とある殺戮の天使が巨人の世界に迷い込んだそうです 作:二野瀬諷
ではどうぞ!
「…君達はこの出来事をどう思っている?何が見える?」
「「──────?」」
それはまるで私達がこの世界にきた理由を知っているかのようなエルヴィン団長の言葉だった。
「───それはどういう」
「ああ、これは失礼。いきなり変な質問をしてしまったようだ。しかしこんなことを聞いたのは君の隣にいるアイザック。君の高い戦闘能力とレイチェル。君のサポートの力をリヴァイから評価があったためだよ」
あのリヴァイさんが…。戦闘能力という言葉を聞くとこの世界ではあの巨人たちは人類の敵、ということになるのかな。
「勘違いすんじゃねえぞ餓鬼共。俺はこの世界にお前らみたいなのがなんで迷い込んじまったのか、別の世界ってやつがどんなもんなのか気になっただけだ。…まあお前らの戦闘能力ってやつも連携によるものだってことも分かったがな。それを考慮してだ」
「…いつにも増して喋るじゃないか、リヴァイ」
「うるせえ。俺は元々よく喋る」
エルヴィン団長がニヤリと言った言葉にリヴァイさんはそう言いながら軽くそっぽを向いた。
「まあ、こんな感じだ。我々は巨人を倒す他にこの世界、つまりさっき見てきたであろう壁の外側に隠された世界を知るためにも君たちの力が必要だ」
「…だって、ザック。どーしよう」
「……」
「…ザック?」
なにやら少し考えていた感じで頭をポリポリかいていたがやっとザックが口を開けた。
「…さっきからあーだこーだ言ってたみてえだけどよお。お前らに協力したらあのデカブツをぶっ殺せんのか!?」
「保障しよう。我々は巨人を駆逐するためにここにいるものでもある」
「うっしゃあ!やろうぜレイ!!」
ふふっ…まったくこれなんだから。
「…うんっ、わかったっ…!エルヴィン団長、やります、私達、協力させてください」
「ありがとう。君たちにはやってもらいたいことがたくさんあると思うから協力してもらい感謝する」
「うっし!じゃあさっそく殺しに」
「待ちなさい。まだその段階に行くまでは順序というものがある。まずはそれをこなしてからだ」
ザック、そんなに殺しがいがあったんだね…。私は到底近づきたくないんだけど。元の世界に戻るためにヒントがあればって話って理由で協力してるだけなんだよなあ…。
「まず君たちには壁内にいって調査兵団本部に来てもらう。そのあとに色々チェックが入ると思うから理解しててくれ」
「あ?んだよかったりいなあ…」
「まあしかたないよ。やろ?」
「…しゃーねえな」
意外と素直なんだな。ふふっ
「よし。それでは今回の壁外調査はこれで終了。壁内に戻り結果をまとめることにする。総員撤退準備にとりかかるように、リヴァイ、ハンジ、頼む」
「わかったよ!」
「…了解」
そして各々が準備を始めていく中、私達には待機命令が出され団長と一緒にテントの中にいた。そんな時だったが1人気になっている人物がいたのだが…。
「…あの、1つ質問いいですか」
「…なにかな?」
「さっきから私達のことを間近で匂いを嗅いでくる人が…」
さっきにエルヴィン団長の話を聞いている時からずっと私とザックの匂いを嗅いでいる人がいるのだ。金髪で身長がさっきいた誰よりも高く鼻の下と顎のヒゲが特徴的だ。
「だあああテンメエうっとおしい!!!!!」
どうやらザックに標的が移ったようで必死に抵抗しているがなすすべなく捕まっていた。あ、抜け出した。でもまた捕まった。
「ミケ、そのくらいにしておいてあげな」
「フッ」
「ハー…ハー…。…なんだよこいつはァ!?」
「ザックとりあえず落ち着いてその刃を人に向けるのはやめよう?ね?」
ザック!ここで殺人起こしたらほんとにまたあの巨人たちのとこに放り出されるから!!と必死に落ち着かせる。あの時とは状況が違うから私がしっかりしないと!
