東方慟哭観   作:えのころぐさ

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読みにくいのは目を瞑ってほしいです。

靈夢≠霊夢。OK?


月に叢雲、華には風

 靈夢はなりそこないの手足だ。手はほしいものを自分の元まで持ってこさせたり持ってきたもの使用する場合にも使う。足は進むためにある。後ろだろうが前だろうが進むためにある。立ち上がる時は例外かもしれないが上に進んだと言えば収まる気はするだろう。

そんな用途も使用方法にも違ったものだが双方には共通点がある。共にアデノシン三リン酸と呼ばれる生体エネルギーの通貨を消費して筋肉を動かしている。

筋肉は傷つく。能力以上の負荷がかかれば断裂などを起こす。しかし、強くはなるものである。

 手足を動かすうえで筋肉はなくてはならない存在であり目に見えない働き者で一番酷使されるものでもある。

 例え話はこれで終わりだ。

今は脳たる『なりそこない』からの命令で嘘のダミーに近づく地底の者を相手にしなければならない。

 面倒だと思いながらも魔法の森をさらに越えて裏の小さな小道、丁度、無縁塚との間にある幻想郷の端である。再思の道になりそこないが用意したダミーの陣が一面に広がり陣のど真ん中にあたる場所に靈夢は周りに多量の札と陰陽玉を二個展開させて仁王立ちしている。

 再思の道は外の世界から自ら命を断とうとする者がよく足を運び、物思いに道を歩いていると不快さと同時にやる気が湧いてもう一度人生をやり直そうと道を引き返すことから名づけられたとされている。なりそこないがこの場所を選んだ理由は不明だが彼女にもなんからのやり直したいことがあったのかもしれない。

 秋になれば一面を彼岸花が骨としみったれた土を覆い真っ赤するが秋でもないのだが彼岸花は咲いていた。なりそこないの地質変化が原因だと断言できる。

「乱戦になるのは必然として運が悪ければ予定より多く相手にするのは嫌よねぇ。そう貴方も思わない? 妖夢ちゃん」

 滑らかに背中に携えられた鞘から抜く、刀は長く妖夢の半身より少し長い。適度な間合いまであるくと刀を身体の中心を隠すように右足を引き正眼に構えをとった。二刀流が彼女本来の使い方かもしれないが妖夢自身の経験が一刀でやれと告げている。祖父と初めて対峙させられたときにも感じた絶対強者だけが持つ活気とでも言えばいいのか殺気ではない。間合いでさえ歩いて詰めた間合いですら幽遠な間合いだと錯覚する。一歩踏み込めば斬れる筈なのに当たる気配が全くしない。

 妖夢は相手の顔はどこかで見た覚えがあるが思い出せもしない。

「ちゃんを付けないでください見知らぬ人様。貴方が今現在起こしている異変のせいで幽々子様が危険なのです。即刻やめていただきたく思います」

「十中八九、私が起こした地質変化が原因でしょうね。桜でも咲くのかしらね?」

「即時即決即答で止めてください。もし従わなければ斬り捨てるだけです!」

「私はなまくらで斬れないわよ。あと命名は使わないほうがいいわよ。いくら半人半霊でも死ぬわよ」

「ご忠告痛み入ります。でもこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」

 と啖呵を切ったのはいいが楼観剣を握る手に汗が滲む。かなわないことは理解できたがやらねばならなかった。妖夢の確固たる意志がその眼にやどった。

 靈夢はじっと妖夢を見つめ周りを回っていた札を手甲のようにまとめ上げた。靈夢なりの気遣いなのかもしれない。

 その計らいで気が紛れた妖夢は構えを変えないままに前足をジリジリと前に出した。

 このまま楼観剣を突きだせば届くほどの間合いとなった。

途端にもう一本の白楼剣を抜きそのまま自身を斬りつけ靈夢の瞬きにするタイミングと合せ地を右足で蹴り動いたのは妖夢。楼観剣は空気を断ちながら音も立てない。恐れ、慄きを感じさせぬ横一線の全身全霊を込めた攻撃を振りきる。妖夢なりの絶好の力と形だ。

