異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ファルリュー島攻略作戦

 

 南ラトーニウス海は、ラトーニウス王国の南側に広がる大きな海だ。他の海のように魔物は生息しているが、ダンジョンは少ないため冒険者が訪れることは殆どない。

 

 北国であるオルトバルカ王国と違って一年中暖かい海であるため、冒険者ではなくバカンス目的で観光客が訪れる人気の海だ。いつか妻たちを連れて一緒にバカンスにでも行きたいものだと思いながら地図をよく見つめていたんだが、どうやら今回は物騒なバカンスになりそうだ。

 

 その暖かい海を航行する7隻の艦艇の1隻へと、俺たちを乗せたオスプレイがゆっくり下りて行く。

 

 こちらの戦力は、近代化改修を済ませたエセックス級空母1隻、タイコンデロガ級巡洋艦1隻、アレーイ・バーク級駆逐艦2隻、ワスプ級強襲揚陸艦3隻。これから10000人の守備隊が守る敵の拠点を攻撃するには、あまりにも少なすぎる戦力だ。

 

 しかも、実際に上陸する海兵隊の人数はたったの260人。航空機や駆逐艦からの支援があるとはいえ、戦力差が大き過ぎる。

 

 だが、こんな不利な戦いでも決行しなければならない。敵は既に、次の核ミサイルを準備している。ネイリンゲンに核を落とし、モリガンに大打撃を与えた敵は、その核兵器で各国を脅して強引に世界を支配するつもりなんだろう。逆らえば、モリガンやネイリンゲンの二の舞になるぞと英雄である勇者が脅せば、各国は従わざるを得なくなる。

 

 だから、少ない戦力でも俺たちは奴らに戦いを挑み、勝利しなければならない。

 

 オスプレイがゆっくりと、空母の後ろを進んでいる強襲揚陸艦『エンタープライズ』の甲板に着陸する。ドアを開けると、ヘリのローターの轟音と共に、暖かい潮風が機内へと流れ込んできた。戦いが始まればこの潮風は血の臭いで消されてしまうんだろうなと思いながら、白とグレーで迷彩模様に塗装された甲板の上に降り立つ。

 

 ヘリのドアの向こうには、M16A4を背負った海兵隊の隊員たちが敬礼をして待ってくれていた。中には俺と同い年くらいの転生者もいるが、基本的には17歳や18歳の奴ばかりだ。

 

 これから始まるのは本格的な殺し合いだ。きっと彼らも怖いと思っていることだろう。だが、恐怖に蹂躙されずに無表情で俺たちを出迎えてくれている。

 

 勇敢な戦士たちだと思いながら、俺も彼らに敬礼を返した。

 

 エンタープライズの隣には、2隻の同型艦がある。エンタープライズと同じくワスプ級強襲揚陸艦の『ホーネット』と『ヨークタウン』だ。この3隻の強襲揚陸艦の前には、空母と強襲揚陸艦を護衛するアーレイ・バーク級駆逐艦『ノースカロライナ』と『サウスダコタ』が航行していて、艦隊の先頭にはタイコンデロガ級巡洋艦『ペンシルバニア』が航行している。艦隊の中心を航行しているのは、エセックス級空母『アヴェンジャー』だ。

 

 どの船も艦橋部とCICと甲板での作業員を除いてすべて無人化しているため、乗組員の人数は削減されているけど、それだけ乗組員の数を減らしても、海兵隊に回せた兵力は合計でたった260人。10000人の守備隊を打ち破るには、あまりにも人数が少なすぎる。

 

「どうも、同志ハヤカワ」

 

 必死に恐怖を押し戻そうとしているかのように無表情で敬礼を続ける若い海兵隊のメンバーを見渡していると、艦橋の方から歩いてきた李風に声をかけられた。俺たちと同じく、オリーブグリーンとモスグリーンの迷彩服に身を包んでいる。背中には中国製ブルパップ式アサルトライフルの95式自動歩槍を背負い、腰のホルスターには2丁の92式手槍を装備している。アサルトライフルにはグレネードランチャーを装備しているようだ。

 

 敬礼しながら歩いてやってきた彼に妻たちと共に敬礼をすると、李風は敬礼をするのを止め、甲板の上に並んでいるオスプレイを見渡しながら「申し訳ない。用意できた戦力はこれだけです」と申し訳なさそうに言った。

