東方慟哭観   作:えのころぐさ

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魔女と本とホントと少女と

 照は美鈴に言われた通りに魔理沙を空き部屋に運び取りあえず手当をする、紅茶とお菓子を持って部屋に入ると魔理沙はベッドから体を起こしていた。

「ちくしょぉ。今回は負けたのぜ」

「私の御師匠様ですから当然の結果です」

 照は椅子に座りテーブルにお菓子を出し、紅茶をカップにゆっくりと琥珀色を注ぎ込む。

 カップ七分目まで紅茶が満ちると注ぐのを止め、魔理沙に手渡す。

「……お前、見ないうちに相当性格が丸くなったな」

 グッと紅茶を飲み干すと空のカップを照に突きだしお代わりを要求する。

 照は嫌な顔もせずカップを受け取り紅茶を注ぐ。

「そうですね。そうかもしれません。ですが、魔理沙さんもまだ博麗の巫子とイチャイチャしているんですか?」

「イチャイチャ言うな。マスパ撃つぞ」

 八卦炉を照に向けるが照は笑う。確信していることがあるからである。

「私には効かないなって知っているくせしてよくいいますね」

「源符は卑怯過ぎるぜ。と言うよりお前自身卑怯」

 魔理沙は八卦炉を下げ、両肩を上げて下げた。

照の力を知っているが故の行動である。

「初めてマスパをお前に撃ったときは驚いたぜ、まったく当たる寸前で四散するなんて普通ありえないぜ」

「その後、やっけになってマスパを撃っていた魔理沙さんは爆笑ものでしたよ」

「性格悪いな」

 クッキーを手に取り一口で食べる魔理沙。

「あ、そういえば、なぜ美鈴と一緒にいたとき私を知らないような振る舞いをしたのぜ?」

「この紅魔館で全てをやり直しているからですよ。他意はありません」

「…………」

 しばしの沈黙。思考を巡らせる魔理沙はなんらかの結論が出た顔をすると次の話をした

「それはそうと、まだ霊夢を博麗の巫子って呼んでいるんだぜ?」

「あの人、いえ、博麗には怨みがありますから」

「怨みではなにもかわらないぜ? 心ない上海人形だぞ」

「怨むから心があるんで――この話はやめにしましょう」

 感情が表になる所で照は話を止めた。

「わかった、古傷を抉るような話をしたのは謝る」

「――ッッ! どんなことがおこったか知りもしないで『傷』なんて言わないでください!」

 魔理沙は照の踏みこんではいけない領域へと足を進めてしまった。だがしかし、魔理沙は理解できていない。 過去にとらわれる照にとって知った風な口をした魔理沙が許せなかったのだ。

 無論、過去とは『先代様』のことであり、彼女が死んだ理由である。

「知らないからそう言ったんだ! 久しぶりに出会って元気な顔をしているかと思えば全然してなかった! なにがやり直しだ! なにが全てだ! 同じ場所にずっといたら災厄をもたらすくせして何を寝ぼけてやがる! お前は、お前は、化け物だ!」

「違います! 私はここの従者です! 美鈴さんの弟子です!」

 椅子から立ち上がり憤慨を見せるが立ちあがった瞬間足が机に当たる。

 紅茶を入れていたカップが倒れ紅茶を机中に広がりを見せた。

 それが二人を冷静にさせた。

「……すいません。頭に血が上っていました」

「いや、こっちもいい過ぎた。お互いだぜ」

 魔理沙はベッドから出て、彼女のシンボルであるトンガリ帽子を被る。

「そろそろ行くぜ、今日は本を貸してもらえなかったが収穫はあった、たまには霊夢にもあってやるんでだぜ」

「気が向いたら会いに来ますよ。それと、まだ窃盗まがいのことをしているのですね。あ、私が大分前に貸した魔導書返して下さいよ」

「そ、それは……」

 魔理沙が途端に挙動が変わる。辺りをきょろきょろと見渡たす。求めているモノがそこにあると 彼女は何処からともなく求めていたモノ、窓を割って入ってきた箒を手に取り流れるように箒にまたがる。

