蜜柑の棘   作:とものり

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短めですが前・中・後編の三編になりそうです。
ストック分はここまで。




執着の終着〜中編〜

校舎を出て駅前に向かう。俺は家路とは逆方向だが仕方あるまい。田島は電車通学だから二人とも歩きだ。

 

途中で、自転車に乗った長内さんが通り過ぎて行った。

 

さて、これで大丈夫だな。

 

「お前は知ってたのか、あのメール」

 

と事件について切り出す。

 

「ああ、あの件についても昨日メールしてくれてたんだ」

 

そりゃ悪かったな。でも、今となっては好都合だ。

 

「お前、虹原に嫌われてないか?」

 

「情報屋としてはビシッと答えたいところだけど、自分に関するのは主観がはいちゃってね。まあ、嫌われてはないと思うよ」

 

「なんだ、その情報屋って」

 

それはいいじゃん。と話を遮る。

 

 

 

 

駅前の喫茶店に入って、奥の目立たない席に座る。個人でやってる所で俺のお気に入りの店だ。運よく今日はほかの客もいない。俺は紅茶。田島は、

 

「ここのいちごシェイクはおいしいんだ」

 

と、いちごシェイクを頼む。

 

以前こいつと、健太郎と来たことがある。その時はコーヒーだったが。

 

「たまにここ、来るんだ。」

 

その後、紅茶についての蘊蓄を喋っていたが、

 

「盗まれたもの、返ってくるかな?」

 

と言ってきた。こいつはこいつなりにどうにかしたいのだろう。

 

「まあ、ペンやノートはともかく、筆箱は明日くらいには帰ってくるだろうな」

 

「根拠は?」

 

いや、それよりも。

 

「この事件はともかく、虹原はちょっと臭いな」

 

「あのメールでってことかい」

 

勿論。ただ他にもある。

 

「虹原が、歴研に長内さんが来るのをわかるとしたらどういうのが考えられると思う?」

 

「うーん。そうだねぇ」

 

そう呟いて、考えている。

 

二人とも黙っているので、店内のBGMがやけに聞こえる。何かはわからないがクラシックだろう。ちょっと黙ってるのがしんどくなってきたその絶妙なタイミングで、紅茶といちごシェイクが机に置かれる。

 

早いなと思ったが、俺はいつものゴールデンアッサム、田島のいちごシェイクもすぐできる。それにほかの客もいないしな。

 

一口いちごシェイクに口をつけて、田島が切りだす。

 

「そうだね。まずは《僕が「今日歴研に来て」って言ったのを聞いた》」

 

「歴研に来るのを決めたのは昨日学校でなのか」

 

「いや、メールで伝えたけど、日取りが決められなくって、お前が部室に行く日じゃないといけないから」

 

なるほど。

 

「もしくは歴研の部室に《入るときを見た》、もしくは《出るときを見た》」

 

まあ、長内さん本人が言わない限りはね、と付け加える。

 

ふむ、七〇点てところかな。紅茶を啜る。

 

「少なくとも、部室を出て行くところを見てって言うのはないだろう」

 

「どうしてだい。こっちからは対応できないし、ちょっと盲点ぽくって自信作だったんだけど」

 

「確かに出て行く時、て言う発想は面白い。だが、昨日部室を出ていく長内さんを見たとしたら、あのメールの内容はおかしいだろ」

 

メールの本文は、《歴研入ったの?》だ。

 

「この入ったって言うのが、部室に入ったっていう意味なら別だが」

 

それはないでしょ、流石に。と田島は苦笑する。

 

「出て行く時は…。ああ、そうだね。泣いてたもんね」

 

「そうだ。泣いてるのを見たら普通そんな内容ではメールしないんじゃないか」

 

 

「そういえば忘れてたけど、筆箱を取りに行った時に《出て行った時》、《入った時》の可能性もあったね」

 

「ああ、そうだな」

 

……忘れていた。でもそんなことはおくびにも出さず続ける。

 

「特に、戻ってくる時なんかは気が動転してただろうし。周りを見てなかった可能性はある」

 

だが、俺は最後の可能性についてまだ言っていない。これはあまり考えたくないから。

 

「それで、その時の虹原君のアリバイか。調べるのかい」

 

それは、避けられないだろう。そっちで片がついた方が俺的には救われるし。

 

「その点はお前に任せる。慎重に聞き出してくれ。お前にはその手の適性がありそうだ」

 

まあぶっちゃければ面倒だから、だけど。

 

「今、面倒なことはこいつに押し付けようって思っただろ」

 

こいつ、なんなんだ。俺の心が読めるのか。いぶかしげに見つめる。

 

「でも、いいよ。手伝うって言ったし」

 

「くれぐれも虹原サイドに伝わらんようにな」

 

「そこら辺は任せてくれ、明日には全部聞きこんどく」

 

「ところで、分実はどうだ」

 

「なんだい、いきなり。あの時言って以来はその話はしてないから心配はないよ」

 

なら、良かった。ああ、

 

「因みに、分実って今なにやってんだ。文化祭まではまだあるだろ」

 

「そうだね。僕ら一年生はまだ蚊帳の外って感じかな。上級生が文化祭のテーマについて考えたりしてるとこかな」

 

「そっか。わかった」

 

半ば独り言のようなその一言に田島は、はてなを浮かべていた。

 

 

 

店の時計が18時を伝えてきた。すっかり冷えてしまった紅茶を飲みほし席を立った。借りを返すぞと言って会計は俺が持つ。

 

「確かに長内さんがいたら話しにくいね。こんな話」

 

「それもあるが、落ち着いて考えたかった」

 

おやおや、ずいぶんと熱心で。と調子にのる田島をしり目に俺らはそれぞれの家路についた。五月ももう終わる。カエルの鳴き声を聞きながらそんなことをふと思った。

 