ならば、相手を斬った結果が待って――いることはなく妖夢の視界には先ほどと同じ光景があった。楼観剣を突きだせば届いてしまう距離。

「その勢いはよし。力もまだまだ届きはしないが妖忌に似て厳格な太刀筋ね。日頃の鍛錬を疎かにしていない努力も評価する。恐れを断ち切ってあと半歩でていたら私にかすっていたかもしれない」

「嘘、あれを外したなんて。みょんな……。この白楼剣は迷いを断ち切れるハズ……」

 靈夢が言った通り今までずっと鍛錬を積んだ技だった。この技だけは研磨して祖父を超えれるものだと思っていた。自信ある一撃を難なく避けられた妖夢は膝から崩れ落ちる。

 剣客のプライドと今までの修行が一瞬にして気泡と化したからだ。

 割座をして戦闘意欲を刈り取られた妖夢の肩に手を置く

「迷いは確かに断ち切ったわね。『迷い』はね。剣客としての経験と白楼剣に対する慢心が攻撃を駄目にしたのよ。でもね。そのあとがいけないわ。自己研鑽した技の全てが通用しないと悟っても諦めちゃだめね。主人には最後まで仕えてこそ妖夢よ。妖忌も言っていたわよ。愚直だが純粋でまるで儂が持つ刀そのものだとさ、ま、これで貴方との試合は終わ――」

 靈夢の言葉が止まる。まるで獲物を見つけた猛禽類のように周りに気を使い。獲物がどこからくるかを探る。

「――む、今くるのね。しかも各個撃破だったらよかったのだけどまさか結託してくるとは。ね、閻魔様方々とひまわりさんが手をつなぐところをみるとは」

 靈夢を囲むようにでてきたのは有名どころの者たちばかりだった。

「ちょっと、えーき様飛ばし過ぎですってしかもいきなり着いてこいなんて、あたいは三途の川の仕事があるんですがね」

「しっかりするのです小町。思った以上にことは深刻ですよ」

「まったく、人が気分良く飲んでいたらサトリ。あんたね(折角、うまい酒が手に入ったのに)」

「ほら、貴方が望んでいた強者がお待ちよ。あと、この巫女服を倒したらもっとおいしいお酒を奢るわ。おくうとお燐も倒したらなにかあげるわよ」

「やったよ! おくう好きなものなんでもだってさ! 死体だよ死体!」

「核融合での商売! 商売! あれ? なんでひまわりがここに?」

「赤い雨が降って以来、太陽の畑のひまわりや花達に元気がないのだけど貴方は理由を知ってわよね?」

 なりそこないの予想は悪い方に外れた。妖夢がきた時点でイレギュラーなことであったが山の四天王の一角である星熊勇儀。最強と謡われたこともあるフラワーマスター風見幽香。

「って、あら。懐かしい顔ね。貴方は確か結界の糧になったのではなくて?」

「ただで私を糧にできるものがこの幻想教にあったとは驚きね。それと、あやぁ! あんたも一端のブン屋ならそんな森の中で可愛い字を書いてないで体当たり取材に来たらどうなの」

「あやややややや、見つかっていましたか。どうも貴方はカンが鋭いですからね。野生児かってツッコミをいれてやりたいぐらいですよ」

 魔法の森から靈夢に名指しされたものが申し訳なさそうにでてくる。そのものは鴉天狗。鼻は長くはないが鴉天狗の象徴たる黒い羽毛を持つ。髪は黒く短く。手には竹からなる筆と和紙を寄せ集めた手帖を持ち胸には写真機がある。

 赤い一本歯下駄が地につくと靈夢の視線が嫌いなのか勇儀の背に隠れ胸にある写真機で靈夢を撮る。シャッター音からすると結構な速写をしている。脅えているのかいないのか不明瞭な行動。