「すまなかったザック、軽くトラウマになってしまったようだね。気をつけるようにするよ」
…ほんとだ。足が震えてる。私の時にもう言えば良かったかな。
「紹介が遅れてすまない。こいつはミケ・ザカリアス。ハンジと同じく調査兵団の分隊長を担当している。鼻がよく匂いだけで巨人の位置を特定することが出来るんだ。しかし人の匂いを嗅いでは鼻で笑うという癖が少し難があるがな」
「おいおい、人をこいつ呼ばわりとは失礼だな団長よ」
「…別世界から来た人間ということで気になるのはわかるが初対面でそんなにまとわりつくな…初めてだなお前のそんな所を見たのは」
「…この世界の人間とは違った匂いがしてな。どうやら事件の匂いがプンプンしたよ」
「お前…匂いだけでそこまでわかんのか?」
「まあ憶測だがだいたいのことはわかるな」
「……やっぱりこいつきめえ」
若干だがザックが後ずさりしたような気がした。
「偽名?何のことだ?」
「あ、なんでもないですごめんなさい。ザックはほんとに本音が常に出てくるんで」
礼儀を知らないとこういう時キツイなあ。私だってまだあまりわかんないし。
「…ほう。そうなのか。にしても過去の話、とやらが気になるな」
「団長!出発の準備、整いました!」
「…わかった。ではその話は壁内に戻ってからじっくり聞くとしようか。では全員出発するぞ!」
そして調査兵団と共に壁内と呼ばれる場所に向かうことになった。さっきとは違って私はハンジさんの後ろに、ザックはリヴァイさんの後ろに乗ることとなった。
「うげえええ酔う…!」
「チッ、ここで吐くんじゃねえぞガキ。きたねえからな…」
…大丈夫かな。
結構な長い道のりにはなったが無事壁内と言われるところには安全に着きそうだ、ということだ。
「ほらほら、見てレイチェル!あれが壁と呼ばれるものだよ!」
見てみると約50mの壁が長きに渡って円形のようにずっと繋がっているのが見てた。しかし私達の世界では…ねえ。
「なんか1つの城みたい」
「城ねえ…。言われてみればそんな感じもするけど、あの壁の大きさに驚かなかったのは君が初めてだよ?」
ああ、この人たちはこれ以上の建物の大きさを見たことがないのか。
「私たちの世界の建物は50mは簡単に越える、600mの電波塔なんかが当たり前のようにあるところですからね」
「600m!?それは驚いたなあ…。そんな世界1回でいいから行ってみたいよおっ…!」
「…はい」
ただ、そんなに住み心地のいい世界ではない。私達はそれを身をもって経験している。でもだからこそ得られる大切な存在というものもある。いつか殺されるために。私は私なりに出来ることをやる。この世界では生き残るために。
しだいに壁の近くの門に到着し、調査兵団全員が集合した時点で門の開放が始まった。
「ゲート開門ーー!!」
壁の上で見張りをしている兵士の人がそう言うと部分的に違う造りのゲートと呼ばれる門が開かれる。そこをくぐり抜けるとまた違った景色が見えてきた。
「調査兵団が帰ってきたぞー!」
「エルヴィン団長!巨人共を蹴散らしてくださいー!!」
「おい!あれみろよ!リヴァイ兵長だ!!」
「1人で1個旅団並の力があるみたいだぜ!?」
「あの後ろに乗ってる包帯野郎はなんだっ…!?」
「気持ちわるいな…」
…なんかうるさいなあ。あとザックは気持ち悪くないし。
「おいレイ!…レイ!」
急に隣の馬にリヴァイさんと一緒に乗るザックがこっちを振り向いてきた。
「…?どうしたの、ザック」
「この世界じゃあ巨人を殺せばヒーローになれるみてえじゃねえか、なんせ殺してめっちゃ人から褒められるんだぜ?こんなこと最高だろーがよ」
英雄級の扱い。なにかを殺してこんなに期待と賞賛をされるなんて。
それはレイチェルとザックにはなかった世界観。人を殺してしまえば犯罪者。それが当たり前だったからこそこの世界でいう「巨人」を殺すことによって讃えられることの新鮮さを感じたのだ。
「フフ…。ザックはとことんザックだね」
「ん?俺は俺だろーがよ」
「そーいう意味じゃないけどね」
その少し頭弱いとこもザックらしいと改めて感じた。あれ、これザックのこと馬鹿にしてることになるのかな。
「おい、少しは静かにしろ。うるせえし余計な情報を民衆に漏らしかねんからな」
「〜〜〜ッ!!」
リヴァイさんに敵わないから何も言えないんだね…。ある意味ザックにとって苦行かも。
ザックが小言をブツブツ言うのをたびたびリヴァイさんが制するのをしばらく見続け、そうこうしているうちに本部へ着いたようだ。
