「それで1ターンに7回も融合召喚決めたのに、ライフを削りきれなかったんだぜ」
「へえー、流石は赤馬社長。格が違うわね」
「2ターン連続で1万超えのダメージ与えたってのに勝てねえとは、流石はプロって事かな」
「そうね」
真澄を自宅まで送り届ける道中、遊代は零児とのデュエルの感想を真澄と話していた。
「でも、あなたも凄いと思うわよ。1ターンに7体も融合召喚なんて普通できないわ」
「だろ?オレは融合召喚なら誰にも負けねえ自身があるぜ」
「悔しいけど、それは認めるわ」
真澄も融合使いとして実力は自負しているが、遊代の融合に置けるデュエルタクティクスは自身を上回っている。普通の融合、墓地融合、そして変身召喚による融合モンスターの特殊召喚。
「でも、次は私が勝つから」
「おう、オレだって勝つつもりだぜ」
互いに自身の実力を誇っている。特に真澄は負けず嫌いな性格だ、融合召喚におけるタクティクスは劣るかもしれないがデュエリストとしての実力も、ジェムナイトもけして負けてはいない。そう確信している。
「それにしても、赤馬社長が融合・シンクロ・エクシーズを使うなんて……」
「えっ?あの社長さん融合とか使った事ないのか?」
「ええ。過去の試合でも融合・シンクロ・エクシーズを使った事はないわ。それに言ったでしょ、普段滅多に人前に出ないって」
「マジか……」
確かにLDSは融合召喚・シンクロ召喚・エクシーズ召喚を教えているが、それは1年にも満たない。しかしそれでもレオ・コーポレーション社長の零児ならば人より使っているとは思ったがまさか公の場で1度も使用していないとは、きっと密かに磨いていたんだろう。そりゃあ強い筈だと思ってしまう。
「だとしたら尚更あの試合、真澄ちゃんや多くの人にに見て欲しかったな。あんなに白熱する楽しいデュエル滅多にないぜ」
「いいんじゃない?私に負ける所見られずに済んだんだし」
「ちょ、あのねぇ……」
「冗談よ」
またしても一本取られた。こういう茶目っ気を出すのは真澄が心を許している証だ。それは遊代も察してはいる。女心に関しても師匠が居たからだ、でも勝つ所を見れなくて残念と言って欲しくもあった。年頃の男心もまた複雑なのだ。デュエルモンスターズのルールと同じ位難しい。
「でも見たかったわ、融合・シンクロ・エクシーズが1度に揃うデュエル」
真澄も1デュエリストとして3つの異なる召喚法から呼び出されたモンスターが揃う光景は是非とも見てみたかった。それはデュエリストならば当然かもしれない。LDSでも融合・シンクロ・エクシーズを共有しているのはユースクラスでもごく僅か、真澄達ジュニアユースは各召喚法1つに特化して学んでいるからこの3種類のモンスターが並ぶ光景など見たことがない。
『ホントは4つの召喚法を操ってたんだけどな……』
そう。遊代は真澄にはペンデュラムの件は話していない。零児からまだ試作段階なのでペンデュラム召喚は内密にと口止めされている。なのでペンデュラム関連は他のカードを言って上手くごまかしている。デュエリストだけあってデュエルだと頭は回る。余談だが遊代はデュエル馬鹿であるが馬鹿ではない。学生の本分は勉強というクロノスの教育方針もあり勉強もちゃんとできる。
「だから尚更残念だぜ、あんなけ白熱したデュエルが中断だなんてよ……」
「それはそうでしょうね。あっ、着いたわ。此処が私の家」
「ひゃー、立派な家だな」
雑談を交わしながら歩いていると、2人は目的地である真澄の家へと辿り着いた。彼女の家を見た遊代は目の前に佇む一軒家に驚いていた。家の前には門があり、その先は広い庭と二階建ての洋風の家。此処に飛ばされてから見てきた家と比べると明らかに家自体が大きく格調が高い。
「パパが宝石商なのよ」
「成る程なー」
宝石商という言葉は知っていてもどういった仕事や年収なのかは詳しくは知らないが、宝石を扱う仕事ならば結構稼いでいるんだろうと遊代は納得した。
「送ってくれてありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。じゃあ、連絡先登録したら電話するから」
