遊戯王ARC-V~緋色の英雄~   作:《陽炎》

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緋色の英雄初の2日連続更新となります。

6話の前書きでも書いた通り、6話が長くなり過ぎたので2話に分けて出来たのがこの7話です。しかしそれでも6話が14000文字超え、この7話も13000文字を超えるという……

しかし漸く、零児とのデュエルが一応終わりを迎えます。長かった……


第7話 勝負の行方 英雄VS異次元の王 後編

零児は5体の『DDD』を破壊された次のターンでヘル・アーマゲドン3体を含む5体の『DDD』を揃え、反撃へと打って出る。カイゼルを返り討ちにされるもののそれも零児の計算の内、ヘル・アーマゲドンの効果により3体の超越神の攻撃力は5800と、返り討ちにした筈の遊代が追い込まれる形となった。

 

「では改めて行くぞっ!1体目のDDD死偉王ヘル・アーマゲドンでM•HERO 光牙を攻撃!」

 

「くっ……!」

 

「そして2体目のヘル・アーマゲドンでE•HERO The シャイニングを攻撃!」

 

1体目のヘル・アーマゲドンの攻撃で光牙が、2体目の攻撃でThe シャイニングが、どちらも5800の攻撃力を誇るヘル・アーマゲドンに呆気なく倒され、光牙は零児のフィールドのモンスターが1体減っていた事で攻撃力は4500となっておりその差1300のダメージ。The シャイニングも除外された『E•HERO』が1体増えて攻撃力3800となっていたがその差は2000、適う訳もない。

 

「The シャイニングの効果!フィールドから墓地に送られた事で除外されているシャドー・ミストとGreat TORNDOを選択し手札に加える!ただし融合モンスターのGreat TORNDOはエクストラデッキに加わる」

 

The シャイニングも倒されたが、2つの効果を持つシャドー・ミストと融合モンスターのGreat TORNDOを選択し次のターンに備える。

 

「そして3体目のヘル・アーマゲドンでM•HERO 闇鬼を、ダルクでノヴァ・マスターを攻撃!」

 

「ぐっ!くそっ……」

 

そして攻撃を残した最後のヘル・アーマゲドンとダルクの攻撃がそれぞれ命中し闇鬼とノヴァ・マスターは倒され、合計3200のダメージを喰らう。

 

「やってくれるじゃねえか……」

 

「これでもまだ受けたダメージを返し切れていないが……まあいい」

 

このターンで遊代のフィールドに参上していた5体の融合『HERO』が全て倒されてしまった。そして遊代のLPは1500まで減り、零児のLPは800。ライフの差は無いに等しい。前のターンで5体の『DDD』を倒されたのを零児が見事にやり返した。やられたらやり返す、一瞬の隙も許さない攻防がこのデュエルで何度も繰り広げられている。

 

「けどなぁ、オレだってただでダメージ受けた訳じゃねーぞ!トラップ発動!」

 

だが遊代とて5体の『HERO』を倒され、合計6500のダメージを受けてはいお終いとはいかない。ちゃんと次のターンに繋げるカードを伏せていたのだ。

 

「転生の試練!このターンオレが受けたダメージ200ポイント事に1枚、オレの墓地と除外されているカードをデッキに戻せる!」

 

伏せていたのはトラップカード転生の試練。自分が受けたダメージ200につき1枚墓地のカードを選択してそのカードをデッキに戻せるデッキ回復カード。このデュエルで遊代はドローとサーチを駆使してデッキから36枚のカードを加えている。遊代のデッキは40枚以上あるとは言えど、残りのデッキはもう僅か。このままではデッキ切れで負けてしまう。サーチとドローカードを多様する遊代は使用したカードを回収する為のカードも採用している。転生の試練もその1枚。

 

「君の墓地にあるカードは28枚、除外されているカードは4枚、合わせて32枚。つまり君は全てのカードをデッキに戻せる」

 

遊代がこのターン受けたダメージの合計は6500、つまりは32枚までは墓地・除外されているカードをデッキに加える事が出来る。つまり零児の言う通りカード全てをデッキに戻せる。

 

「オレは除外されているカード4枚と、墓地の25枚のカードをデッキに戻す!」

 

しかし遊代は全てのカードを戻さず、墓地に融合、エフェクト・プロテクト、クイック・トリックの3枚を残し、融合モンスター4枚はエクストラデッキへ、残る21枚のカードは全てデッキへと戻った。

