リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;)  IFルート   作:先詠む人

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お待たせしました。
今回はかなり長いです。20000字いってます。
それではどうぞ!!


第15話 覚醒・目覚める鬼と王

「ここからは第2ラウンドだ!!」

 

 某果実の武者のセリフをパロって叫んだ後に、俺は格好(カッコ)つけて体を斜にする感じで音撃棒を構えた。

 

 すると、アレディさんが変身したクウガが

 

「どうやら1つ、覚醒したようですね」

 

 と言ってきたので、

 

「ああ、やられっぱなしにはならないぜ」

 

 と返しながら俺は左手に握っている吽形の方の音撃棒をドラマーがスティックを回すように一回転させた。すると、

 

「ならば私も…水よ!我と共に清めん!」

 

 アレディさんがそう言ったのと同時にアークル(ベルト)の中央部分にはめ込まれている霊石(アマダム)が赤から青へと染まり、背後の海から水がこちらへと噴き出してきて、アレディさんが変身したクウガ を包み込んだ。

 

 その光景を見て

 

「んな!?」

 

 と、模擬とはいえ戦闘中に俺は驚いてしまった。

 その理由はいたって単純で、アレディさんが変身している仮面ライダークウガがその姿(フォーム)を変える光景が俺が知っているものと違っていたからだった。

 

 俺が知っているクウガのフォームチェンジは、腰にはめられたアークルの中央にはめ込まれているアマダムの色が変わるのと同時に、そこを起点として体の各所の色が変わっていくものだった。

 

 しかし、今目の前で行われているフォームチェンジはそれと全く違うプロセスを経ていた。

 

 そうやって俺が驚いている間に、アレディさんがフォームチェンジする過程で生まれた水製の繭がはじけ跳び、その中にいたアレディさんの様子が分かるようになった。

 先ほどまでアレディさんが変身していたクウガは、格闘家のように体の要所要所を守るためだけの軽装の赤い装甲をまとっていた。しかし、今のアレディさんは先ほどの赤いクウガよりもさらに軽装の青い装甲をまとった姿に変わっていた。

 しかし、俺の驚きはそれだけにとどまらなかった。

 

「(なんで専用武器(ドラゴンロッド)がすでに展開されてんだよ!!?)」

 

 アレディさんの手には俺の知識ならば細い棒状のものを掴んでからじゃないと手に入らないはずの専用武器のロッドが握られていた。だが、アレディさんは先ほど繭を弾き飛ばしてから一度も細い棒状のものを持ってはいない。だから、本来ならばその武器は手元にないはずなのだが、実際問題アレディさんはそれをもって構えていた。

 

 しかし、俺の驚きを無視して戦況は進んでいく。

 

「マジかよ!?」

 

「参る!」

 

 俺が目の前で繰り広げられた光景を見て心に思ったことをそのまま叫んだのと同時に、アレディさんはドラゴンロッドを振りかざしながらドラゴンフォームが一番優れているスピードを生かして迫ってきた。

 

「っ!?」

 

 左から横に一閃するかのように振り払われたロッドの一撃を俺は両手に持つ音撃棒を交差することで防ぐ、あるいはそらしてから後方へと下がってアレディさんへと烈火弾を撃とうとしていた。だがその行動に効果はなく、俺は後方へと吹き飛ばされた。

 

「がはっ!?」

 

 吹き飛ばされ、何の受け身も取れないままに地面にたたきつけられたことで肺から空気が強制的に吐き出させられる。

 

「(な、なんでだ……)」

 

 一瞬酸欠状態になってぼーっとする頭を無理やり動かし、即座に起き上がろうとするも、何故か俺の体は30分間休みなしで走り続けた後にそのまま25Mシャトルランをやらされた状態のように動いてくれなかった。

 

「(まだ、この戦闘訓練を初めて10分もたってない。ダメージを受けたとはいえサッカーでキーパーやってた時のものと比べたらそこまでひどいものも受けてない。だからまだ普通に動けるはずなのになんでだ!?)」

 

「(最低でも響鬼に再変身するまでは普通に体力はまだあった。なのにここまで体が動かなくなるなんて一体全体どういうことなんだ?)」

 

 そこまで考えながらなんとか起き上がったところでアレディさんが再び迫ってきて

 

「はあ!」

 

「ぐああ!!」

 

 俺はドラゴンロッドによる猛烈な突き攻撃を喰らい、そのまま地面を転がりながら変身が解けた。

 

「(やべ……転がるのを止めることすらできねぇ…)」

 

 変身が解けてもなお、先の突き攻撃の威力で転がり続けた俺を見て

 

「お兄ちゃん!」

 

「お、おい隼人、大丈夫か!?」

 

 玲奈と天龍さんが俺のもとへと急いで駆け寄ってきた。そのタイミングで仰向けになる形で回転が止まって、俺はそのままかすむ視界の中で二人が駆け寄ってくるのをただ見ていた。

 

 二人がこちらに駆け寄ってきてから俺は

 

「あ、ああ…けど、体がすっごく言う事をきかねえ」

 

 とやっとの思いで答えると、

 

「きかないのは当然です」

 

 そう言いながらアレディさんが近寄ってきて俺の上半身を起こすと背中に手を当てて

 

「我が霊力よ。かの者に癒しを…」

 

 と唱えた。すると、背中に当てられている手から何かが俺の体の中に流れ込んでくるのを感じたのと同時に体中から疲労が抜けていく感じがした。

 

「どうですか?」

 

 俺が急に体が軽くなったことに呆然としているとアレディさんがそう声をかけてきた。

 

「あ、はい、さっきまで感じてたのが無くなりました」

 

 俺は半分呆然としながらそう返すと、まだ少し震える手でヘルメット外した。それから天龍さんと玲奈に支えられてどうにか立ちあがったところでさっきの模擬戦で感じた疑問をつい口に出してしまった。

 

「さっきのはなんでだ?今まで変身した時は重みなんてなかった筈なのに…」

 

「それは隼人殿…あなたが霊力を過剰に放出したからですよ」

 

 その疑問に対してアレディさんはすぐに答えてくれた。だけど…

 

「過剰に放出?」

 

 俺にはそのあたりが理解できなかった。だから今度は炎に包まれてマイティフォームへとフォームチェンジしたアレディさんに聞いてみると

 

「ええ、あなたは私の霊力を吹き飛ばす為に自身の霊力を放出しました。しかしあなたはそれに慣れていなかったので霊力の放出を限界ギリギリまでやってしまい、先ほどの状態になりました」

 

 と教えてくれた。そしてそのまま「これを……」と言いながら某忍者漫画とかに出てくるような兵糧丸みたいなものを俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

 と、受け取ってから聞いてみると

 

「師匠直伝の霊力回復を促進させる薬です。苦いでしょうがそれを飲んでください。昼には霊力も回復しますでしょう」

 

 とのことだった。正直「(苦いのか…)」って思い、いやな気持になったけれども、これを食べるのが早く回復するには必要だと割り切って口に放り込んだ。

 

