とある殺戮の天使が巨人の世界に迷い込んだそうです 作:二野瀬諷
今回はリヴァイとハンジの紹介パート、みたいなものです。
「おい…。お前ら、こんなところで何をしている…?」
私達が見た一瞬にして巨人を削ぎ倒したその人は。背中には緑色で2つの翼が交差したデザインのマント、腰に装着しているなにやらボンベのような物とワイヤーを発射する装置が両足に1つずつ。ツーブロックの髪をしていて、しかし一番印象的だったのは。鋭く尖った特徴をしていながらその瞳の奥にはどこかすごく悲しく、哀れな。そんな感情が伝わるような眼差し。この人も何か過去にあったのだろうか?
「あ?誰だ、てめえ」
「…俺は調査兵団兵士長のリヴァイだ。そこの包帯グルグル巻きのてめえと木の上のガキはなんだ」
「俺か?…ザック、アイザック・フォスター。んであっこにいるチビはレイだ」
いやいやザック。そこはフルネームでちゃんと紹介してよ、と言いかけたがこの木の上だ。声を出すのも疲れたのでやめておいた。
「ほう…。お前、巨人と立体機動装置もなしに戦ってやがったな」
「ん?おお、あんまりにもデカくて珍しかったから殺したくなったんだよ!」
「珍しい…だと?」
ザックがこう言った瞬間、リヴァイという人の眉が少し、歪んだ気がした。
「お前ら、巨人を見たことがないのか」
「あ?見たことあるわけねえじゃねえか、ニンゲンがいる世界しか見たことも聞いたこともねーえよっ」
「そうか…。お前らは外の人間か、っていつまでもあのガキを木の上にいさせるわけにもいかねえな」
そう言うとすぐにワイヤー装置みたいなものを使って私のいるところまで上がってきた。近くで見るとなおさら冷たい眼をしているように感じる。
「おい、つかまれ」
「え、あ…」
言われるがままに脇に抱え込まれ装置を使って木を使いながら降りていく。降りて来た時に若干ザックがイラっとしているように見えたのは気のせいだろうか。
「ガキ。お前にも───」
「ちょっと待って私はガキじゃない。レイチェル・ガードナー。」
前にも神父様とかいろんな人に魔女とか言われてたな。そう言われるとなんかしゃくにさわるし。というかなんで魔女なんだろ、魔法が使えるわけでもないんでしょ?
「…レイチェル。お前にも聞きたい。お前らは外から来た人間なんだな?」
「外から来た…というよりかは転生したって言う方が正しいかも。私達は地下ビルから出ようとしたらいつの間にかこの世界にいたの」
「……」
まあこんなことを話しても簡単には信じてもらえないことはわかっている。受け入れる人間がいたら逆に不思議なんだけど。それよりもこの人が言った、外の世界の人間。この言葉が1つ引っかかる。いったいどういうことなんだろうか。
「あの…外の世界ってどういうことですか?」
「ああ…そうかお前ら知らないのか。あー…。ここにいても危ねえだけだな。詳しくは壁の中に戻ってから教えてやるからついてこい」
「壁の中…」
「あーもー難しいことはわっかんねえんだよグダグダ話やがって!!」
「「!?」」
ああ…そうだった。ザックはややこしい話が大の苦手だった。なにせ文字も読めないほどの教養のなさだ。最近は頑張って読めるよう勉強してたみたいだけど。また教えてあげないと…。
「それよりもよお…あのでけえ巨人を1発で殺りやがったお前にも興味があんだよ」
「どういう意味だ、てめえ…」
あ、これはもしかして。と思った時には既に遅かった。
「そんなに強えお前もよお…。つい殺したくなってよおーーー!!!」
「ザック!!」