「分かったわ。じゃあ、またね」
「ああ。またな」
楽しい時間も終わりを迎える。デュエルが決着を着ける様に。門を開けて敷地内へと入る真澄を見送った遊代は零児から渡されたデュエルディスクに表示されたホテルへの地図を見て、自身の宿泊先へと移動し始める。
「さてと、一体どんなホテルなんだ?」
そんな事を考えながらキャリーケースを引いて遊代は寝床を求めて零児に紹介されたホテルへと歩みを進めていた。
「此処か……」
真澄を送り届けたので着くのに30分近く掛かったが、遊代は目的のホテル、舞網グランドホテルに辿り着いた。
「……取り敢えず、入ってみるか」
外観を見る限り高級感漂うホテルだが、物怖じする必要はない。此方とて大企業の社長から紹介されて訪れているのだ。遊代は堂々とホテルのエントランスへと向かい、開いた自動ドアを通る。
「うはぁ……」
自動ドアを通った遊代の辺り一面に広がるのは高級感が溢れるロビー。豪華なシャンデリアに照らされた清楚な造りのロビーを優雅に照らす。
『スゲエな……修学旅行で泊まったホテルと同じ、いやそれ以上に豪華かもな……』
デュエルアカデミアでの修学旅行は成績優秀な生徒は高級ホテルの一室で宿泊となっている。それ以下は普通のホテルか旅館での宿泊だ。格差があると思うが、昔のアカデミアは成績下位の者は野宿という仕打ちもあったらしい、しかも普段の寮も食堂も成績優秀者とは数ランクも違うというヒエラルキー。今では寮も差はあれでそこまで劣悪では無く、食事も皆同じ物だ。その頃を知る世話になった面々からは自分達が居たころよりかなり良くなっと零していた。
「おっと、取り敢えず受付受付」
ぼーっとしていても何もならない。遊代は呆けていた頭を切り替えてフロントに向かい歩く。零児は手配は此方がしておくと言っていたのでフロントで要件を言えば大丈夫な筈。
「すいません。赤馬零児さんに此方を紹介されたんですけど」
「はい、伺っております。緋紅遊代様でいらっしゃいますね?」
「そうです」
「お待ちしておりました。ようこそ当舞網グランドホテルへ」
フロントで零児の紹介でやってきたと告げると、問題無く手配されており50代位のホテルマンが丁寧にお辞儀をする。その風貌と雰囲気からベテランである事を把握できる。
「では、お部屋へと案内させて頂きます。どうぞ、お荷物をお預けください」
「じゃあ、お願いします」
キャリーケースをベテランホテルマンに預けると、遊代はキャリーケースを引くホテルマンの一歩後ろをついていきながら歩いていく。
「それにしてもスゲーホテルですね」
「はい。当ホテルは舞網市1のホテルと皆様から高い評価を頂いております」
「なんだな高級過ぎて、オレには場違い感がある気もしますけど……」
「とんでもない。舞網グランドホテルは家族連れで利用される方も非常に多いのです。高級感をリーズナブルに皆様に、それが当ホテルの理念なのです」
「へぇー」
部屋へ案内される道中そんな世間話を遊代はホテルマンと交わす。この舞網グランドホテルは市内は愚かこの日本でも上位のホテルで、高級感溢れながら、比較的リーズナブルな料金とあって富裕層から一般家庭まで利用している。
「じゃあ赤馬社長も利用するんですか?」
「ええ。レオ・コーポレーションの研修は長年当ホテルで行っておりますし、前社長の頃から御家族でよくご利用くださっております」
前社長、つまり赤馬零王の事だ。3年前に姿を消し、融合次元のアカデミアを統べるプロフェッサーとなり4つの次元を1つにする為、他次元への襲撃を企む男。
「どうかなさいましたか?」
「えっ?」
「何やら険しい顔をなされておりましたので」
「あー、いえ、こんなスゴいホテル宿泊費とか考えたら何泊もできないなーなんて」
どうやら融合次元のアカデミアに関する事を考えていたら顔付きが険しくなっていたらしくホテルマンに心配されてしまう。イカンイカンと淀んだ気持ちと思考を無理くり切り替えて誤魔化す。