 

「全てのカードを戻さないとは……何か狙っているな」

 

墓地にカードを残した。つまり遊代は墓地に眠るカードを使ってくる。これまでのデュエルの傾向からして間違いないと零児は確信していた。

 

「そしてデッキにカードを戻した後、受けたダメージ2000につき1枚、カードをドローする!よしっ!」

 

そしてカードをデッキに戻しシャッフルした後に転生の試練の効果でドローを行う。受けたダメージは6500なので3枚のカードを遊代はドローした。そしてドローしたカードを見ると遊代は零児のターンにも関わらず動き出す。

 

「墓地のクイック・トリックは相手ターンに墓地から除外する事で、手札から速攻魔法を発動できる!」

 

「やはりな、何かあると思っていた」

 

クイック・トリックには墓地の速攻魔法をコピーする効果の他に墓地から除外する事で相手ターンに手札から速攻魔法1枚を発動できる効果も持つ。

 

「オレは手札から速攻魔法、クイック・トリックを発動!」

 

「2枚目のクイック・トリック……!」

 

遊代が墓地のクイック・トリックを除外し零児のターンに発動したのは2枚目のクイック・トリック。同じカードを複数使うのは想定していたが墓地のクイック・トリックの効果で手札のクイック・トリックを発動するのは予想していなかった。

 

「クイック・トリックの効果で社長さん、あんたの墓地の非常食を除外してその効果を使わさせて貰うぜ!」

 

遊代の墓地には速攻魔法はなく、零児の墓地にある速攻魔法はDDホーミングと非常食の2枚。DDホーミングはコピーした所で使いようがないので非常食を除外しその効果を得る。

 

「非常食の効果を得たクイック・トリックの効果でオレはリビングデッドの呼び声とヒーロー・ミッションの2枚を墓地へ送ってライフを2000回復する!更にヒーロー・ミッションの効果、このカードが墓地に送られた時、オレは手札から『HERO』1体を特殊召喚できる」

 

ヒーロー・ミッションには墓地へ送られた墓地へ送られた場合、2つの効果から1つを選択して発動できる効果がある。遊代は今回手札から『HERO』を呼び出す効果を選択した。

 

「オレは手札からE•HERO フォレストマンを守備表示で特殊召喚する!」

 

「では、私はカードを3枚セットしてターンエンドだ」

 

全てのモンスターで攻撃を終えた零児はメインフェイズ2で相手いる魔法・罠ゾーン3箇所にカードを3枚伏せてターンを終える。

 

「これで君のターンへと移る訳だが、その前に1つ聞きたい事がある」

 

「なんだ?」

 

零児のターンが終わった事で遊代のターンとなる訳だが、零児はその前に遊代に訪ねたい事があった。

 

「このデュエルを始める際に、私は君にモンスターを実体化させてデュエルをして欲しいと頼んだ。だが君はこのデュエルで1度もモンスターを実体化させてはいない。違うか?」

 

「……バレてたのか。何時から気付いたんだ?」

 

そう。このデュエルは遊代の『力』を確かめるのも目的の1つ。しかし遊代はこのデュエルで1度も実体化させてはいない。零児が訪ねたいのはその理由だ。

 

「要所要所で薄々感づいてはいたが、直接攻撃を受けた時にもモンスターはソリッドビジョンのままだった。その時に確信した」

 

このデュエルはリアルソリッドビジョンを使ってはいるが、今回のは本来のそれとは見劣りする程衝撃も質量の質も落ちている。。遊代がモンスターを実体化させていればこんな物ではない筈、だから零児は感づいたのだ。

 

「社長さん、あんたはオレの力を見たいのかもしれねーけどよ、生憎俺は意味もなくモンスターを実体化させたくはねーんだよ」

 

遊代はモンスターを実体化させ、魔法や罠を発動させる未知の能力を持ってはいる。しかしそれを無闇に使う気にはならない。今でこそコントロール出来てはいるが、この力が原因で自身が傷付いた事もあるし、誰かを傷付けた事もある。だからこの力を使うのは誰かの為になる時のみと心に決めている。

 

「そうか……例えそれが他の世界を襲う融合次元、アカデミア相手でもか?」

 

「っ!」

 

「そしてそのアカデミアのプロフェッサーは私の父親だ、アカデミアの生徒である事を誇りに思う君ならば許せない筈じゃないのか?」

 

