只今、僕が立っているのは大きな門の前。
うん、扉じゃなくて門。久しぶりに見たけどやっぱりでかいよ……
「さてと……」
門の隅にある呼び鈴。そして『園田』と書かれた札。そう、ここは海未の家である。
なぜここにいるかと言うと数十分前のこと……
「はい、響希です」
それは一本の電話だった。
『あっこんな時間にすみません。今大丈夫ですか?』
他人行儀に言ってみたがスルーされました。
「大丈夫だけどどうしたの?」
『実は……そのっ今から私の家に来れますか?』
「今から?」
時間的にまぁ大丈夫だと思う。しかしそろそろ赤みを帯びた空も闇に染まる時間帯だ。
『はい、私個人と言うよりも父と母が……』
「えっ七海さん達が?」
『はい、ぜひお話しついでに晩もどうかと言っていまして……』
「あ~う~ん」
『あの、ダメだったら行ってくださいね?』
「いや、挨拶してなかったし行くよ」
と言う経緯である。
海未の家は昔からある由緒ある名家だ。敷地には道場もあり、お世話になっていた。
呼び鈴が鳴って少しして……門が開いた。
「いらっしゃいませ、響希。こんな時間にすみません」
「構わないよ。海未の頼みだしね」
「では、どうぞ」
門を通り、乗ってきたマシンキバーを駐車させてもらう。そして二人で大きな屋敷内を歩いていると、
「響希、先ほどはすみませんでした」
「何が?」
「その……暴力をふるってしまったことです。恥かしかったとはいえ、あれは私達のことを思ってのことですよね……」
海未は表情を暗くさせ俯く。なるほど恥ずかしかったのか……
「大丈夫だよ。こっちこそごめんね」
考えてみれば恥ずかしがり屋の海未だ。軽くではなく内容を伝えて確認するべきだった。
「どっちかと言うと僕のほうが何か悪いことして嫌われたかと思ってたし」
「いっいえ、嫌いになるなんて……あるわけないですよ……」
「そっか、ならよかった」
「部屋、着きましたよ」
そう言って海未は赤くなりながら部屋の前に行き、ノックをした。
「お父様、お母様。響希を連れて参りました」
「……入りなさい」
中から厳格な、それでいて優しさを帯びた声が響く。海未は扉を開き、僕は海に続くように中へと入った。
そこにいたのはニコニコとこちらを見ている女性と、その隣に風格を遺憾なく発する男性。僕はそのまま二人の前に正座する。
「お久しぶりです、海斗さん。そして七海さん」
海未の母である園田七海さん。そして父であり、一時武芸を教えてもらった園田海斗さんに頭を下げた。
「うむ、大きくなったな」
「ふふふ、そんなに緊張しなくてもいいのよ?」
……僕の母さんもそうだが、貴方達は本当に『自主規制』歳なのですか?
「いえ、帰ってきて挨拶もせず、すみません」
「あらあら、なら言葉を間違えましたね。おかえりなさい、響希君」
「はい」
「さて、堅苦しい挨拶はこれまでにしよう」
そう海斗さんが言った瞬間、厳格な雰囲気が霧散した気がした。気がしただけなんだけどね。
「よく来たな、響希君。元気にやってたかい?」
「はい。これと言った風邪もなく」
「そう畏まらなくてもいい。何ならここをもう一つの家と思ってくれても構わないのだからね」
「あら、なら響希君。私のことお義母さんって呼んでもらいましょうか?」
「お母様!!」
「いいじゃないですか、別に」
海未の注意に七海さんは手で口元を隠し、そして海斗さんを見る。
「近いうちそう呼ぶかもしれませんし……ねぇ?」
「はははっ私は大歓迎だ!!」
「もうやめてください!!」
うん、ものすごくノリ軽いというか、マイペースというか……ちらりとこちらを見る二人。ここは……
「なるほど、そうかもしれませんね」
「えっ響希!?」
「あらあら、これは赤飯をたかないとでしょうか?」
「祝いのために取り寄せをするか?」
「えっ……え、え~~~~~!!!???」
顔を真っ赤にし動揺してる海未に僕達は笑いかけ、
「本当に海未さんは初心ですね~」
「「うんうん」」
「へっ???」
七海さんの言葉に海未は呆け、からかわれたと理解し始めたのか全身をふるわせ、
「響希君の破廉恥です~~~~~!!!!!」
「えっ、僕だけ!?」
顔を両手で覆いながら出ていく海未につい突っ込みを入れる。冗談に乗った僕も確かに悪いけどさ?
