異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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オルエーニュ渓谷

 

 部屋の中に用意されている大きな木箱の中には、俺が愛用しているLMG(ライトマシンガン)が2丁も入っている。旦那が俺のために端末で生産してくれた、ブルパップ式LMGのSaritch308LMGだ。強烈な7.62mm弾を連射できるLMGで、銃の後ろの方には250発も7.62mm弾が入るでっかいヘリカルマガジンが装着されている。長い銃身にはブローニングM1919重機関銃のようなバレルジャケットが装着されていて、その銃身の下にはロケットランチャーのRPG-7が装備されている。キャリングハンドルの上に装着されているのは折り畳み式の対空照準器とアイアンサイトだ。

 

 他の皆のSaritch308は銃剣が装着できるんだが、俺とカレンの銃は銃剣が装着できないようになっている。特にカレンのSaritch308は中距離射撃用だから、彼女に敵を接近させないようにしなければならない。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「ん?」

 

 木箱の中から愛用のSaritch308LMGを2丁取り出そうとしていると、後ろで自分のマークスマンライフルを準備していたカレンに呼び止められた。

 

「地下墓地は狭い場所だし、他にも道具を持って行かないといけないから、そのLMGは片方だけにしなさい」

 

「ええッ!? 片方だけぇ!?」

 

「当たり前でしょ?」

 

 確かに他にもつるはしとかスコップを持って行くことになるから、あまり武器を多めに持って行くわけにもいかないな。

 

 俺は左手に持っていた方のLMGを仕方なく木箱の中に戻すと、代わりに木箱の中からレベッカちゃんの店で購入してきたアサルトマチェーテとナックルダスターを取り出し、ベッドの上に置いておいたリュックサックを拾い上げた。

 

「あ、こいつも持って行こう」

 

 そう言いながら、俺は木箱の中に入っていた銃剣とショットガンを拾い上げた。旦那に生産してもらったポンプアクション式のショットガンのウィンチェスターM1897トレンチガンだ。銃身には俺のLMGと同じようにバレルジャケットが装着されている。

 

 地下墓地ならば、ショットガンが有効だろう。もしいきなり魔物が襲いかかってきても散弾ですぐに吹っ飛ばしてやる事が出来るからな。しかも俺のショットガンには銃剣が装着されているから、接近されたらすぐに反撃する事が出来る。

 

「大丈夫なの?」

 

「おう。重装備には慣れてるんでな」

 

 背中にリュックサックを背負った俺は、後ろを振り返りながら返事をした。カレンはまだ準備をしている最中らしい。

 

 俺たちがこれから向かうのは、ネイリンゲンの西の方にある『オルエーニュ渓谷』という場所だ。あそこには飛竜の巣が多く、冒険者たちが何人も返り討ちにされている危険地帯になっている。

 

 俺はテーブルの上に置かれている渓谷の地図を凝視した。冒険者が発見したという地下墓地への入口はオルエーニュ渓谷のほぼ中心にあるため、おそらく飛竜の群れを突破する羽目になるかもしれない。対空戦闘では俺のLMGとカレンのマークスマンライフルの独壇場だろう。7.62mm弾ならば飛竜の外殻も貫通できるから、命中させられれば次々に撃墜する事が出来る。

 

 それに、昨日はカレンから射撃を教えてもらってるからな。

 

「ところで、地下墓地にはもう誰か入ったのか?」

 

「それが、地下墓地に足を踏み入れた冒険者たちは全滅しちゃったらしいのよ」

 

「ということは、全く情報がないということか」

 

 おそらく、地下墓地に生息しているのはスケルトンやゾンビだろう。もしかしたらゴーレムもいるかもしれない。

 

 テーブルの上の地図を凝視していると、後ろで準備をしていたカレンがカービンのAKS-74Uを拾い上げてからこっちにやってきた。準備は終わったらしいな。

 

 彼女のAKS-74Uにはサプレッサーと消音グレネードランチャーのBS-1が装着されている。マガジンは金具でもう1つのマガジンを繋げたジャングルスタイルになっているようだ。旦那の端末が武器と一緒に用意してくれる弾薬は、最初に装填されている分と、再装填(リロード)5回分だ。だから、マガジンをジャングルスタイルにして使うと3つということになる。

 

「食料と水も持って行った方がいいわね。長くなるかもしれないわ」

 

「大丈夫だ。3日分の食糧と水があるし、足りないと思ったら渓谷で食材を調達して行けばいいだろ」

 

