チャチな光の道化師   作:ぱち太郎

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第六幕 友人となる少女

夕方のトラペッタ。

壁に囲まれた街並みが夕日を遮るのか、ドルマゲスの位置からは太陽が隠れている。

しかしそんな事はお構いなし。

スラぼうの加入によってソロ状態から脱したドルマゲスは上機嫌でライラスの元へと向かっていた。

新しい仲間が増え、ついでに喧嘩を売って来た戦士を返り討ちにして大儲け。おまけにディーラーをやっていた盗賊からもゴールドを渡されたのだ。

ドルマゲスのテンションは高く、懐は温かかった。

 

ライラスの家へと突入したドルマゲスは嬉しそうにライラスを呼ぶ。

「師匠ー! 生きてますか……!」

その様子は『魔物を連れ込んだ事』そして『まずするのが生死の確認である』という事を除けば、とても子供らしい姿だった。

 

 

一方ドルマゲスがライラスの家に突入した時、家主であるライラスは自分の部屋でいくつかの資料を漁っている最中だった。

それもこれも、唯一の弟子、ドルマゲスの素質を改造……いや、魔改造する為だ。

 

なにせ相手が相手。レミーラ以外の才能が欠片も無いと言って良いドルマゲスなのだ。

敵性の無い人間でも魔法を使えるようにする研究は、難航の一途を辿っていた。

 

……こんなんどうせいっちゅうんじゃい。

ドルマゲスの『魔法使いになりたい』という夢をどうにかするための研究に手を付けていたライラスは、弟子のピーキーすぎる性能にかつてない壁を感じ、ため息をつく。

 

……体内の魔力を操作する才能はある。

それは間違いないだろう。本人も努力を重ねており、『お色気の術』とやらを自分に繰り出す程度には実力を上げている。

「まだ13歳のはずじゃが、一体どこであんなことを覚えたのか」

けしからん、いいぞもっとやれ……! 

「……おっと、いかんいかん」

先日のソレを思い出したライラスは鼻の下が伸びていた。

煩悩を振り払うように首を振ったライラスは、再びドルマゲスについて考える。

 

……あのバカ弟子。一般的に『かしこさ』と呼ばれる素質が低いというわけではないんじゃがのう。

ただ単純に呪文との相性が悪い。相性のいい呪文がまるで無い。

「その現実を前にさてどうするか。ああ、そういえば、あのおかしなスキルもなんとかせにゃならんのう」

ドルマゲスがスキルを一つ封印された状態である事を思い出し、ライラスは頭をかいた。

これを何とかすれば他の部分が改善する可能性も高い。が、何とかすると言ってもどうすればいいかはサッパリ分からない。

詳しく調べようとしても、こちらの解析を受け付けないのだ。

 

……目下の目標はこのスキルシステムについての研究じゃな。

素質を開花させるにはまずそのあたりから始めるのが妥当だろう。

とはいえスキルの封印が解けても何も変わらない事だって考えられる。ライラスは後天的にスキルを獲得する方法が無いか、無くてもそういった効果を持つ薬か魔導書が作れないかと考えを飛躍させた。

「スキルの種……いや、アレはまた別者じゃしなぁ。しかしアプローチの一つとしては有りだとも……?」

 

そうして悩むライラスの元へ、ドルマゲスが勇んで駆けてくる。

「師匠、師匠! みて下さい。私にも仲間ができましたよ……!」

「まったく、ドアくらい静かに開けんか……」

そう言って資料から目を話し、ドルマゲスとその仲間、スラぼうを確認したライラスは、一息置いて固まった。

 

……スライム狩りに精を出していた弟子が、スライムを連れとる!

 

正に意味不明。

とにかく今はこのスライムが何なのかを聞くべきだろう。

しかしライラスの口から出た疑問はそれ以前の話だった。

 

「ドルマゲスよ……おぬし、人間の友達はおるのか?」

ドルマゲスはただ沈黙を保つと、ライラスからすばやく目を逸らした。

そんなドルマゲスにライラスは続ける。

「ドルマゲスよ……最近世間では30歳を過ぎても童貞な者を『魔法使い』と呼ぶそうじゃな」

「どういう意味ですか師匠ぉー!?」

もちろんそのまんまの意味である。

……こいつ、彼女とかできるんじゃろうか?

