奏多にとって大切なものは何?
友達?家族?恋人?お金?命?
私には大切なものはないんだ
だからといって毎日がつまらないってわけじゃないんだよ
時々大切なものが見つかるからね 思い出せないだけで
あるけどない
とても矛盾してるかもしれないけど 私には普通のことだよ
ねえ この何もない世界で 奏多はなにをしたい?_____
なんだろう これは
過去の記憶?
「っ・・」
何とも言えない激痛が走る
「あぁ そうか、あの子だったんだね」
これはあの子の言葉だったね 忘れてたよ
僕と同じ障害を持つ十愛(とあ)だったね
僕たちはアルツハイマーで物事をすぐに忘れてしまう
まさか十愛のことさえ忘れてしまうとは
この病気は怖いよ 改めて身にしみた
「ごめんね十愛、約束を果たすことができない挙句君のことも忘れてしまってたよ」
本当の事を言うと思い出したくなかった 君のこと思い出すと涙が止まらなくなってしまうじゃないか
会いたい 会いたいよ
彼女の言葉一つ一つを思い出してくと愛おしくて悲しくなる
心から愛おしい
僕は彼女の心を満たすことができたのかな
彼女と一緒にいてよかったのかな
ほら、思い出さない方が良かった
心臓が張り裂けるように痛い
君のところに逝きたいな・・・
__これはあの一年間の物語__
「きみが奏多くんだね? 生きる気力がないで有名な」
誰だろう まあどうだっていいや
僕はもうじき死ぬ予定だからきっと忘れてしまう
「ねえねえ無視ですかー?傷つくなー」
「君は誰なのさ 僕に何か用ですか」
若干キレ気味に聞いた
「おお、怖い怖い 私は十愛よ ねえなんで自殺しようとしてるのさ 君はメンヘラか何かかなー?」
うるさい なんなんだよこいつ 僕の何を知ってるんだよ
「君には関係ないよね、僕が死にたいって思うのは僕の勝手だよね? 何にも知らないくせに 頼むから僕の前から消えてくれ!」
しまった 初対面の人になんでこんなこと
「奏多くん 君はつまり 毎日が退屈で仕方ないんだね!? な~んだ はやくいってよ
しょうがない 毎日私がそばにいて君を楽しませてあげるよ~」
は? 大丈夫かこの人 くそ 調子が狂う
「あのさ人の話を・・・」
「だから聞いた結果だよ! じゃあ明日また会おうね!絶対だよ!」
はあ なんでだよ
僕って運ないよなー・・
でも悪い気がしなかった
あの笑顔をみると心のモヤモヤが消えていくみたいだ
まあ少しだけ十愛のわがままに付き合ってあげてもいいかな
付き合ってあげるだけだから
僕が望んでるわけじゃないし
こうして僕と十愛の物語がスタートしたわけなんだけど
この時はまだ彼女の秘蜜をしらなかった