零児が淡々と揺さぶりを掛ける様に問いかけていく。アカデミアの生徒である事を誇らしげに語っていた遊代からすれば零児は許し難い組織を束ねる男の息子という事になる。

 

「確かにあんたの言う事が本当なら融合次元は許せねえしアカデミアを名乗って欲しくねえ。でも、それであんたを責めたり八つ当たりするのは筋違いだろ。デュエルはそんな事する為にあるんじゃねえ、本気でやって楽しんで、お互い切磋琢磨して友情を作る為にあるんだ」

 

「……そうだな。止めてすまなかった。さあ、君のターンだ。君のデュエルで私に向かってこい!」

 

遊代のデュエルモンスターズへの確かな信念を聞いた零児は得ていた確信をより強く持ち、このデュエルを再開する。

 

「おう!行くぜ、オレのターン!このスタンバイフェイズ、フォレストマンの効果で俺は墓地から『融合』を手札に加える」

 

まずはスタンバイフェイズにフォレストマンの効果を処理、しかし零児も此処で動く。

 

「この瞬間、永続トラップ新契約の契約書を発動!このカードを発動した際、デッキから『契約書』を手札に加える。私は2枚目の代行者の契約書を手札に、更に戦乙女の契約書も発動!これで私の悪魔族モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

永続トラップである新契約の契約書と戦乙女の契約書を2枚同時に発動。新たな『契約書』も加え、攻撃力も上げる。

 

『しかも戦乙女の契約書には破壊効果まである……』

 

戦乙女の契約書の効果を使われれば融合召喚しても破壊されてしまう。しかしその点に抜かりはない。

 

「オレは魔法カード融合を発動してフォレストマンと手札のカードガンナーを融合!偉大な自然の英雄と、装填の機械が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!大地を揺るがす偉大な力で、如何なる敵をも薙ぎ倒せ!融合召喚!現れろ!E•HERO ガイア!」

 

フォレストマンの効果で回収した融合を使い、すぐさまガイアを融合召喚する。

 

「E•HERO ガイアのモンスター効果!ターンの終わりまで相手モンスター1体の攻撃力を半分を奪う!ヘル・アーマゲドンの攻撃力の半分をこのターン吸収させて貰うぜ!」

 

ガイアの効果でヘル・アーマゲドンの攻撃力の半分2000を奪えばその攻撃力は4200。これで攻撃すれば残りライフ800の零児のライフは尽きる。

 

「戦乙女の契約書の効果発動!手札の代行者の契約書をコストにE•HERO ガイアを破壊する!」

 

そんな簡単に考え通り行く訳がないのは遊代も零児も分かり切っている。零児は新契約の契約書の効果で手札に加えた代行者の契約書をコストに破壊効果を発動。だが遊代も対策は既にある。

 

「オレは墓地からトラップカード、エフェクト・プロテクトを除外して効果発動!このターンオレのフィールドのカードは相手の魔法・罠の効果を受けない!」

 

遊代がエフェクト・プロテクトを墓地に残していたのはこの効果を使う為、このカードは除外したターン、フィールドを相手のモンスター効果または魔法・罠から守る事ができる。

 

「ならば私も墓地から速攻魔法DDホーミングを除外して効果発動!ペンデュラムゾーンのDD魔導賢者ガリレイとE•HERO ガイアを戻す!」

 

「くっ、やっぱそう簡単にはいかねえか……」

 

だが零児も遊代がそのカードを転生の試練で回収せずに残している時点で何かあるのは読んでいた。DDホーミング墓地から除外して自分の『DD』カードとフィールドのカードを手札に戻す効果も持つ。ガリレイは零児の手札へ戻るが融合モンスターであるガイアは手札ではなくエクストラデッキへと戻り、遊代の目論見は不発に終わる。

 

「そして代行者の契約書が墓地に送られた事で、私は墓地の冥王の契約書を手札に加える。」

 

零児は戦乙女の契約書のコストして墓地へ送った代行者の契約書の効果で冥王の契約書を墓地から手札に加える。結局零児は損失をDDホーミングのみに抑えてガイアを戻した。対する遊代は4枚のカードを使いながらもフィールドはもぬけの空。しかしここまでは想定の範囲。

 

「オレはE•HERO エアーマンを召喚、エアーマンの効果でデッキからE•HERO オーシャンを手札に加える。そして魔法カードHERO'sボンドを発動!手札からシャドー・ミスト、ブレイズマン、2体のE•HEROを特殊召喚する!そしてブレイズマンの効果でデッキから置換融合を、シャドー・ミストの効果でモーメント・マスク・チェンジを手札に加える!」