「……死んだら返すのぜぇぇぇ!」

 割れた窓ガラスに向かって一枚のスペルカードを取り出し使用する。

 《魔符「スターダストレヴァリエ」》

 そのカードは美鈴の時に見せた驚異的な加速から生まれる突進技。

 だが、今の魔理沙には突進なぞ二の次以下のモノである。

 加速目的のスペルカード。いや、逃げるために使用したスペルカードと言えばしっくりとくるだろう。

「ちょっと! 魔理沙さんスペルカードをこんな使い方するなんて――」

 勢いある風が照の言葉を遮りる。当然それまで言った言葉も虚しくはるか遠方に消えていく魔理沙には届く筈もなかった。

 しばし、常識はずれな魔理沙に思考が停止する。

 ある程度の処理が脳内で終ると逃げる目的でスペルカードを使った魔理沙に呆れながら割れた窓ガラスの破片をメイド服の中に隠していた箒と塵取りを出し集める。割れた窓ガラスはガラス片をそのままにして自然と元に戻っていた。

 これも咲夜さんの力なのだろうと把握をすると照の咲夜に対する危険度はさらに上がった。

「この力は時を操作する程度の能力ですからね。勘違いされるかもしれませんが一応空間も操れますよ。これほどメイドに向いた能力はないですよね」

「で、でたぁぁぁ!」

 突如として後ろから声が聞こえ驚きながら振り返ってみると咲夜がティーセットを乗せたトレイを持って微笑んでいた。

「お、おどろかせないでくださいよ」

「私、紅魔館でたった一人の人間だったんですよね。だから、貴方がココに来てくれて内心うれしいんですよ。私なりのよろこんでいる表現行動です」

「なら、もっとやさしくしてくださいよ」

 足の力が弱くなりしだいに照は床に座った。咲夜の感情表現に照は着いてはいけなかった。

「フフッ、以後そうしますよ。では、本題に入ります。お嬢様が呼んでいますので、ついてきてください」

 レミリアの指名。ここにきて一週間。咲夜のご機嫌な様子。

「なにか私はやってしまったのでいしょうか?」

「美鈴もいるから来たら分かると思いますよ」

 ついていくしか方法はなく照は咲夜について行った。

 廊下を歩けば一歩で数十メートル進んでしまった。大きくジャンプしたような一瞬の浮遊感と落ちていく落下の重力が伴う感覚で不思議と言うほかない。

 咲夜が力を使い空間を操作しているからこそ起こることなのだが一気に空間を操作しない当り咲夜は歩くのが好きなのだろう。

 好感を持てる所だ。

「お先にどうぞ」

 一際目立つ黒と赤の扉の前で止まり、咲夜は扉を開け照に先に行くように指示した。

「やっと来たわね、咲夜御苦労様」

 戸を開けると一際大きい部屋にレミリアが座る椅子とティーカップが置いてある机が一つだけあり、壁際はレミリアの視線に入らないように息を殺し、ただの従者としていた。

 無論のこと美鈴もその中に一応のことは要るも存在感は大きく、隠しても隠しきれない背もあるせいで従者たちの中では浮き気味だ。

「ありがとうございます。では、後ろで控えさせていただきます」

 言われた瞬間に後ろに下がり声は後ろから聞こえていた。時を止めて下がることに末恐さを感じる。

「そ、それで、今回はなぜに呼ばれたのでしょうか?」

 おもむろに照は言う。

 緊張もあるせいか声がいつもより高く、手足に微弱ながら振るえがレミリアには見えた。元々レミリアは吸血鬼で血の流れを見れば相手がどういった状態なのかは一瞬でわかるが、そんなことをしなくても照の状態は分かった。

