東方慟哭観   作:えのころぐさ

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影法師は影と踊らず

 

「ば、馬鹿とはなんだ! 私は霧雨魔理沙って名前がちゃんとあるんだぜ」

 

 むっと頬を膨らます。この人はどこまでも子供だと皆が思えただろう。

 なんせ、厳格な空気が包まれた図書館で本を盗もうとしていたのだから思わない人もいるかもしれないが普通なら思う。

 寝ていた美鈴ですら飽きれて首を右に左に振っていたほどなのだから。

 

「あのね。私たちは重要な話をしているの、それぐらいわからない貴方でもないでしょう」

 

 パチュリーが立ち上がり強めの口調で言った。無理もない。

 赤雨を降らしているのは私達(紅魔館の者)だと遅かれ早かれ前例があるためその結論に着くだろう。

 もし、善人が凶暴化するなんて付け加えられていたら幻想郷の人里がどうなるか、霊夢や守矢の神社の神々も黙ってはいないだろう。人に被害を被っている以上、信仰も稼げる。

 異変を起こすことには何の害も気もふれない。正月やパーティーみたいなものなのだからだれが解決しようが興味がない。楽しめたらそれでいいが今回は濡れ衣を着せられている。

 濡れた服で動こうとは思わないのが知あるものだ。

 

「知っているが霊夢の話が出た」

 

「ん? それがどうかしたの?」

 

 魔理沙の発言に引っかかりを円卓に座っている全員が覚える。出ただけでなぜ魔理沙が出てくるのかと、好意を寄せているとはいえご意見番と言うほどの間からでもない。

 

「……私はここ四日間霊夢を見ていない」

 

「「「ッツ!」」」

 

 まだ結論を出すのは尚早だがいやな予感が的中したということだけは確かかもしれなった。

 パチュリーは考え、照は苦虫を潰したような険しくなりレミリアは紅茶を飲んだ。

 レミリアは一口飲むとティーカップを受け皿に戻し一息つく。頭を少しだけ休ませてその間に心も落ち着かせる。冷静に、冷静にと魔法の呪文のように頭の中で唱えながら心に魔法をかける。

 すると、心は落ち着き先ほどまでは見えなかった大局を見つめることを行う。

 

「見ていないというのは神社にいなかったと受け取っていいわね?」

 

 魔理沙は首肯し先ほど言った言葉に補足入れる。

 

「四日間内、一日目と二日目、私は神社に泊まらせてもらったが帰ってきた形跡はない。萃香も私と同じく霊夢を訪ねてきたがそっちも見かけてはいない。そもそも、見かけてたらここには来ないと笑われたぐらいだぜ、あ、ついでだが萃香は地獄に行っていたらしいし地獄にもいなかったことにもなるぜ」

 

 肩を竦め冗談交じりに語る魔理沙。

 霊夢の所在をまとめると紅魔館、人里、地獄、自宅(博麗神社)にもいない。

 自宅には二日は確実に帰宅していない。三日目以降は不確定ではあるが居なかった。

 

「魔理沙、貴方は人里の赤い雨って知ってる?」

 

「お? あぁ、あの雨いつから時々降ってる赤いのな、あれお前たちじゃないのか?」

 雨は知っている。つまり、霊夢にも知ること位はできたはず。ましてや凶暴化だ。知らないわけはないだろうと先入観が入ってくる。そうでもなくても紫が黙ってはいないだろう。

(ん? やくもゆかりぃ? そうよ! 八雲紫)

 閃き出でた確実に霊夢の場所を把握できる者。

 

「そうだわ、八雲紫よ! 癪に障る奴だけどアイツあら知っているはずよ!」

 

「……んんっ? あぁ、紫なら確かだな」

 

 と魔理沙はレミリアの意見に賛同した。照とパチュリーも無論反論はしない。する意味がない。

 

「でもねそれが、旨くはいかないのが……げんじ……、いえ、幻想というものよ」

 

