全員が朝食を食べ終え会議室に移る。どうやら次の依頼の作戦会議をするようだ。ボスに会議には念のため出席するように言われていたのでカネキも向かった。
「レオーネ数日前帝都で受けた依頼を話してくれ」
「標的は帝都警備隊のオーガと油屋のガマルって奴だ。」
レオーネは今回の標的の名前を告げオーガ達の悪事を説明した。
濡れ衣で婚約者を殺された!?そこまで帝都は腐っているのか?
レオーネは、おそらく金貨が入ったボロい布製の袋をを机の上にポンっと置く。
カネキが村を出発するときに村長に渡されたのと同等位の量はあるだろう。
「その人よくこんなに貯めましたね」
村長は約5年間をかけて貯めたらしいが今回の依頼人は金持ちだったのだろうか?しかし答えは違った。カネキが求めていない答えが返ってきた。
「性病の匂いがした…体を売り続けて稼いだんだろう」
「!」
驚きで声が出なかった。会議室の空気が淀む…
ふざけるな…悪逆無道の人間のせいで何故幸せになるはずだった無罪の二人の人生が滅茶苦茶にされなきゃいけないんだ…
キリキリ音がなる程カネキは歯をくいしばった。
でも…僕には何も出来ない。僕にはそんな奴ですら殺すことが出来ない…
握りこぶしをつくりグッと力を込めているカネキの肩に手を添えてシェーレが「大丈夫ですよカネキ。私たちに任せてください」と言ってくれた。カネキはシェーレに微笑み「ありがとうございます」と言い心の中で再度、本当に…ありがとうございますと言った。
「事実確認は出来てるんでしょうね?」
マインがレオーネに問いかけにレオーネが首肯する。それを確認しボスが決断を下す。
「ナイトレイドはこの依頼を受ける。悪逆無道のクズ共は新しい国にいらん天罰を下してやろう。」
ボスがそう言うとナイトレイドの皆が活気づく。カネキはこの人たちならこの帝都を変えてくれると思えた。
今回の作戦に向かったのはアカメ、レオーネ、マイン、ラバックの4人だ。全員で向かわないのは宮殿付近は警備が厳重で多人数で行くとかえって危険なのが理由だ。
「お願いします」
カネキは深々と4人に頭を下げる。僕にはこれくらいしか出来ることはない。
「楽勝よ私をなめないで」
マインがふんっと鼻息を鳴らしながらカネキに言った。こう言う時のマインの強気はとても心強かった。
「まあ待ってろってカネキ!いい知らせ持って帰ってくるからよ」
ラバックが元気よく言う。カネキは無言でコクりと頷いた。
「では行ってくる」
アカメのその言葉を合図に四人は作戦を開始した。
絶対に生きて帰って来て皆。絶対に生きて…
カネキは天に願った。
・・・・・
「たっぷり尋問した後の酒はうめぇや」
酒臭い息をウィーッと吐いて標的オーガは街中をフラフラと上機嫌で歩いていた。
この街じゃ俺が王様よ…!権力最高やりたい放題だぜ
次も幸せそうな奴を絶望のドン底に落としてじっくりいたぶってやるか。
ニヤッと狂喜の笑みを浮かべていたオーガだったが何者かの気配に気づき憂わしげな表情になる。
殺気の数からして2人か…
グッと腰にかけていた剣を握る。
「葬る」
女の声が背後から聞こえた。その声だけを頼りにオーガは剣を回転の遠心力をつけながら振るう。ガキィと金属同士が衝突し合う音が響いた。
オーガは素早く後ろに下がり距離をとった。
クソッまさかこの街で俺に歯向かう奴がいるとは…細身のわりに腕力もあり思い一撃だった。相当できるなこの女…
「…俺が…このオーガ様が…手前ェみてェなクソガキに殺られるかよ…」
険しい表情で女を睨み付ける。ん?どこかで見たことがある顔だな…それに女が握っている剣、村雨か?