「おい、鴉。なに勝手に出てきて私の後ろに隠れてるんだ」 

「勇儀さん。我々天狗は、幻想郷をずっと見守ってきたのですよ。我々天狗程、幻想郷を見てきた者も居ない。我々天狗程、幻想郷に詳しい者も居ない。でも、私は真実を見る観察者なだけで、幻想郷を創るのは博霊のあの人達なのですよ。つまり、あの人はすごく怖いのです」

 新聞は水増しした記事が多いが文は妖怪一倍に真実には敏感だ。だからこその言葉なのかもしれない。

 文の足は靈夢には向いていない。森に向いている。靈夢に対して後ろめたい気持ちなどはない。険悪な状況下でなければ肩に手をまわして笑って宴会の一つでも開いてやりたい。

 文がここにいる理由は偶然にあわてている閻魔らしき人物と地霊殿の主達がそろって地上に来ていたからで、たまたま後を追ってみると懐かしい人物がいたので新聞記事にと取材を心みたのであっただけである。

「簡単に言えば強いってことだろう? 私はあの世代の巫子とは戦ってなかったからね。いつかは戦いたいと思っていると気がつけば死んでる始末。あの時は人と妖怪の差ってものを知ったね。しかし、今は目の前にいる。楽しめるじゃないか」

 勇儀は軽い準備体操をする。鴉天狗の言葉なんぞは聞いていない。強いことだけを教えてくれればそれで十二分。後はやってのお楽しみ。魂魄妖夢を一瞬にして無力化できるほどの実力なのだから検討違いなんてあるわけがない。勇儀の四肢を動かすのは筋力ではない。鬼の血だ。

「正直に言えば、閻魔だけで腹いっぱいなんだけどね。さすがに多勢に無勢。私も増援を呼ばせていただきますよってね。る~ことと!」

 腕を瑠璃色の空に掲げて指をパチンと一音。音に反応する者が一名、博霊神社の物置にいる。もはやだれも覚えていないだろうその存在は幻想の外から空間移動船を使ってきた教授こと岡崎夢美によってもたらされたお世話ロボ。神社の物置の奥の奥にしまわれていた座ったままの彼女。

 閉じていた目が開き、爽涼な青色の眼の奥に光が燈る。

《acceptance(受諾)》

《Start up. Ready▼システム――all green.定期自己修復プログラム……完了。 Ready……to go》

 萌黄の髪をヘッドドレスの一種であるホワイトブラウが綺麗に整え。

《マスター:ハクレイレイムから呼び掛けに▼応答。最終起動日カラ幾十年経過が見られる。一部パワーラインを調整▼[error]パワー調整に難有り》

 埃を手で払いのけ長期の放置によるメイド服の痛みをシステムで元通りにする。

《サブシステム解除▼[error]―権限がありません。一、二を変更▼[error]―権限がありません》

《問題を一時放置。地形情報再インストール……完了。博霊神社に熱源[0]。神社に不在――行動パターンを照合ののち指定ポイントにスキャニング――不在》

《設定の変更。捜索範囲を幻想全土に変更▼再思の道にて登録熱源パターン[0]発見。フォルダデーダ:照合……ハクレイレイムと認識。のち、他に熱源を[7]つ感知どれも登録はされておらず》

《種族ファイルによる照合により、[妖][鴉天狗]01射命丸。[妖][覚妖怪]01-姉、古明地さとり。[妖][鬼]03星熊勇儀。[妖][固有]05風見幽香。[妖][閻魔]00四季映姫……『緊急事態』と認定》

 機械人形は立ち上がる。

《守護プログラムを発動―[error]▼権限がありません――緊急発動によるプログラム強制発動。Clear.数秒で現地に到着ののち靈夢の守護・援護を開始いたします》

