とある殺戮の天使が巨人の世界に迷い込んだそうです 作:二野瀬諷
あ、どうもこんにちは。おひさし振りでございます。近況としては少し大事な存在が出来てしまった私です。まあ色々ありまして…。また遅くならざるを得ないという言い訳にしか聞こえないことになりまして誠に申し訳ない。そのぶん努力していこうと考えています。
今回は少し短めです。
「…貴様らか。エルヴィンが言っていたのは」
私たちはとある訓練兵団の教官室と呼ばれる場所へ行き、エルヴィン団長から言われたとおり訓練兵団のキース教官という人に紹介されていた。キース教官は結構ベテランの教官らしい。前調査兵団団長だったこともあり、街でも知っている人間も少なくないようだ。特徴的なのがスキンヘッド。いつからあんな頭になったかは覚えていないらしい。まあそんなのどうでもいいことなのだけれど。
「…なんだ貴様、そんなにジロジロ私のほうを見て。なにか付いているか?」
「いえ、ただあなたの眼が気になったもので」
キースさんの鋭い眼がすごく気になった。怖いような、でもどこか悲しいような、深いなにかを背負っているような、そんな眼だった。…リヴァイさんもそうだったけれどここの人たちは誰もがなにかを背負って生きている、自分たちの経験から感じるものがあった。
「眼…だと?…ふん、変な奴だな、名はなんという?」
「…レイ。レイチェル・ガードナー」
「レイチェル・ガードナー…。なかなか良い名だ、両親が付けてくれたのか?」
「ええ。その両親は私が殺してしまいましたけど」
「!?なん…だと。お前は…殺人犯なのか」
「ええ…そうです。だから私は隣にいるザックに殺してもらうの」
「…待て、話が全く見えてこないぞ。とりあえずレイチェルの隣にいる貴様…ザックとか言ったな」
「おう…アイザック・フォスター。前の世界では殺人鬼とか言われてたな」
ザックがそういうとキースさんは座っていた机の上に左肘をつき、俯くように額を押さえてしまった。
「おーうハゲのおっさん。だいじょぶかー」
ザックが顔をのぞき込むと大丈夫だ、というようなハンドサインを出し、やれやれといった感じに口を開いた。
「エルヴィンはその子たちから具体的な話を聞けと言っていたが…殺人鬼?別世界?…意味がわからん…これほどとは。順に説明してくれないか」
ここまで言われてはじめてやらかしてしまったことに気付いた。そりゃそうだ。いくら軍人といえどもここまで現実離れした話をいきなり言われたらこうなってしまうのは必然だ。
「いきなりこんな話して理解してもらえるとは思ってはいません。でも話してみます。私とザックがどこから来たのか、なにをしてきたかを」
「ああ…たのむ。ここではなんだから場所を移そう」
もう既に疲れが見える表情をしたキースさんは1回ため息をついてからその場を立ち、私達を食堂に連れていってくれた。これから夕食らしい。私達もいただくことにした。
「うわあ…すごい。温かい」
「…んあ?ポテチはねーのか」
「ザック、ここは別の世界のものなんだから我慢して」
「あー…わーったよ」
私達の目の前にはパンとコーンスープ、それに私達の世界でいう牛肉のステーキが並べられていた。私…こんなごちそういつ以来なんだろ。あそこにいた時はダニー先生が何もかも持って来てくれていたけど…あまりなにを食べていたのかは思い出せないでいた。家庭では悲惨な環境だったしろくにご飯を食べれないでいたから。本当に温かいな…。
「…?ガードナー。泣いているのか…?」
「?あれ…また私、泣いてる」
自分の食事を運んできたキースさんに指摘されたようにまた、私は泣いていた。
「…その表情を見る限り、なかなかお前も訳ありのようなんだな。話を聞かせてもらおうか」
お前も…か。
「わかりました。一から話しますね」
そして再びここの世界に来るまでの話。この世界に来てからのこと。二人の約束の話。全てを話した。
「なかなかお前達すごい経験…私以上に地獄、というモノを体験しているようだ…。やれやれ、この世界以上に残酷なところなのかもしれないな、そのお前達の世界とやらは」
「そうとも言えるかも知れませんね…。相手が人間な分、なおさら。私達はそれに慣れているだけなんですけど」
今までの出来事を踏まえると慣れてしまうのは必然であった。
「こんなのいつも通りだろ?そこのおっさんはなんかあったりするのか?」
「わたしは…いまのところ面白い話はないぞ?人生では兵士として大半を過ごしてきたからな」
「なんだよつまんねーな…あいつらはキモいぐらいになんかあったけど」
「あいつら、とは前の世界の話だな?」
「そーだよあいつらきっしょいことばっかりしやがって」
「まあ話を聞いている限りはそんな言い方になってもおかしくはあるまい…」
いろんなトラップやら待っていたいろんな展開を考慮すれば当然だと私も思う。それだけされてきたからね。
「…おいレイ、なにニヤニヤしてんだ?ついに殺せるようないい顔になってきたじゃあねえか」
………!?
