「いかん、今になって恥ずかしくなってきた……何がひなたさんたちの笑顔も守るさ……」
響希は先ほどのひなたに対するは発言を思い返し、激しい気恥ずかしさに襲われ足早に校門へと向かう。
でも、言ってしまったものは仕方ないし……やれることはやろう。もう……ためらって後悔はしたくない。
響希は一瞬脳裏に浮かんだ過去の映像を振り払うように頭を振る。そして駐車場に止まっている赤い装甲のバイクに近づく。
「来てくれたんだね」
【マシンキバー】響希が父親から受け取ったバイクであり、内部に馬のモンスターの脳が埋め込まれている。そのためか今は持ち主である響希と交信することが出来、無人である程度の走行もできる。
「……誰からも見られてないよね?」
少しだが不安を感じながら響希はマシンキバーに跨り、エンジンを入れるとヘルメットをかぶった。
「さて、行くか」
自然と響希は笑みを浮かべた。約6年ぶりにみんなと会えると。
響希はバイクを発進させると、和菓子屋『穂むら』へと向かった。
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さて、どうするか。あったら何話すかまったくもって考えてなかったよ。
さほど時間をかけることなく穂むらに到着した響希は悩んでいた。
近くにマシンキバーを止め、ヘルメットを外すとメガネの位置を直す。
「ふう、変わらないな」
昔から全く変わってないと現実逃避しながらガラガラと入り口を開けて店内に入る。
そして、
「あらいらっしゃ……」
レジ近くで作業していた女性が顔を上げこちらに挨拶をしてこようとして、言葉を切る。
うん、ひなたさんもそうだが若いな。
「お久しぶりです、夏穂さん」
「も、もしかして響希くん!?」
うん、本当に2児の母ですか?
昔と変わらない夏穂に響希は苦笑し、夏穂は響きに歩み寄ってくる。
「6九年ぐらいぶりじゃない。いつ帰ってきたのかしら?」
「今日です。果穂さんも元気そうで」
「えぇ、娘達にはまだ負けないくらいにね。しかし本当に大きくなったわね」
160程度の夏穂と175ほどの響希。
6年前は見上げていた夏穂を響希は見下ろすほどに身長が伸びていた。
「はい、なんか一気に身長が伸びました」
「ふふふ、でもメガネは相変わらずね。あっ和菓子……饅頭食べる?」
「いただきます」
店側から家の中へと通される。
「少し待ってね?そういえば穂乃果たちに会いに来たの?」
「一応会いに来るって約束してましたし。けどわかってくれるか微妙ですね」
6年近くあっていないから響希自身は覚えているが、穂乃果達は果たして自分を覚えているだろうか?
「大丈夫よ、響希くんのこと
「?まぁ、そうだと嬉しんですけど」
座っている響希に夏穂は饅頭を持ってくるとお茶を用意し、台につく。
「で、響希くんは彼女とか出来たの?」
「彼女ですか?ははは、僕みたいなのがモテるわけないでしょ?」
響希は苦笑しながら饅頭をかじり、夏穂は違う意味で苦笑を浮かべる。
「ならうちの穂乃果はどう?あっ雪穂でもいいわよ?」
「いや、どうって」
響希は苦笑を口元に浮かべたまま、考える。
そして、
「う~ん穂乃果達だけじゃなくて、ことりや海未にも言えることだけど……
好きか嫌いかなら好きって言えるけど……恋とか異性としてというより、「友愛」とか「家族愛」のようなものに近いと思う。
それにあの子達がどう思ってるかにもよるだろうし」
「あらあら、これは脈がないってわけではないみたいね」
夏穂はコロコロと笑い、響希は夏穂のつぶやきに疑問符を頭に浮かべる。
そしてその瞬間、ドアが開く音が聞こえた。
「ただいま~!!」
「「お邪魔します!!」」
そして響く声に響希は懐かしさを覚える。
確かにこちらに帰ってきた。でも、彼女たちの声を聞いて初めて「あぁ、戻ってきたんだ」と実感が湧いたのだ。
「あれ?お母さん、誰か来てるの?」
「穂乃果、お帰りなさい。二人もいらっしゃい。
ふふふ、会ってみたらいいわ」
その声と同時に夏穂に導かれるように穂乃果たちが入ってきた。
穂乃果達は疑問符をうかべこちらを見ると、
「え……」
「……」
「もしかして」
三者三様。穂乃果はポカーンとして硬直し、海未は人見知りで硬直し、ことりは処理が追いつかないのか言葉を失っている。
仕方ない。僕から声を掛けよう。
響希はそう考えると口元に笑みを浮かべる。
「ただいま。穂乃果、海未、ことり」
「えっひ、響希君?」
「うん」
「本当に……響希ですか?」
「そうだってば」
「本当に本当にひーくん?」
「あれ?なんか前に偽物でも来たかのような疑いようだね!?」
あまりの本人確認に響希は頭を抱える。忘れられてなかったが疑いすぎだ。
そう考えていると何故か3人は俯いており、響希は立ち上がり3人に近づいた。
「どうかした?穂乃果、海未、ことり」
「……くん」
「え?」
「響希君!!」
「響希!!」
「ひーくん!!」
つぶやくような声に響希は覗き込むように彼女たちを見る。
しかしそれがダメだった。
響希の名を呼び飛びついてきた3人に響希は不安定な体勢もあり後ろに押し倒され……
ガスッ!!!!
台の角に後頭部をぶつけ、
グキッ!!!!
聞こえてはならない音が3人分の力が加わった首元から響く。
「響希君だ!!!本当に響希君だ!!!」
「響希!!一体いつ帰ってきたんですか!!と言うより連絡もしないで!!」
「ひーくん会いたかったよ~!!!」
感極まってか3人はそれに気づいてはおらず何やら質問などを投げかけている。
しかし響希の意識は薄れて行っており、
あっなんていうかやっぱり女の子って男と違って柔らかいんだな……
と見当違いなことを思い浮かべながら意識を手放した。
「あれ?響希君?
海未ちゃん、なんか響希君泡吹いてるよ?」
「え?響希!?しっかりしてくだい、響希!!」
「わ~ん!!ひーくん死んじゃダメ~~~~!!!!」
3人がそのことに気づいたのは数分後のことだった。
台の角に頭をぶつけ、そのまま3人分の体重がかかったことにより首が悲しみを背負いました。