 靈夢の場所にいくまでの最短ルートを設定したのちに蔵の天井を突き破り持てる力を速さの一点に集中させて目的地に行く。

 主人を待たせてはメイド、お世話ロボットとしてはいけない。

 一流は即時即効即断即決。

「靈夢さんの命令を受け、る~ことと参上しました」

 地に着く前にくるりと一回転して魅せ優雅に登場した。

 幽香や文はる~こととを知っていたが他は知らなかった。

 靈夢に呼ばれてくる忠実な妖怪には心当たりはあるのだがロボットにはない。

 ロボット自体河童とか変わらなければ作られない代物であるためにとりの関係性を考えたがそれはないと直感的に否定した。

 靈夢などと過去の異物が出てきたのだ。どの人物の関与も分かりはしない。

 まさか、二人だけでこの惨事を引き起こしているとは知るまい。

 今は三人か。

「久しぶりね。る~ことと」

「靈夢さんこそお変わりなく。いえ、少し、背が伸びた気がします。厳密には三センチ程」

「うれしいこと言うわね。る~こととも成長したわよ」

「私はロボットですから成長は致しませんよ」

「何言ってるのよ。ロボットだから成長するのよ」

「さいですか、なればこそ状況の説明をしていただいても?」

「えぇ、もとからそのつもりよ。状況は見ての通り最悪を振り切って背水、よりたちが悪い。ほら見てみなさい。あの閻魔の怖い顔に覚妖怪の難色示した臓物が顔にかかったみたいな顔」

「臓物が顔にかかった顔とは実にナウいですね。先進的です。アグレッシブです。パッシブです!」

「フハハハ、博霊の名を冠することは伊達じゃないのよ。キング・レイムと言いなさい」

「キング・レイムサマー!」

 幽香が一歩前に出ると開いていた日傘を閉じ先端を靈夢に向けた。

「旧友との再会に花を咲かせるのもいいけど、私って目に見える花も好きなのよね」

る~こととの足元から生えた蔓は成長しながら足に絡みつき四方に蔓が分かれたと思えば小指の第一関節ほどの蕾が無数にできた。

 花が開きそうになると靈夢は一枚の札を蔓の出てきた場所に飛ばし早口でなにかつぶやくと蔓は一瞬にして枯れ蔓は黄土へと変色した。

 無数にできた蕾というと咲くことはなく惨めに蔓と同じ色に変色を起こしただけであった。

 拘束性がなくなった蔓を蹴飛ばし足に着いた残りを手で払う。

 幽香に続き他の者も動く。力の行使はほんの一歩で成り立つ。相手を痛めつける一歩。

 幽香の攻撃で戦いの火蓋は切られた。続けと映姫は小町に命令を下す。

 小町は不承知な一言返事を返すが一蹴される。

「あたいに面倒事ばかり押し付けてえーき様は人の面をかぶった閻魔だよ!」

「閻魔ですから当然です。ほらシャキシャキ働きなさい。削りますよ」

 悔悟棒を振り、急かされては攻撃するほかになかった。部下として上司の命令は絶対。

 これが小町を動かす。

「な、なにをー!」

 和気藹藹の会話とは裏腹に着々と小町は仕掛ける準備をこなしていた。

先の曲がった見せかけの鎌はどこか真景っているように本来は死神らしくするためのサービス商品を武器に変える。

「おくう、りん。鬼。私たちも行くわよ」

 あらそうと、返事をさとりは返した。乗り気だったはずの勇儀は不機嫌だったのだから驚きはせずともどうしたのかと気にはなるのだ。

「鴉でも連れてけ、私はこういう多勢に無勢は主義に反する。見とくぞ」

「ブン屋なら逃げたわよ。後で悠長なことを言っていたと後悔しないでね」

「……しないさ。そうだとしても悔いはない」

「相変わらず強いのね。体は」

 勇儀だけ大きく後ろに下がり持ってきた酒を自慢の大赤杯に注ぎ観戦とした。

 靈夢はやはりと、鬼が動かないことを確認した。

「理解はしてほしいとは思わないけど、やっぱりみんなに牙をむくって辛いわね」

「何か言いました靈夢さん?」

「なんでもない。ただ呆れただけよ」

 覚り妖怪だけが靈夢の心中を覚っていた――らよかったのに。

 

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