 

だが今は遊代のターン。攻め込めるのは遊代のみである、エアーマンの召喚をから始まりあっという間に下級ではあるが3体の『E•HERO』をフィールドに揃えながら、同時に3枚のカードを手札に加えている。

 

「そしてオーシャンを墓地へ送ってモーメント・マスク・チェンジを発動!広大なる海の英雄よ、数多の雨をその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!天より落ちる雫にて、再び全てを浄化せよ!M•HERO アシッド!」

 

水属性のオーシャンをモーメント・マスク・チェンジの効果によりアシッドへと変身させるそしてアシッドの効果はこのデュエルで既に実証済みだ。

 

「アシッドが現れた時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊し、相手モンスターの攻撃力は300ダウンする!」

 

これで零児の魔法・罠ゾーンの5枚と魔法カード扱いのペンデュラムゾーンのDDプラウト・オーガを狙う。しかし零児はそれに対してすぐさま対処に打って出る。

 

「この瞬間、私はトラップカード契約洗浄を発動!」

 

「そのカードは!」

 

遊代もこのカードは当然知っている。このデュエルで1度使われているからだ、その時も今回の様にアシッドの効果にチェーンしての発動。

 

「契約洗浄は『契約書』を全て破壊し破壊した数のカードをドローし、ドローしたカード1枚につき1000ポイントライフを回復する。つまり4枚の『契約書』を破壊して4枚ドローの4000回復か……」

 

最初発動した時も4枚の『契約書』を破壊し4枚の手札と4000のライフを得た。またしても同じ手でアシッドの効果をかわされるとは流石に予想外だった。

 

「その考えは甘いっ!私は新契約の契約書の効果発動!このカードを墓地へ送り、私の墓地から永続魔法または永続トラップ1枚を発動する!」

 

「なんだとっ!?」

 

しかしその遊代の考えは零児の言う通り甘かった。破壊する枚数は同じでもカードは前回とは違うのだ、同じ展開となるとは限らない。

 

「私は墓地から永続トラップ女神の加護を発動しその効果でライフを3000回復!更に新契約の契約書の効果で発動したカードは『契約書』として扱う!」

 

「なっ!?ってことは……」

 

「そうだ!契約洗浄の効果により地獄門の契約書、再雇用の契約書、戦乙女の契約書、そして『契約書』扱いの女神の加護の4枚の『契約書』を破棄し4枚ドロー!そしてライフを4000回復!更に女神の加護がフィールドを離れた事で私に3000のダメージ、だが」

 

「DDD神託王ダルクの効果で効果ダメージはLP回復効果になっている……」

 

「正解だ。よって私はライフを更に3000回復する!」

 

「だが戦乙女の契約書が無くなった事であんたのモンスターの攻撃力は1000ダウン。そしてアシッドの効果はまだ残ってる!ペンデュラムゾーンのプラウト・オーガは破壊し、4体の『DDD』の攻撃力は300下げる!」

 

魔法・罠ゾーンのカードこそ無くなったが、ペンデュラムゾーンのカードは破壊したしモンスターの攻撃力も弱体化させた。しかしそれ以上に回復されたライフが多い、これは遊代にとっては誤算だ。

 

「ったく、やっとの思いであんだけあったライフポイントを削ったってのに……」

 

愚痴をこぼしたくなるのも頷ける。残りライフ800だったのが、女神の加護発動時に3000回復、契約洗浄の効果で4000回復の4枚ドロー、そしてダルクの効果で女神の加護のデメリットを回避し3000回復。なんと一気に合計10000のLPを回復したのだ。破壊した枚数は前回と同じにもかかわらず新契約の契約書と女神の加護、そしてDDD神託王ダルクのコンボで本来契約洗浄1枚で回復できる最大数値4000の2倍以上もの数値分回復してしまった。これで零児の残りLPは10800。

 

「それがまたライフが10000越えだと……」

 

前のターンやっとの思いで16700あったライフを400まで減らしたと思ったらあっという間にまた10000を越えてきた。減らしても減らしても削りきれない零児のLP、まるで返済しても減らない借金だ。普通ならもう嫌気がさす状況だが当の遊代はこの状況を楽しんでいた。

 

『成る程、そういう事か……』

 

