約書の契約書も発動。再雇用の契約書の効果発動!このカードの効果により私は1ターンに1度、墓地の『DD』モンスターまたは『契約書』カード1枚を手札に加える事ができる。私はDDD制覇王カイゼルを回収、更に地獄門の契約書の効果発動!デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える」
メインフェイズへと移ると零児は前のターン手札に加えた2枚の『契約書』を発動した。まずはシーザーの効果でデッキから加えた再雇用の契約書の効果で墓地に眠る制覇王カイゼルを手札へ回収。そしてアシッドによって破壊されたがテムジンの効果により回収した地獄門の契約書の効果も発動し、デッキから新たな『DD』モンスターを手札に加える。
「私が加えるのは……ペンデュラムモンスター、DDプラウト・オーガ!」
「ペ、ペンデュラムモンスター!?なんじゃそりゃ!?」
零児がデッキより加えたのはレベル6。攻撃力2300のプラウト・オーガ。しかしそのカードは今まで零児が使用してきた『DD』モンスターとは明らかに違う。
「私はスケール6のDDプラウト・シュバリエと、スケール8のDDプラウト・オーガでペンデュラムスケールをセッティング!」
零児は今手札に加えたDDプラウト・オーガと元々手札に存在していたDDプラウト・シュバリエをそれぞれディスクの端にセットする。零児のフィールドの両端に光の柱が現れ、右側の柱の上部にはシュバリエが、左の柱の上部にはオーガが対をなして存在している。そしてシュバリエの下には6、オーガの下には8とそれぞれ数字が浮かんでおり、2柱の間には天から吊された振り子、ペンデュラムが揺れている。
「これでレベル7のモンスターが同時に召喚可能となる!」
「おいおい……一体何が起こるってんだ?」
ペンデュラムモンスター、スケール、同時に召喚可能と、遊代のは訳の分からない単語ばかり並んでいるがこれだけは分かる。今から零児が更なる未知のデュエルを行おうとしようとしている事を、それを自分が心から期待し、楽しみにしている事も。
「我が魂を揺らす大いなる力よ、その身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ! 」
振り子が左のオーガの柱へ、右のシュバリエへの柱へ交互に大きく、何度も揺れる。2つの柱となった2体のモンスターが呼応するかの様に。
「ペンデュラム召喚!出現せよ、DDD制覇王カイゼル! 」
ペンデュラムが大きく揺れ動いて、柱の間に光の輪ができる。そしてその輪から1つの光が零児の開いている最後のモンスターゾーンへと放たれる。そして其処には本来2体以上のリリースが必要なレベル7の最上級モンスター、DDD制覇王カイゼルが零児のフィールドに降臨していた。
「レベル7のモンスターを何の効果も使わずに特殊召喚……一体どうなってんだ!?」
本来2体のリリースが必要なカイゼルを何の効果も使わずに特殊召喚されている。直前にペンデュラムスケールにセッティングと言って使用したシュバリエとオーガが関係しているのか?遊代は新たに目にする召喚方法に驚きと興奮を隠せない。
「これこそ、この世界に現れた新たなる召喚法。その名も……ペンデュラム召喚だ!」
「ペンデュラム……召喚?」
「2枚のペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンにセッティングする事で、その2体のスケールの間のレベルを持つモンスターを1ターンに1度、特殊召喚できるこの世界の召喚法だ」
ペンデュラム召喚。エクシーズ召喚と同じく名前すら聞いた事もない召喚法。それもその筈、この世界ですらごく最近知られた召喚法なのだから遊代が知る訳がない。零児が扱うこのペンデュラムも試験段階なのだから。しかし零児の説明からなんとなしにその召喚法の仕組みを理解できた。
「………つまり今回はスケール6と8のモンスターをセッティングしたからレベル7のモンスターを特殊召喚できたって訳か」