「そうかぁ…」
ニタァと笑い
「お前アカメだな?一体誰の依頼だ?心当たりは山程あるが最近だとこの間殺った奴の婚約者か?」
アカメの表情が曇る。
「当たりかぁ…やっぱりあの女もあの時殺っときゃよかったなぁ…いや今からでも遅くはないか!」
先程のアカメの攻撃でオーガは悟っていた。この程度の奴には負けないと。
確かにあの帝具は厄介だが当たらなければいいだけだ。
アカメを殺した後はあの女を探しだし女の親兄弟を重罪人にし…
オーガがどうあの女をいたぶって楽しもうか考えていた時だった、ドスっと音がオーガの腹もとでなり血が吹き飛ぶ。
「悪いな本当の狙いはこっちなんだ」
俺としたことが…クソッ…もう一人居たことを忘れてた。いや実際には気を配っていたが気配を感じなかった。コイツ気配を消してやがったな!!
ズポッと腹を貫いていた手を抜かれ激痛がオーガを襲った。
アカメの奴…俺を油断させる為に本気じゃなかったな…
「クソッ…ナイトレイドォォ!」
最後にそう叫びオーガは力尽きた。死んでいることを確認しレオーネはアカメに言う。
「よしこっちは任務完了だマインとラバック達と合流しよう。あっちもとっくに終わってるはずだしな」
アカメはうんと首肯しラバック達のもとへ向かった。
・・・・・
よかった…全員無事帰ってきた。
「お疲れ様です」
「強敵の始末ご苦労だったな見事だ」
任務を成功した四人はどこか満足そうだった。人を殺すことに慣れているようだった。それが良いことなのか悪いことなのかは分からない…だけど僕は皆を信じよう。
「昼食を作っておきました。皆で食べましょう。」
全員が帰ることを信じてしっかり8人分作っておいた。
「さっすが私のカネキだ」
「え?」
レオーネにそう言われカネキは唖然するが皆はそんなことはどうでもいいと言うように席について僕の作った料理を食べて始めた。
いつまでも…こんな賑やかで楽しい生活をしていたい。ナイトレイドの皆とずっと一緒にいたい。カネキは満面の笑顔で皆より少し遅れて自分の作った昼食を食べ始めた。
・・・・・
オーガの暗殺の依頼から数日が経った。ナイトレイド全員がいる会議室の空気は悪かった。それもそうだ…
今回の標的だったザンクという標的が何者かに殺されたらしい。深夜に無差別に現れて首を切り取っていたらしい。ナイトレイドの標的にされても可笑しくはなかった。
ザンクは首斬りザンクの二つ名を持っており相当強かったらしいがそのザンクが昨晩八つ裂きにされて死んでいるのをアカメが発見した。
報告では獄長から盗んだ帝具は持っていなかったらしい。
「帝具持ちのザンクを殺したところからおそらくザンクを殺害した者も帝具使いだろう。」
ボスが険しい表情をで言った。ザンクを殺害した理由は不明だった。ただザンクの死体をみる限りザンクに恨みがある人間と考えられるらしい。
「これ以上考えても無駄ね…」
「そうだな次の依頼に移ろう」
マインとブラートが言った。確かにこれ以上考えたところで分かることは何もないだろう。次の依頼に移るのが最善だ。
「次の依頼は帝都の色町だ。薬を使って女を操っているゴミがいる。事実は確認ずみだ。レオーネ、ブラートで行け。そして組織の大本締めであるチブルはマインとシェーレで行ってくれ」
指名された全員が首肯する。
「晩飯作っといてくれよカネキ!」
ブラートがカネキに満面の笑みで言った。嬉しかった。僕は作戦に参動出来ないが何か頼られていることが嬉しかったのだ。任せてくださいと握りこぶしをつくり親指だけを立ててブラートに答える。
「よぉーし!じゃあ、行くぞ皆」
レオーネの甲高い声が会議室に響き四人は作戦を開始した。