一方零児は先程から自身のデュエルディスクの液晶画面をずっと見ている。そして何かを理解した様子でディスクから目を離し遊代を見据えた。

 

「……面白いじゃねえか、今度こそあんたのライフを削りきってみせるぜ!」

 

「ほう。ではやって見せてくれ、やれるものなら……な」

 

普通なら1度10000越えのダメージを連続して与える等不可能に近い。しかし零児は目の前の男ならやりかねないと思っている、このデュエルを通じて緋紅遊代というデュエリストはそれだけの実力を持つデュエリストだと確信しているのだから。

 

「オレは置換融合を発動して、フィールドのブレイズマンとエアーマンを融合!三度現れろ!E•HERO Great TORNDO!このカードが現れた事で相手フィールドのモンスターの攻撃力と守備力は半減する!」

 

このデュエル3回目の融合召喚されたGreat TORNDOの効果でアシッドの効果で弱体化したモンスター達は更に攻撃力と守備力を奪われる。3体のヘル・アーマゲドンの攻撃力は1350。ダルクの攻撃力は1250。最早下級モンスターにすら余裕で倒される数値だ。

 

「そして魔法カード、フュージョン・ギフトを発動!フィールドには3体の融合モンスターが居る。よって3枚ドロー!」

 

転生の試練でドローしたのはHERO'sボンド、カードガンナー、クイック・トリックの3枚。そしてこのドローフェイズにドローしたフュージョン・ギフトを発動して、更に3枚ドローを行う。

 

「っ!このカードは……」

 

ドローした3枚のカードを見た遊代の口角が上がる。まるでこのタイミングで来てくれたかと言わんばかりに。

 

「じゃあ行くぜ!バトルだ!俺はアシッドでヘル・アーマゲドンを攻撃!Acid bullet!」

 

バトルフェイズに入るとまずアシッドで攻撃を行い、ヘル・アーマゲドンを破壊、零児に1250のダメージが発生。しかしそれでもまだライフは10000以上残っている。

 

「……ん?ヘル・アーマゲドンの効果が発動しねえぞ?」

 

確かにヘル・アーマゲドンは破壊した筈、にも関わらず残る2体のヘル・アーマゲドンの効果が発動されていない。

 

「DDD死偉王ヘル・アーマゲドンのモンスター効果は破壊されたモンスターが墓地または除外されている状況でそのモンスターを対象に発動できる。しかしペンデュラムモンスターであるヘル・アーマゲドンはフィールドからは墓地へは行かず、エクストラデッキに表側表示で加わる」

 

「エクストラデッキに加わる?なんだそりゃ?」

 

「私も今初めて知った所だ。何せペンデュラムを使うのは今回が初めてだからな」

 

「なっ……」

 

初めて使うペンデュラム召喚をものともせず4つの召喚法を使い此処まで自分を追い詰めていたとは、目の前の赤馬零児というデュエリストは底が知れない。遊代は改めてその実力の高さを再認識した。

 

「けど、ヘル・アーマゲドンの効果が発動しないのは助かった。これなら……」

 

ネックとなっていたヘル・アーマゲドンのモンスター効果はこれで心配ない。遠慮なくバトルを行え、与えるダメージを増やせる。ペンデュラムモンスターの特性が遊代に思わぬ活路を開いた。

 

「ならオレは速攻魔法フォーム・チェンジを発動!M•HERO アシッドをエクストラデッキに戻して変身召喚する!全てを浄化する英雄よ、光の輝きその身に纏い、仮面の英雄へ姿を変えよ!変身召喚!眩き光を拳に宿し、逆境さえも打ち砕け!」

 

ここ既に攻撃を終えたアシッドをフォーム・チェンジで変身させ、光の仮面の身に着けた英雄を再び呼び出す。

 

「再び現れろ!M•HERO 光牙!そして光牙で2体目のヘル・アーマゲドンを攻撃!そしてこの瞬間モンスター効果、発動!墓地のオーシャンを除外して、ヘル・アーマゲドンの攻撃力をオーシャンの攻撃力分、1500ポイントダウンさせる!」

 

アシッドを光牙へと変身させて即座に3体目のヘル・アーマゲドンを自身の効果で更に弱体化させる。これでヘル・アーマゲドンの攻撃力は0、対する光牙は零児のフィールドのモンスターの数×500攻撃力がアップし4000となっている。

 

「やれ光牙!レイザー・ファング!そしてGreat TORNDOも続け!スーパーセル!」

 