「ここが俺ら調査兵団の本部だ」
見てすぐ一言言いたかった。
「…ちっちぇ」
「あ…ザック」
私も思った。城みたいなのイメージしてた。しかし現実は現実。こういうところは私達の世界とあまり変わらないみたいだ。
本部にしては小さいと思う二階建ての建物。私達のところでいうよくある小さな工場を木にしたって感じだろうか。
「調査兵団にはあまり予算が回ってこないのが現状だ。仕方ないのもあるしこれから我々が結果を残して行かなければいけないだろう」
「なるほど…」
「あ、でも必要な設備はある程度揃ってるから心配しないで!中に入ったら普段生活してる人たちにはなかなか飲めない紅茶を煎れてあげるよ!」
しばらく話さなかったハンジさんが割り込むように会話に入ってくる。
「紅茶かあ…久しぶりだな」
昔はよく朝食の後とかにお母さんに煎れて貰ってた。あの時の紅茶はおいしかったなあ…。あれから何年経つんだろ。
「紅茶?なんだそりゃ?」
「どうやらレイチェルは知ってるみたいだね。ということは君たちの世界でも存在するわけかあ、共通点があって嬉しいよ!でもなんでザックは知らないんだい?」
「あ…それはまた中に入ってから話します、私のことも含めて全部」
「わかった、じゃあここで立ち話もなんだし入ろうか」
「ハンジ、レイチェル達は君に任せるよ。私はこれから憲兵と王政に今回の遠征について話をつけてくる」
「了解エルヴィン。じゃあ入ろう」
「やっと眩っしい外から中入れんのか…」
本部の中に入って案内されたのは少し大きい客間みたいなところで大きなテーブルがあり、その周りを囲うように三方向にソファーが配置されていた。他にもシャンデリアに赤絨毯、暖炉。これだけでもなかなかいい部屋だ。
「さあ、座って座って、紅茶煎れてくるよ。ちょっと待っててね、今日は少しいい葉使っちゃおうかなあ〜」
そういいながらハンジさんは一旦席を外した。部屋には私とザックだけである。考えてみれば2人だけっていうのも時間的に久しぶりだ。
「あ〜〜〜つっっっかれたじゃねえかよお!!!!!」
「これに関しては仕方ない、ここの世界の人と関わりがないと元の世界に戻れる手がかりが探せない」
「人類最強とかいう奴に調査兵団!?難しいことはよく知らねえんだよまったくよお!」
どうやらすっごく何も言えないストレスを我慢してたみたいだね。えらいよザック。
「たりめーだ畜生。ちょっとはこっちの身にもなってほしいぜ」
あ、声に出てた。
「もうよー。細けえことはレイ!お前に任せてもいいか?俺はバカだからあのクソみてえな巨人ぶっ殺すことしか頭にねえからお前が危なくなったら俺が守る。だからお前は俺の脳になれ、あん時と同じだったように」
「…そうだね。私がんばる」
「なーに、心配するこたねえよ…。この俺がいるんだぜ?」
「…うんっ!」
やっとゆっくり話せたのでこの信頼確認だけははっきりしたかった。よし。これで大丈夫だ。あとは進むだけ。
「ごめんね〜お待たせ!今日のは美味しいと思うよ〜!あと軽くお菓子も作ったから食べて食べて!」
「ありがとう」
「…あんま甘いもんは好きじゃねえんだよなあ」
「ザック」
「…へーへ」
ハンジさんが戻ってきたところで紅茶とお菓子をもらう。実のところ甘いものがしばらく食べれてなかったのでこの配慮は非常にありがたかった。
「…これ、美味しいっ…!」
「ほんと!?嬉しいなあ〜結構高かったんだよ〜気に入ってくれてよかった!」
「…うげ」
ジャンクフード好きのザックには酷なものだったようだけれど。
「よーし、一息ついたとこで君たちの世界での話でも聞こうか、何かヒントに繋がるかもしれないし、私達の調査にも幅が広がるかもしれないからね」
いよいよ過去のことを話すことになる。果たしてこの世界の人には理解して貰えるのだろうか。
いや。理解してもらうかどうかは問題じゃない。ありのままの事実をそのまま言えばいいだけの話。堂々とすればいいんだ。大丈夫。
そうして私は1つ1つ丁寧にあの地下ビルでの出来事。ザックや私の幼少期の話などを話し始めた────。
ザックとレイチェルがやっと2人きりになれて信頼を確認できましたね。考えてみればフリーゲームでもこうした話がストーリーの鍵を握ってた気がします。
では次回ほんとに頑張らないとな…。頑張ります!臨機応変に対応していきますので長い付き合いになると思いますが見ていただけると嬉しいです。誤字報告などありましたら気軽にどうぞ。ではお疲れ様でした!