 どこからか、しゃべることすら痛みをともなっているようなお告げがあった。

 パチュリーは席の後ろにある本棚から一冊の本を手に取り開けた。「話した矢先にくるんだから」と。

 パチュリーが本をとった本棚の上、そこに声の主はいた。

 声の主は八雲紫だとすぐに分かったが服こそ髪こそ綺麗だが血に敏感なレミリアとフランはすぐに怪我をしていることに気付き、美鈴も重心の掛け方と気の流れを感じ経験論で怪我をしていることを見抜いた。

 他の者は怪我にはまだ気付いてない。

 

「あら、貴方が来るなんて、飛んで火にいる夏の虫だわ」

 

「お嬢様、あの方」

 

「えぇ、知ってるわ。どうやら手ひどく誰かにやられてらしいわね。しかも哀れなこ

とに封印までさてれるわね」 

 

 全員が紫のほうを見た。

 八雲紫が手ひどくやられるなどそうそうないからである。 珍しいというよりはそこまで痛めつけられる人物が限られているからであるが封印まで行ってしまうとは予想を超えていた。

 しかし、今は先ほど紫が言った。そう旨くないという発言に目を向けなければならない。言葉の意味や意図は予想せずとも霊夢が居ないなのだろう。

 

「それで、霊夢を見つけられないなんて、貴方らしくないんじゃない?」

 

「えぇ、そうね。私らしくはないと私自らが一番思うことだけれどもね。貴方の従者がハクタクを訪ねているそうだから期待して待つしかないわね」

 

「私がその封印といてあげてもいいわよ?」

 

 紫は首を振り笑った。不気味だ。

 

 誰だって思ってしまうだろう。

 

「ふふっ、それは無理よ。これを解こうとして霊夢がどこかに行ってしまったのだから」

 動いたのは魔理沙だった。

 

「紫ぃ! お前な!」

 

 魔理沙が紫との間を飛行し詰め殴りかかった。とっさの行動に誰もが反応できずにただ紫が殴られるところを見るはずだった。

 魔理沙の拳は勢いよく紫の顔に辿りつく前に一人のメイドの手がそれを遮った。

 乾いた音もなく腑抜けた音だけが図書館内に響いた。

 突然の来訪者は紅魔館でよく見る瀟洒。十六夜咲夜その人だった。

 咲夜は魔理沙の手首を掴んだと思った瞬間、腕を背の後ろに回し関節技を決め魔理沙を一瞬で無力化してしまった。空中であるのにも拘らずの手際の良さ。瞬間、瞬間が飛ばされたような、いきなり結論を持ってきてしまったような無力化に照は口を開け馬鹿のように呆けた。

 種を明かせば力を使ったのだがスペカを発動していない照はそれを知る訳もなかった。 

 

「貴方がどういった考えや思いで殴りかかったのかは解りませんが私のお嬢様の前でなにをやっていらっしゃるのかしらね。聞かせてもらっていいかしら霧雨魔理沙」

 

「放せよ、従者。私はアイツを――」

 

 怒りの目を向ける魔理沙に咲夜は厭きれた。いっそのことこのまま肩を外してしまいましょうかと物騒な考えも浮かんでいたがこの状況なら仕方がないことなのかもしれない。

 

「殴ってどうするの? 霊夢の為に殴るのだったら私はこのまま放して、お嬢様に新しいお茶を出しながら高みの見物と洒落こむわ、でもね、今の貴方の行動は気分がスッキリするからとしか見えないわよ。貴方は本能で行動するカラス? 動物? よかったわね。このまま私が居なかったら貴方は霊夢の尊厳を汚していたわね」

 

「……あいつが霊夢を。あいつが霊夢を……」

 

 ボソボソとなにかをつぶやく魔理沙を見て、照はスペルカードを取り、レミリアの傍まで近づいた。

 

「貴方の行動力や努力は称賛するけどね。怒っても霊夢は帰ってはこないのよ。それなら怒るのに使うだけの労力と気持ちは霊夢探索に当てなさい。東風谷早苗や魂魄妖夢、アリス・マーガなんとかって人形遣いだっているでしょ。それに霊夢を心ながら慕う者五萬といるはずよ。もちろん貴方を慕う者もね。霊夢捜索は貴方以外にあり得ないわよ」