「くっ……破壊された2体のヘル・アーマゲドンはエクストラデッキに加わる」

 

光牙の攻撃も通り、Great TORNDOの連撃も見事に炸裂。合計5450のダメージを叩き出す。ヘル・アーマゲドンは1体目のヘル・アーマゲドンと同じくエクストラデッキへ加わったが今の遊代には関係ない。

 

「そしてオレは手札から速攻魔法、超融合を発動!手札を1枚捨てて、オレのE•HERO Great TORNDOとあんたのDDD神託王ダルクで融合召喚する!」

 

「私のフィールドのモンスターを融合素材にするだと!?」

 

遊代がフュージョン・ギフトでフォーム・チェンジと共にこの超融合も引いていた。相手フィールドのモンスターをも融合素材とする融合召喚に零児も思わず驚いてしまう。

 

「嵐巻き起こす英雄と、神の威光が1つとなり、1人の英雄が今目覚める!正しき闇の力にて、悪しき敵をその手で討て!融合召喚!再び現れろ、E•HERO エスクリダオ!」

 

超融合によってエスクリダオがこのデュエル2度目の登場を果たした。そして同時に零児のフィールドにはもうモンスターはいない

 

「行け!エスクリダオ、シャドー・ミスト、2体でダイレクトアタック!」

 

「くっ!」

 

エスクリダオの攻撃力は墓地の「E•HERO」1体に付き100上がる。墓地に眠るのは4体、よって攻撃力は400アップして2900、シャドー・ミストの攻撃力1000と2体の闇の『E•HERO』の合わせて合計3900のダイレクトアタックが見事に決まった。これで1350、5450、4000とこのターン合計10700のライフを削り取り、零児の残りライフは僅か100となる。

 

「ちっ、後一押し足らなかったか……」

 

残るライフは僅か100、何処かで削れていれば、プレイングミスはなかったか?とこれが原因で敗北すれば悔やみきれないだろう。しかしデュエルは続いている最中、今は出来る事をやるしかない。

 

「俺は墓地の置換融合を除外して、効果発動。Great TORNDOをエクストラデッキに戻して1枚ドロー。そしてカードを2枚伏せてターン終了だ」

 

バトルフェイズを終えた遊代は置換融合の効果で手札を増やし、前のターンにノヴァ・マスターの効果でドローしていたカードと置換融合でドローしたカードの2枚を伏せてターンを終える。遊代のライフは残り3500、零児のライフは100と現在は大きく上回っては居るが、次のドローフェイズで零児の手札は9枚、しかも回収した冥王の契約書でダルクを蘇生されればそのデメリット2800のダメージをコンボによりライフ回復へと変えられライフは2900となり、すぐさま僅差に戻る。

 

「まさか2ターン連続で10000越えのダメージを食らうとはな……君のプレイングには恐れいった」

 

「何言ってんだ、普通これだけダメージ与えてればとっくにオレが勝ってんだよ」

 

そう、自分のターンで攻めに攻めて2ターン連続10000越えのダメージを叩き出し、合計35900のダメージを与えている。しかも此処にコストで払った1500を足せば零児がこのデュエル中に失ったライフは37400、デュエリスト9人を倒してもおつりが返ってくる程のライフを失っているのにも関わらずまだデュエルは続いている。この数ターン、互いに相手の切り札を全滅させるが攻めきれず次のターンでやり返される優勢・劣勢の繰り返し。

 

「そうだな……では、そろそろ終わりにするとしよう!」

 

そう宣言する零児も目付きを鋭くし、表情も本気の物だ。宣言通りに自分をこの自分のターンで倒そうとしている。

 

「いいぜ、やれるもんならやってみな!返り討ちにしてやるぜ!」

 

しかし遊代とて宣言通りに敗北する気などさらさら無い。寧ろその緋色の瞳に映る零児の寝首を刈る機会を見出そうとしている。

 

『オレが伏せているのはスピリット・フュージョンと和睦の使者、この2枚のトラップならこのターンを凌いで次のターンに繋げられる!』

 

セットしたのはモンスターを戦闘破壊から守り、ダメージも0にする和睦の使者と1000のライフを払い墓地融合を行うスピリット・フュージョン。この2枚を使えばこのターンを耐え抜き、次のターンで勝利する事も可能。デュエルがどう転ぶかは恐らくこの零児のターンに掛かっている。それは互いに感じ取っていた。

 