『お色気の術』とかやっている時点でかなり望み薄な気はする。

師匠ライラスはその事実を前にそっと目をつむるのだった。

 

 

さて、一方そんなこんなでライラスと知り合ったスラぼうは、体操座りとしけこんだドルマゲスをよそに仲間になったいきさつ、つまり酒場での出来事をライラスに話していた。

「なるほどのぅ……」

ドルマゲスが巻き上げたゴールドの額。それを知ったライラスが末恐ろしいナマモノを見る目で弟子に視線を向けた。

 

……気持ちはわかるよ。

スラぼうとしては苦笑するのみだ。

スラボウの話を聞いていたライラスは、ドルマゲスが決闘を売った所で首を傾げ、カードの書き換え辺りで完全に頭を抱えていた。『下手をすればカジノからポーカーが消えるかもしれんっ』と苦心するライラスを見たスラぼうは、『ああ、普段から苦労してるんだろうなあ』と、悲しい事実にアタリを付ける。

 

ちなみにその当人であるドルマゲスは、いつの間にか体操座りから復活しており、今は心肺機能とやらを上げるためのトレーニングとして、深い呼吸を繰り返している。

どうやら肺の空気を一滴残らず吐き出すのがポイントらしいのだが、呼吸音が煩い。

気になったスラぼうが聞いたところ『火ふき芸の威力を上げるためのトレーニング』だというが……ドルマゲスは一体どこにむかっているのだろうか。

本人曰く『最低でも火炎の息と同等の威力を出せるようになりたい』との事だが、そこまでいくと『芸』とは呼べないはずだ。

どう考えても殺し技である。

 

だがそのトレーンニングはライラスの『ええい、うっさいんじゃあ!』のひと吠えで中断。『会話の邪魔になるから』という理由でライラスがドルマゲスを外に叩きだし、静かなお家が完成する。

そんな中、外へと飛び出したドルマゲスを見たスラぼうは、何となく激しい炎を繰り出すドルマゲスを想像しようとし。……それがたやすく出来る事に衝撃を受けていた。

 

……これじゃあ本当にモンスターだよ!

モンスタードルマゲス。妙にしっくりくるが彼は今の所人間である。

……うん。ちゃんと人間として接しないとね。

モンスターであるスラぼうにそう決心させるドルマゲスは明らかに変人の一種だった。

 

 

一方ライラスによって街へと放たれたドルマゲスは、ポーカーの臨時収入を持って防具の店へと訪れていた。

物色するのはスラぼうの防具。

あのサイズのモンスターでも身に着ける事が出来そうな、頭に付ける防具達だ。

ドラクエ世界の防具は大抵モシャスの派生呪文(秘伝)が組み込まれており、装備する前の見た目を『そのまま』に防具を装備する事が出来る。

その恩恵を受けているドルマゲスは『グラフィックの使い回しェ……』と思いながら、装備の棚を漁りだした。

 

……できれば呪文が組み込まれていない者が欲しいんだがな。

でないとスライム狩りの乱戦時にスラぼうを狩りかねない。

そんな身も蓋も無い事を考えながら防具を物色するドルマゲスは『呪文がない事を理由に値切りが効けばなお良し!』などと考えていた。

 

寒気を覚えた店の主人が不思議そうな顔で辺りを見回すが知った事ではない。

今日は酒場でかなりの時間をかけた。ポーカー勝負に興じたせいで日課であるスライム狩りもまだできていないのだ。

ドルマゲスは早急に防具を手に入れ、スラぼうと一緒に夜の狩りへ繰り出そうなどと考えていた。

 

しかしいい防具はなかなか見つからない。

少しづつ面倒になって来る。

「……いっそ店の店員に聞くか」

そう考えたドルマゲスは素早く決心を固めると、意気揚々と『呪文の無い不良品が欲しい!』と店の主人に宣言したのだった。

 

 

数分後。防具屋を叩きだされた少年を見てトラペッタの街の人は驚きの声を上げ、心配しながらその少年の無事を確かめる。

そしてその少年がドルマゲスだと知った人々は、次の瞬間、何事も無かったかのようにそれぞれのやる事へと戻っていった。

 

 

しかしそんな慣れた様子の、非情とも言える街の人達の中に、一人だけ例外がいた。

それはとある理由により今やすっかり落ちぶれたこの街の有名人。

最近ではすっかり酒浸りとなった占い師ルイネロの娘、ユリマだった。

ユリマの目の前には地面に横たわったまま『今日はよく叩きだされる日だな……。まあそういう日もあるか』と独白するドルマゲスがいる。

 

……これ、なんだろう?

