「ハハハハ、壊れた。壊れた」
フランは手に付いた血を舐めた。温かくて赤い液体。
「照、あやまりはしないわよ。貴方が選んだ道なのだから……」
同情ができるほどレミリアは主として幼くはなかった。どんな状況が来ても同情をすることは侮辱に値すると考えているから。侮蔑の意が籠った目などを身内にだけは向けたくないのだ。
レミリアは照を見る。瞳孔が開く姿などみたくはない。できるなら綺麗に死んでほしい。
「ん、まだ、カードが消えてない……、持ち主が死ぬと消えるハズなのだけれど……」
レミリアが照の目を閉じようとした手を照の目に近づけようとした瞬間に照の目がジロッと動きだしレミリアを見た。
「よぉ、久しぶり。レミリア」
軽薄はあいさつ。
「なっッ!」
照は起き上がり胸に刺さった真槍を乱暴にひっこ抜く、照の行動とは思えないほど乱暴で粗暴だ。
「ハハッ、照はまだ生きてるんだ。頑丈だね」
フランは振り返る。レミリアのようには驚かずに。
「む、お前は初めて会う奴だ。まぁそんなこといいか、よくも好き勝手にやってくれたな妖怪さんよ」
照は自身の体の周りに大量の御札を展開させた。札に見覚えがレミリアには有った。霊夢が良く使っている札だったからだ。
ここでレミリアに疑問点が浮かぶ、なぜ、照が使えるのか、急な性格の変化。どこか懐かしい者とあったような黄昏。
照の前に展開された札は照の合図と共に体に纏わり、閃光を放った。
光が消えた頃、照はメイド服ではなく博麗の巫子の服装に白地の面に狐を準えた赤の線が入った面を付ていた。なんとも面妖な姿。
雰囲気すら変貌し威圧が日本刀さながらの鋭さを持っている。
別人。
レミリアは冷静だから分かる。強い。霊夢と戦えば恐らく上回る程の逸材だと。
(いや、まて、私は何処かであったことがある。そんな遠くない過去に戦ったことすらある……)
「あぁ、久々だと疲れる。しかし、胸に風穴空いているとはものすごい状況下に置かれているのね」
「――今度は頭も吹き飛ばしてあげる」
「おっと、危ないわね。吸血鬼さん」
フランのレーヴァテインを素手で掴んだ。人間である筈の照が掴んだのだ。
「……雰囲気変わった。貴方は誰?」
フランも本能で理解をしていた。今いる照は、照ではない。
「む、よくわかったわね。そうね。私『達』は名前に思い入れはないから『紅白』とでも呼んで」
フランは紅白の言葉を聞かずに大きく後ろに後退しながらカードを発動させる。
《禁弾「スターボウブレイク」》
フランから放たれる弾は音速に近い速度で照――紅白の体を貫いた。
体を貫いた途端、紅白の体が揺らめいた。
《夢境「二重結界」》
フランは大きな多重の結界の中で幻を見ているのか紅白のいる場所とは全く別の場所に攻撃をしていた。
紅白はフランが攻撃する前から攻撃をしていた。
結界の中でもがくように攻撃するフランを見て、紅白は十分は出てこられないと踏んだ。彼女は張り詰めた気を緩め、レミリアの方を見る。なにか言いたそうな顔をしていたからである。
「なっ、それは霊夢のスペルカードでしょ!」
驚くのはレミリア。
「いやいや、霊夢に教えたのは私ですから私が使えて当然でしょう。しかも、霊夢は夢符で私は夢境よ。霊夢が使うのは私の下位互換の技よ」
「教えたって、まさか、貴方、霊夢の先代なの!」
「結界に捧げられたはずではないの」と続け紅白はそれに「うん」と軽い返事を出して頷いた。
力が衰えに入った博麗の巫子は代々、博麗大結界に全ての力を捧げて肉体さえも捧げ幻想郷をよりよくするシステムなのだ。一人の巫子の生贄で保たれるこのシステムは霊夢の先代も例外ではなく捧げられたとされていた。筈だった。
「まぁ、そうよ。今は『紅白』なんて呼ばれているけど、てか、呼ばせているけど。正確には私『達』は博麗の巫子の『生きたい』と言う念よ。そして、レミリアが雇ったこの照と言う子はね。向こうに居る子より、恐ろしい者よ。そして、私達博麗の巫子より深い業を背負った子よ」
レミリアの脳裏に照を屋敷に連れて来た時に紫に言われた言葉が思い浮かんだ。
今になってその言葉が出ていて紫の言葉の重要性が理解できた。
『貴方が照と名付けたあの子は幻想郷の飢餓と貧困を象徴する言わば、博麗霊夢のような存在よ、博麗の巫子=幻想郷と同じ解釈ね、だから殺すなと命令しに来たのよ』
言われた時に理解していたことはまったく違っていた。馬鹿だったと自分を戒めた。
「……(なにが飢餓と貧困を象徴するよ、全く違うじゃない。この子は幻想郷そのものじゃない)」
マズイ状況下に置かれたとレミリアは唇を強く噛んだ。血が出るほど強く。
フランと共闘し勝てるかと算段を立てる。だが、相手はレミリア自身の予想が正しければ歴代の博麗の巫子。当然、最強を誇ったとされる初代もいる。
レミリア自身の能力を使用して運命を見るがどれも最悪のビジョンしか見えなかった。
良くて瀕死。悪くて死滅。運命を変えられる力を持ってしても変えられない運命。
「私はどうやらパンドラの匣の底を覗いてしまったようね」
紅白は首を振ってレミリアの発言を否定した。
「レミリア、貴方はパンドラの匣にすら手は届いてはいないわ。匣を包んでいる梱包にやっと手を付けたぐらいよ」
「なっ、ま、まさ、まさか! 幻想郷はそこまで罪深いの! そこまで幻想郷は――」
「……だから、『幻想』なのよ。レミリア。貴方はこの業を知って糺すのでしょう。紫に、霊夢に、でもね。この二人はただ管理をしているだけよ」
無類の権力を持つ二人をただの管理人だと紅白は言った。つまり、自分はより高位な立場にあると言ったのと同然。
「でも、安心してレミリア。今ここで起こったことは一部の記憶以外は封印してあげるから目覚めたときには何も覚えていないわ」
「フッ、貴方『達』はそんな力も持っているのね。愈々もって神に近い存在と化しているわね」
「神? 馬鹿言っちゃいけない。私も――よ」
「そんな、馬鹿な話があるわけないわ! それなら靈夢! 貴方はどうして――」
紅白が最後の様に言った言葉をレミリアは聞き漏らさなかった。ハッキリと聞こえてしまった。
「そう、また呼んでくれるのね、嬉しいわ。安心して、目が覚めたら皆何もかも忘れて何もかもうまく形を最適化しているわ。また、神社でお酒でも飲みかわしましょう。昔みたいに馬鹿みたいに笑って……、それじゃバイバイ」
「名前に執着……大有りじゃないのよ……」
レミリアの言葉に紅白は笑うと紅白は再度、周りに大量の札を展開させた。先ほどとはケタ違いの量。
札の塊の中から一枚のカードを手に取り口元まで寄せて呪文を唱える。
「《夢想ノ封印 》」
なにかと細々した設定とコロコロ変わって行く展開。読みずらさを感じる作品なのかもしれませんがどうか、展開が落ち着くまでは読んで行って下さい。