 

 確かにファルリュー島を攻撃するには戦力が少なすぎる。だが、敵の核攻撃で精鋭部隊を失った直後に用意した戦力だ。仕方がないだろう。

 

 必死に戦力を用意し、急ピッチで転生者たちを訓練してくれた彼に文句を言うわけにはいかない。むしろ、よく急ピッチでここまで戦力をかき集めてくれたものだ。

 

「気にしないでくれ。・・・・・・ところで、信也たちは?」

 

「同志信也は空母のCICです。義手を付けたばかりでリハビリが全く出来なかったそうなので、彼には艦隊司令をお願いしようかと」

 

「なるほどね。あいつが指令か・・・・・・適任だな」

 

 信也はもう転生者を蹂躙できるほどの実力を持っているが、あいつの本職は舞台裏での作戦の立案だ。後方で指示を出す事こそが、あいつの得意分野と言ってもいい。

 

 だから最前線で戦うよりも、後方で俺たちの戦いを見守ってもらい、指示を出してもらった方が俺も安心する。安心して敵を撃ち殺す事ができる。

 

「ミラは?」

 

「はい。同志ミラには、艦載型に改造したF-22(ラプター)で艦隊の直掩を担当していただきます」

 

「あいつが直掩を担当するのか? 訓練は?」

 

「数回ほど私たちの基地で訓練した程度ですが・・・・・・才能があるのか、我々の航空部隊が彼女のF-22に模擬戦で完敗してしまいまして・・・・・・」

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 数回の訓練でもう慣れてしまったのか。もしかすると、ミラには兵器を操縦する才能があるのかもしれない。そういえば、ミラは今まで何度もモリガンの所有する兵器を操縦していたけど、乗っていた兵器を大破させたのはレリエルとの戦いでスーパーハインドが撃墜された時だけだ。まだ1度しか撃墜されていないし、シュトゥーカに乗っていた時は信也と共に戦果をあげている。しかも、37mm機関砲で飛竜の撃墜にも成功しているらしい。

 

 確かに、エースパイロットに守ってもらえれば、この艦隊が撃沈されることはないだろう。彼女はこの艦隊を守る最強の盾というわけだ。

 

「同志フィオナには、海兵隊に同行して治療をお願いしてもらう予定です」

 

「なるほどな。あいつはメディックか」

 

 フィオナのヒールは回復力がかなり高いため、傷口を一瞬で塞ぐ事ができる。回数が無制限の彼女のエリクサーのようなものだ。だから即死しない限り、何度でも彼女に治療してもらって復帰する事ができる。彼女が海兵隊にいてくれれば、隊員たちの生存率も爆発的に上がるに違いない。

 

「それで、俺たちはどっちで上陸すればいい? LCUか? それともヘリボーンか?」

 

「ヘリボーンは自分と同志ギュンターが担当します。同志ハヤカワは、LCU部隊の指揮をお願いします。上陸後は、海兵隊全部隊の指揮権をあなたに任せます」

 

「了解だ」

 

「では、出撃準備がありますので」

 

「おう」

 

 再び敬礼をしてから、甲板の上で作業中のオスプレイの方へと駆け寄っていく李風。エンタープライズとヨークタウンの甲板の上にはオスプレイがずらりと並んでいるが、ホーネットの甲板の上には、兵員室と強力な武装を併せ持つスーパーハインドが並んでいる。どうやらあのスーパーハインドで、歩兵を下ろした後に空中から援護を行うらしい。

 

 俺の任務は、この強襲揚陸艦にあるウェルドッグから海兵隊を率いてLCUで上陸し、ファルリュー島のミサイルサイロを制圧する事だ。いつまでも甲板にいるわけにはいかない。

 

 見たこともない兵器の数々を目の当たりにしてきょろきょろしている妻たちを微笑みながら見守っていた俺は、そろそろウェルドッグへと下りようと思って環境の方を振り向いた。

 

 艦橋の近くに海兵隊が集まっている。おそらくヘリボーンで上陸する連中なんだろうが、整列しているというよりは、何かを見物するために集まってきた野次馬のような感じだった。これから敵の拠点に上陸するという恐怖に蹂躙されないように必死に足掻いている彼らに、とっとと出撃準備をしろと言うわけにもいかず、俺はちらりと背後の妻たちを見て苦笑いをしながら彼らの傍らを通過しようとした。

 

「・・・・・・む? ギュンターではないか」

 

「えっ? おお、姉御! 姐さんまで! ・・・・・・ということは、こんな美女を2人も妻にした幸せ者も一緒だな?」

 

 ん? 何だか聞き覚えのある声が聞こえてきたぞ?