「それは心配御座いません。零児様から緋紅様の宿泊費及びレストラン、ルームサービス等の料金は全て此方が持つとの事です。どうぞお気になさらずお過ごしください」
「えっ、マジですか!?」
「はい。本当です」
宿泊費は兎も角、そこまでしてくれるとは。遊代は驚いた。そこまで気を使わると何だか申し訳なく思えてくる。そして会話を交えながらエレベーターに乗り、20階で降りると遊代が泊まる部屋へと辿り着いた。
「此方の2016号室が緋紅様のお部屋で御座います」
「おー、広いな」
ホテルマンがマスターキーで扉を開けると目の前に映るのは高級感溢れる2つのベットやソファー、テーブルや椅子もちゃんとした物だ。テレビも大きく、バスルームの浴槽も足を延ばして寛げる程デカい。
「それでは此方が鍵とカードとなります。レストラン等をご利用の際には此方のカードをご提示ください。それでは、何か御座いましたら何なりとお申し付けください。
部屋の説明等を終えたホテルマンは鍵とVIPカードを遊代に渡すと、扉を出た後丁寧なお辞儀をしてから扉を閉め、部屋を後にした。
「はあー、疲れた」
部屋に1人となった遊代はリュックをソファーに置くと、なだれ込む様にバタンとベットに倒れ込む。フカフカとした柔らかな布団の感触が心身の疲れを癒やしてくれる。
「……」
仰向けになりながら天井を見る遊代、照明の光がやや眩しい。今日1日で色んな事が起きた。異世界に飛ばされ、真澄と出会い、シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムという未知の召喚法を目の当たりにし、融合次元に存在するという自分の知るアカデミアとは異なるアカデミアの存在。
「取り敢えず、風呂入ってくるかな」
この部屋の浴槽もありたがこのホテルには源泉掛け流しの大浴場がある。そこを満喫しないてはない。遊代はキャリーケースから着替え一式を取り出し、大浴場へと向かうのだった。
「はぁー、いい湯だった」
風呂を終え、赤いジャージ姿へとなった遊代は部屋へと戻っている最中。流石はホテルの大浴場だ。湯船が広い、ジャグジー、サウナと全て揃っている。やはり広い風呂いう物は気持ちいい。心からリラックスできて身も心もリフレッシュさせてくれる。
「もうこんな時間か、どうりで腹が減る訳だ」
部屋へと戻り時計を見てみると、時間はもう8時半を回っている。もう夕食を終える人々が多くなっくる頃合いの時刻だ。遊代が空腹になるのも頷ける。
「レストランで夕飯食べるかな」
レストランも無料だとホテルマンは言っていた。ならば其処で夕食を済ませるとしよう。
「……流石にこの格好は不味いよな」
仮にも市内トップのホテルのレストランにジャージ姿で食事しに行くのは無しと判断した遊代はジャージを脱ぐと、キャリーケースから黒のスラックスを取り出し、先程までアカデミアの赤い制服の下に着ていた濃いグレーのYシャツと合わせる。
「確か、レストランは上の階だよな……」
このコーディネートならば問題ない。遊代は着替えを終えると、飢えた腹を満たしにレストランへと向かった。
「ふー、食った食った」
レストランで夕飯を食べ終えた遊代は満たされた腹をさする。高級ホテルでレストランと言うからそういう高級な料理の店だけかと思いきや、家族連れも多いという事もあってか普通に和食を出す御食事何処や洋食を出すレストランも存在していた。今回遊代は昼にトンカツを食べたので夜は洋食とした。食べたのはフランスパン6切れ、ビーフシチュー、ポテトサラダ、そしてデザートの苺のジェラート。確かに洋食店のメニューだ、しかし他の店より明らかに美味い、材料の質もシェフの腕も良いのだろう。値段は少々高めだが質と味を考えれば妥当だと納得できた。
「ごちそうさま、じゃあこれで」
「はい。ありがとうございました」
鍵と共に渡されていたVIPカードをレジにて提示して、遊代はレストランを後にすると、そのまま部屋へと戻る。
「さてと、それじゃあ……」