「御名答。では行くぞ!DDD制覇王カイゼルのモンスター効果発動!このカードがペンデュラム召喚に成功した場合、ターン終了まで相手フィールドの表側表示のカード効果を全て無効にする!」
「なんだと!?」
「これでカミカゼの効果も無効となり、The シャイニングの攻撃力も元に戻る」
初見でそこまで把握できるとは遊代のデュエリストとしての素質の高さに感心しつつも、零児はペンデュラム召喚されたカイゼルの真骨頂を発揮させる。まずは遊代にフィールドに表側表示で存在するカード効果が全て無効とされてしまった。これでカミカゼの戦闘では破壊されない効果も、相手はモンスター1体でしか攻撃できない効果も無効、The シャイニングの攻撃力アップ効果も無効となり元の2600に戻る。
「そして私は制覇王カイゼルを対象にDDプラウト・オーガの効果のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、ライフを500払い『DD』モンスター1体の攻撃力を500上げる!」
プラウト・オーガのペンデュラム効果により零児は500のLPと引き換えに、カイゼルの攻撃力を払ったライフ分上げる。
「ペンデュラム効果?そのカードはモンスターの筈だろ」
「ペンデュラムゾーンにセッティングする際、ペンデュラムモンスターは魔法カードとして発動する。そしてその状態で発動できる効果をペンデュラム効果と呼ぶ」
「モンスターを特殊召喚できて、モンスターなのに魔法カードとして使えるだと!?……スゲェ、スゲェよ!ペンデュラム!」
モンスターを特殊召喚できるだけではなく魔法カードとして発動するモンスターなど聞いた事も見たこともない。シンクロ召喚やエクシーズ召喚でも度肝を抜かれたが、ペンデュラム召喚はその上を行く驚きと興奮を遊代に与え、楽しませ、ワクワクさせる。
「更にシャドー・ミストを対象に、DDプラウト・シュバリエのペンデュラム効果を発動!ライフを500払い、シャドー・ミストの攻撃力を500ダウンする!」
「っ、これはヤバいかもな……」
更にプラウト・シュバリエのペンデュラム効果によりシャドー・ミストの攻撃力は500ダウンしてしまう。それに思わず顔をしかめる遊代。何故なら今のペンデュラム効果の連発でカイゼルの攻撃力は3300、シャドー・ミストの攻撃力は500、その差2800は自身の残りLPとピッタリ同じ。
「まだだ!私はDDD制覇王カイゼルのもう1つの効果!このカードをペンデュラム召喚したターン、私の魔法・罠ゾーンのカードを2枚まで破壊する事で、破壊したカードの数だけ攻撃を追加する!」
「なに!?」
DDD制覇王カイゼルはペンデュラム召喚したターンにのみ発動できる効果がもう1つ存在する。それは魔法・罠ゾーンのカードを破壊する事で破壊した枚数と同じ回数、通常の攻撃に加えて1度のバトルフェイズ中に攻撃できる様になるのだ。
「私は地獄門の契約書と再雇用の契約書を対象に効果発動!2枚のカードを破壊した事で、このターンDDD制覇王カイゼルは3回攻撃できる!」
「はははっ……こりゃあスゲェ!」
最早呆気に取られてしまうレベルで強い。カイゼルは3回に加えて他にも4体の『DDD』が零児の場には君臨している。このターン遊代は異次元を統べる悪魔の王達の攻撃を7回凌がなければならない。
「行くぞ!DDD制覇王カイゼルでシャドー・ミストを攻撃!」
カイゼルが己の武器を持ちシャドー・ミストへと襲い掛かる。この攻撃が通れば遊代は2800のダメージを受けてライフは0丁度となる。
「トラップ発動!ガード・ブロック!この戦闘で発動するオレへの戦闘ダメージは0となり、カードを1枚ドローする!」
「ふっ。やはり防いだか、そうでなくてはな」
しかし前のターン5枚も魔法・罠カードをドローしたのだ。何の罠も伏せていない訳がない、ガード・ブロックによりダメージを無効にし、更に1枚ドローする。
『このカードは……』