 

 頭を掻きながら、声が聞こえてきた野次馬たちの群れの方をちらりと見る。迷彩服と同じ模様のヘルメットを身に着けた海兵隊員ばかりだったが、その野次馬の群れの向こうに、頭一つ分ほど背が高くて体格ががっしりとしているハーフエルフの男性が見えた。

 

 ニヤニヤと笑いながらこっちに手を振ってくるギュンター。まさか、同じ艦に乗っていたとは・・・・・・。

 

 にっこりと笑いながら手を振るエリスの隣で、俺も苦笑いしながら手を振った。そのまま艦橋部から艦内に下りてウェルドッグへと向かうつもりだったんだが、艦橋部の入口へと向かおうとしていると、俺よりもでかいギュンターの手に肩を掴まれた。

 

「よう、旦那ぁ」

 

「お、おう。お前もこの船に乗ってたのか」

 

「おう。俺はヘリボーンで上陸するぜ。・・・・・・ところで旦那、これを見てくれよ」

 

「ん?」

 

 野次馬の群れの中からやってきたギュンターが、俺の肩を掴んだまま再び野次馬の群れの中へと戻っていく。海兵隊の隊員たちに何度も肩をぶつけながら野次馬の向こうへと連れて行かれた俺は、ギュンターが見せたがっていた代物の前でやっと手を離してもらう事ができた。

 

 その野次馬の向こうに鎮座していたのは、円柱状の巨大な弾薬タンクと、その弾薬タンクから弾薬のベルトで接続された巨大な武器だった。アンチマテリアルライフル以上に太い6本の銃身が束ねられていて、その銃身の長さは約2mほどだ。銃身の右側には発射スイッチの付いたグリップが取り付けられていて、銃身の群れの上には左手で掴むためのキャリングハンドルが装着されている。

 

 ギュンターが見せてきたのは、ソ連製30mmガトリング機関砲のGSh-6―30だった。アンチマテリアルライフルの12.7mm弾よりも巨大な30mmの砲弾を凄まじい速度で連射する獰猛な重火器だが、これは人間が装備して使うためのものではなく、戦闘機に搭載して使うためのガトリング機関砲だぞ? まさか、ギュンターはこいつを使うつもりなのか?

 

 ちなみに重量は約150kg。迫撃砲を搭載した俺のアンチマテリアルライフルの倍以上の重さだ。そんな重火器を持ったまま、30mm弾の凄まじい反動に耐えなければならない。

 

 ギュンターならばできるかもしれないが・・・・・・本当にこいつを使うのか?

 

「すげえだろ、旦那! 李風が用意してくれたんだぜ!?」

 

「おいおい・・・・・・」

 

 しかもこいつを用意したのは李風か。凄まじい代物を荒々しい奴に任せてくれたものだ。

 

 野次馬の向こうからやってきたエミリアは左手を顔に当てながら苦笑いしているし、エリスは楽しそうに「あらあら」と言いながら笑っている。

 

 しかもギュンターは、既に背中にアメリカ製LMGのM249パラトルーパーを2丁も背負っている。そんな重装備をしているのに、更にこの巨大なガトリング機関砲を装備するつもりらしい。

 

 重火器の扱いに慣れているギュンターならば使いこなせるだろう。それに、この巨大なガトリング機関砲を見物しに来た海兵隊のメンバーたちは、この得物を戦場でぶっ放すギュンターに期待しているようだった。

 

 きっとこれが李風の狙いなんだろう。強力な武器を持つ味方を最前線に配置することで、味方の恐怖をかき消す。強力な味方がついているならば、強敵と戦う恐怖はなくなってしまう。

 

 どうやらあいつも優秀な策士らしい。信也が敵に対しての作戦を立案するプロならば、李風は味方を精神的に支えるプロだな。

 

 李風の考えを知って感心していたその時だった。潮風とオイルの臭いが混じった風の中に、いきなりアラームの音が響き渡ったんだ。ガトリング機関砲を眺めながら感心していた海兵隊員たちは慌てて甲板の上のヘリへと向かい、ヘリの周囲で作業をしていた作業員たちが退避を始める。