 

 咲夜の言い分は的確で明確だ。反論もできない。だからそういった考えに至らなかった自分に嫌気がさし、先ほどまで紫に向けていた怒りが矛先を翻し自分に刺さる。諦めてしまうのをよしともしない諦めをよしとする個の葛藤。

 

「ほら、行きなさい! なにをボケっとしているのよ! サッサと行ってあの紅白巫女を連れ戻してきなさい。ことが終わった後は紅魔館でパーティーでもしましょう」

 

「わ、わかったのぜ」

 

 魔理沙の拘束を解き、咲夜はせかすように言った。パチュリーが本を読みながら笑っているのを魔理沙は「覚えていろよ」っという目をしながら箒を持ち帽子を直した。

 

「魔理沙は人騒がせね」

 

「えぇ、全くです」

 

 小悪魔とパチュリーの言葉がやけに心にささった魔理沙だ。

 箒に跨り志を糧とし出立の魔法を言う少し前。照は言った。

 

「魔理沙さん道中は気を抜かないでください。思った以上に私達は深い異変を解決しようとしています。鍵は博麗霊夢彼女を中心に動いているのかもしれません。もしかすれば暴走しているかもしれません。その時は、どうか――どうか、一発殴ってでも覚まさしてくださいね」

 

「言われずともその時はかましてやるぜ、なんならマスパを撃つぜ」

 

 言い残すと魔理沙は箒に力を注ぎ周りの本やパチュリーがつづっていた本の解読書類を巻き上げてドアを勢いよく開け出て行った。

 

「咲夜、貴方。さらっと私に一言もなくパーティーを開くのね」

 

「……さて、何のことでしょうか? 私にはさっぱりです。えぇ、はい、さっぱりです」

 

 咲夜がしまったと表す顔をしているのを照は知っていた。

 

「あぁ! 魔理沙さんたら、こんなに散らかして後かたずけするのわたしなんですからねー! もう、あのカラスめぇ!」

 

「……私の書類が、何カ月もの集大成が、舞っている。あぁ、舞っている……」

 

 小悪魔は舞いあがった書類を急がしそうに手を伸ばし収集している。パチュリーはなにやら独り言をつぶやいている。

 忙しない人だ。そうだれもが思ったのだろう。

 魔理沙の件が終わり円卓会議を再開する。今度は八雲紫にも席を用意しお茶を振る舞いながら咲夜の歴史に関する報告を聞くことになった。

 当然、咲夜はレミリアの『ズレ』を照に悟られないように細心の注意を払いつつ重要な情報を脳内で吟味しながら声帯を震わせた。

 一定の報告が終わると円卓にいるレミリアと紫は頭を悩ませた。

 

「つまり、今回異変は今までの異変全てが起こる、そういうことなのね。咲夜」

 

 咲夜は首を振る。レミリアのまとめが違ったのだ。だがしかし、咲夜の報告ではその結論に至ってしまうのだが違った。レミリアに見逃しも聞き逃しもない一言一句言いなおせるだろう。それほどの内容の濃い報告だった。

 だが、違った。どこで間違えたのだと自問するがこの問いに解を与えるならば間違えてはいない。

 

「起こるのではなく、お嬢様。起こっているのです。もう、誰かが仕組んだ異変は始まっています」

 

 咲夜の発言は曲学でもなんでもない。事実であった。ことは早急をよしていることに未だに気付かなかったとでも自分弁護を図る間もないほどの進行の速さだった。この赤い雨はカモフラージュだったのかもしれない。春も来なければ朝もない。

 だが、一体どれほどの異変が起こっているのだろうか。

 それを確認するすべは今の紫もレミリアも知るすべはない。

 

 †

 

 わが庵は 都の艮 しかぞすむ 世を幻想と ひとはいふなり

 

 †

 




最後の言葉の意味は色々あります。
十分にこの作品に関わることです。
考えてみてくださいな。

拝読ありがとうございます
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