「(に……苦ぇ……)」

 

 口に放り込んでそれを噛みしめると最初に草のような味が口の中全体に広がったかと思った次の瞬間青汁を数十倍に苦くしたかのような苦みに襲われる。

 

 それを我慢して無理やり喉の奥につばと一緒に飲み込んでから、俺はライドブッカーからあるカードを取り出した。

 

「(変身はできたけど完全じゃないのかよ…)」

 

 取り出したカードは響鬼のもので、カードの絵柄こそ復活していたがその色はカラーではなくセピア色になっており、俺はそう思いながら顔をしかめたところで

 

「修練は昼からまたやりましょう。その間は休んでおいてください」

 

 と、アレディさんが声をかけてきたのだが

 

「あ、はい…で、なんで変身を解いてないんですか?」

 

 そのアレディさん自身が未だに変身を解いていなかったので気になって聞いてみた。すると

 

「隼人殿とやる前に生身での修練を行ったので今度は変身しての修練を行う所です」

 

 といった返事が返ってきたので

 

「な、成程…ちなみに朝やった練習は?」

 

 その修行熱心なところに若干引きながらも、少し気になったことを尋ねてみた。すると

 

「拳立て伏せを1000回やってきました」

 

 とのこと………ん?なんかいろいろとおかしな箇所があるような……って

 

「せ、1000回!?しかも腕じゃなくて(こぶし)!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

 先のアレディさんの発言を自分の中でかみ砕いて理解しなおしたところでおかしいと思った箇所に気付いて玲奈と一緒にツッコんでみると、

 

「事実してるな」

 

「してますね」

 

 天龍さんと変態吹雪がそう答えたから俺は唖然とすることになった。

 しかし、玲奈はそこで止まれなかったらしく

 

「え、ホントこの人何者!?」

 

 と、さらにツッコんだ。すると、

 

「人間の域を超えてる人」←天龍

 

「艦娘顔負けの実力持ちなのになんで提督にならなかったのか不思議な人ですね」←吹雪

 

「ド強いす…(こほん)仲間よ!」←ハーケンさんとこのビスマルク

 

「ハーケンさんと成すウチの鎮守府に欠かせない人です~」←ハーケンさんとこの榛名

 

「掌底が上手い人ニャ」←ハーケンさんとこの多摩

 

「零児提督と共にドMを作るのが上手い奴よのう」←ハーケンさんとこの初春

 

「魚とりが上手いくま」←ハーケンさんとこの球磨

 

「チョー真面目ボーイでガンス」←ハーケンさんとこの霧島

 

 って全員が返してき………ヲイ

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!?後半おかしい!後、ハーケンさんの所の霧島!?なんか口調おかしい!?会った時はそんなんじゃなかったよな!?」

 

 俺は後半の意見、特にメガネが外れて目が3の字になっている霧島に対して激しくツッコんだ。しかし、そんな俺に対して霧島は

 

「ぎゃあぎゃあ騒ぎ過ぎじゃないかな思春期ブラコン好かれボーイ。そんなんだと疲れちゃうぞ」

 

 と呆れた表情で肩をすくめながら返してきたが、それどころじゃねぇって!!

 

「騒ぐよ!と言うかホントにどうした!?」

 

「また霧島の眼鏡外れてるくま!」

 

「何時の間にか外れたにゃ」

 

「ちょっと榛名!またあなたのシスターが眼鏡外れてド暴走してるわよ!」

 

「あ、すいません!霧島、眼鏡!」

 

 俺の残り少ない体力すべてを燃やして行ったツッコみで漸く周囲も霧島に起きている異常事態に気付いたらしく、球磨に続いて多摩がぼやき、ビスマルクに言われて榛名さんが慌てて霧島にメガネをかけなおさせた。

 

「………」

 

 メガネをかけなおさせられた後、霧島はしばらく固まって…

 

「色々とすいませんでした」

 

 といきなり土下座してきた。

 

「どう言う事?」

 

 この急展開についていけていなかった玲奈が尋ねると、

 

「あー、なんかハーケン提督の霧島って眼鏡外れると性格と言うかキャラが陽気でめっちゃ明るい感じに変わっちゃう様でさ」

 

 と、天龍さんが教えてくれた。だけど、

 

「……ハーケン提督の所の艦娘、変わり者多くね?」

 

 正直そんな感想をおぼてしまったのは当然だと思う………。

 そうやって、結局体力が回復しないままに騒いでいると、

 

「隼人提督、少し聞きたい事がある」

 

 と、言いながら狩牛羅元帥が歩いてきた。

 

「あ、はい!何でしょうか?」

 

 俺がその声掛けに姿勢を正しながら返事をすると、

 

「貴様が着任している鎮守府を教えてほしい。我の情報網で探し出しておこう」

 

 そんなありがたいことを言ってくれたので俺は

 

「え、あ、ありがとうございます!お、私の鎮守府は呉の方にある『暁に勝利を刻む鎮守府』です」

 

 即座に反応してから自分の鎮守府名を言った。すると、何か納得したような口調で

 

「ほう…そうか、やはりあやつが言ってた奇妙な提督は貴様だったか」

 

 そう漏らしたから俺は

 

「え?どう言う事ですか?」

 

 と、聞いてみると

 

「貴様、数か月前に横須賀鎮守府に世界と時間を超えて来たとそこに所属しているあきつ丸や憲兵、そして元帥に話したであろう?そこの元帥とは知り合いでな、貴様の事を教えて貰っていたのだ。もしも我の知る範囲での鎮守府に来た場合のサポートをして欲しいと言う事でな」

 

 とのことだった。そのありがたい言葉に対して俺は驚きを隠せなくて、

 

「そ、そうだったんですか…(そういえばそんなこともあったな………)」

 

 半分別のことを考えながそう呟いた。

 

「とにかく、見つかったら連絡をするので待っててほしい」

 

 俺が考え込むような顔をしているのに気付いたのか、狩牛羅元帥はそう言って俺の肩をたたいた。

 

「あ、ありがとうございます(その時がどれ位になるかとか俺が戻るのとかしちゃった時どうしよう…)」

 

 肩をたたかれたことで漸く声をかけられたことに気付いた俺は慌てて礼を言ったが、それと同時に今度は別の不安を抱いた。

 

「(あ。そういえば春雨ちゃん…。)」

 

 そして、不安を抱いたところで俺はあることを思い出した。粒子となって消えていく俺のことを縋るような目で見る桃色の髪の少女のことを。

 

「そう言えば元帥。その時、私は乱暴されかけた春雨を助けたんですが…その春雨はその後はどうなったんでしょうか?」

 

 そこで俺は何の気なしに聞いてみた。多分この人なら知ってるだろうと思ったからだった。

 

「………」

 

 だけど、俺がその質問を言った直後に狩牛羅元帥はその顔をしかめた。その様子に俺はすごい嫌な予感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その予感は的中する。

 

「貴様が助けた春雨は…轟沈した」

 

「………え……?」

 

 今何て言った?