普段なら入浴も食事も済んで後は歯を磨いて寝るだけだが、部屋と戻ってきた遊代は椅子に座りテーブルと向かうなり何かをし始める。
「えーっと、まずはアドレスの設定、と」
デュエルディスクと共に手渡された説明書を読みながら遊代は自身のディスクの設定をし始める。電話番号は登録されているので設定するのはメルアドのみ。この世界のデュエルディスクは自分の世界の物とは全く違う。そもそもデュエルディスクで電話等出来やしない、本当にデュエルする為のディスクなのだ。
「設定終わりっ、連絡先の登録の方法は、こうか……」
説明書を見ながらディスクの操作方法を覚えていきながら真澄の番号とアドレスを登録し始める。要はデュエルディスクに携帯やタブレットの機能を組み込んでいる代物、アカデミアの授業や宿題でパソコンは幾度となく使ってきたので説明書を読めば遊代もこれの使い方は把握できる。
「よしっ、登録完了!」
ものの5分で真澄の電話番号とアドレスを登録し終えた。
「よしっ、電話してみるか」
時間は9時を回った頃、まだ真澄も起きているだろう。登録したら電話すると告げているから恐らく出てくれるだろう。早速パネル部分を操作し登録した真澄の電話番号を出し、電話を掛ける。
「はい、もしもし」
着信音が3回鳴った後、真澄が電話に出た。まだ遊代とは思っていないのか何処か他人行儀な声色だ。
「あっ、真澄ちゃん。オレだよ、緋紅遊代だ」
「あら。遅かったじゃない、てっきりもっと早く掛けてくるかと思ったわ」
「いやー、ホテルで身支度してたら時間が過ぎちまってさ」
「そうだったの」
電話越しに遊代は真澄と他愛も無い会話を始める。どうやら真澄はもっと早く電話を掛けてくると思っていたらしい。勝てば街案内がてらデートしてくれという男だ、女好きという認識は消えていない。そんな男ならすぐにでも電話してきそうだと思っていたのである。
「オレはこの後デッキの調整とかするけど、真澄ちゃんは?」
「私は今デッキの調整をしてた所よ。これが済んだら後は歯を磨いて眠るだけよ」
「明日って祝日なんだろ?それなのに10時前に寝るのか」
今からデッキの調整を終えて歯を磨き終えるのを考慮しても10時前には眠る事になる。遊代は寮生活なので10時が消灯時間だが、それでも目を盗んで夜更かししている生徒は居た、遊代もその1人だ。今日は日曜日なので明日は月曜日、なので学校が有るはず。しかし明日は舞網市は祝日で学校は休み。それは机に置かれている小さいカレンダーで確認済みだ。
「明日は用事があるしね、それに普段からできるだけ早めに眠るのよ」
「成る程、夜更かしは美容に悪いしな」
「ええ。男と違って女は大変なのよ」
「えー、少なくてもオレはそーいう所には気を使ってるぜ」
女が見た目に気を使うのは当たり前の事だろう、それは多感な思春期の女子ならば尚更。しかし遊代も見た目や身嗜みには気を使っている、これは自分にデュエルの他に恋愛等を教えてくれた師匠とも言える人物の教えだ。
「そーいう異なら、オレそろそろ電話切るから。この後メールしておくから併せて登録しておいてくれよな」
「ええ、わかったわ」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
真澄のおやすみという一言を聞いてから遊代は液晶を操作し電話を切る。そしてすぐさまメールを作成し始める。
『メール参上!
このアドレスを登録してくれよな。返信する必要はないからさ。
それじゃあ、おやすみZzz いい夢見れるといいな』
作成したメールを真澄へと送信すると、遊代はデッキの調整を行い、それが一段落するとデュエルディスクの本来の機能を確認し始める。
「成る程な、利き腕に併せてデッキとエクストラデッキをセットする位置が逆なのか」
この世界のデュエルディスクはタブレット等の携帯端末としての機能も備えているからか、大きさも遊代の世界の物よりコンパクトで長方形に似た形だ。左腕に着ける遊代に合わせて右側にデッキを、左腕にエクストラデッキをそれぞれセットする様になっている。