 

 強襲揚陸艦に搭載されていたCIWSの砲身が、一斉に天空へと向けられ始めた。どうやら上空から敵が接近してきたらしい。

 

『所属不明の航空隊が接近中! 直掩部隊はただちに発艦せよ! 全艦、戦闘態勢! 繰り返す! 全艦、戦闘態勢!』

 

「来たか・・・・・・!」

 

 先に敵部隊に発見されてしまったらしい。対艦ミサイルを搭載した敵の航空部隊が、この艦隊へと向かっているのだ。

 

 敵が攻撃機や戦闘機で攻撃してくる以上、海兵隊の出番はない。何とか艦隊の対空兵器と直掩部隊が敵部隊を叩き落としてくれるのを祈るしかなかった。

 

 旗艦のアヴェンジャーの甲板では、既にF-22が発艦準備に入っている。カタパルトへと進んでいるF-22は、灰色ではなく漆黒に塗装され、右側の主翼には紅いラインが刻まれている。左側の主翼に描かれているのは、2枚の真紅の羽根。モリガンのエンブレムだった。

 

 おそらく、ミラの機体なんだろう。

 

『――――航行中の艦隊に告ぐ。直ちに戦闘態勢を解除されたし』

 

「何だと・・・・・・?」

 

 アラームの中から聞こえてきたのは、若い男性の声だった。おそらく接近中の航空部隊の指揮官だろう。

 

 どういうことだ? 戦闘態勢を解除しろだと? 天空を見上げながら困惑していると、俺の傍らに立っていたエミリアも「わけが分からん・・・・・・」と呟いた。

 

 敵ではないということなんだろうか?

 

 アヴェンジャーの甲板の上で発艦準備に入っていた艦載機部隊も、発艦する様子はない。

 

 しばらく艦隊の上空を見上げていると、暖かい海の真上に広がる蒼空と雲海の向こうに、無数の小さな機影に守られたクジラのような巨体が何機か飛んでいるのが見えた。おそらくその巨体を守っているのは、ロシア製ステルス戦闘機のPAK-FAだろう。50機以上はいるようだ。

 

 そしてその無数のPAK-FAに護衛されているクジラの正体は、アメリカ製大型輸送機のC-130。中には機体の左側の胴体から砲身が何本か突き出ている機体もあるから、ガンシップのAC-130も混じっているのかもしれない。

 

「凄い数だ・・・・・・!」

 

 上空にやってきた無数の航空部隊を見上げながらエミリアが呟く。もしあいつらが敵だった場合、ファルリュー島に辿り着く前にこの艦隊は壊滅的な損害を受けていただろう。きっと信也も、彼らと戦う羽目にならなくて良かったと、今頃エセックス級のCICで胸を撫で下ろしているに違いない。

 

『今から勇者の野郎をボコボコにしに行くんだろ? だったら俺たちも連れて行ってくれ』

 

「なに?」

 

『俺たちもあいつらの事が嫌いなんでね。助太刀するぜ』

 

 上空の航空部隊が艦隊と同じ方向に進路を変える。どうやら彼らは俺たちと一緒に勇者たちと戦ってくれるらしい。

 

 彼らを加えたとしてもまだ奴らの方が戦力では上だろうが、あんな数の航空部隊に援護してもらえるならばありがたい。海兵隊がミサイルサイロまでたどり着ける可能性も上がるだろう。

 

『――――了解しました。助太刀に感謝します』

 

 彼らを受け入れる信也の声を聞いて安心した俺は、同じように安心して元の配置へと戻る海兵隊員たちを見てから、妻たちと共に今度こそウェルドッグへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 海水が注水され始めた強襲揚陸艦のウェルドッグの中は、当然ながら甲板の上と比べると閉鎖的で、殺風景な空間だった。グレーに塗装されたフェンスの向こうの狭い通路を、先ほどから何人もの海兵隊員がアサルトライフルを担ぎながら、自分たちの乗るLCUへと乗り込んでいく。

 

 ウェルドッグの中を支配する強烈なオイルの臭いは、LCUを出撃させるために注水された海水の臭いを一瞬でオイルの臭いの変貌させてしまう。

 