 ごうちん…………ゴウチン………郷鎮………豪鎮………轟沈……ごうちん………

 

 俺は目の前にいる狩牛羅元帥の言葉を頭の中でうまく変換できずに完全に固まっていた。

 

 そんな俺に追い打ちをかけるかのように狩牛羅元帥は

 

「………隼人提督に助けられた後、春雨は配属し直された鎮守府にてどんな窮地でも死に物狂いで切り抜けた艦娘として第一艦隊の旗艦を任される程の実力を付けていった…だが、とある海域での作戦の際、未知の深海棲艦と遭遇、その際の開幕での魚雷にて大破…普通ならば撤退出来るのだが彼女たちの艦隊の背後に戦艦棲姫が迫っていると言う本来ならばありえない上位種同士による挟み撃ちと言う状況に追い込まれた。その際、彼女は大破した体で止めようとした艦隊を逃し…上位種2体により轟沈した…それが報告されて来た彼女の最後だ」

 

 そう続けたが、その話している内容の半分も俺は理解できなかった。……いや、理解したくなかった。

 

 だけどそれは変わらない事実であって、ようやくそれを理解したとたん俺の中で

 

 

 コワセ……コノ認メラレナイ現実ヲ、全テヲ!コワセ……………コワセ!!!!!

 

 

 何か黒いものが俺の中のどこかから沸き上がり、抗うことなくその黒い感情の奔流に身を任せそうになった……その瞬間だった。

 

「岡本隼人提督!!」

 

 いきなり呼ばれたその言葉に無意識のうちに反応して顔を上げたのと同時に俺の視界が拳で埋まった。…と認識した次の瞬間、鋭い痛みとともに俺の体は右側へと吹き飛ばされた。

 

「ガッ!!?」

 

 吹き飛ばされて一瞬意識が跳び、地面に後頭部が叩き付けられた際に発生した痛みで思考がクリアになった。

 

「ちょ!?何するのよ!?」

 

 思考がクリアになったことで周囲を認識できるようになった結果、顔を殴られたことで反射的に出てきた涙でかすむ視界の中、玲奈が狩牛羅元帥にそう抗議するのが見えた。

 

「貴様が今するべき事は春雨の轟沈に嘆くことか?それともその深海棲艦へと復讐する事か?否!!貴様の今やるべき事は家族や仲間を守る為に己が持つ力へと向き合い、そして鍛えて行く事!嘆いている暇があるなら轟沈した春雨の為にも他の者達を守るのが彼女への弔いではないのか!!」

 

 しかし顔を真っ赤にして抗議する玲奈を無視し、狩牛羅元帥は鬼気迫る表情で俺の方を向いてそう言った。

 

「………そうですね……すいません。頭に血が上ってました」

 

 俺はその表情の狩牛羅元帥をみて、自分がさっきまでまたおかしくなっていたことに気付き、謝罪した。

 ズキズキと痛む左ほほを抑えながら立ちあがり、頭を下げる。

 

「それでいい…我も先ほどいきなり殴ったのはすまなかった。だが、そうしなければ貴様は種族関係なく殺す事に戸惑いもしない無慈悲な修羅になっていただろう」

 

 そんな俺の様子を見て狩牛羅元帥は安心した様子でそう告げた。

 

「(修羅………か……。)」

 

 俺はその言葉を聞いて今の自分の拳に、中学時代に起こした事件で血まみれになった自分の拳を重ねながら心の中でそう呟いた。

 

「隼人提督。貴様の精神は言わば1つ間違えれば割れやすいガラス細工に近い。家族に何かあれば自分の事をたやすく捨て去る程の感情。だが、貴様もまた〝提督”として〝守りし者(仮面ライダー)”としても、感情に流されるなとは言わん。だが、その感情を制するのもまた戦う者の大切な事だ。肝に銘じておくのだ」

 

「……はい、ご忠告ありがとうございます」

 

 俺に自分が持っている力のことを自覚させるかのように強調する狩牛羅元帥の言葉を俺は肝に銘じながら頭を再び下げた。

 

 そして視界の端の方で玲奈を見て、記憶の中から今はほっぽちゃんになった少女のことを思い出す。

 もし自分がただ敵を倒すだけの存在となり果ててしまったならば、それは二人のような存在すら何も感じずに殺してしまうFateで言う守護者のような存在だと思う。

 

 そうなってしまったらもう俺という存在は終わっているだろう。そこにいるのはただ機械のように深海棲艦を殺すだけの存在だ。

 そして、それは玲奈やほっぽちゃんの例からしてあり方を間違えている。

 

 だからこそ、俺は自分を見つめなおしてさっき肝に銘じたことを心に刻んだ。

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、ハーケンさんを除いてこの場に集まっていた人たちは各々の理由でこの鎮守府を去って行った。

 

 

「では、玲奈殿、お互いに精進しましょう」

 

「ええ!やってやるわ!」

 

「イエース!頑張りましょう!」

 

「ふふ、やろうではないか」

 

 そして今、俺の目の前ではクウガに変身したままのアレディさんが玲奈や大和、そして武蔵と対面して各々構えている。

 

「では、始め!」

 

 その場にいた全員が準備を終えていることを確認した赤城さんの掛け声とともに砲撃が始まりそれをアレディさんは避けたり、腕で弾いたりしていた。

 

 そんなアレディさんたちの様子を見ながらも、俺は何となくポケットからセピア色の響鬼のカードを取り出して見つめていた。

 

「(『鍛えてますから』がある意味での代名詞だった響鬼だから、鍛えれば変身できるようになるって思ってた。だけど、そうじゃなかった。)」

 

 俺は覚えている限りの仮面ライダー響鬼のシーンを思い出しながら物思いにふける

 

「(重要なのは肉体(からだ)じゃない、精神(こころ)だったんだ………)」

 

 そこまで考えたところで俺はその場に寝転がって空を見上げた。

 

「だけど精神を鍛えるとしてもな…」

 

 精神を鍛える。その方法で俺が思いつくのは座禅程度だった。そのために俺は何をすればいいのか全く分からず、袋小路へと思考が突入してしまっていた。

 

「隣良いか?」

 

 そんなときに空と俺との間を遮るかのように天龍さんが顔を差し込んできた。

 

「いいですよ。」

 

 正直色々と考えることが多くなりすぎたせいで一度考えをリセットしたかった俺は、その申し出を受け入れ、体を起こした。

 

「色々と大丈夫か?」

 

 天龍さんが俺の横に座り、俺が体を起こしてから数分後に天龍さんがそう聞いてきた。

 

「まぁ…色々と考えてます」

 

 俺はそう答えるしかできなかった。すると天龍さんは一瞬遠い目をしてから

 

「隼人、お前は轟沈させた事あるか?」

 

 悲しい質問をしてきた。俺はその質問に対して玲奈の方を見ながら

 

