Fate/apocrypha 少し違う外典のようです 作:カルナさんお迎えしたマン
夢を見ていた。
もうずっと前の夢。
今も思い出す。思い出しては直ぐに忘れてしまう一夏の冒険。
あの頃の俺は純粋だった。
困っている人は助けたい。主観で善悪を決めていた視野の狭い子供だった。
茹だるような暑い夏の日、俺はお婆ちゃんのお使いで観布子市に行っていた。
何でも古くからの常連さん?太客の人たちから同時に依頼があったから荷物を渡してきて欲しいということだった。
なんでも今まで寝たきりだった女の人が目を覚ましたから快気祝いにある物と100万円程するビクトリア朝時代のウィジャ盤をそれぞれの依頼主に届けて欲しいとか。
普段ならミセに用がある人しか対応しないお婆ちゃんなんだが昔馴染みらしいから特別なんだと。
しかもホテルまでとってくれてていたせりつくせりで裏を感じずにはいられないぜ。
そんなわけで俺は絶賛迷子だ!
いくら俺でも初めての街で一人ぼっちだと泣いてしまうぞ!
歩けど歩けどよく分からない道に出るばかり。
目的地のビルに全然着かない!!
どこだよ!人形工房「伽藍の堂」!!
どういうことだってばよ!
届け先は魔術師の工房かそれに近いやつだから後にしよう!
日が暮れるどころか1日じゃたどり着かないよね!!!
次!この揺れるたびにカチャカチャ言ってる物騒な棒!これを届けに行こう!
とか何とかバスを間違うこと3回、道を尋ねて違う方向を教えられること5回。予定を変更してから5時間。歩き疲れて棒になった足を引き摺ること1時間。
ようやく2つ目の目的地、両儀さん家に着いたのだけど、、、
デカすぎやないですかね。
何となく、何となく「両儀さんのお家はどこですか?」と聞いてみんながみんな別の方向を伝えたのが分かった気がした。
多分893さんだ。
多分。うん。たぶん。
お、お婆ちゃんめ!!!孫にやーさんの家に行かせるなんて人の心とかないんか!!!
怖すぎて涙が出てきた…
恐る恐るインターホンを押すこと数分、中から全身真っ暗スーツの強面ヤクザさんが出てきた。
「遠いところご足労いただき、ありがとうございます。
私秘書を務めてさせていただいております、秋隆と申します。」
真面目だった。
いや、聞いたことがある。YAKUZA屋さんは一見物腰柔らかく見えるけど、少しでも怒らせると拉致されるんだ。
お、恐ろしい。
「え、えっと、お、お、僕は願いを叶えるミセ。えと、おばぁじゃあなくて侑子さんのお手伝いで荷物を届けに来た者、です。」
「当主より聞き及んでいます。」
短いやりとりを済ませ荷物を渡す。
早く帰りたい!!!!怖すぎる!
「ありがとうございます。お嬢様もお喜びになられます。」
そう言うと強面ヤクザさんの口元が弛んでいるが分かった。
きっとあの棒で人を殺るんだ。そうに違いない…。
「えっと、そろそろ失礼しましゅね!」
そそくさと帰ろうとするが何故か止められた。
「もう日が暮れてしまいます。よろしければ今夜はお泊まりになられてはいかがでしょうか。お嬢様は出られていますが、当主はそろそろ帰られてきます。貴方に会いたいと話しておりましたよ。」
「い、いえ!ま、またの機会にさせてもらいますね!!失礼しました!!」
ダッシュで逃げた。
だって当主って組長でしょ!
会いたいって何。人質に取りたいの間違いじゃないの!?
それであれでしょ、お婆ちゃんと取引しようとするんでしょ!?!
そんなの嫌だあああああ!!!!
日暮れの山道を狂ったように走る。
気がついたら夜になっていたし、よく分からない場所に着いてた。
今日はよく分からない場所にしか行ってないな。
もしや俺は方向音痴というやつではないのだろうか。
生まれて11年全く気付かなかったが今回で自分の特性を知ることができたのはやはりお婆ちゃんの仕業だったのかもしれないな。
ぼけぇと考えながらホテルまでの道を思い出す。
と言っても方向音痴気味なので朝出たホテルまでの道なんてこれっぽっちも覚えていない。
こっちの路地通った方が早く着くのでは?
そう俺の大六感が告げている!
街の明るさに対し夜は深まり道は暗くなる。補導されるのも時間の問題になってきた。
路地裏に入り数m。
さらに進む。
路地裏特有のドブのような臭いにキツい刺激臭。
重くなる空気、紅く濡れる地面。
美しいとは言い難い、不自然に凶った四肢。明後日とは言えず1週間くらいの方を見ている首。
単なる思い付き、重いツキ、想い尽き。
戯言だ。
小学生がそれをヒトであったモノと認識するのには少し…数秒ほど時間を有した。
不思議とパニックにならず冷静なのはコレが常軌を逸しているだけでこの世のモノというのは変わらないからなのか、自分の家系がなせることなのか。
どちらにせよ放っておこう。
お婆ちゃんが言っていた。
こういうヘンテコリンな事件は教会だか協会だか土地のセカンドオーナーなりが秘密裏に処理をするんだそうな。
触らぬ神に祟りなし。
血溜まりを避けながら更に奥へと進む。
もしかしたらさっきのオブジェクトを作った碌でなしがいるかもしれないが、こちらも先を急いでいる。補導とか怖いし、やーさん追ってくるかもしれないし。
何も出てこないことを祈りながら先を進む。
行き止まり。
やっぱり変な道に入るんじゃなくて大きな通りから行くべきだった。
「もし、そこの人。もしかして、見てしまいましたか?見てしまわれたなら、私アナタのことを殺さないといけません。」
こうしてヘタレが育っていくのでした。次回は本編書きますわよ〜
次回「その時既に行動は終わっている」に続く!