ガード・ブロックの効果でドローしたのはまたしても魔法カード。しかし
『ヒーローズ・エピック……』
それは条件を満たせばカードを3枚ドローできる魔法カード、ヒーローズ・エピック。このカードとセットしている魔法・罠カードならば……刹那の時で脳内で戦略を練った遊代はその戦略を実行に移す。
「シャドー・ミストが墓地へ送られた事で効果発動!デッキからE•HERO ブレイズマンを手札に加える」
更にさにシャドー・ミストの効果でデッキからオーシャンを手札に加え、次のターンに備える。これで次のターン、融合を手札に加えられる。
「しかし!私の攻撃はまだまだ終わらん!カイゼルでカミカゼを攻撃!」
「くっ……!」
「カイゼルよ、その勢いで続けてダイアンを切り裂け!」
「くっ、カミカゼ……ダイアン……!」
だがこのターン3回攻撃できるカイゼルは止まらなかった。カミカゼ、更にはダイアンを続けざまに斬撃で倒して破壊。カミカゼとの戦闘で600、ダイアンとの戦闘で500と、合わせて1100のダメージを遊代に与える。
「カイゼルの攻撃は終わったが、まだ私には4体の王が控えている!」
そう、遊代は3体のヒーローを倒されたが零児が攻撃したのはカイゼルのみ。まだ4体の『DDD』の攻撃が残っている。
「私はDDD神託王ダルクでThe シャイニングを攻撃!」
「くっ……The シャイニングの効果!フィールドから墓地へ送られた時、除外されている『E•HERO』2体を手札に加える事ができる!オレはエアーマンとボルテックを手札に加える」
ダルクのオラクル・チャージによりThe シャイニングも破壊され200のダメージを受けるが、その効果によりスピリット・フュージョンで融合召喚する際に除外したエアーマンとボルテックを回収する。しかし遊代のライフは残り900と、攻撃力2000越えの『DDD』3体の攻撃を控えた状況でLPは1000を切ってしまった。
「どうやら此処までのようだな。私はDDD烈火王テムジンでダイレクトアタック!」
テムジンの攻撃力2000の攻撃が通れば遊代のライフは0、このままでは敗北が決まってしまう。
「速攻魔法、モーメント・マスク・チェンジを発動!手札の『HERO』1体を墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の『M•HERO』に変身召喚する!」
しかし遊代はセットしておいた速攻魔法、モーメント・マスク・チェンジを発動した。このカードは手札から『HERO』1体を墓地へ送り、その『HERO』と同じ属性の『M•HERO』を『マスク・チェンジ』による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。モンスターをフィールドに呼び出す必要がない便利性から『マスク・チェンジ・セカンド』と同じく1ターンに1枚しか発動できない。
「オレはE•HERO ボルテックを墓地へ送り、同じ光属性の『M•HERO』を変身召喚する!激しき稲妻の英雄よ、光の輝きその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!眩き光を拳に宿し、逆境さえも打ち砕け!M•HERO 光牙!」
The シャイニングの効果で回収したボルテックを墓地へ送り、光り輝く仮面の英雄、光牙を変身召喚する。その両腕に着ける手甲からは相手を貫く鋭い一本の牙の様な武器が伸びていた。
「手札のモンスターをも変身召喚するとは……」
手札のモンスターまでも変身召喚させた事に驚きながらも零児は冷静だった。光牙の攻撃力は2500、アレクサンダーならば相討ちに持っていけるがこの場面で登場した仮面の英雄だ、何か有る。そう直感が教えている。
「光牙の攻撃力は相手フィールドのモンスター1体につき500ポイントアップする。あんたのフィールドには5体のモンスター、よって攻撃力が2500アップす!」