「………従弟に勝手に弄られてあいつを…」

 

 と答えるのが精いっぱいだった。いまだにあのことは俺の中でもうまく呑み込めていない。。

 結果的に深海棲艦。初めて出てきたイベントで巻き起こした惨劇のせいで悪夢とか言われている〝レ級”となって玲奈は帰ってきたが、それでも俺は………

 

「なら俺よかマシだな…艦これを始めた当初…俺は2人も轟沈させちゃったからな…まだ分かり切ってなくて雷と加古をな…」

 

 吐き出すように言った俺の言葉を聞いて、天龍さんも遠い目をしながら俺を慰めるかのようにそう言った。

 

「それでも、轟沈させたのは変わりないですよ」

 

 だけど、俺が直接その指示をしたわけではないとはいえ、DMMに登録したときに自分に建てた〝不沈”の誓いを守れなかった時点で俺の罪なのには変わりない。

 

 

 

 と、ここまではシリアスな内容だったのだが…

 

「ちなみに実はと言うと俺はゲームでの所属はブルネイだ」

 

「………え?」

 

 天龍さんのその一言でシリアスがどこかへと飛んで行き、俺はあっけにとられた。

 

「え?ここ、ラバウルですよね?」

 

 現在地の再確認をしたくて俺がそう尋ねると、

 

「うん。そこは疑問に思ってるけどもうリアルだし考えるの止めてる」

 

 との答えが返ってきたから

 

「(それは止めちゃあかんような…)」

 

 と、俺はさっきよりも遠いどこかを見つめている天龍さんを見ながら内心そうつぶやいた。

 

「(……話変えなきゃやばい…かこれ?)」

 

 天龍さんの様子を見てそう思った俺が話のタネを必死に探していると、腰の方に着けられた懐かしいものを見つけた。

 

「そ、そう言えばあのDアークも妖精さん製ですか?」

 

 その懐かしいものの名称はDアーク。T字型の手のひらサイズの機械で、デジモンテイマーズという結構昔にやっていたアニメの主人公たちが持っていた道具だった。

 

「ああ、正式名称もBアークだ。主に艦娘専用にされたのと考えればいいぞ。オリジナルと違ってこのキャンセルのカードで付加したのを消して元に戻す感じだ」

 

 俺のその質問に対して、天龍さんはBアークと、たくさんのカードの束を俺に見せながらそう答えた。

 

「へぇ~ちなみに使い方は?」

 

「この液晶画面に艦娘を映して、その後にこの艦娘が描かれたカードをスラッシュする事でカードの艦娘の力を付加させるんだよ。例えば雷巡じゃない五月雨に向けて北上改二のカードをスラッシュすると北上改二の力を付加させて開幕雷撃なんか出来る様になるんだ」

 

 俺がその機能に感心し、使い方を聞いてみると天龍さんはそれも教えてくれた。そんな風に会話していると、こちらにラバウル所属の六駆の4人が歩いてきた。

 

 それを見て天龍さんは

 

「どうせだし見てみるか?暁、ちょっとこいつにBアークのを見せたいからやらせて貰っても良いか?」

 

 と、俺の方を向いて尋ね、

 

「あ、天龍さん。良いわよ~レディーに任せなさい」

 

「その次は私にね」

 

 その様子を見ていた暁は胸を張りながら、響はその被っている帽子を深くしながらそう答えた。

 響鬼が答えるときに見せた様子を見て、何故か背中がゾクゾクッとするような嫌な予感がしたのは気のせいだろう。……たぶん。心当たり無いから。

 

 そんな風に独り相撲をしていると、天龍さんが暁にBアークの液晶画面を向けて

 

「行くぞ…カードスラッシュ!ビスマルク!」

 

 そう言って、ビスマルクの写真が描かれているカードをBアークに通した。すると、光がBアークから暁の方へと飛んでいき、暁の全身を包み込んだ。

 

 そしてその光は暁の全身を包み込むと、今度は体、腕、足の順ではじけ飛んでいき、そのあとにさっきまで暁がいた場所にいたのは……

 

「あの、天龍さん。1つ聞かせて貰っても良いですか?」

 

 俺はその光景を見てまず最初にそう言った。

 

「聞きたい事が大体わかるけど、なんだ?」

 

 そんな俺の発言に対して苦笑しながらも天龍さんは聞き返す。

 

「んじゃあ…艤装とか纏うの分かってたけど…なんで身長とかスタイルも変わってるんですか!?後、服装も!」

 

 さっきまで暁が立っていたところにいたのはビスマルクのように高身長……というか、スリーサイズ含めて顔と髪の色以外ビスマルクな暁らしき女性だった。

 

「妖精さん曰く、付加するならば分かり易い方が良いとの事、ちなみに身長のは後で追加されて付加される艦娘の意思でそのままでいられるとの事」

 

「スリーサイズと服変化は最初からデフォなのかよ!?」

 

 そんなむちゃくちゃな機械の効果を聞いて、血を吐くように俺は叫んだ。しかしそんな俺に対して

 

「ふふん。戻るまでの間は暁は立派なレディーよ」

 

 と、暁はその大きくなった胸をたゆんと揺らしながらむふんとした。

 

「(………元のままならこれ小さいビスマルク……あれ?そういえばそんなコンセプトの短編マンガ横須賀の方であったよな…)ゲホッ…」

 

 な~んて、暁の様子を見ながら軽く血を吐き、俺はそう思った。

 

 そんな俺の様子に目もくれずに、天龍さんは今度は響の方を向く。そして、

 

「んじゃあ、響は…カードスラッシュ!日向!」

 

 と言ってからカードを読み込ませ、今度は響が光に包まれた。

 光がはじけると、そこにいたのは日向と同じ大きさにまで成長し、そして航空戦艦である日向の艤装をまとった響が立っていた。

 

 それを見た瞬間、俺の頭の中には様々なイメージが流れ込んだ。

 

 猫耳をはやして俺のズボンを引き下ろそうとする今のように大きくなった響

 

 黒い下着をはためかせながら夜這いをかけに来る大人サイズの響

 

 俺の体のあちこちを蠱惑的な視線を向けながら嘗め回す大人サイズの響

 

「でっかい響…う、頭が…」

 

 俺は無意識のうちに額に手を当てながらそう呟いてしまった。

 

「え?なんか大きい響に悪い思い出でもあるのか?」

 

 そのつぶやきを天龍さんは聞き取ったらしく、俺にそう尋ね。

 

「ある意味失礼だな」

 

 響はほおを某貯金のリスのように膨らませてぷくーっとさせて拗ねていた。

 

 そこで天龍さんが響を慰めていると、

 

「はいは~い!次は私ね!」

 

 と、雷が元気よく言い

 

「えっと、この流れだと電もやる事になるんでしょうか?」

 

 ちょっとおどおどしながら電もそう言った。

 

「なるんじゃね?カードスラッシュ!榛名改二!」

 