「では行くぞ!私のターン!」

 

勢い良く零児がカードをドローし、カードをプレイしようとしたその時だった。零児のデュエルディスクからモニターが出現したのである。

 

「な、なんだよこんな時に」

 

どうした。と零児がモニターに映る人物と会話を交わし始める。遊代はここからというタイミングでデュエルが止まり、軽く肩透かしを喰らう格好となる。

 

「……そうか、わかった」

 

会話を終えた零児が遊代の方に顔を向け直す。デュエル再開と思っている遊代に反して零児の口から出た言葉は予想外の言葉だった。

 

「誠に申し訳ないが……このデュエル、中断させて貰う」

 

「……はあぁっ!?」

 

デュエルの中断という言葉に遊代はただ、驚愕の叫びを上げるしか出来ず、その叫びはセンターコートに大きく響いていた。こうして遊代と零児の激闘とも言うべきデュエルは中断という納得いきがたい結果で幕を閉じた。、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしても、あんな形でデュエルが終わるなんてなー」

 

デュエルを中断された事に愚痴を零しながら遊代はぶつくさとセンターコートから出て来た。

 

「まあ、寝床が確保出来ただけマシか……」

 

あの後、デュエルの中断に納得が遊代に零児は本社で待機させていた中島にある物を用意させ持ってこさせた。

 

「これは……」

 

「折角のデュエルを中断させてしまったお詫びだ。この世界のデュエルディスクを君に譲ろう」

 

そう言って零児が中島に用意させていた真紅のデュエルディスク。それは零児の言う通り真澄や零児が使っていたデュエルディスクその物であった。

 

「それと、ゆく宛も無いだろう。此処へ行きたまえ、LDSのスポンサーのホテルだ。話も付けてある、これな寝泊まりにも困らないだろう」

 

「……はぁ、しょーがねえ。わーったよ、今回は引きゃいいんだろ」

 

零児がディスクディスクを操作し映し出したのはホテルへの道のりを記した地図。異世界に飛ばされて野宿も考えていた遊代にホテルの一室は有り難い恵み。こうしてデュエルディスクと寝床となるホテルを用意してまらったので遊代は納得は行かない物の大人しく引き下がる事にした。

 

「君とのデュエルは久しぶりに楽しめた。機会があればもう1度デュエルをしてくれ」

 

「そん時は中断はナシだぜ」

 

「勿論た。まだ君とは話したい事もあるが、今日はこの辺りで終わりにさせて貰う。では、また会おう。緋紅遊代」

 

そう言い残して零児は中島と共にセンターコートを出てビルへと向かっていった。気付けばもう夜となり、当たりは漆黒に染まりかけている。

 

「さて、ホテルに向かうか……ん?」

 

レオ・コーポレーションを後に歩き出すと人影が目に映る。もう遅くなるというのに誰だろうと思ったがその人影には見覚えがある。

 

「真澄ちゃん?何で此処に?」

 

そこに立っていたのは真澄であった。零児との会話が終わった後、てっきり帰ったものかとばかり思っていたが、遊代の予想に反して彼女は残っていた。

 

「どうだったの赤馬社長とのデュエルは?」

 

「えっ?あー、何か社長さん急用ができたみてーで中断になっちまった」

 

「そう。でもよかったんじゃない?負けなくてすんだんだから」

 

「おいおいそりゃねえだろ。オレ結構社長さん押してたんだぜ」

 

あの場には遊代と零児しか居なかったが間違いなくギャラリーが居ればどっちが勝ってもおかしくないと感想を漏らすデュエルだっただろう。あれを真澄に見せられなかったのが悔やまれる。

 

「だって赤馬社長は最年少でプロになった天才デュエリストよ。並大抵の強さじゃないわ」

 

「マジか?通りでつえー筈だ」

 

そう赤馬零児は15妻でプロデュエリストとなり世間では若き社長にして天才デュエリストと知られている。プロデュエリストが相手だったとは零児の強さに改めて遊代は納得がいった。

 

「でも、あなたなら赤馬社長に勝てたかもしれないわね」

 

「だろ?」

 

「100回に1回位は、ね」

 

「あらら」

 

自分を上げてくれたと思ったらこの返し、遊代は漫才の様に軽くズッコケてしまう。そんな様子の遊代を真澄は悪戯に成功した子供の様な笑みを浮かべていた。要するに、からかわれたのである。

 

「そーいえば、真澄ちゃんは何でまだ此処に残ってるんだ?」

 