光牙のモンスター効果は相手フィールドにモンスターが居れば居る程攻撃力が上がるという効果。本来なら劣勢なこの状況でも光牙の効果はそれをひっくり返す。
「攻撃力5000……!」
2500も攻撃力がアップした光牙の攻撃力は本来の攻撃力の倍の攻撃力、攻撃の権利を残したどのモンスターでも倒すのは不可能。
「これでは攻撃しようもない。私はカードを3枚セットして、ターンエンドだ」
バトルフェイズ中にモンスターが特殊召喚された事でテムジンの攻撃は中断となった。零児はそのままバトルフェイズを終了させるとカードを2枚伏せてターンを終える。
「まさか此処まで追い詰められた状況で攻撃力5000のモンスターを呼び出すとはな。しかし君のライフは残り900、削るのは難しくない」
零児の発言は最も。攻撃力5000の光牙がいるとはいえ遊代のLPは900。何かあれば一発で消し飛んでしまうライフしか残っていない。
「それはどーかな。このターンであんたのライフを0にするのだって有り得るんだぜ」
零児の忠告にも似た発言にこう切り返す遊代。確かにフィールドには光牙とリバースカード1枚のみとは言え、光牙の攻撃力は5000。そしてドローフェイズでカードをドローすれば手札は6枚、前のターンで6400もの戦闘ダメージを与えたポテンシャルを秘めている『HERO』デッキなら零児の残り8700のLPを削り切る事も不可能ではない。
「……君は本当にデュエルを楽しんでいるな」
「当たり前だろっ、こんなにスゲーデュエルしてるんだ!楽しくて仕方がねーよ!」
零児の目から見ても遊代はデュエルを心の底から愛し、楽しんで、ワクワクしているのがその伝わってくる。同じデュエリストとしてそれが充分に理解できる。
「そう言えば……君の言うアカデミアは私の知るアカデミアとは違う様だが」
「ん?どーしたんだ、いきなり」
「いや、君の知るアカデミアがどんな所なのか気になってな」
遊代からすれば流れをぶった切って再びアカデミアの話を持ち出された事に軽く肩すかしを食らった顔をする。しかし零児にも意図はある、これからする話で緋紅遊代というデュエリストを見極めるのだから。
「デュエル・アカデミアはオレも通うデュエルを学ぶ学校で、島1つが学校になってるんだ。全寮制だからみんなアカデミアで暮らして、毎日勉強して腕を磨けるスゲー学校なんだぜ!」
「ほう」
「中等部と高等部が合ってオレは中等部から通ってるけどデュエルを学べる学校だから倍率はたけーんだ。あっ、因みにオレは中等部最後の年は全学年含めた実技ランキングで1位なんだぜ」
「そうか、どうりで強い筈だ」
アカデミアの説明をしだすと遊代はどこか楽しそうに説明している。アカデミアで学び得た物は遊代の人生において大きな財産の1つだ。
「君にとってアカデミアは大切な居場所の様だな」
「ああ。春から高等部へ進学だってのに、いきなりこの世界に飛ばされて、社長さんがアカデミアを知ってるかと思ったら全く違うアカデミアだしな……」
「……申し訳ない」
その謝罪の一言は遊代の望む答えではなかった事への詫びの言葉でもあるが、アカデミアを嬉しそうに語る遊代にこれから自分が語る内容への謝罪でもある。
「今の話を聞いて確信した。君が学ぶアカデミアは私が知るとは全く異なると、私が知るアカデミアはとてもそんな所ではないからな……」
「えっ?一体どんな所なんだよ?」
零児の口調から零児の知るアカデミアが自分の知るアカデミアとは全く異なると遊代は感じる。もしやとんでもなく荒れてしまっているのか?そう身構えてしまう。
「……先程、この世界は4つの次元が存在していると話したな」
「ああ、言ってたな」
「この次元はスタンダードと呼ばれ、他にはシンクロ召喚牙栄えたシンクロ次元。エクシーズ召喚が栄えたエクシーズ次元。そして……私が知っているアカデミアが存在する融合召喚が栄えた融合次元が存在している」
「召喚法の栄え方で異なる4つの次元か……随分ぶっ飛んだ話だな」