 その電の言葉を聞いてからすぐに天龍さんは雷に向けてカードを読み込ませる。

 すると、雷の姿はハーケンさんとこの榛名のように大きく育ち、そして

 

「へへっ!頼ってもいいんだからね!」

 

 元気そうにそう言った。その姿に俺は雷香の嫁入り姿を連想して

 

「なんだろう…凄く、目から涙が」

 

 娘を嫁に出すおやじの気持ちになって涙が止まらなくなった。

 

「ホントお前はどういう日常過ごしてるの…カードスラッシュ!扶桑改二!」

 

「なのです」

 

 完全に情緒不安定になっている俺を見ながら軽く引いた天龍さんは、今度は電に向けてカードを読み込ませた。

 

「航空戦艦となった電の本気を見るのです」

 

 そして、扶桑サイズへと成長した電があの扶桑型のでかい艤装をぶんぶん振り回してから両の拳を胸の前に引き寄せるようにそう言った。

 

「すっごいですね…こう、実際に見ると…」

 

 俺がその様子を見ながら思ったことをそのまま言うと、

 

「まあな、ちなみに重ね掛けも出来るけど、その場合はスタイルは変わらないで服と艤装とかが変わる」

 

 実はすごいように見えて案外中途半端であることが分かった。

 

「なんですその一部分変わらない所」

 

 それを聞いて俺はえーと口を半開きにしながらそう呟く。

 

 そこまで話してからは、天龍さんと二人並んでキャピキャピ楽しそうにしている六駆のみんなの様子を黙って見ていた。

 

「(平和だな……)」

 

 俺がそう思いながら見とれていると、

 

「なぁ、あいつ等元気に笑ってるだろ?」

 

 急に天龍さんがそう声をかけてきた。

 

「?ええ、そうですね。普通の人間の様に」

 

 その質問の意図がうまくつかめずに俺が思ったことをとりあえずそのまま返すと、

 

「ああやって笑っていられるのはここがそう言うのが出来るって事だからな」

 

 天龍さんは感慨深そうな顔をしてそう言った。

 

「………そうですね」

 

 俺は天龍さんが言いたいことが何となくわかったからそれに同意する。

 

「人間はホントに怖いって再確認させられるよな…自分とは違う種族や考えられない力を持っていると忌み嫌って迫害する。リアルでもそこは変わんないからきついもんだよな」

 

 アレディさんと一緒に模擬戦をしている玲奈の方を見ながら出たその天龍さんの言葉は人から艦娘になったことで得たものなのだろう。

 俺もその考え方自体は昔から持っていたからよくわかった。

 

「確かに」

 

 あくまでもこれは自論だけど戦争っていうのは結局は人間のエゴが露出しただけなのだろう。

 それがこの世界では人間のように見えるが人間ではない存在が目に見える敵としてあるからそこまで至らない、いや、至れない人が多いだけで……

 

 俺はそう思いながら天龍さんのその言葉に同意し、うなずく。

 

 すると、天龍さんは

 

「だからこそ、そう言う心とかを守って行きたいと俺は思うよ」

 

 と、俺の方を向いて言ってきた。

 

「心か…」

 

 その言葉に俺はあるライダーを思い出し、そう呟きながら腰につけたままだったライドブッカーからあるカードを取り出す。

 

 何も描かれていないカードの下の方に書かれている文字は〝KIVA”。

 人と敵勢力の間に産まれた主人公が人の心の音楽を聴き、そしてそれを守るために戦ったライダーだった。

 

「(そうだよな…俺も…守りたいから仮面ライダーとして戦うんだ)」

 

 カードを見ながら再び俺がさっき考えていたこと決意しなおすと、

 

「ああ、そういや隼人は神通や春雨の姿をした…と言うか2人が深海棲艦になった姿の深海棲艦を知ってるか?」

 

 唐突にそんな問いを投げかけられた。

 

「春雨は知ってますけど…姿の神通の深海棲艦がいるんですか?」

 

 

 大学を襲われて以来ネットで深海棲管のゲームで確認されている種類を何度か調べたことはあったが、春雨ちゃんそっくりな深海棲艦(恐らく轟沈後春雨ちゃん)の駆逐棲姫(通称わるさめちゃん)しかレ級を除いて艦娘にそっくりな深海棲艦はいなかった。

 

 だからこそ、その天龍さんの言葉に驚いてそう返すと

 

「ああ、いるんだよ。一応気を付けておいた方が良いぞ」

 

 と、恐らく警告を兼ねた言葉が返ってきた。俺はその言葉に相槌を打ったのだった。

 

 それからとりとめのない話をしていると、間宮さんがご飯ができたと呼びに来た。

 

「よし、行くか。」

 

「そうですね。おーい!!!はよ食堂行くぞ!!」

 

 俺が天龍さんと一緒に立ち上がって模擬戦を未だに元気続けていた玲奈たちの方に向けて叫ぶと

 

「呼びましたか?」

 

 と、赤っぽい茶髪を肩甲骨ぐらいまで伸ばしたおっとり系の緑色のセーラー服を着た女性がいきなりそう言いながら歩いてきて、

 

「あ……」

 

 と、固まる俺を見るなり

 

「用がないのに呼ぶなんて………海の藻屑となりなさいな!」

 

「ヘブッ!!」

 

 怒りに震えた表情で俺の頬を全力で張り飛ばした。

 

 

 

 そんな軽い問題があったものの無事に玲奈たちと合流し、一緒に食堂の方へと向かった。

 食堂の方につくと、

 

「へ?」

 

「うそっ!!!」

 

「お?」

 

 ………大量のそうめんが準備されていた。

 

 繰り返す。()()()そうめんがとんでもない大きさのボールに入れられてテーブルの上に鎮座していた。

 

「朝とえらい違いだ……」

 

 俺がそうぼやくと、割烹着を着た妖精さんがどや顔しながらやってきて、

 

「おまえ!今朝!!たりなそうなかおしてた!!!だからほんきだした!!!!」

 

 と言って、間宮さんの方に走り去っていった。それを視線だけで追うと、その先には笑顔の間宮さんがこちらに手を振っていた。

 

「……いや、だからってこれは……」

 

 俺は玲奈が持ってきてくれた出汁入りの容器を片手にボールの前に立ってぼやいた。

 

 結局、数分ほど考えてから、

 

「ふぅー、よし。気合い!入れて!!食います!!!」

 

 俺は片手を腕まくりしてから勢いよく箸をボールの中に突き刺した。

 

「「ひぇーーーー!!!!私のセリフ取らないでぇーーーー!!!!」」

 

 変態次女の悲鳴が聞こえた気がするが気にしない。

 

 ………今はただ、この意識を目の前のそうめんに!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局食べきれずに困っていたら、赤城さんと加賀さんのブラックホールコンビに目の前であっという間に食べられてしまった…………。

 

 俺情けね………

 

 

 

 大量のそうめんを食べ終えてから数十分後、俺とアレディさんは再び変身した状態で向かい合っていた。

 