「ふふふ、海未さんったら……」
「はぁ、あの恥ずかしがり屋はどうしようもないのだろうな」
「ハハハ……」
「ところで響希君」
「なんでしょうか、海斗さん」
「……まだ娘達にはあのことは伝えていないのかい?」
「……」
あの事、きっとこの身のことだろう。穂乃果達は知らない、僕の事。
「はい……何かと言いながら言い出せる勇気がなくて」
「……海未さん達ならきっと受け入れてくれますよ?」
「そう思ってはいるんですけど……どう取り繕うとしてももし嫌われたらという恐怖のほうが強いみたいなんですよね」
「響希君……」
「大丈夫です。今年中には絶対に伝えようとは思ってるんで」
「そうか……ほら、あの子を追いかけてあげなさい」
「はっはい。失礼します」
僕は二人に断りを入れ部屋を出た。
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「……はぁこればかりは深く踏み込めないな」
海斗はそうため息をつき腕を組む。響希はファンガイアと人のハーフ……いや、父親がファンガイアと言うことは母親である春妃から教えられ、実際見ている。
「海未にも頑張ってほしんだがな……」
「穂乃果さんにことりさん、あと珠紀さんと……ライバルは多いですからね」
「七海、楽しそうだな」
「それは違いますよ、海斗さん。海未さんには自分の力でつかんでほしいだけです」
「それもそうかな」
「では晩の支度を。すぐに用意しますね」
「ふふふ、そこはあの娘のために時間をかけときなさい」
「それもそうですね」
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僕は只今海未の部屋であろう扉の前にいます。ここで変わってないよね?
「海未?」
「……はい」
僕はノックし声をかけると返事が返ってくる。
「……入るけど大丈夫か?」
「……いいですよ」
部屋に入ると荷物は整理され、きれいにされた部屋。簡素だが所々には少女らしい飾りや人形もある。たぶん大概は僕や穂乃果にことりがあげたものだろうけど。
その中央近くの布団の上で海未は人形を抱きしめ、じっと非難を込めた目でこちらを見ていた。
「からかって悪かったって」
「……響希君はいつもそうです。私をからかって何が楽しいのですか……」
呼び方が昔に戻ってる。こりゃ本格的にいじけてるな。
「いや~反応が楽しくて」
「私は楽しくありません!」
ぷいと横に顔を向ける海未に苦笑しながら、そういうとこがいじられやすい原因なんだけどな……と僕は考える。
いつまでも立っているわけにはいかないので海未の近くに座り、今日の本来の用件を聞くことにした。
「で、今日はなんでいきなりぼくをよんだの?」
「……話を変えようとしていませんか?まぁいいですが」
そう言うと海未は懐から1枚の紙を取り出す。僕はそれを受け取り、目を通して……
「……驚いた。まさか1日足らずでここまで作るなんて……」
「ど、どうでしょうか?」
「どうも何も、僕が口出しするようなことがないよ!!いや、逆にここまでのモノを作れるとこに嫉妬しそうだ」
実際作詩をするところは見たことがある。と言うよりしたことすらあった(練習ではあるが)
だが、この短期間でこの完成度。むしろ手を加えればダメになってしまうとすら感じる。
「でも……これならなんで僕は呼ばれたんだ?」
「いえ、作詞はできたのですが……曲名がしっくりくるものがなくて」
「曲名か……」
海未は案を書いた紙を出す。
「一番はSTARTDASHなのですが……」
「う~ん確かに何か足りなく感じるな」
僕達は二人してう~んと頭をひねる。
「『.』を打つのは?」
「それだとなんか終わった感じになるよな」
「では『、』は?」
「英語表記にそれ?かと言って『!』もなんかな……」
次々と案を出していくがどれもこれじゃない、と感じる。
「何が……何が足りないのでしょうか……」
「……あれ?」
僕は案を見て……そして『、』を見る。
「そっか……区切りだ」
「え?」
「いやほら、今まで考えてたのって『.』とか 終止符を表すのばっかだろ?だから……」
僕は紙に『START〇DASH』と書く。
「この丸に当てはまるものを見つけよう」
「はい!」
そうして二人でこれは違う、これだと意味が……と意見を出していくこと十数分。海未が書いた曲名に互いに時間が止まったように感じた。
『START:DASH』
これだ!!そんな感情に僕は海未を見ると、海未もまた僕を見ていた。
「「出来た-----!!!」」
僕達は抱き着くというより、抱きしめあうように叫んだ。
「これだ!!これだよ海未!!」
「はい!!出来ましたよ、響希君!!」
互いにテンションが上がったように喜んでいるとノックが響き、扉が開く。
「二人とも叫んでは近所迷惑ですよ?あと晩の用意が……あらま」
七海さんは腰に手を当て怒ってますよ?というポーズをとっていたが……
うん?どうした……んだ……
自分達の現状→抱き合っている。見ようによっては見つめ合っていた。
「あらあら、お邪魔だったわね~これは赤飯に炊きなおさないと……ではお楽しみにね~」
そう言って口元に手を添え笑顔で扉を閉める七海さん。
…………
「「まってください!!!!誤解ですから-------!!!!!」」
真っ赤になった僕達の叫びが屋敷に響いた。