プロローグ部分ですので短いです。
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飢餓人生
少女は餓えた目で月夜を見上げ、自身がただ、何もできないまま飢えとこの上ない渇きで死んで行くのだろうと丘の上にそっと生えている木に持たれながら考えていた。
ここは幻想郷、そう呼ばれているが飢餓貧困は絶えないし時は流れ老いることもある。
人間と妖怪が入り混じり、交った世界。
――生きていたい。
少女は切に願う。なんとなく、流れ星が見えた気がしたから。
「やはり、月夜の散歩は良いものね。咲夜」
「はい、お嬢様、とても良いものですね」
丘に二人の女性が歩いてきた。一人は十歳前後ほど幼子だが面妖な雰囲気を醸し出している。大人びた雰囲気と言えばしっくりくるかもしれない。
目を見ようとして、少女は止めた。一瞬だけしか見ていない筈なのに鮮明に彼女の身目形を覚えている。特に目は吸い込まれるような深紅の瞳。まるで狩りに来た狼の様だ。
次にもう一人は、その幼子の従者だろうか、銀の髪に純白な髪留め。服はメイド服なのだかどこか瀟洒であり、こちらは自分の生き方に誇りを持っている目をしている。
太ももから見えるナイフさえなければ警戒心すら解いて近づいてしまいそうだ。
「あら、先客が居たのね。ここは私と咲夜ぐらいしか知らない良い月見ができる場所だと思ったのだけれども」
「お嬢様、如何なさいましょうか」
「場所を変える……つもりは毛頭ないし、退いてもらいましょうかね」
途端、従者の目が鋭利な刃物のような鋭くなった。毛が逆立つ殺気と心臓を直に握られているかのような、まるで、生殺与奪の様相。
殺される。そう少女の脳裏に過ったのだろう。
「アガァァ!」
餓えた体の精一杯の攻撃を体格的にほんの少し優っている幼子に向け、飛びかかった。
「ホント、対格差って、身分の差さえわからなくしてしまう、愚ね」
掴みかかる手の合間を綺麗に潜り抜けか細い少女の喉を逆に掴み、そのまま持ち上げる。
(息が出来ない! 生きが出来ない!)
「がっ……はがぁ……」
地面に足をつけようともがくが届くはずもなく、苦しさは増すばかり。
「どう? 死ぬ最後ぐらい何か言ってみる?」
この幼子は何を考えているのだと少女はもがきながら思う。
「……月が……綺麗っ……」
残りの体内の酸素を振り絞ってでた声。
――本当に最後の言葉がこんなのでいいのか、嫌! そんなのは絶対嫌!
「もっと生きたかった……だけど! この世界がゆるして……くれなかった! こんなに月が皆を照らすのに! 私だけ照らされなかった!」
最後の言葉を言い切ると少女の瞳は徐々に光が消えていった。
「……面白い子、まだ閻魔に送るには惜しいわね。そうでしょ? 咲夜」
「私はレミリア・スカーレットお嬢様に尽きるまで従い付くまでです。お嬢様の考えならば、良き選択だと私は思います」
「あら、嬉しい事を言うのね。では、咲夜。この子を紅魔館まで連れて行って頂戴」
「承知しました。それと、一つだけ、よろしいでしょうか?」
「いいわよ、いってごらんなさい」
レミリアの言葉に咲夜は頭を下げ感謝する。
「この者が言った言葉、私が最初にお嬢様と出会った時に私自身が言った言葉と似ていたので――いえ、やはり失言でした。お忘れください」
「そうね。ついこないだの事の様に咲夜と出会った時の事を覚えているわ。あの時はまだ私とそれほどの背の差は付いていなかったのだけれども、時間が経つのは早いわね。もう、追い越されちゃったわね」
レミリアは満点の星輝き、紅い月が夜空を飾る。昔の事を思い出しているのだろう。哀愁がその背から漂う。
「ほんと、月が綺麗。私だけ照らされなかったか、沁み入る言葉ね」
伊達や酔狂で拾う訳じゃない。レミリアは見てみたいのだ。人の可能性を。照らされなかったと言う少女の一生を。
「お嬢様、帰ったら温かい飲み物を入れましょう」
「珍しいお茶以外でお願いね」
「好き嫌いはいけませんよ、お嬢様」
「好きではないけど嫌いでもないの、つまり、貴方が初めて入れたあの紅茶が欲しいの」
「そうですか、承知しました。ですが、うまく逃げましたね。お嬢様」
「これも、成長ね」
如何でしたでしょうか?
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