客観的に見て、近寄りがたい物体である。

10歳にもなっていない幼いユリマは近くの木の枝を拾い、おそるおそるドルマゲスをつつくのだった。

「フハハハハハハハ……!」

どうやら木の枝が脇の下に入ったらしい。

結果として脇をくすぐられたドルマゲスが街角に倒れたまま笑い出す。

 

「……お~」

幼い子の完成は独特である。

何がツボに入ったのか、なんとなく気に入ったらしいユリマはドルマゲスの肩をペチペチと叩き始めた。

当然ドルマゲスも黙ってはいない。

タイミングを見計らってガバッと起きたドルマゲスは目を見開いて、ユリマを睨み付けた。

「おい娘。一体何をする……!」

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

ユリマの反応は顕著だった。

「娘ぇ! 貴様、何故そのネタをっ! ハッ、まさか転生者、転生者なのか!?」

もちろんユリマは転生者ではない。急に起動したドルマゲスに驚いただけである。

だが混乱したドルマゲスはユリマと一緒になって騒ぎ出す。

 

その騒ぎを聞きつけたトラペッタの人々は驚いた様子で様子を見に駆け寄り、その元凶がドルマゲスだと知って、何事も無かったかのようにそれぞれのやる事へと戻っていった。

 

 

しかし、無関心な周囲と違い『この娘、前世でネットを見ているな……!!』と検討外れな勘違いをしたドルマゲスは幼いユリマに根掘り葉掘り質問し、真実を聞き出そうとする。

「娘よ……さては隠している事があるな? ……例えばそう、前世の記憶があるとか」

例えばもクソも思いっきり本題だった。

そんな聞きたいこと丸出しの質問に、ユリマはよく分からないと首を振る。

だがドルマゲスは諦めない。穏やかな声音で両手を広げ、危害を加える気が無いとアピールしたドルマゲスは再び質問を繰り返した。

「娘よ……安心するといい。話すと楽になる事だってあるのだ。もちろんここで聞いた事は秘密にすることを約束しよう。さあ、このドルマゲスが君の秘密を聞こうではないか……!」

 

変態である。

 

しかし『秘密』の部分に思う所があったのか。少しの間うつむいたユリマは、とうとう真実を語りだした。

「……あのね、ユリマ、近所のおばちゃんたちが話してるの聞いたの。……ユリマ、お父さんのほんとうの子供じゃないんだって……」

「ゑ……?」

予想外の展開。重すぎる真実……!

ほんとうの家族じゃない。という事がよほど気になっていたのだろう。ユリマは涙目になった目を服の袖で拭っている。

「ユリマね……きっと拾われた子なんだ……」

ドルマゲスの全身には、鈍い汗が滝のように流れてく。

「……あるぇ?」

今、ドルマゲスの良心にかつてない危機が迫っていた……!

 

 

……このままではマズイ!

フリーズしかけた頭でそう判断したドルマゲスは、顔を真っ赤にして泣くのを我慢するユリマにうろたえつつ、とにかく状況を整理しようと頭を再起動させた。

 

……この子供は転生者ではない。……多分きっとメイビーそうだ……!

そんなことよりも困ったのはこの子の複雑な家庭問題である。

ほんとうの親子じゃない。などという重い話が来るとは思っていなかったドルマゲスは、再びこの話題に触れれば傷口に塩を塗り込む事になりかねないと判断。

とにかく目の前の子供をあやそうと、できそうな事を考える。

 

結局ドルマゲスが選んだのは、慣れ親しんだレミーラの光を見せる事だった。

「……ひっく、グスッ。……ふぇ?」

ドルマゲスの手から溢れ出る色とりどりの光。それはポーカー勝負の時と同様に光の三原色を利用したドルマゲスのオリジナル。

ユリマにとっては初めて見る、幻想的な光景だ。

気を取られたユリマの泣きそうになる気持ちが、自然と横道に逸れていく。

 

……ぬぅえいっ!

