楽しい時とはあっさりと崩れる。
「う、うそぉー……!?」
「廃校って……」
「つまり”学校がなくなる”という訳ですね……」
昨日の理事長の報告だけでなく、張り紙という形で廃校が明確に示されていた。
「ぁ……あぁぁー……」
「おっと」
ちょうど僕は後ろに居たため、すぐさま倒れてきた穂乃果を受け止める。
意識はまだあるようだが、力は体から抜けてるようだ。
「穂乃果っ!?」
「穂乃果ちゃん!?」
海未とことりも穂乃果が心配なのか声が大きくなる。
「わ、私の…」
「うん?」
「私の輝かしい高校生活がぁぁぁ……」
「……そうだね」
その言葉と同時により一層穂乃果の体から力が抜ける。
「ショックで気絶しましたね……」
「穂乃果ちゃん大丈夫かな……」
「一時的なショックだしね。多分普通通り起きて、夢だと思ったら現実だったってショックを受けるよ」
「なぜでしょうか、ありありとその光景が浮かびます」
「あ、あはは……」
「とりあえず保健室まで運ぼうか」
僕は横から肩を抱くように、そして膝裏あたりに腕を通し持ち上げる。
「保健室の場所教えてくれるかな、ことり」
「「……」」
「ことり?」
ことりは、いや、ことりと海未はじっと気絶する穂乃果を見つめる。
「どうした?」
「いいな……」
「いえ、案内しますね」
何がいいのかわからないが、案内のもと保健室へと穂乃果を運ぶのだった。
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「大丈夫かな?」
「多分大丈夫でしょう」
穂乃果を保健室へと運んだあと、僕たちは教室へと戻ってきていた。
「きっと起きたら夢オチって思ってハイテンションになってるとこに、廃校のポスターを見て気落ちして戻ってくるに一票」
「なぜそこまで的確に分かるのでしょうかね?」
「可能性言ってるだけだよ?」
「でもたいてい当たってるよね?」
「だいたいね」
「……響希」
雑談をしていると海未から真剣な表情で声をかけられた。
「なに?」
「……響希は、こうなるとわかっていたのですか?」
「廃校のことかな?それなら僕が試験生としてなった時点で予想はしてたよ」
「確かに1年も1クラスしかないもんね……」
そう話してるとドアが開き、穂乃果が暗い面持ちで入ってきた。そして席に着くと顔を覆う。そしてガバッと顔を上げると、
「ど〜うしよう!全然勉強してないよ〜!」
「えっ…」
「はぁ……やはりですか」
「穂乃果らしいと言えば穂乃果らしいな」
予想はしてたけど予想を裏切らない結果にお兄さんは心配です。
「廃校ってことは学校が無くなるんだよ!?そうなったら編入試験とかもやらなきゃなんだよ!?うぅ……」
「落ち着きなさい、穂乃果!!」
「海未ちゃんとことりちゃんは勉強できるからいいよ!!響希君だって昔頭良かったし。けど私は……」
「落ち着け、と言うか人の話を聞きなさい。いいな?」
「ちょっと、響希君痛い!!!???」
僕は暴走し続けそうな穂乃果と頭を強引に撫でる。それにより穂乃果はじとーっとこちらを見てきた。うん、これなら聞くだろう。
「穂乃果、廃校になるからと言って今すぐ出て行けと言うわけではありませんよ?」
「え?」
この子は本当に大丈夫か?
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「学校が無くなるにしても、今いる生徒が卒業してからだから、早くても3年後だよ」
「良かった~、いやー、今日もパンが美味い!」
中庭で昼食を取りながら内容を説明すると穂乃果は安心したようにパンに齧り付く。
「でも、正式に決まったら、次から1年生は入って来なくなって、来年は2年と3年だけ……」
「今の1年生は、後輩がずっと居ない事になるのですね……」
「そっか……」
「……」
3人は寂しそうにうつむく。他人のことであろうに、それに憂う感受性。
「大丈夫だよ、まだ確定したわけじゃない」
「響希君」
それは人によっては偽善というかも知れない。でも僕にとって彼女達の美点であり、彼女達たらしめる一つだと思っている。
そんなことを考えていると、
「ねぇ」
こちらに話しかけてくる声が聞こえた。
横目で見ると一目見て分かる程の綺麗な金髪を特徴としたポニーテールの女の子がいた。はて、なんか見たことある顔だ。直接言葉を交わしたことはないと思うが。
「ちょっといいかしら?」
「南さん」
「は、はいっ」
「あなた確か、理事長の娘よね?」
「はい……」
「理事長、何か言ってなかった?」
「いえ、私も、今日知ったので……」
自分が呼ばれるとは思ってなかったのか、ことりは少し声を上擦りながら答えた。
というより娘とはいえひなたさんはそう仕事と私事を混合しない。と言うより私情ですら隠すのが上手い人だ。わかる方が難しい。旦那さんはわかってた感じだったけど。
「………そう、ありがとね」
「あ、あの!本当に学校、なくなっちゃうんですか?」
穂乃果が去ろうとする女子生徒に声をかける。しかし、
「海未」
「どうかしましたか?」
「今更だけど、彼女誰?」
「……音ノ木の生徒会長をやっている絢瀬絵里さんです」
「わかった、ありがとう」
「ちょっと!?いきなり頭撫でないでください!!」
僕が小声で海未は確認すると海は呆れるように見ながら答えてくれた。しかし小声で怒れるとは器用なものだ、抵抗してこないけど。
「それじゃあいきなりでごめんなさいね」
「ほな~」
彼女達はもどるようだ。しかしもうひとりの子はずっと何も喋らなかった。
そう、ただじっとニコニコとこちらを見てて何も喋らなかった。
紫に近い髪、そして緑の……って
「東條さん?」
「おぉ、やっと気づいてくれたんか。久しぶりやね、優月君」
そう言って楽しそうに、嬉しそうに微笑む転勤親?餅仲間である東條希との再会だった。