・・・・・
夕食の準備をしようと思ったのだが事件が起きた。食材がないのだ。
昼まであれだけあった食材が尽きていた。夕食の分も考えていたのに。
「すまないカネキ…お腹が空いて食べてしまった」
やはりアカメか…とは言え文句は言えない。食材の大半をアカメが集めているからだ。毎朝ブラートに修行させられているがまだ危険種と面を合わせて戦う勇気がなかった。
僕の帝具、眼帯マスクを装着すればいけるかもしれないが僕が僕でなくなってしまいそうであの日ボスたちに見せてから、もしもの時の為に肌身話さず持っているが一度も使用していない。
「朝も行ったけどもう一回行こうか」
「そうだな」
僕たちは食材集めの為に山に向かった。ここにはレア種の魚もいるし危険種いる。アカメは兎に角、魚や危険種を狩りカネキは野草を採取した。昔から読書が好きなカネキは食べれる野草などの知識が豊富だった。
例えばこの黄色い花を咲かせる野草は煮れば苦味がとれて美味しい。
こんなことをせずとも帝都に買いに行けばいいと思うかもしれないが殺し屋のアジトは帝都から10㎞の山の中にある。僕の足では時間がかかり過ぎてしまう。だから今は野草を集めている訳だ。
「カネキ!」
アカメの嬉々とした声が耳につく。アカメの声のした方角を見るとアカメが二級危険種のランドタイガーを狩り終えていた。
美味しいのかは分からないがアカメが嬉しそうにしてるところから美味しいのだろう。
「今日はこれくらいにしとこうか」
アカメがカネキの提案に首肯し二人でランドタイガーをアジトまで運んだ。
アカメは腕力がカネキよりもあるので運ぶのには余りに苦労しなかったがカネキは明日からもっとブラートさんに修行してもらおうと思った。
狩りに出かけてから随分と時間が経ってしまった。既にレオーネとブラートは帰っていた。もうじき別動部隊のマインとシェーレも帰って来るだろう。二人が帰ってくる前に、早くこのランドタイガーを調理しなければいけない。
「焼こう!」
アカメが目をキラキラとさせて言った。この目で頼まれてはカネキには断れない。ランドタイガーをいくつかに切り分け全てを焼いてしまう。どうせアカメが食べてしまうので大丈夫だろう。
ランドタイガーを焼いている間に採取した野草でサラダを作ろうとした時だった。
マインが帰ってきたようだ。間に合わなかったか。あの子僕に厳しいから怒鳴られそうだな…
なんだろうこの感じ…嫌な予感がする。どうやらアカメも同じようで二人でアジトの外に出るとそこにはナイトレイドの皆がいた。マインはボロボロになっていた。今回の敵は強かったのだろうか?でも生きて帰って来てくれてよかった…
空気が淀んでいた。なんだろうこの違和感。カネキはすぐにその違和感の原因わ理解した。
いない…いない!?いないいない…
シェーレさんがいない…!?
ドクンと体がはねるような感覚がした。心臓の鼓動がうるさい。違うきっとどこかにいる。シェーレさんだきっともうアジトの中にいるんだ!
「シェーレが帝都に警備隊に殺された」
マインがそう言ったのが聞こえた。いつもなら声で誰が言ったか分かるのに…誰かが「シェーレ」がと言った。
心臓がはち切れそうだ。苦しい…あの時と一緒だ…村長が殺された時と一緒だ。
次々と涙がカネキの頬を伝って地面に落ちていく。
ゾクリと悪寒が走り誰かの声が聞こえた。
「あーあ…また大切な人を失っちゃったわね」
ずっと前に聞いたその声を僕は明確に覚えている。この声はカネキ以外には聞こえていないようだった。
「久しぶりねカネキくん」
どこか笑っているような女の声が聞こえた。