「で、魔法・罠カードは此処に入れて発動して、墓地へ送る場合は……」
真澄や零児とデュエルしている時にも見てはいるがデュエルディスクの確認は怠らない。此処のデュエルディスクがソリッドビジョンとして展開される仕組みなので魔法・罠ゾーンがディスク自体に内臓されており、通常魔法等は発動後そのまま墓地へ送られ、永続魔法等は1度其処から取り出して反対側の墓地へ送る様になっている。
「要するにこういう事だろ」
デッキとエクストラデッキをセットし、長方形状のそれを腕に合わせて付ける。手の甲側にデッキ、肘側にエクストラデッキがセットされており、構えた時に自分に見えるのが魔法・罠ゾーン、墓地は自分の世界の時と位置は変わらない。要は形やタブレット端末の機能の差異こそあれどデュエルディスクとしては自分の世界の物と大して変わらない。
「もうこんな時間か、オレも歯磨いて寝るとしますか」
ディスクの確認やデッキの調整をしていると時刻はもう10時半間近。今日は色々有りすぎた、夕飯を食べてから2時間近く経っているはというのも手伝ってか眠気が襲ってくる。取り敢えず他の確認は明日の朝に行うとして今日の所はもう眠る事にした。再びジャージへと着替え、キャリーケースから歯磨きセットを取り出した遊代は歯を磨きに洗面所へと向かうのだった。
「……………ふわぁ~、よく寝た……」
窓から入ってくる太陽の光が目覚まし代わりとなり遊代を眠りから覚ます。重い瞼を擦りながら時計を見ると7時を過ぎていた。普段はもう少し早く起きるので少し寝坊したという所だ。その後、顔を洗い歯を磨き着替えを済ますと椅子に座りテーブルへと向かう。
「さてと、昨日の続きやりますか」
昨日は連絡機能やデュエルディスクとしての確認を済ませたので今日はタブレットとしての機能を確認するとしよう。
「へー、これなら簡単だ」
説明書を読みながら操作をしているが、自分の世界のタブレット端末とほぼ同じだ。使い方もすぐに順応できる。デュエルも出来て、電話にメール、ネットもできるとは便利な物だと実感する。
「まさに朝飯前って所だな」
そう。まだ遊代は朝食を食べていない。本当に朝飯前なのである。なのでディスクの機能を確認し終えた遊代はルームサービスを取ることにした。
朝食を食べ終えた遊代はあの後部屋でテレビを見ながら寛いでいた。バラエティーにアニメやドラマにデュエルを題材とした物があったり、ニュースでデュエル関連の事を報じたり、プロやアマチュアのデュエル大会等、何処もデュエルに関して力を入れている。自分の世界でもプロの試合は中継や放送はしていたが、この世界のデュエルへの力の入れ具合は自分の世界でも取り入れるべきだと感じていた。
「お待たせしました。海鮮丼です」
そして今は少し早めの昼食を御食事何処で取ろうとしている最中だ。頼んだランチが来るまでタブレットで調べ物をしていた遊代の目の前にランチメニューの海鮮丼が運ばれてくる。新鮮な海の幸をふんだんに盛り付け、漬け物、味噌汁まで付いて1200円なのだから安い。ランチのみの限定20名までのメニューなのをこのホテルについて調べていた時に見つけこうして食べにやってきたのだ。
「では、いただきます。うん、美味い!」
そして遊代は丼手に持つと白米と鮪の赤身を口に頬張った。醤油てヅケにしているので味が引き締まり豊かになっている。
「おっ、この海老もうめー」
甘海老も甘くプリプリで大トロはとろけ、鯛の刺身にホタテやイクラにウニも美味い。これで味噌汁、漬け物が付いて1200円なら安い、それは限定にしないと赤字になる筈だ。
「はあー、満足満足」
昼食を食べ終えた遊代は部屋と戻り、余韻に浸っていると突然デュエルディスクが鳴り始める。
「電話か?」
一瞬真澄からの電話かと思ったがそうではない。そこには登録していない番号が表示されていた。
「はい、もしもし」
誰かはわからないが遊代は取り敢えずその着信に出てみる。この電話番号を知っている人間など教えた真澄以外には居ない筈だが、一体誰なのだろうか?