デュエルモンスターズの召喚方法の栄え方の違いで分かれている4つの次元の話を聞かされ、ぶっ飛んだ話と判断した遊代だが至って驚いてる素振りはない。嘗ては自分の世界でも12次元の話を聞いた事が有るからだ。自分が世話になった人達もそれに関わる事件に巻き込まれたのを聞いた事がある。
「私は3年前に1度だけ融合次元のアカデミアに行った事がある。だが其処は君の言う様な場所ではなかった。島1つを城にした丸で要塞のような場所だ」
「はぁっ……?」
零児の語る内容にそんな馬鹿なと言いたい遊代だが、言葉が余り上手く出てこない。アカデミアが要塞?確かに島1つが丸々アカデミアではあるが城の様な作りなどしていない。
「そしてアカデミアはこの4つの次元を1つにするという理念で動いている。そしてその目的の為ある行動を取ろうとしていた」
「ある……行動?」
現段階で遊代という人間がどんな人物かは大体把握できたと零児は判断している。しかし、それを確定するのはここから先の内容を聞いた態度による。例えそれが遊代にとって信じられない余りに受け入れ難い内容だとしてもだ。
「それは4つの次元の1つ、エクシーズ次元を襲撃する事だ!」
「なっ……!?」
襲撃。その単語を聞いた遊代は耳を疑った。しかし確かに零児は襲撃と言い放った。自分の知らないアカデミアとは言え、アカデミアが他の次元を襲撃した?そんな内容に絶句してしまう。
「襲撃の話が出ていたのは3年も前だ。エクシーズ次元は既に……アカデミアの襲撃を受けて」
「ふざけんな!アカデミアが他の次元を襲撃!?シャレだとしても笑えねーぞ!」
「冗談ではない。冗談でこんな話を君にする程、私はねじ曲がっていない」
怒る遊代を窘める零児。本人とて好きでこんな話をしている訳ではない。目的の為なら非情にも徹する。それが赤馬零児という人間の覚悟だ。
「大体なんであんたがその融合次元なんぞに行けてんだ!?其処がおかしーだろーが!」
確かにそんな簡単に他の次元に行ければ苦労などしない。遊代の指摘は尤もな物である。
「……3年前、私の父親は突然姿を消した。私は父親の手掛かりを探している最中にある機械を見つけた。私はこれが手掛かりになるのではとその機械を操作した。それが次元転送装置だと知らずにな」
「……」
零児の説明を遊代は黙って聞いている。その顔は嘘だったら承知しない、そう物語っていた。
「次元転送装置で私は何も分からないまま融合次元と飛ばされた。そして其処で私は父と……否、会社と家族を捨てて融合次元へと姿を消したあの男、赤馬零王と再会した。アカデミアの最高責任者、プロフェッサーとなっていたあの男とな……」
「なん……だ、と?あんたの……親父が?」
父親ではなくあの男と憎々しげに吐き捨てた零児のその表情、それは明らかに怒りが滲んでいる。そして零児の父親の赤馬零王がアカデミアのプロフェッサーだと聞かされた遊代は驚いた。というより話の展開に着いて行けず怒りが落ち着いていると例える方が正しいか。
「其処で私は知った。赤馬零王がアカデミアのプロフェッサーとなり、4つの次元を1つにしようとしている事を。その目的の為にエクシーズ次元を襲撃しようとしている事をな。そして赤馬零王によって私はこの次元へと送り返された、次元転送装置も破壊されるオマケ付きでな」
淡々と、しかし憎々しげに沸き立つ怒りを理性で押さえ込みながら零児は自分がアカデミアと4つの次元を知った経緯を遊代に説明し終え、眼鏡を人差し指で押し上げ位置を整える。
「以上が私が融合次元を、アカデミアを知り得た経緯だ。残念ながら君の知りたいアカデミアの情報とは余りにかけ離れているがな」
「……」
「何か、他に聞きたい事はあるか?」
とても遊代が知りたいアカデミアの情報とはかけ離れた寧ろ聞きたくも知りたくもないアカデミアの話だったが、零児はアカデミアの知りうるアカデミアの情報は話した。
「わりーけど、いきなりそんな事聞かせれても、頭ん中がごちゃごちゃして考えがまとまんねーわ……けど」