話がそれていたが遊代は何故この時間になっても真澄が帰っていないのかを思い出し、本人に尋ねる。

 

「これ、渡してなかったでしょ」

 

「これは……」

 

真澄から手渡されたのは明らかに電話番号とアドレスが書かれた紙。もしかしなくてもこれが誰の物なのかはわかった。

 

「私の電話番号とアドレス、これなら連絡できるでしょ」

 

「まさか、これ渡す為に待っててくれたのか?」

 

「ええ。じゃあ、私帰るから。またね」

 

要するに真澄は自分の連絡先を教える為に遊代の用が済むのを待っていたのだ。デュエルに負けたらデートして貰おうという条件でデュエルに負け、連絡を渡そうとした所で零児に2人共招かれた。すっぽかしても別に構わないような事をわざわざ律儀に守る所が彼女の根の真面目さを表している。

 

「待てよ、真澄からちゃん。もう遅いんだ、家まで送ってくぜ」

 

「あらそう?ならお願いするわ」

 

「了解!」

 

夜道を女の子1人で歩かせるつもりはない。真澄の了承を得た遊代は軽く敬礼すると、ボディーガードとして真澄を家に送る為、彼女と共に闇夜の月に照らされるレオ・コーポレーションを後にした。

 

 

 

 

 

「社長、本当に宜しいのですか?彼をあそこまで信用して」

 

2人が帰路を歩く頃、中島はモニタールームに急ぐ道すがら零児に遊代を信用しても大丈夫なのかと尋ねてくる。

 

「何か不満か?中島」

 

「いえ、彼の実力は素晴らしいですが……アカデミアには変わらないのですからそこまで信用するのは……」

 

「心配するな、彼は我々と対するアカデミアではない」

 

「何故そこまで断言できるんですか?」

 

遊代がアカデミアなのは本人が認めているし、その実力はモニターで見ていた中島も納得が行くレベルだった。しかそアカデミアは自分たちと対立する存在、そのアカデミアとは異なるアカデミアと言われても釈然としない。しかし零児は寝床を提供する程、遊代を認めている。その事に疑問は抱かずにはいられない。

 

「私もデュエリストだ、彼のデュエルへの思い、信念、そして強さがデュエルを通じて理解できた。あのデュエルで私は確信した、緋紅遊代は融合次元のアカデミアではない」

 

「そうですか……」

 

デュエリスト同士だからこそ零児はデュエルを通じて遊代の事を分かる事ができた。だからこそ他次元を襲撃する融合次元のアカデミアの人間ではないと断言できる。その様子を見た中島もデュエリストだから分かり合えたのだろうと納得した。

 

「解析結果は?」

 

モニタールームに入るなり解析結果を零児は要求する。この解析結果の原因こそが今回遊代とのデュエルを中断する事となった原因だ。

 

「はい。此方がそうです」

 

オペレーターの女性がテキパキと操作し、解析結果をモニターに映し出す。それは遊代が融合召喚した時の様に召喚反応を計測しグラフとした物が映されていた。

 

「この召喚反応は……」

 

「はい。我がスクール生の物とは比べ物になりません」

 

非常に高い召喚反応をグラフに表したモニターにはその召喚形式が書かれている。そこにはこう書かれていた。XYZ、そう。

 

「エクシーズ……」

 

エクシーズ、それはエクシーズ召喚という意味。3年前に融合次元が襲撃を計画していた次元もエクシーズ次元、そしてこの世界のデュエリストとは思えい強いエクシーズの召喚反応。そのモニターを見詰める零児の切れ長の瞳はより目つきが鋭く、険しい物になっていた。




えー、という訳で遊代と零児のデュエルは中断という形で終わりを迎えました。

この展開には肩透かしを食らった方もいるかもしれませんが、流石にこの段階で遊代も零児も負けさせるにはいかないので……

しかしデュエルを振り返ると遊代も零児もドローやサーチをしまくり、そして零児はこのデュエルでライフを33400も回復してますからね。そら遊代も攻め倦ねますよ、普通HERO7連続で呼び出したら勝ちますって……書いていて改めてHEROとDD、2つのデッキのパワーを思い知りました。流石どちらも環境に入っただけの事はあります……お陰で零児とのデュエルが始まったこの4話の文字数が65000越えという……

そして次回は多分デュエルはありません、真澄とのデートでもありません。どんな展開かは次回をお楽しみに。
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