「……なんだ、社長さんか」
電話を掛けてきたのはこの宿泊先を提供してくれた赤馬零児本人だった。このデュエルディスクも提供したのは零児からだ、電話番号を知っていても当然かと遊代は納得した。
「どうだったかな、ホテルのベットの寝心地は?」
「お陰様でぐっすり休めたぜ。本当に恩にきる」
「そうか、それは何よりだ」
異世界に飛ばされ宛てもない、野宿も覚悟していた所にデュエルディスクとホテルを用意してくれたのだ本当に感謝している。それは遊代の偽りのない本心だ。さっき調べてみたら此処はリーズナブルとは言え普通の部屋でも高校生以下なら一泊10000円、大人なら20000円だ。一番豪華な部屋なら50000もする。因みに遊代が泊まっているのは一般家庭も利用する普通へ部屋だ。
「所で社長さん、オレに一体何の用があって電話掛けてきたんだ?」
わざわざホテルの感想を尋ねる為だけに電話を掛けてくる訳がない。何か用件がある、それを遊代は感じ取っていた。
「ふっ、察しがいいな。君の言う通り、頼みたい事があって電話をさせて貰った」
「やっぱりな。で、頼み事ってのは?」
ホテルを用意して貰った恩もある。無理のない範囲ならば恩返しとしてその頼みを遊代は聞くつもりでいる。
「実は……」
「……此処にも居ねえか」
零児の頼みを受けた遊代は市内の彼方此方を探し回っている。それも人目に付かない路地裏や空き家等を。
「昨日、舞網市の倉庫でLDSのスクール生が襲われた」
「襲われた?」
「ああ。それを調べる為に昨日のデュエルを中断せざるを得なかった」
その話を聞いて納得がいった。LDSは零児が社長を勤めるレオ・コーポレーション直営のデュエルスクール。その塾生が襲われた事の事後処が零児にも回ってきたのだろう。
「その犯人を君に見つけだして欲しい」
「別に構わねえけど、なんでオレなんだ?あんたん所ならデュエリストはいっぱい居るだろ」
頼まれるのは構わないが何故自分なのかは遊代は理解できない。デュエリストを育てているLDSならばデュエリストは大勢いる筈。それを何故部外者の自分に頼むのかが疑問だ。
「昨日のデュエルで思った。君はこの世界のデュエリストよりも実力はずば抜けている。そして融合召喚に関しては君の右に出る者はいないとも思っている」
「いやー、それ程でも……あるかもな」
そこまで自分の実力を見込んでくれているとは。遊代自身融合召喚に関しては誰にも負けないとは自負してはいるが此処まで他人に褒め称えられるとは、しかも異世界の天才プロデュエリストにだ。増長してしまいそうになる。鼻が伸びてしまいそうだ。
「それに襲撃されたスクール生から話を聞いた所、その男はエクシーズ召喚を使うとの事だ」
「エクシーズ召喚を!?」
確かこの世界ではエクシーズ召喚はLDSでも最近教え始めた召喚方法の1つ。それを部外者の男が何故使っている?
「その時生じたエクシーズ召喚の召喚反応もLDSのスクール生がエクシーズ召喚をした物とは比べ物にならない程高かった。君が融合召喚を行った時と劣らない程にな。しかもリアルソリッドビジョンも無い状況でのデュエルで相手のカードは実体化していたとの報告だ」
「おいおい、まさか……」
此処まで聞けば遊代も察しが付いて来る。つまりその襲撃犯は自分と同じく他の次元から来たデュエリストだという事だ。
「そしてこう問い詰めたらしい。LDSとアカデミアの関係はなんだ?とな」
「っ!それじゃあやっぱりエクシーズ次元からの……!」
エクシーズを使うデュエリストがアカデミアと関係があるとLDSの生徒を襲撃した。それは遊代の予想通り他次元、つまり融合次元のアカデミアが狙っている次元、エクシーズ次元から来たデュエリスト。
「そうみて間違いないだろう。恐らくかなりの実力者だ、だからこそ君に頼みたい」
「おうよ!そーいう事なら引き受けたぜ」
例え自分の知らないアカデミアだとしても、関わっているのなら無視はできない。零児の頼みを受けた遊代はこうして市内を駆け回っている。
「にしても、何処に居るってんだ?」
手始めに襲撃された倉庫とやらを見てみたが、確かに床は削れ、壁に槍を刺した様な穴が空いていたり焦げてもいた。焦げたのはぼやと説明できるが、床や壁の痕はどうみても人間技では無い。それから彼方此方、人目に付かない場所を探し回っているが、それらしき人物とは遭遇もしない。
「にしても、まさかこんな事がな……」
デュエルディスクに映し出した1人の人物、それは今回の事件の犯人とされている人物に瓜二つの少年。そしてその少年とは1度だけだが会っている。この画像が転送された時、遊代は驚いた。
「ちょっ!?これは……」