家につき田島にメールをして、飯を食べ、宿題をし、風呂に入り、パソコンで調べごとをし、寝る準備は万端となった。

 

そして今、長内さんに送るメールの文面をチェックしているところだ。

 

長すぎるだろうか。硬すぎるだろうか。だが内容が内容だけにあまり砕けた文面も避けたい。などと時間を浪費していく。

 

無事チェックが終わり、送信する。

 

トイレを済ませ、パソコンを閉じようと思ったらメールが来ていた。

 

田島からと……

 

長内さんからメールが。さっき送ったばっかなのにもう来ている。

 

これが女子高生の力かと感心しつつメールをあける。

 

 

件名:Re:不知火です

 

本文:こんばんは☆長内です。

 

両方とも了解だよ。明日は用事あるし、ちょうどよかったよ。

 

不知火くんには関係ないことなのに協力してもらってごめんね。

 

明日返ってくる……そうだと良いね。まあ、期待はしておきます!

 

また用事があれば、いつでもメールしてね!

 

おやすみ☆

 

長内さんの直メールきたぁ!とか思いつつ、《本当の意味》はバれずに済んだと安心した。

 

そして、忘れそうになっていたがもう一件。田島からのだ。

 

件名:Re:諸連絡

 

本文:乙でーす。

 

たしかに、その方が無難だね。学校ではこの件がらみの会話は慎むよ。

 

明日はまあ、とりあえず部室に行くよ。じゃ。おやすみ

 

彼もやはり、か。《本当の可能性》には気付きもしていないな。でも、身内ですら気付かないことは外部者にはわからない。このことはかなり都合がいい。ただ、悲しむとわかっている道に長内さんを進ませることだけは心が痛む。

 

だが、万に一つもこの手段で解決するなんて俺は思っていないのだ。

 

これはあくまで、《本当の可能性》を突き止める為の伏線にすぎない。

 

 

 

 

翌朝、いつもより早く学校に行った。まだ教室には二、三人しかいない。

 

いた。やっぱり。

 

そして自分の席につく。教室を出る時にさりげなく長内さんの机の中をみる。

 

……これもビンゴ。

 

自分の席で小テストの教材をだし、覚えていく。気分すっきりどんどん覚えていく。漢書地理誌、後漢書東夷伝、魏志倭人伝、宋書倭…

 

「おはよー」

 

パッとドアのほうをみる。長内さんだ。無論俺に言ったわけではない。でも、自然に顔を見れる機会なのだ。事実目が合った。軽く笑うと何事もなかったように歩いていった。

 

机の中に筆箱があるのを確認すると、肩を震わせ、そしてそれを抱えて教室をでていった。よほど嬉しかったのだろう。

 

でも、まだ喜ぶのは早いのだ。

 

田島がその後来てアイコンタクトで筆箱が合ったことを伝える。

 

あとは、今日あいつが虹原のアリバイを調べれば…

 

「ノートさんきゅ」

 

そう言ってノートを渡された。最もノートを貸した覚えはないが。

 

パラパラとめくると計算式がならんでいる。数学のノートだとおもわれる。

 

もっとも最初の数ページで止まっているが。

 

「あのな。意味が……」

 

中盤以降。と囁いて自分の席に戻っていった。

 

説明を求めようと、席から立ち上がると始業のチャイムが響きわたった。

 

一時間目、数学だ。しかし山崎はすぐ授業を終わらせ自習にした。中間テストが近いからだ。

 

近いとはいえ前々からコツコツやるなんて柄でもないから、田島からのノートを引っ張り出しながめていた。

 

これは……

 

数学の板書のページの何ページか後に、虹原の動きがきめ細やかにまとめられていた。

 

今日集めるって言ってたんだがな……

意外と頑張り屋な一面を垣間見て思わず笑ってしまう。そして後ろを振り返ると田島はやはり寝ていてもっと笑ってしまった。

 

 

「まずはありがとうといっておこう」

 

そう言って入れたての紅茶をだしてやる。しかもとっておきのアプリコット・ティー。

 

「お安いご用さ。学校で聞くと虹原君に聞かれる恐れもあったしね」

 

なるほど、一応考えて行動してるらしい。しかし、それにも懸念が。

 

「だが、昨日聞いた奴らが虹原にその事を言ってしまったらさらに厄介な感じに……」

 

心配無用さ。どや顔で言い張る。

 

「そいつらには適当な情報操作でかたをつけてるから」

 

情報操作?なんだそれは。

 

いや、いいや。兎も角丸く収めたんだろう。

……多分。

 

「あの情報を見る限り、昨日はここに来るのを確認するのは不可能ってわけだ」

 

だね。と、田島。

 

となると。

 

「とりあえず、長内さんにはここには来ないようにしてもらおう」

 

「それはいいけど、今後はどうすんの?メールだけにするのかい?」

 

まあ、メールの方がまだ安心だけど。でも不安が残る。

 

何か、方法を…

 

「…清人?」

 

「あ、ああ。すまん。ちと考えてた」

 

時計を見る。まだ16時前だ。

 

「俺ん家来ないか」

 

 

―続く―




>身内ですら気付かないことは外部者にはわからない。このことはかなり都合がいい。ただ、悲しむとわかっている道に長内さんを進ませることだけは心が痛む。

>だが、万に一つもこの手段で解決するなんて俺は思っていないのだ。

>これはあくまで、《本当の可能性》を突き止める為の伏線にすぎない。

ドヤ顔で言い放っていますが……

俺も解んなくなったわwwwwwなんだよ本当の可能性ってwwwww

すみません。思い出せたら続き書きます。
思い出せたら……
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