異世界に飛ばされても4つの次元の存在を聞かされても割と平然に受け入れられた遊代だが、例え自分の知らない世界のアカデミアだとしても、他の次元を襲撃したなど信じられない。否、正確には信じたくないというのが本音だ。
「あんたの話を聞いたオレなりのを今からデュエルでさせて貰うぜ!」
しかし今はデュエル中、デュエルとは互いの思いをぶつけ合う対話でもある。ならばここからデュエルの一挙手一投足で自身の気持ちを零児へとぶつける。その対話の中でこの話への答えが見つかるかもしれない。遊代はデュエリストとしてそう決めた。
「そうか……ならば全力で掛かってくるがいい!私もこのデュエルで君の答えに答えよう!」
「ああ!行くぜ、オレのターン、ドローォ!」
零児もデュエリストとして遊代の気持ちにこのデュエルを持ってして答える。そう覚悟を決めた。
「オレは魔法カード、ヒーローズ・エピックを発動してカードを3枚ドローする!」
ヒーローズ・エピックは墓地にレベル5以上の『HERO』融合モンスターが2体以上存在し、尚且つ自分フィールドに『HERO』が存在する場合に発動できる。前のターン3体の『HERO』融合モンスターが破壊され墓地へ送られた事で墓地にはエスクリダオ、The シャイニング、カミカゼ、ダイアンと4体の融合『HERO』が眠っている。ガード・ブロックによりドローしていたこのカードで、このターン更にドローを加速させる。
「そしてオレはリバースカード、リビングデッドの呼び声を発動!墓地からE•HERO ボルテックを特殊召喚!そして魔法カード、HERO′S ボンドを発動!フィールドに『HERO』がいる場合、手札からレベル4以下の『E•HERO』2体を特殊召喚する!俺は手札からエアーマンとブレイズマンを特殊召喚!」
まずはリビングデッドの呼び声でボルテックを復活させると、前のターンフュージョン・ギフトで引き入れていた1枚の魔法カードを発動。ヒーロー同士の絆により更に『E•HERO』を2体フィールドに呼び出すHERO′S ボンドで手札からエアーマンとブレイズマンの2体をフィールドに呼び出す。
「エアーマンの効果発動!特殊召喚に成功した時、エアーマン以外の『HERO』モンスターの数までフィールドの魔法・罠カードを破壊する!オレのフィールドにはエアーマン以外に3体の『HERO』、よってあんたのフィールドにセットされている3枚のリバースカードを破壊する!」
エアーマンは召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『HERO』を手札に加える効果か自身以外の『HERO』モンスターの数までフィールドの魔法・罠カードを破壊する効果を選択して発動できる。遊代は魔法・罠カードを破壊する効果を選択し、零児のリバースカードを一掃しようと目論む。
「トラップ発動!DDDの人事権!このカードは私の手札・フィールド・墓地の『DD』モンスターまたはPゾーンの『DD』カードの中から3枚をデッキへ戻し、デッキから2体の『DD』を手札に加える」
しかし零児はエアーマンの効果にチェーンし、トラップカードDDDの人事権を発動しその効果で新たな『DD』モンスターを手札に加えようとする。
「更に永続トラップ、女神の加護を発動!私はライフを3000回復する!」
「ちっ!また回復かよ!」
前の自分のターンで6400の大ダメージを与えたというのに直前の零児のターンではシーザーのデメリットをダルクで回避されライフを4000回復、更にはこの自分のターンで3000回復。2枚のペンデュラム効果で合計1000LPを払っているとはいえ、2ターンで7000もライフを回復している。自分が与えた戦闘ダメージが完済される所か利子を付けての回復だ。
「そして最後に速攻魔法、非常食を発動!このカード以外の私のフィールドの魔法・罠カードを墓地へ送り、1枚につき1000ポイントのライフを回復する!私はDDDの人事権と女神の加護を墓地へ送り、ライフを2000回復する!」
「なっ、まだ回復する気かよ……!」