「では、再開しましょう」

 

 と、声をかけてきたアレディさんに

 

「はい!今度こそ行かせて貰いますよ」

 

 そう返事してからあるカードを取り出して顔の前で斜めになるように構える。

 

「(俺は皆の音楽を守りたい。その為にも…俺に力を貸してください!)変身!」

 

 自分勝手な理屈かもしれない。だけど、それでも!!!と、俺はそんな祈りを込めてから俺はディケイドライバーにそのカードを叩き込んだ。

 

<KAMENRIDE!KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 カードが読み込まれる。

 姿が一瞬灰色のガラス質の何かに包まれる。

 そして、そのガラス質の何かがはじけ飛ぶと……

 

「(キバって…行くぜ!!!)」

 

 俺の姿はディケイドから蝙蝠と、裏モチーフとしてジャック・オ・ランタンが使われている両肩、そして右足を(カテナ)で拘束された鎧姿へと変じる。

 その鎧の名前はキバ。そして、その姿を指す名前は仮面ライダーキバ。

 

 俺もアレディさんも構えたまま動かなかった。

 そして、どこかでピチャンッと水がしたたり落ちた。

 

「参る!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その瞬間、俺とアレディさんは変身したことで強化された聴覚でその音を聞き取り、同時に動き出した。

 お互いにパンチを高速で繰り出し、それを互いに相殺し合う。

 

「(このままじゃじり貧だ!!)ならこれだ!!!」

 

<FOAMRIDE!KIVA・GARULU!!>

 

 俺は膝蹴りを繰り出して一瞬間合いを稼ぎ、その刹那に新たなカードを読み込ませた

 すると、それまで黄色だった目が青へと変じ、左肩につけられていた鎖がはじけて荒々しい鬣のような装飾が姿を見せる。

 そして、それまで赤かった胸の装甲の色が青く変じたところでオオカミを模したような彫像がどこかから飛んできてこの手に収まった。

 

 俺のその様子を見てアレディさんも

 

「水よ!我と共に清めん!」

 

 の言葉とともに軽装の青い戦士、ドラゴンフォームへと姿を変えた。

 

 そして、再び距離を詰める。俺はその手に持った彫像を変形させて剣へと変えて荒々しい剣筋で振るった。

 

「はっ!」

 

「むん!」

 

 そうして振るわれた剣、ガルルセイバーの一撃をアレディさんはその手に持つ棒、ドラゴンロッドで受け止める。そしてそのまま打ち合いが数合続いた。

 

「この!」

 

 このままじゃらちが明かないと判断した俺は、狼の彫像の口部分に仕込まれているギミックを開放して衝撃波でアレディさんを吹き飛ばす。

 すると、吹き飛ばされた方のアレディさんは

 

「!舞え霊気の水龍よ!!」

 

 の言葉とともに水でできた龍をこちらに向けてはなってきた。俺はそれが着弾するまでの間に新たなカードを読み込ませる。

 

<FOAMRIDE!KIVA・BASSHAA!!>

 

 すると今度は緑色の彫像が飛んできて右手に収まり、それに続いて目が緑色へと変じるのと同時に右肩の鎖がはじけて魚のエラのような意匠の装飾が出てくる。

 そして、胸の色が青から緑へと変じたところで俺は右手に収まった彫像を変形させて銃へと変えた。

 

 右手に収まっている銃を構えながら迫ってくる龍を避け、そして照準を合わせて撃つ。

 すると、水でできた弾がアレディさんめがけて複雑怪奇なコースを描きながら跳んでいく。

 

 そんな俺の攻撃に対してアレディさんは

 

「風よ!我と共に射ぬけ!!」

 

 との言葉とともに今度は風に包まれてその姿を三角が目立つ鎧を身にまとい、そして大きなクロスボウのような銃を持った姿へと変えた。

 

「天馬覇皇嵐!」

 

 そして俺の放った攻撃をジャンプすることで避け、そのまま嵐のようにこちらへ向けて風でできた矢を放ってきた。

 

「(やば!ペガサスフォームとか避け切れるわけねー!!)うええ!?」

 

 情けない悲鳴を上げながら俺はその手に持った銃、バッシャーマグナムで迎撃しようとするも慌ててしまったせいか、数発撃ち漏らした。

 

 そのまま打ち合いに発展したが、超感覚という半ばチートすぎる能力を持っているペガサスフォームに銃撃戦で勝てるわけがない。

 だから、応戦しながらも俺は3枚目のカードを取り出して読み込ませる。

 

<FOAMRIDE!KIVA・DOGGA>

 

 今度は両方の肩の拘束が解け、両肩、胸、両腕が頑強な鎧のようなものへと変わる。

 そして、最後に目の色が紫色へと変わったところで握りこぶしのような意匠を持つハンマーを両手でつかんだ。

 

 ハンマーを手に持ち、飛んでくる風の矢を意ともせずに勢いよく突っ込み、致命傷になりそうなものだけをハンマーで弾く。

 

 すると、このままだと接近戦になり、今のままだと分が悪いと判断したのか

 

「地よ!我が刃となって切り裂け!」

 

 との言葉とともに今度は地面から湧き上がってきた岩に覆われ、その岩ごと吹き飛ばそうとして迫る俺の目の前に金色の刃の大剣を持ったアレディさんが上から突っ込んできた。

 

「はあ!」

 

 俺はその言葉とともに両手で握っているハンマー、ドッガハンマーを全力で振るう。

 

「でやっ!」

 

 その振るわれるハンマーをその両手で握る大剣、タイタンソードで弾きながらその際にできたエネルギーを使ってアレディさんも斬りかかってくる。

 

 大槌(ハンマー)と大剣。どちらもパワー系の武器であり、その使い手同士が戦うとすればそれの勝敗を決めるのは技術を除けば体力勝負となる。

 

 

 

 

 そして、先にバテたのは俺だった。

 

「(両手が………きつい!?)」

 

 いくら変身して身体能力が果てしなく上がっているとはいえ、元々かなり鍛えられているその道のプロと、力を手に入れてまだ日が浅い元一般人。

 高質量同士の武器の打ち合いとなると、それまでに積み重ねてきた経験がものをいう世界となる。

 

 その結果、経験から体の使い方をきちんと抑えているアレディさんに対して、がむしゃらにハンマーを振るっていた俺の方が先にバテたのだった。

 

「くそっ!!」

 

 そんな俺の体の状態に対して小さく毒を吐き、俺はドッガハンマーを勢いよく地面にたたきつけてアレディさんとの距離を無理やり稼いだ。

 

 距離を稼ぐとすぐさまカードを取り出して読み込ませる。

 

<KAMENRIDE!KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 もう一度、基本フォームに戻り俺は淵など所々が黄色いカードを取り出してドライバーに放り込んだ。

 

<FINAL ATACK RIDE…………KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 その音声とともに勢いよく両手を開いて腰を落とす。