 渓谷には魚も生息している筈だから食料になるし、飲み水も手に入る筈だ。

 

「よし、行こうぜ」

 

「ええ」

 

 俺は部屋のドアを開けると、カレンと一緒に屋敷の階段を駆け下りた。階段を下りてから裏口のドアを開け、塀の近くにある物置へと向かう。

 

 物置の中からスコップとつるはしを引っ張り出し、リュックサックの中に突っ込んでおく。もしかしたら棺を探すために穴を掘ることになるかもしれないからな。あと、ロープも持って行った方がいいかもしれない。ランタンも持って行こう。

 

 薪割り用のトマホークも置いてあるけど、アサルトマチェーテがあるから大丈夫だろう。レベッカちゃんに作ってもらったアサルトマチェーテは、普通のマチェーテよりもでかいし分厚いから、トマホークみたいに魔物の頭を叩き割る事が出来るからな。

 

 黒いダスターコートを身に着けて、つるはしやスコップが突き出たでっかいリュックサックを背負った俺は、まるで冒険者や探検家のような姿になっているだろう。物置の外に出ると、カレンが俺を指差しながら「傭兵じゃなくて探検家みたい。あはははっ!」と笑っていた。

 

 ロープを腰に下げた俺は、物置のドアを閉めてから馬小屋の中に停めてあるサイドカー付きのバイクを引っ張り出す。そういえば、旦那がそのうちバイクとか戦車を停めておくためのガレージを裏庭に作りたいって言ってたな。

 

「それじゃ、運転お願いね」

 

「はいはい」

 

 カレンがサイドカーに乗り込んでからバイクの上に乗ると、俺はバイクのエンジンをかけて草原に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 草原では魔物に何回か遭遇したんだが、出来るだけ早くオルエーニュ渓谷に辿り着きたかったし無駄弾を使うわけにもいかなかったから、途中で遭遇したハーピーやゴブリンは無視してバイクを走らせ続けた。

 

 でも、オルエーニュ渓谷の近くにある村に辿り着いたのは午後8時だ。夜中に渓谷や地下墓地に突入するわけにはいかないので、俺たちは近くの村で宿をとることにした。

 

 村の入口でバイクから下りたカレンと俺は、宿屋の看板の近くにある路地にバイクを停めておくと、宿屋の中へと足を踏み入れた。最近は色んな依頼を引き受けていたから、財布の中には一番いい部屋で1ヵ月くらい宿泊できるくらいの金額が入ってる。

 

「いらっしゃい。2人かい?」

 

「ああ。一泊で頼むぜ」

 

「はいよ。部屋は同じでいいかい?」

 

「どうする?」

 

「構わないわよ?」

 

 カレンは同じ部屋でも構わないらしい。屋敷で生活している時も同じ部屋だしな。問題ないって事か。

 

 俺は腰に下げていた袋の中から銀貨を8枚カウンターの上に置いた。カウンターの奥にいる初老の店主は俺が出した銀貨を拾い上げると、微笑みながら俺に部屋の鍵を渡してくる。

 

「よし、部屋行こうぜ」

 

 店主から鍵を受け取ってカレンと一緒に階段を上り始めると、宿屋の入り口のドアが開いたのが見えた。俺は手すりを掴んだまま立ち止まると、ドアの向こうから宿屋の中に入ってきた奴らを凝視する。

 

 宿屋の中に入ってきたのは、レザーアーマーや金属製の防具を身に着けた男女たちだった。背中には大剣や弓矢を背負っている。中には魔術に使うための杖を持っている少女もいるようだ。

 

「冒険者かしら?」

 

「多分な」

 

 この村は近くにダンジョンがあるから、ダンジョンの調査をしに行く冒険者たちがよく宿泊していくんだ。だから、多分あの男女たちも冒険者なんだろう。

 

「あいつらも地下墓地を狙ってんのか?」

 

「多分ね・・・・・・。でも、地下墓地に入った冒険者たちはみんなやられてるから、リゼットの曲刀が眠ってるっていうことは知らないと思うんだけど・・・・・・」

 

 だが、あいつらが見つけてしまう可能性もある。

 

 リゼットの曲刀は、カレンの先祖のリゼットという女の騎士が風の精霊から与えられた2本の刀だ。カレンはそれを持ち替えれば、領主にしてもらえるらしい。

 

 だから、他の冒険者たちに奪わせるわけにはいかないんだ。もしあいつらがリゼットの曲刀を手に入れようとしているならば、奪われる前に消さなければならない。

 

「ギュンター」

 

「おう」

 