零児は更に残っていた最後のリバースカード、非常食を効果処理中のDDDの人事権と、永続トラップ女神の加護を墓地へ送り発動。その効果で2000のLPを回復する。
「永続トラップ女神の加護のもう1つの効果、このカードがフィールドを離れた時、私は3000のダメージを受ける」
「おいおい、ってことは……!」
女神の加護のデメリットにより3000の効果ダメージが発生……しない事はもう遊代は分かっている。
「しかしDDD神託王ダルクの効果、ライフ・イレイションで私に発生する効果ダメージはライフ回復へと変わる!私は更にライフを3000回復する!」
そう。零児のフィールドにはDDD神託王ダルクが君臨しているのだから。効果ダメージをライフ回復へと変わるダルクのライフ・イレイションでこのデュエルで回復したLPは今の3000回復を含めて合計12400。ダルクだけで3人分以上のLPを回復しているのだ。
「残りライフが……16700!?」
女神の加護の回復、非常食での回復、女神の加護のデメリットをダルクの効果でライフ回復に。相手のターンにも関わらず零児は合わせて8000もLPを回復させたのだ。
「最後に私はDDDの人事権の効果によりPゾーンのDDプラウト・オーガとDDプラウト・シュバリエ、墓地のDDナイト・ハウリングをデッキへ戻し、デッキから『DD』モンスター2体を手札に加える」
そしてチェーンを組まれ発動処理中だったDDDの人事権の効果で、零児はPゾーンの2枚の『DD』カードと墓地の『DD』モンスター1体をデッキに戻し、デッキから2体の『DD』モンスターを手札に加える。
「私のフィールドには魔法・罠カードはもう1枚もない。よってエアーマンの効果は不発!」
「くっ……!」
そして零児のフィールドに魔法・罠カードが無くなった事でエアーマンの効果も不発となってしまう。ライフを8000回復した零児のLPは16700、対して遊代の残りLPは900。その差15800、18倍以上の差が開いてしまっている。このライフを削るのは至難の業。
「ハハッ……やっぱりスゲーな!あんた!このデュエル、楽しくてしょうがねぇ!」
しかしそれでも遊代はこの状況を楽しんでいる。このLPをどう削りきるか模索するだけで楽しくてしょうがない。
『この状況でここまでデュエルを楽しむとは……やはり』
そしてそんな遊代を見ていた零児はある確信を得る。融合召喚を巧みに使いこなし、英雄と共に戦う遊代と、融合・シンクロ・エクシーズ、更にはペンデュラム召喚をも駆使し異次元を統べる王達を操る零児。2人のハイレベルなデュエルは佳境へと向かっていた。
本当なら今回で零児とのデュエルに区切りを着けたかったのですが、このままだと20000文字どころか30000文字を越えてしまいそうなので今回はここで1区切りとさせていただきます。しかし、それでも20000文字超えとは……
今回零児は更にペンデュラム召喚を披露しました。シンクロ・エクシーズに続きペンデュラム召喚という召喚を見た遊代のテンションは最高潮。
しかし零児から聞かされた融合次元のアカデミアの話を聞かされて怒り、戸惑うという……最も零児にも意図があってこの話をしています。けして希望を与えてそれを奪い取るファンサービスをしている訳ではありません。寧ろデュエルの方がえげつないですよ、幾らライフ削っても直ぐに大量回復してきますから。ダルクが契約書やシーザーデメリット踏み倒しまくってますし。LPが16700て……
後、タグの方に禁止・制限は現実と異なると書いてある様に、この世界のリミットレギュレーションはカテゴリーのカード等が制限に入っていません。例えるならば死者蘇生等のどのデッキにも入るカードは現実と同じ禁止・制限ですが、『HERO』は遊代等ごく一部の人間しか使ってません。のでシャドー・ミストも複数デッキに入っています。これは他のキャラのカテゴリーにも同様です。
予想以上に長くなりましたが、次回でこのデュエルも終わりを迎えます。それではまた次回。