審判者の帰還   作:悔恨の囚人

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虚しさを抱え

 ガブラスはかつての宿敵─シャントットとの闘いの余韻に浸っていた。

「終わった…だが、かつての宿敵もいずれは蘇る。神を消さぬ限り俺は報われない」

 ガブラスがそう呟くと、背後から女性の罵声が聞こえてきた。ガブラスはゆっくりと振り返る。そこに居たのはプリッシュだった。

「お前は誰だコノ野郎ッ!」

 ガブラスはプリッシュを見ると鼻で笑いながら呟く。

「貴様は魔導士の連れか…魔導士は私が倒した」

プリッシュはガブラスの言葉に表情を硬くしガブラスを睨み付ける。

「だが安心しろ、どうせ蘇る。輪廻の続く限りな」

「なっ…何言ってんだ!? 蘇る? 死んだ奴が生き返る? ふざけんな畜生!」

 プリッシュは拳を構えながら激昂する。それを見て、心無しかガブラスの表情に笑みが浮かぶ。

「私が憎いか? その憎しみ神龍にも分けてやれ」

 ガブラスはカオスブレイドとハイウェイスターに分離させをプリッシュへと刃を向けた。

「さあ、俺を憎め! そして復讐を果たすがいい!!」

 プリッシュは後方へ宙返りしながらガブラスとの距離を取ると、突進を仕掛けて来る。ガブラスは突進を避けると、二本の剣を振るいプリッシュへと攻撃する。

「チッ…外した!」

 プリッシュは迫り来る剣を見てすぐさま身体を捻り裏拳でガブラスの攻撃を弾く。

「ぐっ…」

 ガブラスはプリッシュの思わぬカウンターに呆気に取られた。プリッシュはその隙を突き体勢を整えガブラスへと距離を一気に詰め拳をガブラスへと叩き込む。

「夢想阿修羅拳! 飛んでけ!!」

「ぐああああ!!」

 ガブラスはプリッシュの連続攻撃を食らい、秩序の聖域に点々と置かれている純白のオブジェに激突する。プリッシュは有無を言わさずガブラスの方へと向かって走り出す。

 ガブラスは剣を支えにして立ち上がると、もう片方の剣を薙ぎ払うように振るう。すると、そこに巨大な竜巻が起こる。

「足掻き苦しめ!」

「なにっ!? うわあああ!!」

 目の前に突然現れた竜巻にプリッシュは対応し切れずに突っ込んでしまう。竜巻に吹き飛ばされた先には灰色の鎧を身に纏う男─ジャッジ・ガブラスが二本の剣の柄頭を合わせ構えていた。

「いつの間に!?」

 プリッシュは空中で体制を立て直す。しかし、その時は既に遅くガブラスのイノセンスの準備は出来ていた。

「命尽きよ! イ″エ″ア″ア″ア″!!」

ガブラスは二本の剣を振るい真空の刃をプリッシュへと飛ばした。勿論プリッシュは避ける事は出来ずにダメージを受けてしまう。

「貴様の力はこの程度か!」

 ガブラスは虚しくて堪らなかった。今まで決着が着くことの無かった者との闘い。決着の着かないこと、決着の着く前に戻されてしまう事が虚しかった。しかし、今は違った。決着の着いてしまった事によって、ガブラスは自分のすべき事が見えなくなったのだ。

 プリッシュは息を切らしながらボロボロの身体で立ち上がる。プリッシュが顔を上げると、ガブラスの持つカオスブレイドが突きつけられていた。

「くっ…」

「己の無力さを憎む事はない。お前はただ私を恨めばいい」

ガブラスはプリッシュを見つめながら淡々と話す。

「私は魔導士と戦う事を運命付られた戦士だ。私はその使命を全うしただけだ。貴様もそのハズだ。違うか?」

「……」

ガブラスの問いにプリッシュは無言のままガブラスを睨み続ける。

 ガブラスはゆっくりと剣を構えたその時だった。

「…なあ」

 プリッシュが口を開いた。

「何だ」

「蘇るって、何だよ…アイツは…シャントットは本当に蘇んのか? 俺も…」

ガブラスは剣を下ろし、プリッシュの問いに答えた。

「カオスとコスモス、混沌と調和の闘争が終わらん限り輪廻は続く。記憶もやってきた事も全て消えてな」

「じゃあ…何でアンタは…」

「野良犬の言葉に耳を貸すだけ愚劣だ」

プリッシュは小さく嘲笑すると立ち上がった。

「野良犬って…何だよ」

ガブラスは再び剣を構えた。

「憎むがいい!」

ガブラスの剣がプリッシュの身体を一閃する。そして、空間が引き裂かれ爆発を起こした。

「裁きの剣よ!!」

 

 

 

 

 ガブラスは誰も居なくなった秩序の聖域に一人残された。ガブラスの胸は締め付けられ、苦しかった。何故、彼女の言葉に耳を貸したのかガブラス本人も分かってはいなかった。

「人は過去からは逃れられん…」

ガブラスが呟くと目の前に再びゆらぎが顔を出した。

 ガブラスは苦しみと虚しさを胸にしゆらぎへと入って行った。


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