内心で13歳とは思えない声を上げたドルマゲスは、レミーラをさらに精密操作。

色とりどりだった光を白一色に減らす事で負担を減らし、前世の子供向けアニメーションを劣化して再現。

某ネコとネズミの鬼ごっこをベースに簡単な即興劇を創り上げる。

 

「……うわぁ!」

ネコとネズミの配役は ドラキーとスライムに変更してあるが、おおむねやることは前世のソレと変わりない。道や家屋の壁を跳ねて逃げるスライムを、鬼役のドラキーが空中から狙い、時たま軽く小突き合う寸劇だ。

日の落ていく今の時間帯はレミーラの光を徐々に際立たせ、ユリマの興味を引いて行った。

 

鬼ごっこという単純な構図は子供に受けやすい。

いつの間にか、ユリマは泣く事も忘れて光の鬼ごっこに釘付けになる。そしてそんなユリマのリアクションに引き寄せられるように、気付けば街の人々まで観客となっていた。

 

……ククク。計画通り……!

「色が白一色な事に目をつむれば、我ながら悪くない出来栄えではないか」

ニヤリと笑ったドルマゲスは自身のレミーラ操作術を自画自賛する。

まさか客が増えるとは思っていなかったものの、当初の目的である『泣かせない』という点はコレで完全クリアである。

 

……しかしこの観客の中に、よく見ると幸せそうなカップルがいるな。

ガッデムカップル。

ライラスに『童貞で30を過ぎたら魔法使い』というネタを振られた事も影響していたのだろう。

ついイラッと来たドルマゲスはレミーラを操作し、カップルの方へ突っ込ませた。

しかし悲しいかな。所詮は明かり魔法のレミーラ。

攻撃力の無い光の突撃はちょっとしたアトラクションしかならず、カップルが余計にくっつくという結果を引き起こしてしまう。

光の突撃にざわついた周囲もソレに攻撃力が無いと分かり、演出の一つだと勘違い。

次は何をするのかとドルマゲスに注目する始末だ。

 

彼女を抱き寄せた彼氏の男が親指を立ててドルマゲスにグーサインを示す。

「ぬおぉぉ……!」

小声でドルマゲスは歯ぎしりするが、傍から見ると魔法の制御に気合を入れているようにしか見えない。

観客の中から聞こえて来た『頑張れー』の声に、ドルマゲスは挫けそうになり、そして気が付いた。

 

……待てよ? この寸劇、一体いつ止めればいいのだ?

魔力出しっぱなしの状態に遠隔操作。加えてアクションの再現を継続し続ける現状はドルマゲスにとって結構辛い。

この後、夜のスライム狩りに出ようと考えていたドルマゲスにとって、今の状況は非常によろしくないものだった。

しかし観客は未だに増えていく途中。

果たして彼は演目の終了を許そうとしない観客の間をかいくぐり、自身の自由を取り戻し、日課であるスライム狩り用のMPを確保する事が出来るのか……?

 

 

 

……無理では?

「ぬあぁっ!? そうこうしているうちに残りのMPが半分以下に……!」

MPの回復には十分な休養が不可欠。少なくとも半日はおとなしく休まなければならない。

ドルマゲスの日課は今、かつてない危機に立たされていた。

 

 

それからしばらくの間レミーラ操作を続けたドルマゲスは、日の暮れた街でトリとして彩鮮やかな花火もどきを打ち上げた。

湧きあがる歓声と拍手を受けたドルマゲスはその場で一礼して魔法をお開きにする。

拍手を撃つ観客の中には家で騒ぎを聞きつけたライラスとスラぼうも混じっていた。

 

ライラスは『いつお色気の術が飛び出すか……!』と身構えていた肩の力を抜き、スラぼうは周りから称賛され、拍手を受けるドルマゲスを見てコニコと微笑んでいる。

特にスラぼうは上機嫌だった。

 

……すごいや!