 俺はその冒険者たちを睨みつけてから、階段を上り始めたカレンについて行った。

 

 階段を上がり切ってから廊下を左に曲がると、店主に渡してもらった鍵の番号と同じ番号が刻まれた部屋の扉があった。木製の扉には少々傷がついていたけど、俺が奴隷にされてた頃に住んでた場所よりは良い。

 

 部屋の真ん中には木製のテーブルが置いてあった。入口のドアと同じで傷がついているし、前に宿泊した客がコーヒーをこぼした跡が残ってる。小さな穴が開いたソファがテーブルの近くにあって、その後ろにはベッドが2つ並んでいた。壁に掛けられている時計の下には、少し大きめのランタンが吊るされている。

 

「・・・・・・すまん、我慢してくれ」

 

 穴の開いたソファや汚れの跡があるテーブルを凝視していたカレンをちらりと見た俺は、彼女にそう言ってからリュックサックを床に下ろした。

 

 カレンは貴族だから、あまりこんな薄汚い部屋に宿泊したことはないんだろう。前にレリエルと戦った時に泊まったホテルも、クライアントの騎士団が用意してくれた立派なホテルだったからな。

 

「気にしないで。大丈夫よ」

 

「そうか?」

 

 俺はマチェーテとLMGもリュックサックの近くに置くと、壁の近くに鎮座しているベッドをチェックすることにした。もしかしたらこのベッドの毛布や枕にも穴が開いているかもしれない。少しでもきれいなベッドに彼女を寝かせるつもりだった。

 

 部屋の中を眺めていたカレンは俺の下ろしたリュックサックの近くに自分の荷物を置くと、ソファの上を手で少し払ってから腰を下ろし、時計の下に掛けられている大きめのランタンを見つめていた。

 

 彼女はもしかしたら緊張しているのかもしれない。カレンはいつも強気で冷静なんだが、ソファの上でランタンを見つめている彼女は弱々しく見える。

 

 カレンを励まそうと思って彼女の方に歩き始めたその時、部屋の壁の向こうから話声が聞こえてきた。きっと、俺たちが階段を上ってる時に宿屋に入ってきた冒険者たちだ。

 

『緊張するなぁ・・・・・・。地下墓地って数日前に見つかったばかりなんですよね?』

 

『足を踏み入れた冒険者はみんな死んじゃったんでしょ? 怖いなぁ・・・・・・』

 

 やっぱり、あいつらも地下墓地に行くつもりなんだな。楽しそうな少女の話し声を聞いた俺は、両手を思い切り握りしめていた。

 

 あいつらには絶対にリゼットの曲刀を渡さないぞ。あの地下墓地にある刀は、カレンが領主になるために必要なものなんだ。

 

『大丈夫だよ。俺の力があれば、地下墓地の魔物なんて簡単に倒せる。だから俺がみんなを守ってやるよ』

 

『そうよ! 木村くんの力があれば、魔物なんて怖くないわ!』

 

 今の男の声は、多分さっき店主から部屋の鍵を受け取ってた少年だろう。

 

『じゃあ、明日は地下墓地で財宝をたくさん見つけよう!』

 

 リゼットの曲刀があるということは知らないみたいだな。でも、リゼットの曲刀は風の精霊がリゼットに与えた刀だ。だからあいつらがもしリゼットの曲刀を見つけてしまったら、財宝だと思って持ち帰ってしまうに違いない。

 

 もしあいつらが持ち帰ろうとしたら、あいつらを殺して奪うしかない。

 

「・・・・・・絶対にリゼットの曲刀は渡さない」

 

「カレン・・・・・・」

 

 今の話し声を聞いていたカレンが、ソファの上で呟いた。

 

「お願い、ギュンター・・・・・・。力を貸して」

 

「――――任せろ」

 

 彼女は俺とミラを自分の民だと言って受け入れてくれたんだ。だから俺も、彼女の手助けをする。

 

 カレンに恩を返すんだ。

 

 俺は床に置いてあったアサルトマチェーテの鞘を拾い上げると、静かに鞘から大きな刀身を引き抜いた。明日はきっと、この黒いマチェーテの刀身が返り血で真っ赤になるだろう。

 

 マチェーテを鞘に戻してカレンの隣に腰を下ろすと、カレンが俺に自分の手を伸ばし、俺よりも小さい手で俺の浅黒い手をぎゅっと握ってきた。

 

 俺はあの冒険者たちの返り血で右手が真っ赤になる前に、カレンの手を優しく握り返した。

 

 

 

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