「え…ほんと?」
「…!」
「…なるほどそういう流れなのか…」
…?ザックもキースさんもどうしたんだろう。なにか私したかな…。
「あの…二人ともどうかしたの?」
「ああ…俺はなんでもねえよ…」
「私はお前たちの関係性がよく現わされている会話だとよく理解したぞ」
「んあ?どーいうこったよおっさん」
「お前達の約束、みたいなものがやっとはっきりと分かったような感じだな。しかし…なかなか手を出さないなザック、それはなぜだ?」
「ん?んあー…。」
キースさんに言われると、ザックは変なことを聞かれたなと言わんばかりにきまりが悪そうな顔をした。
「…深い意味なんてねーよ。こいつが殺したくなる顔をしねーと殺さない、それだけだ」
「ふむ…そう、なのか」
「そーだよ、そーいやおっさんも真顔ばっかで面白くねえよなー」
「…!」
「ザック!失礼だよ」
「…いやいいんだ。たしかに私も昔と比べると面白くない人間になったのかもな、あんなに血気盛んだったのに」
キースさんは若い頃は調査兵団に入っていたらしく、巨人を倒すことに関して1人燃えていたそうだ。倒せた時はそれはすこぶる嬉しかった。しかしそれも歳と共にそうは思わなくなってきて体力も追いつかなくなり、とある失敗をしたことで今の指導者という立ち位置にいるのだそうだ。
「年寄りにはなりたくねえもんだな」
「まったくだ。今の若い者を見ているとほんとに羨ましく感じる。私も出来ることなら過去に戻ってやり直したいな」
「なるほど…」
そんなことを話しているうちに食事を済ませ、明日は訓練兵達に私達を紹介するからそのつもりでいるように、とキース教官から伝えられた。訓練兵…いったいどんな人達がいるのだろう。そんなことを思いながら私達の部屋に行った。私とザックは同じ部屋にセットでいるように言われた。
「わあ…2人だけの部屋だよザック」
「ん?…おーそうみてえだな。…ちょいとオレは今日疲れたからはよ寝るぞ」
「私も疲れたから寝ようかな、じゃあ…一緒に寝よう?」
「一緒にもなにもベッドが1つしかねえんだからそうするしかねえだろ」
「そうだね、…じゃ電気、じゃなかった、ランプ消すよー」
「おー」
ランプを消し、2人でベッドに横たわる。するとすぐに隣から心地よい寝息が聞こえてくるのを耳にした。
「…ザック、もうねた…?」
呼びかけても応答はない。どうやらもう寝てしまったようだ。
「………」
(…ちょっと近づいても、大丈夫かな?)
ちょっと動いて寄り添うようにしてみた。
(わあ…)
…ザックの温もりを直に感じる。なんだか…すごく安心感する…。
考えてみれば2人だけでこんなにゆっくり出来るのは初めてかもしれない。かと言って何かあるわけじゃないけど、この温もりがひどく恋しく感じられた。
「おやすみ、ザック。」
一言囁き、その日の夜は更けていった。
───その次の日の朝。
カーン!!カーン!!カーン!!
「起床ーーーーー!!!」
………。
眠い。すごく眠い。あたたかい。
私のすぐ左にザックが寝ている。これからこの生活が毎日続くんだ。そう思うと心がとても幸せな感じがしていた────。
これからやっと生活が始まります。キースさんが調査兵団団長だった頃の時代は原作を読んだ人たちなら察してもらえると思います。
次回は訓練兵としてあの主人公たちがついに姿を現しますのでご期待ください!
ではまた来年!良いお年を!