「それは、この紅魔館に私とパッチェの他に一人、大事な子がいるの、その子の従者をやってほしいだけよ」

 三秒の間。

「えっ?」

 呆けた声を照はあげた。が、他の紅魔館の従者達、特に咲夜と美鈴は納得がいかないのか自分達が待機していた場所から足が動き、一歩進んだ形となって現れた。

 この場合は咲夜より美鈴がこのこと納得ができなかった。ここに来る前に言われた話の内容と今の話は合わないからだ。

「ちょっと! お嬢様それはお話が違いますよ! ここに照を呼んだのは聞きたいことがあるだけと……」

 通りが通らないと講義する美鈴に対しそれほどまでに照には危機感を感じ得なかった。

 そもそも、照にはレミリアに妹が居たことすら知らないのだから、今更ながら実はもう一人いたのっと言われてもピンとはこない。

「だからよ。あの子に就くのか尽くすのか、それともこのまま何処かに行って欲しいと言うかだけ、その返事を聞きたいだけよ」

 もっと明確に聞いておくべきだった。後悔の念が美鈴に握り拳を作らせていた。

「そんなこと――」

「それとも、美鈴は私に逆らうの?」

 最終は力で抑えたレミリア。抑えるしかなかったのだ。美鈴を信頼しているからこそ、従者達より厳しくなければならないとレミリアは考えているからだ。

 渋々美鈴にはレミリアに従う。

「――そ、それは、分かりました。ですが、レミリアお嬢様。私は照の師であります。もし弟子に何かあった時は……対応のことを検討しておいて下さい。腕一つは最低貰って行きます」

「その時は好きに殴ってくれていいわ。従者を持つ者としての義務よ。でも、美鈴、あなたは照を溺愛し過ぎと思うわ、距離を置きなさい」

「あ、あのぉ、話に付いていけないのですが……」

「そうね。簡単にいえば、照は私の妹の従者になるつもりはない? 問いに答えて欲しいだけよ」

「え? あぁ、はい。一応なれと言われればなりますが……」

「はい。決定。じゃ、今から妹が居る場所を教えるから付いて来て」

 突拍子もなく決まる。

「は、早っ! お嬢様さっきの話きいていました? ねぇ、わかりました?」

「ちゃんと聞いていたわよ。えっと、辞世の句を詠め、解釈してやるわよね。あぁ、そうだわ、きっとそう、違いないわ」

「そうですね。ちゃんと聞いていないことがわかりました」

「それがカリスマだからね。しかたない。ほら、見てこのあふれ出るカリスマ――」

 手を広げなにかしらの信仰を集めるモノにしか見えないポーズを取るも誰ひとりしてレミリアを見なかった。

 痛々しいからである。

 その痛々しさに反応する一人の従者がいた。氷の羽を持つ妖精。

「――ブレイク」

「ねぇ! 今誰がブレイクっていったの! 私は起こらないから言った者は挙手しなさい。絶対起こらないからね、ね!」

「お嬢様、妹様が少々高ぶりを見せています。やはり、今日は止めておいた方が宜しいかと」

 荒々しく怒るレミリアを咲夜は落ち着かせ、自身も今回の人事異動に不満だと示す。

「いいのよ。多分、照にはなんにも心配は要らない様な気がするから大丈夫。それに、妹を知って尚、私達に使えるかの試験よ。出て行くのもよし、逃げだすもよし、殺されるもよし。有象無象に選択肢があるから運命なんて言われるぐらいだしね。死んだら運命変えてあげるわよ。私は納得しないわよ。死ぬなんて選択は」

 レミリアは恥ずかしそうに顔を赤らめて帽子を直した。

「それに、万が一を備えて私も近くにいるからね。駄目だったとしても照には……、これは私の癪に障ることだけど妙蓮寺にでも連れて行ってあげるわよ」

「……フフ、素直じゃありませんね」

「それは咲夜も同じじゃない。咲夜も素直じゃないわ」

「取りあえず、行きましょうか、照。私に付いて来きなさい」

「わ、わかりました」 

 レミリアとの距離を三歩後ろで保ち照は歩く、来た当初からすればかなりの成長である。それを見た咲夜や美鈴は顔を合わせ照に聞えない程度に笑い合った。

 なにせ、そんな振る舞いを教えたのが二人であるからだ。

成長が見られて二人はうれしかったのだ。

 




今一東方を把握していない私です。
矛盾点は多くあるのでしょうか……
指摘のほどよろしくお願いいたします。

次回投稿は今夜の八時です。
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