やっぱりザックは我慢出来なかったようだ。瞬間的な速さでリヴァイさんにさっき手にしたブレードで襲いかかっていってしまう。この世界でも殺人鬼になるのか───と思ったら。
「…調子に乗るなよ、クソガキ」
「!!?ぐああ!!」
「…え」
あんまりにも速すぎて見えなかった。ザックがブレードをリヴァイさんに向けて降り掛かったところまでは見えたのだが、それよりも素早くリヴァイさんはこれを制してザックを関節技で押さえつけたのだ。
「いでででで、離せ!!!」
「…この俺に殺意を向けて来たのは巨人以外お前が初めてだな」
たぶん言葉とザックを制した素早さ。そしてさっきの巨人を1発で倒したところを見るとリヴァイという人はとてつもなく強いのだろう。その証拠に今まで殺人鬼と恐れられてきたザックが片手でブレードを抑えられ、もう1つの腕が背中に回され、これもまた抑えられられている。
リヴァイさんが離した後はザックも襲いかかることは止め、関節技をやられた左腕をブラブラさせていたりしていた。
「…一体どういうことなんだレイチェル」
「ごめんなさい、ザックは私達の世界では殺人鬼で通っていたの、だから嬉しそうだとか、楽しそうな顔してる人、もしくは強い人とかを見ると殺したくなっちゃうみたいで」
「しれっとそういうことを言うお前もなかなか異常な奴みてえだな…まあいい、そろそろあいつらが来るはずだ」
そう言えばほかの人はいるのだろうか?と気になってはいた。それは少し経ってから分かることになる。
「リーーーヴァーーーイーー!!」
女の人の声だろうか。森の少し遠くから馬に乗ってこっちに向かってくる人が4、5人見えたのだ。
「リヴァイ〜勝手に外れるのは困るよーーエルヴィンも呆れてたよー?」
「んなもん知るか。巨人が異常な動きをしていたからもしかしてと思ったんだよ。そんな動きしてたらお前も気にならないのか」
馬から降りた女の人?は少しためらいながらも口を開けた。
「それは…過去にリヴァイが私を助けてくれたときに壁外調査中は私の立案作戦が実行されない限りは危険な行動はしないってエルヴィンとの決まりなんだ」
「…そうかよ」
「ところでリヴァイ?そこにいる包帯のミイラと女の子はなんだい?ついにリヴァイもオカルトとロリにめざめちゃったとか!?あははは!!って痛い痛いやめて!!!悪かったから!!」
調子に乗りすぎたのかリヴァイさんに絞められる。このままじゃザックがまた我慢ならないし再び巨人が来るかもわからない。
「…おい」
あ。
「さっきからごちゃごちゃうるせーんだよ!俺はめんどくせえ話は嫌いなんだもっと早く済ましやがれ!」
「…ザック」
「心配ねーよ殺さねえ。…さっきの抑え込みはもうされたくねえしな」
ああ、さっきのリヴァイさんの。軽くトラウマになってるのか。ザックでも「炎」以外で怖いものがあるんだね。
と、私は何か安心感のようなものを感じた。
「あ、ごめんごめん!君は…」
「ザック。アイザック・フォスターだよ」
やっとリヴァイさんから解放された女の人が気づいたように言うと、ザックは不機嫌そうに自分の名前を返して言った。
「ザックだね!よろしく〜!私は調査兵団分隊長のハンジ・ゾエだよ!」
この人はなんだか明るそうな人だな。さっきのリヴァイさんに対してもそうだったけどとりあえず食って掛かるあたり少年のような心を持ってるんだろうな。でも私にとってもザックにとっても少し暑苦しいかもね。
「よーハンジさんよお。お前はそこのリヴァイとかいう奴よか強いのか?」
ザック、さっきのことを思い出してるのかな?
