東方慟哭観   作:えのころぐさ

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ダモクレスの剣

 聖が落ち着きを取り戻した頃には服は白と黒の厳格な色ではなく、白生地の部分が『赤い雨』の

中で長く晒され赤色に染め上げられ黒と赤と攻撃的な服に変色していた。

 

「気は済みましたか?」

 

 と心配そうに照は聖に言う。聖の目は赤く腫れあがってはいるがなんともないと笑って返された。

 実の弟が残した遺言を呼んだのだ。この結果は当たり前と言えるだろう。むしろ、泣いただけで終ってくれてよかったと思うほどだ。魔法を使って四方に悲しみをぶつけられても修繕費が掛るだ

け命蓮寺にとっても照にとってもマイナスなことしかない。

 

「えぇ、とても清々しい気持ちです」

 

 清々しいと嘘を吐くがわかりやすい嘘だ。そんな泣いただけで吹っ切れるほど心は豪快ではない。

 

「……では聞かせて頂きます、この巻物は要りますか?」

 

 片手に持った巻物を照は差しだす。聖は手を伸ばすがすぐにひっこめた。

 

「私は持っていてはいけないものです。それを持ち続けてしまうとまた色々と後悔をしそうなので」

 

 彼女なりの踏ん切りの付け方なのだろう。切り替えのつもりなのだろう。まだ出ようとする涙を堪えて過去ではなく未来に生きようとする確固たる意志の表れなのかもしれない。目を見てそれを察し照は巻物を懐に戻す。メイドの服には小道具を収納する為のポケットは多くあり、外見的にはエプロンを合わせ三つ程しかないように見えるが服の内側は六つほどある。特に胸のあたりは大きいポケットの中にまた小さなポケットがあるという何とも不自然な服ではある。なぜ、内側にこれほど集中をしているかは服を仕立てた人もしくは服を頼んだ人にしか分からない。

しかし、この服の前の持ち主は咲夜だったりするが詮索はしない方がいいのだろう。

 

 

「聖さんがそれでよいのなら私は持ち続けましょう。気が変わったら言って下さい。渡しますので」

 

 巻物はない方が聖の為なのかもしれない。いっそのこと目の前で巻物を壊すのがためになるのか

もしれない。

 

「はい、そのときは貰いま――ッ!」

 

返答を考えていた照は白蓮の急な体調変化によって中断させられた。右手で震える左手を力で抑えつけて、口を動かすが一声もでず最終的には照の声にも反応しなくなった。顔は下を向き体を震わせ武者震いとは違った極寒の土地にいるような体の筋肉を動かし体温を維持させる行動にいて非なる動き。

 子供に乱暴な扱いをされる人形。項垂れながらも体を震わせる狂気しかない行動。

パクパクと動く口が最後の言葉のように照に伝えたい一言喋らせた。聖を襲う不可解に抵抗した故の一言。

 

「は、はな……れ……て……、照!」

 

この時、照の心の中で何かわからない感情に諦め、脈動する高揚を感じた。

戦いが始まる前のちょっとした焦りと憶測が入り混じったそんなもの。

照自身は気付いてはいないが彼女の口はニヤついていた。

 

 

 




見にくいとご指摘がありましたので、見やすいように書きました。
……縦書きから横書きにしただけなんですけどね。
そして、文字数も大幅カット!

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