 俺がその体勢をとるまでの間に世界は闇に覆われて、月だけがこの闇の世界の中で光った。

 

 その様子を見てアレディさんも炎に包まれてマイティフォームへと姿を変える。そして力をためるかのように腰を落とした。

 

 俺はそんなアレディさんの様子を見ながら右足を勢いよく踵落としをするかのように振り上げる。

 すると、右足に巻かれた(カテナ)がはじけ飛んでその中に隠されていた3つの光る緑色の宝石が埋め込まれた蝙蝠のような大きな羽をもつ赤い装飾が露出する。

 

 カテナが解放されたところで俺が左足を少しまげて高いところへと飛ぶ頃には、アレディさんは炎に包まれて力をため込んでいた。

 

 そして、俺は月を背後に背負ってアレディさんへと必殺のキックを叩き付け………

 

 

 

 

 ることはかなわなかった。

 上から下へと叩き付けるかのように高速で落ちる俺に対して、下から飛び上がる形で必殺のキックを放ってきたアレディさんのキックは俺のキックがかすったのに対して完全に俺の胸をとらえた。

 

 胸の蹴られた場所で封印エネルギーによって大爆発が起こる。

 

 そして煙をくすぶらせながら俺はコンクリートが露出している地面へと落ちていき、アレディさんはそんな俺と対照的に華麗に着地した。

 

 さかさまになった世界の中で俺はポケットから零れ落ちてきた完全に色が戻った響鬼のカードを見つつ、

 

「(まだまだ、色々と覚えなきゃいけないな……)」

 

 そんな思いを抱きながら頭を下にした体勢で鈍い音を立ててコンクリートへと落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お…ぃ…ん……駄目!!」

 

 そう何かを叫びながら白い少女が俺を突き飛ばす。

 その少女の顔は何故か影になっていて見れなかったけれどどこか懐かしい感じがして………

 

 …………それでいて悲しいという気持ちがこもったような声をしていた。

 

 そして俺を突き飛ばした少女の体は右横から飛んできた3つの鋭い物体によって突き通され、壁に縫い付けられる。

 

 貫かれた際に飛び散った血が俺の顔に大量にかかる。

 

 真っ赤に染まった視界の中で俺を突き飛ばした少女が白い肌の女性たちにリンチされている。

 

 そしてその少女は左腕をもがれ、もがれた腕とともに俺がへたり込んでいる方へ投げ飛ばされる。

 

 …………そこまでの流れを俺は何故か他人事のように見ていた。

 

 光が消えかけている少女の灰色の目と俺の目が合う。

 少女は俺の様子を見て何故か安心したように「よかった……」とつぶやくと、その体を起こしてぼろぼろになっている手につけられた砲塔を構えようとする。

 

 しかし、こちらの方にまで歩いてきた黒い髪の女性はそんな少女の必死の抵抗に対して顔を蹴り飛ばす形で応じる。

 

 そして、

 

「死ニナサイ。」

 

 その言葉とともに黒い髪の女性はその背後に召還したなにかから大量の砲弾を俺をかばうかのように立つ少女へと放った。

 

 少女は「させません!!!」と叫んでからこちらを向いて、体を引きずりながらまるで自分自身が最後の盾であると言い張るかのように俺を抱きしめる。

 

 少女の体に砲撃がすべて直撃する。

 必死に俺を守ろうとするかのようにその痛みに耐える少女のすぐ目の前で、まるでその意思をあざ笑うかのように砲弾の破片は俺の額を切り裂き、血が流れる。

 しかし、少女は必死に俺を抱きしめる。かろうじて見えたその表所は、自分の身を犠牲にしても俺だけは守るという意思を感じさせた。

 

 

 

 大量に放たれていた砲撃が止まる。

 俺を抱きしめていた少女はすでに体中血まみれになっていた。

 

 そして、黒い髪の女性がこちらにやってきて、何かを目の前の少女に言う。

 そして、彼女のことをあざ笑うかのような表情を浮かべながら彼女の頭に砲口を当てて撃とうとした瞬間、視界が急に動き出す。

 

 一気に彼女のもとへと駆け寄り、そして彼女をお姫様抱っこしながらかける。

 

 しかし、彼女は俺のその行動を止めるかのように俺の腕をたたく。

 そして片目もなくなって、血まみれになっているというのに「 」「 」「 」「 」「 」と、口を動かしてそのまま光の粒子となって消えていく。

 

 それに縋るかのように必死に俺が手を伸ばしても彼女を掴むことはできない。

 

 そして、その光の粒子ですら完全に消えた…。

 

 

 

 その瞬間世界が真っ暗へと変じて大量のイメージを流し込まれた。

 

 血のように紅いオレンジ

 

 白っぽい銀色の髪を振るって暴れる何か

 

 泣き顔のまま凶剣によって貫かれる玲奈

 

 そんな膨大な量のイメージを流された俺が最後に見たのは、大量の返り血を浴びたのか鏡に映る血まみれの鎧武の姿だった………。

 

 そしてその鎧武は鏡に手を突っ込んで俺の首へと手を伸ばしてきて………

 

 

 

「うぁあああああ!!?!!?!?!?!!??!」

 

 俺は叫びながら目覚めた。

 

「はぁ………はぁ…………何かとてつもなく洒落にならないものを見てた気がする…。」

 

 目覚めた俺に先ほどまでのイメージは残されておらず、体中が汗でべたべたするせいで俺はそう呟くしかなかった。

 

「ん?」

 

 ふと、額に触れた手が汗でぐじゅぐじゅに湿った布の感触を得た。

 

「布がまかれてるって……包帯か何かか?」

 

 そんな独り言を言いながら立ちあがり、少し離れたところにある鏡で自分の状態を確認するために俺は歩き出した。

 

 やけに、体が重たいことを気にしながら鏡の前に立つ。そこに写っているのは本来なら黒髪黒目の少し彫りが深い平均的な男子大学生のはずだった。

 

「……なんでさ。」

 

 しかし、鏡の前に立って俺はそう呟いてしまった。

 その理由は黒髪だったはずの髪が一部くすんだ銀色へと変わっていた上に、左目が赤く染まっていたからだった。

 赤く染まっているといっても充血しているわけじゃない。虹彩の本来ならば黒く染まっているはずの箇所が赤くなっていた。

 

 

 …………そう。まるで()()()()のように………

 

 

 

 

 そんな感じで俺が鏡に映った自分の姿を見て呆然としていると、

 

「あ、起きられたんですね。」

 

 と言いながら明石が部屋に入ってきて、俺は反射的に構えた。

 

「あ……アハハ……。その拳を引っ込めてもらえませんか…。ちょっと怖いんで…。」

 

 そんな俺の様子を見て恐怖におびえるかのように明石は頬をひきつらせたが、即座にそう言ってこちらに歩いてきた。

 

「はい、包帯を変えさせてもらいますね。それといくつか質問がしたいんですけどいいですか?」

 

「あぁ。それは構わないけど……というか、俺の体一体どうなってんの?」

 