「あはははは!!それはないない!人類最強のリヴァイに勝てる人なんているわけないじゃーん!はははは!!」
「…そんなに強えーのか」
驚いた。『人類最強』これは今まで生きてきて一度足りとも聞いたことのない言葉だ。私達の世界では具体的に人類最強とか定義があるわけじゃないし誰かが決めるわけでもない。あるとしたらそれは個人の定義、それだけだ。ちなみに言うなら私はザックが最強だと思っていたけれど。
「すごいよリヴァイは、誰もが認めてるもんねえー」
「…ほざいてろ。人類最強なんてまるで意味がねえ」
「あらあら堅いねえーリヴァイは。もうちょっと自信持てばいいのにって毎回言ってるのにー」
「…そんなことよりもうここは危ねえ。こいつらを引き連れて拠点に戻るぞ」
拠点…?街とかってないのかな。
「はいはいわかった。二人とも、余ってる馬があるからそれに乗っちゃって。レイちゃんは小さいから2人乗りでも大丈夫だと思うから」
「え、馬に乗るの…?」
なんか昔の光景みたいだ。ここの世界では普通のことなのかもしれないが思わず声に出てしまっていた。
「そうだよ?それがどうかしたのかい?」
「…車かと思った」
「車?なんだいそれ、ちょっと話を聞いてみたいけど…壁の中に戻ってから聞くとするかな。まずは戻ろうかー、乗って乗って」
とりあえずザックと2人で馬に乗ってみる。あれ?乗馬経験なんてザックには…。
「…あのよお」
「ん?また今度はなんだい?」
「俺に馬なんて操れるわけねーだろ!」
「まあまあ、フィーリングでなんとかなるよ、あははは!」
「ふざけるのも大概にしとけよ…」
「待って、ザック」
「あー?なんだレイ」
「私、馬乗ったことあるよ!できる」
思い出した。ちょっと昔。まだ家族が平和に暮らしていた時に乗馬経験をしたことがあった。あの時はまだ私が7歳だったかな。驚くほど上手くて調教師さんが驚いていた記憶がある。
「マジかよ…出来んのか?」
「やってみる」
そう言って手綱を握って歩かせてみる。するとすんなり馬が歩き始めたのだ。
「次は曲がってみよう…」
手綱を操ると馬は思った方向にすんなりと言う事を聞く。
「…レイ、お前すげえな」
「言ったでしょ、ザックの役に立つって。約束したから」
「…おう、そうだな!」
「よっし!じゃあ大丈夫だね、いくよー!」
こうして私が前に座ってザックが後ろから私を抑えるような形で馬に座り、リヴァイさんやハンジさんたちと一緒に馬を走らせた。
しばらく付いていくと、なにやら建物のようなものが見えてきた。あれが拠点という所なのだろうか。
「レイちゃん!ザック!着いたよ、ここが私達の壁外拠点だ」
「壁外拠点…?」
馬を降りると、ハンジさんやリヴァイさんのような格好をした人達が20、30人くらい。中には塔の上から監視をしている人の姿も見受けられた。
そして私達は一つのテントに案内された。
「エルヴィンー!入るよー?」
「ああ。」
入っていくと金髪で妙に落ち着いたような、不気味な、そんな雰囲気のある人が椅子に座って机越しに私達を待っていた。
「紹介するよ、私達調査兵団の団長、エルヴィン・スミスだ」
「なるほど、君達が…」
じっくり見つめるように私達を見てくる。なにか観察でもしてるのかな。観察はもう疲れたんだけど。また魔女とか呼ばれるのはもう嫌なんだけど…。
「エルヴィン。こっちの二人がアイザック・フォスターとレイチェル・ガードナー。伝達で伝えたように二人は外の世界から来た人間だ」
「…なるほど。改めてよろしく二人とも。私がここの組織をまとめるエルヴィンだ」
さっきとは打って変わって優しい顔で握手を求めてきた。それに私達はしっかりと応じた。ザックに関してはちゃんと私がやるように言ったけど。
「さて…。君達に来てもらったのは他でもない。聞きたいことがあってここに呼んだ」
聞きたいことねえ…。神父様のなんか訳がわからなかった質問を思い出すなあ。何者だー、とか。そんなのじゃないといいな。
そして間を明け、エルヴィン団長はゆっくりとこう言った。
「──────君達はこの出来事をどう思う?何が見える?」
それは。私達がこの世界に来た理由を知っているような。どこか見透かしたような。引っかかるようなそんな言葉を。エルヴィン団長は私達に投げかけた。
本当に紹介パートみたいな感じになってしまったな…。次からはストーリーに入って行けたらいいかなと。
また一ヶ月くらい空くかもですがお待ちください!