とある世界、とある場所。
ここではあることが行われていた。
その『あること』とはーー
「また失敗かよ」
「無駄だって、『ゼロ』のルイズさんよ!」
ここーートリステイン魔法学院では進級試験と称し、生徒たちーーメイジと呼ばれる所謂魔法使いであるーーの使い魔を召喚していた。
順番は最後なのだろうか、ピンクブロンドの少女が召喚しようとしているが、爆発・爆発・大爆発の連続で、なかなか使い魔が現れない。
「ミス・ヴァリエール……今日の所は、もう……」
教師なのだろう、頭の毛が寂しい男性がヴァリエールと呼ばれたピンクブロンドの少女に諦めるようにと声をかける。
「ミスタ・コルベール!あと一回。一回でいいんです!やらせて下さい……!」
「……あと一回だけですよ?」
男性教師ーーコルベールは溜息を吐く。
この試験は使い魔を召喚できなければ進級ができないのである。
コルベールもこの少女が努力家であることは知っているし、魔法の才能が無いことも知っている。
何とか進級させてあげたいが、使い魔を召喚できなければ……
(どうにかできないものでしょうか……)
二度溜息を吐き少女を見る。
どうやら召喚魔法を唱えているようだ。
◇◆◇◆
少女ーールイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールーー長いのでルイズとするーーは崖っぷちに立たされていた。
それはそうだろう。最後の一回を許可され、それに失敗すると留年……栄えあるヴァリエール公爵家の自分がだ!
(お願い!ドラゴンじゃなくてもいい、グリフォンじゃなくてもいい!猫でも犬でも構わない!どうか、私に使い魔を……!)
早口で呪文を唱えてタクトのようなものを振る。
そしてーー大爆発。
辺りは土煙に覆われる。
(そんな……)
ルイズには爆発に驚いて暴れまわるクラスメイトの使い魔も、クラスメイトの蔑み、嘲笑、見下しも気にならないほど呆然としていた。
「ミス・ヴァリエール、残念ですが……」
コルベールが沈痛な面持ちで声をかける。
ルイズは応えず、晴れていく土煙をみている。
と、
「……!!」
弾かれたように走り出した。
「ミス・ヴァリエール!?」
驚いたコルベールもルイズを追いかけ、爆発の中心地を見た。
そこには五人の男性が倒れていたのである。
「この方々は一体……」
「わかりません」
すると、その中の一人ーー斑模様の服を着た男が目を覚まし、周りを見渡し、持っていた棒のようなものをこちらに向ける。
「な、何よ……」
「ミス・ヴァリエール!下がって!」
コルベールは杖を抜いて、ルイズの前に出る。
勘が告げている。この男は優秀な戦闘者だと。
数秒の後、男は棒を下げ、これまでとは違った間の抜けた顔でニヘラと笑った。
「すいませ~ん、ここ何処ですか?」
「「は……?」」
「いやねぇ、俺は部下と一緒に任務に出てたんですがねぇ」
「部下とはそちらの方々じゃ……?」
コルベールが未だ気絶している四人を指し示す。
男はその内の三人ーーこの男ともう一人の斑模様とは違い、三人は綺麗な白い服だーーを見て驚いている。
「何でカイジさんが……?」
((カイジ?))
コルベール、ルイズの二人は男の言葉に疑問を持つ。
その間にも男は四人を起こして何やら話している。
リクジやら、ニイやらを言い、自分を指していることから、自己紹介でもしているのだろうか。
◇◆◇◆
しばらく経ち、難しい顔をしながら男たちがこちらに来る。
そして頭にてを翳す妙な仕草をし、コルベールに向き直る。
「はじめまして。ニイから話を聞き、彼が予想したことを聞きましたが、まだ我々は混乱しています。出来れば事情を説明して頂きたい」
そう言い、コルベールをじっと見る。
コルベールは感心していた。これだけの人数がいるにも関わらず、立場としては公爵家令嬢であるルイズが上なのに自分を指導者と見抜いたことに。
しかし、それに気にくわない人物が一人。
「あんたね!使い魔の分際でご主人さまを無視してんじゃないわよ」
「ミ、ミス・ヴァリエール!」
まあ、ルイズとしてはたまったものではないだろう。
やっと使い魔を召喚できたと思ったら、その使い魔(仮)は自分を無視して教師と話しているのだから。
対してコルベールは焦っていた。
この者たちの動き、仕草。明らかに高度な訓練と教育をされた軍人だ。
慌ててこれまでのことを説明する。
使い魔召喚のこと。
召喚に成功しなければ進級できないこと。
召喚されたのが彼ら五人であること。
何故か斑男の一人がうんうん頷いていることが気にかかったが。
「なるほどね。俺らと契約しないとルイズちゃんが留年しちまうと」
白服男の一人ーー人より鼻が少し大きいーーが苦笑いをしながら言う。
「自分の正体も明かさない蛮族の分際で私の名前を呼んでるんじゃないわよ!」
「ミ、ミス……!」
でかっ鼻男はまた苦笑いをして黙る。
それを見てコルベールは安堵した。
「しかし、ニサ。我々も身分を明かした方が……」
「サンイの言う通りです。身分を明かし、情報を集めなければ。ニイの予想が当たっているとは限りません」
サンイと呼ばれたもう一人の斑男と、最後の白服男ーーこの男は眼鏡をかけているーーがニサと呼ばれた男に言う。どうやら『ニサ』が一番偉いようだ。
「そうだな……申し訳ない。最初に身分を明かすべきでした。」
ニサはそうコルベールに言う。
「いえいえ、貴方方も混乱していたのでしょう。
申し遅れました、私はこのトリステイン魔法学院で教師をしております、ジャン・コルベールと申します。
ミス・ヴァリエール?」
コルベールがルイズを促す。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あんたたちのご主人さまよ」
男たちはルイズの言葉に苦笑いをする。
いきなりご主人さまって言われてもなぁ~てな感じである。
一頻り苦笑いをした男たちであったが、すっ……と真剣な顔になると、また手を頭に翳す仕草をして、自己紹介を始めた。
「日本国海上自衛隊第1護衛艦群所属ゆきなみ型イージス艦3番艦みらい副長兼船務長 角松洋介二等海佐であります」
「同じく護衛艦みらい砲雷長 菊池雅行三等海佐です」
「同じくみらい航海長 尾栗康平三等海佐」
「日本国陸上自衛隊特地派遣隊特地資源状況調査担当 伊丹耀司二等陸尉」
「同じく陸上自衛隊フィルボルグ継承帝国方面偵察隊 久世啓幸三等陸尉です」
「ジパング」より
角松洋介
菊池雅行
尾栗康平
「ゲート~自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」より
伊丹耀司
「ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記」より
久世啓幸
以上五名を召喚。
続かないよ!
久世の肩書きは勝手に着けたものであり、公式ではありません。
ご理解をお願いします。