 直掩部隊は既に発艦し、他の転生者たちが出撃させた航空部隊と上空で合流している。もし俺たちの接近がレーダーで探知されているならば、敵の航空部隊がそろそろ攻撃を仕掛けてくる頃だ。

 

 俺と同じLCUに乗り込んでいる隊員たちは、全員モスグリーンとオリーブグリーンの迷彩服とヘルメットを身に着けている。いつもモリガンの漆黒の制服を身に着けていた妻たちも、今回だけは彼らと同じように迷彩服に身を包み、ヘルメットを見つめて「変わった防具ね・・・・・・」と呟きながら、迷彩模様のヘルメットをかぶった。

 

 ちなみに俺も迷彩服を身に纏っているが、頭に生えている角が邪魔でヘルメットがかぶれないため、俺だけはフード付きの迷彩服を身に着けている。もちろん、フードには転生者ハンターの象徴でもある真紅の羽根がちゃんとついている。

 

 ウェルドッグの中にいる隊員たちが出撃準備を終えたのを確認した俺は、耳に装着されている無線機のスイッチを入れた。李風に、出撃する前に演説してくれと頼まれていたのだ。

 

 でも、俺の演説で士気が上がるんだろうか?

 

「――――各員に告ぐ。これより俺たちは、勇者たちの拠点であるファルリュー島に上陸する。知っての通り、彼らはかつてこの世界を救った英雄たちだ。だが、奴らはもう英雄などではない。ネイリンゲンに核ミサイルを放ち、諸君らを利用したクズ野郎共だ。同志諸君も、ネイリンゲンで仲間を失った事だろう。俺たちもだ。・・・・・・俺たちも、ネイリンゲンで多くの仲間を失った」

 

 他のLCUに乗り込んでいる兵士たちも、一斉に俺たちの方を見つめてきた。この演説が響いているのはエンタープライズの艦内だけではなく、他の艦や頭上の航空部隊のコクピットまで届いている。

 

 つまり、この作戦に参加する全員に聞かれているということだ。

 

「奴らを許すな。この異世界で核ミサイルを撃ち込み、何人も虐殺した奴らを決して許すな。負傷兵だろうが捕虜だろうが撃ち殺せ。容赦するな。・・・・・・散って行った仲間たちの無念と俺たちの怒りを、奴らに叩き付けるんだ。彼らの代わりに報復できるのは俺たちしかいない。そして、子供たちのためにこの世界を守る事ができるのも俺たちだけだ」

 

 演説しながら、俺はあの時死んでしまった少年の事を思い出した。俺の子供と同い年くらいの幼い少年。勇者たちは、幼い少年まで殺してしまった。

 

 だから容赦はしない。命乞いしてくる敵兵でも撃ち殺してやる。負傷して苦しんでいる敵兵でも関係ない。全員焼き殺してやる。

 

「この戦いは復讐のための戦いでもある。・・・・・・だが、死ぬのは許さん」

 

 俺のその言葉を聞いた瞬間、演説を聞いていた奴らが全員驚き始めた。俺の妻たちは驚かずに、俺の顔を見つめながらにやりと笑っている。

 

「子供たちには、親が必要だ。この中には結婚している奴もいるだろうし、恋人がいる奴もいるだろう。・・・・・・だから、死ぬな。この戦いが終わって平和になった世界に子供たちを送り出してやるためにも、必ず生き残れ。生き残って、子供たちの旅立ちを見守ってやれ。――――以上だ。海兵隊、出撃!」

 

「LCU、下ろし方始めッ!」

 

 LCUの船体を吊るしていたチェーンが下がり、注水されたウェルドッグの中へとLCUが下りて行く。艦尾にある巨大なハッチが開き、南ラトーニウス海の暖かい風と猛烈な潮の臭いがウェルドッグの中へと流れ込んできた。

 

 ついに、転生者同士の戦争が始まる。

 

 LCUが艦の外へと飛び出す前に、俺は内ポケットの中にしまっておいた似顔絵を取り出した。出撃する前に、ラウラが頑張って書いてくれた俺とエミリアとエリスの似顔絵。エミリアはちゃんとポニーテールになっているし、エリスのお下げもちゃんと書いてある。

 

 必ず、生きて帰ろう。

 

 そして、子供たちをまた狩りに連れて行ってあげるんだ。

 

 似顔絵をポケットにしまった俺は、迷彩模様のフードをかぶり、ハッチの向こうを睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

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