 俺の額に巻かれた包帯を変えながらそういう明石に俺は逆に尋ね返した。

 

「それでは岡本さんはどこまで記憶を覚えてますか?」

 

 尋ね返した俺に、明石は包帯を変える作業を行いながらそう聞いてきた。

 

「アレディさんとキックで競り負けて頭から落ちたとこまで……ですわ。」

 

「そうですか……。じゃあ、やっぱりあのことを覚えてはないんですね。」

 

「あのこと?」

 

 何やら含みがある言い方をした明石の反応が気になった俺はそう聞いてみた。すると、

 

「えぇ、岡本さんは本当に人間ですよね?親が片方艦娘なんてことはないですよね?」

 

 と、よくわからない質問をしてきたから

 

「当たり前だろ。なんでそんなこと聞くんだ。」

 

 と、言い返した。そんな俺の反応を見て明石さんは

 

「でも、頭が割れて瀕死の状態になっていた岡本さんに高速修復材を慌てた五月雨さんがかけたことである程度傷がふさがりましたし……」

 

「え……………?」

 

 とんだ爆弾発言を落としてきた。

 

「いいですか?岡本さんはさっき模擬戦の最後の方で頭から落ちた際に額は割れ、恐らく首の骨も数本折っていたと思います。それは、あなたが落ちてから起き上がらずに痙攣して泡を吹いていたからです。そこで私たちが急いで駆けつけていたんですが、私たちが到着する前に五月雨さんが遠征帰りに通りかかってあなたに引っかかって転びました。その時に五月雨さんが持っていたバケツがあなたに被るように中身がぶちまけられて、全てあなたにかかったんです。本来ならば、艦娘以外にはバケツの中身の修復材は効力を発揮しません。ですが、あなたは修復材がかかった直後に一瞬光ったかと思うと、瀕死だったはずのあなたは額に少しだけ切り傷が残った程度まで回復していました。私はその光景をすぐそばで見ていたので何が起こったのか知りたいんです。」

 

 俺が唖然としている間に明石はマシンガンのごとく言葉をつらつらと並べたが、俺は

 

「(首折れてた?いや、それ俺死んでね?)」

 

 一番最初に言われた言葉の衝撃が大きすぎて全然話を聞いていなかった。

 

「そこで………って話聞いてませんね。怒りますよ?」

 

「あ、ごめんごめん。で、なんだって?」

 

「もういいです。質問動向よりも先に血を取らせてもらいます。」

 

「………は?なんで?」

 

「ちょっと気になることがありましてね?」

 

 そう言うなり、明石は俺の腕を動かないように強引に固定して注射器を俺の静脈に何の予告もせずに差し込んだ。

 

「!?!??!?!?!!?!!?!?!?!!?!??」

 

 当然何の心構えもできてないから俺は悶絶することになる。

 

「はい、結構取れました。これだけ取れればいろいろ調べれますね~♪」

 

 楽しそうにそういうと、明石はスキップをしながら俺の血が入ったかなり大きめの注射器を片手に部屋から出て行った。

 

「クゥッ!!ガァ!!!!」

 

 そして、部屋には注射器を刺された箇所を左手で抑え、痛みに悶え狂う俺だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、ようやく痛みが引いてきたことで普通に呼吸ができるようになった俺はそのまま憔悴しきった状態でベッドに倒れこんで寝た。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、起きて。」

 

「んん~。」

 

 肩を優しく揺さぶられて目を開けると、心配そうに俺の顔を見る玲奈がいた。

 

「玲奈か。………俺の目、怖くないのか?」

 

 一瞬玲奈から視線を外してみた外はまだ暗く、もし俺の左目が深海棲艦のものと全く一緒になってしまっているのならば赤く光っているはずだ。

 

 そう思って玲奈に聞いてみると、

 

「お兄ちゃんの目はいつも通り優しい目だよ?どうしたの?何かあったの?」

 

 そう言いながら玲奈は俺を抱きしめた。

 

 ふと、抱きしめられた玲奈の肩越しに鏡みたいになっている窓に俺の姿が映っているのに気づき、そして映っているものに驚いた。

 

 窓に映る俺の姿は、()()()()()()()()()()のものに戻っていた。

 

「え……」

 

 そんな俺のつぶやきが俺に抱き着いたまま眠ってしまった玲奈の寝息以外何も音がしないこの部屋に響いた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?戻ってますね?何があったんですか?」

 

 翌日の朝、結局玲奈をベッドに入れて、近くにあったソファで朝を迎えた俺は明石の驚きの声に起こされた。

 

 そんな明石に対して

 

「知らねー。」

 

 とだけ返して俺はソファから立ちあがって伸びをした。

 

「そういえば、岡本さんの血液をしかるべき研究所に調査を依頼しました。恐らく数時間後には結果が出てると思うんで……って今結果きました。相変わらず早いですね~。結果見ます?」

 

 俺が伸びをしている間に一人百面相をした明石はそう言ってから持っていた携帯端末を俺に差し出した。

 

「見ます?って勝手に人の血液抜いてやりたい放題してるみたいだなオイ。」

 

 俺は差し出されたその端末をひったくってから報告書と書かれているそのデータを見た。

 

「………おい、これどう言うことだ?」

 

 その報告書を読んでいるうちにその中のある箇所に信じたくない言葉が書かれていた。

 

 《該当者(以下甲とする)の血液からDNAを鑑定したところ、以前採取することに成功した深海棲艦のDNAそして数名の艦娘と酷似した箇所を発見。甲は何らかの原因で深海棲艦ないしは艦娘に近い存在になっている可能性が高い。当研究所としては貴君のところにいるであろう甲をサンプルとして我々に譲ってもらいたく思う。》

 

「(……待て待て。どういうことだよ……。それにこの文の最後。『甲をサンプルとして我々に譲ってもらいたく』ってどう考えても俺を実験動物扱いじゃねーか!!!)」

 

「……どうしました?あ、それと早くその端末を私に返してくれませんか?」

 

 俺が端末をもって固まっているのを見かねた明石は俺から端末をひったくり返して読み始めた。

 

 明石がそれを読み始めた瞬間、俺はその横を駆け抜けて部屋から飛び出した。

 

「どれどれ~……いや、ありえないでしょ。あそこの研究所の爺さんも耄碌したのかな~。ってあれ?岡本さんどこに行かれましたか?」

 

 明石が部屋の中で爆笑しながらそんなことを言ってるとは露知らずに……

 

 ただ、足の向くままに部屋から飛び出して非常口の扉を蹴破り、そのまま外へと飛び出した。

 

 ………そう、文字通り”()()”出した。何もない空中(そら)へ。

 

「(あ、これまたアカンやつ…)」

 

 そんな考えとともに俺は地面へと4階相当の高さから地面へと落下していった……………。




感想、評価を楽しみにしています。

別の世界観の艦これのお話
『お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!』もよろしくお願いします。

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https://novel.syosetu.org/89125/
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