「知っているのか?榊遊矢を?」
「あ、ああ。この世界に飛ばされた時に道を聞いた事がある」
まさかこんな形で顔を拝む事になるとは思わなかった。犯人と酷似している人物として送られてきた画像に映る遊矢は何かのインタビューを受けているのか何処か照れた様子だ。
「彼は榊遊矢、ペンデュラム召喚の始祖だ」
「ペンデュラム召喚の始祖?」
「ああ。彼がペンデュラム召喚を生み出したデュエリスト、私が使ったペンデュラムはそれを元に作り出したに過ぎない」
しかも偶然出会っていた遊矢が後に目にするペンデュラム召喚の始祖だとは尚更驚きを隠せない。
「じゃあ、まさかこいつが犯人だっていうのか……?」
「否、彼はこの世界の人間。それに今の彼には融合・シンクロ・エクシーズを使いこなす技術はない筈。しかし被害者や目撃者の証言によれば襲撃犯は彼だと言う」
「なんなんだそりゃあ……」
この世界の人間がエクシーズ召喚使って人を襲う必要性が何処にある?遊代には謎だ、しかも最近になってLDSで教え始めたエクシーズをどうやって部外者の遊矢が使える。
「其処で私は仮説を立ててみた。襲撃犯は君の予想通りエクシーズ次元から来た人間。そしてその人物が榊遊矢と瓜二つの容姿をしていたとしたら?」
「そうか……!それなら辻褄が合う!」
零児の言うのは飽くまでも仮説だが、断片的な情報と推測が全て噛み合い1つの真相へと繋がっている。それに他人の空似というのは有り得ない話では無い、遊代自身も自分を拾ってくれた人物に非常に酷似している。丸でパズルが全て埋まったかの様に答えが出来上がった。
「君にはその人物を見つけ出して欲しい。我が社も協力する」
「ああ。わかったぜ!」
そして遊代は遊矢と瓜二つの顔をしたデュエリストを探している。遊矢本人は現在通っているデュエル塾に居る。つまり此処で襲撃犯を見つければ疑いも晴れると言う訳だ。しかし3時間以上探してもそれらしき人物など居ない。見付からないのかという考えがよぎった瞬間、レオ・コーポレーションからの連絡が来た。
「G地区に強い召喚反応を検知!召喚反応、エクシーズ!」
「遂に出やがったな!」
デュエルディスクにその場所の地図が出ている。しかもこの場所は走れば1分もかからない。遊代はダッシュでその場所目指して駆け抜ける。
「此処か!」
地図に映し出されている場所は大きな倉庫、それが遊代の目の前に佇んでいる。辿り着いた倉庫のスライド式の扉を遊代は勢いよく開けた。
「うわあああぁぁぁ!」
「くっ、これは……!」
扉を開けるといきなり凄まじい衝撃が遊代を襲う。何とか堪えるも、同時に1人の男が吹っ飛んで来た。そして吹っ飛ばされた男は扉の近くの壁と叩き付けられ、そのまま地べたにドサッと雪崩る様に落ちる。
「お、オイ!大丈夫か!オイっ!」
駆け寄って呼びかけるも吹き飛ばされた男は気絶している。この男は確かLDS融合召喚コースの講師マルコ、エクシーズ召喚使いと交戦中の人物として地図と共にデータが送られて来ていた。
「って事は……」
間違いなく居る、エクシーズ召喚を使うデュエリストがこの倉庫内に。ソリッドビジョンではない煙が晴れると、そこにそいつは佇んでいた。
「コイツが……」
立っていたのはゴーグルとスカーフで顔を隠し、首に赤いスカーフを巻いて青いロングコートを来た男1人と機械じみた一羽の鳥、その鳥の周りには2つの光球が円を書く様に回っている。それはつまりエクシーズモンスターだ。男の方は顔が隠れてるとは言えどもとても榊遊矢に瓜二つとは思えない。しかし1つだけ分かる。
「貴様もLDSか!?」
この男もLDSを襲撃したエクシーズ使いだというのはその凄みと殺気から嫌と言うほど理解できた。
今回はデュエルはなく、遊代が不審者と遭遇するまでの話でした。一体不審者とはどこの何咲隼さんなのか……
しかしデュエルがないにも関わらず10000文字超えとは、お気に入りが増えないのや感想が余り書かれないのは長すぎるからなんですかね?でもPVとか確認すると更新した1日はこれまでのを平均すると600近くは有るはずなんですけど……
でも今更1話辺り5000文字とかにするのもあれですし、かと言って今までの話を平均7~8000文字とかにすると1デュエル終わるのに何話掛かる事やら。
それをやると零児とのデュエルが65000文字オーバーを4話使って終わりが中断なので、単純に倍の8話位に……平均8000文字で8話掛けて続いたデュエルが中断とか流石にあれですし……
なので緋色の英雄このままの平均文字数10000を維持して更新しようと思います。デュエル描写とか入ると否が応でも文字数増えますし。ではまた次回お会いしましょう。