おそらくやれる事をやり切ったのだろう。演目を終えたドルマゲスは力尽きたのか街中に倒れ込んで『終わった……終わった……』と壊れたように繰り返している。

その前には気を利かせたライラスが置いた籠があり、観客だった住人達が次々と小銭を入れていた。

 

傍から見ると道端に寝転がる浮浪者にお金を恵んでいる光景だが、そのお金はドルマゲスが手にすべき正当な報酬である。

「今夜はちょっと豪勢な夕食にしようかのう……しかしこの男、やはり芸人にむいとる」

そう言って苦笑するライラスも弟子の成長を喜んでいるようだった。

「それにしても……ずいぶん稼いだようじゃなあ」

籠一杯のゴールドを見たライラスは感慨深げに呟いたのだった。

 

 

ライラスが感心するよそで、そもそも籠の存在に気が付いていないドルマゲスは、MPが0となったステータスに意気消沈しながら、ゆっくりと気を取り直し、起き上がろうとしていた。

今のドルマゲスにとって気がかりなのは『ユリマが泣いていないか』というその一点のみ。

しかしドルマゲスの中にあった不安は駆け寄ったユリマを見て霧散する。

起き上がったドルマゲスの横では、ユリマ満面の笑みを浮かべていた。

「……どうやらお気に召したらしいな。気は晴れたか」

ユリマにそう聞けば元気な声が帰って来た。

「すごかったよ! とってもおもしろかった!」

この様子なら大丈夫だろう。

そう判断したドルマゲスはゆっくりとユリマに語り掛ける。

「良いか娘よ。家族に血のつながりは関係ない。そうでなければ結婚などと言う制度は存在できんからな。ああ、需要なのは自分がどう思うか。そう、大切なのはノリとテンションなのだ。分かるな? 娘よ……」

今の理屈だと『結婚=ノリとテンションの産物』になるのだが本人も聞いている方もその事に気が付いてはいない。

『よくわかんないけど自分次第って事かな?』と考えたユリマは『大切なのはノリとテンション!』という言葉に力強く頷いた。

「うん! ありがとーおにーちゃん!」

どうやらもう大丈夫そうだ。

そう判断したドルマゲスはバレないようにそっと疲れた息を吐く。

……ふむ。途中から何を言ってるのか分からなくなったが……まあ何とかなったようだな。

安定のドルマゲスである。

 

そんな子供たちの会話を見守っていたライラスは目元を指でも見ながら疲れた声でスラぼうに話しかけた。

「なあスラぼうや。ワシの弟子が今、良い事を言う流れで全部ブン投げた気がするんじゃが……。いや、なんかよく分からんが丸く収まったみたいではあるんじゃがな……? なーんで今ので収まるんじゃろう……」

「ライラスさん。大切なのはノリとテンションだよ……!」

「やはり納得がいかん……!」

 

ユリマに何となく大切なことを伝えたような感じのドルマゲス。

これを解決したと言って良いのか。それともなんとなく誤魔化したと言うべきなのか。

複雑そうな面持ちで悩むライラスを見たスラぼうは、『もうどっちでも良いんじゃないかな』と結論をブン投げる。

 

そんな何とも言えない空気の中、上機嫌のユリマはドルマゲスに微笑んだ。

「そうだおにいちゃん! ユリマと友達になってよ!」

心温まる光景。

ドルマゲスはユリマの提案に驚き、そして頬をかきながら頷いた。

そんなドルマゲスに手を振ったユリマは、続けざまに付け加える。

「ずっと友達だよ! 結婚式には読んであげるからね!」

「……。」

お分かりだろうか。ドルマゲスは今、幼女から言外に恋愛対象外と宣言されたのだ。

ヒクつく笑顔と浮かぶ青筋。器用に仕事をする表情筋の全てがドルマゲスの心情を物語っていた。

 

そんなドルマゲスを見たライラスは呟く。

「魔法使い待ったナシ……!」

恋が始まる前に終了した男。ドルマゲス13歳。

この日の出来事をキッカケとし、街の大きなイベントでレミーラの演出に駆り出されるようになることを本人はまだ知らない。

場合によっては結婚式の演出まで頼まれることを、この時のドルマゲスは『まだ』……知らないのだ。

 

 

 

その日のドルマゲスの夕食は、いつもよりずうっっっと豪勢な内容だった。

 

 




というわけで繰り返しネタ(天丼)多めの回でした。
ネタとしては境界線上のホライゾンやニンジャスレイヤー、トムとジェリーを入れています。
また原作プレイ済みの方はご存知かと思いますがドラクエ8のカジノにはポーカーがありません。
……何故なんでしょうね(ニッコリ)

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