異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ついに最終章スタートです!


最終章 焔刻のリキヤ
フィオナの発明


 

 ネイリンゲンで感じたあの暖かい風の中で、俺はゆっくりと目を開いた。

 

 もうあの田舎にある街はない。憎たらしいあの勇者に奪われ、今では放射能のせいで誰も近付く事ができない場所になっている。

 

 だからこの風に包まれることももうないだろうと思っていた俺は、懐かしい感覚に驚きながら、巨大な防壁の門の向こうに広がる草原を眺めていた。

 

 季節は春になった。風は暖かくて、草原の草むらの中には綺麗な花が咲いているのが見える。でも、その花たちだけでこの広すぎる草原を殺風景な緑の世界から変えてしまおうというのは荷が重すぎるだろう。

 

 この街は他の街よりも防壁が分厚い上に高い。だから防壁が無かったあの街よりも遥かに閉鎖的で、息苦しい感じがする。

 

 いつかは慣れるだろうと思っていたんだが、もう3年もこの王都で生活しているというのに全く慣れる様子はない。ベッドの上で毎朝目を覚ました時に窓の向こうに見えるのは、いつもあの殺風景な防壁なんだ。

 

 勇者との戦いからもう3年が経過した。あのファルリュー島での戦いは、あの戦いに参加して生き残った転生者たちからは『転生者戦争』と呼ばれている。戦争と呼ぶにはあまりにも短すぎる小さな戦争だったが、あの戦争で勝利したからこそ、この世界は勇者に支配されることはなかった。

 

 あの戦いが終わった後、俺はちゃんと約束通りに子供たちを狩りへと連れて行った。王都から近くの森までは距離があるし、魔物がいる恐れのある草原を子供たちと一緒に歩いていくわけにはいかなかったので、防壁の門の外からはハンヴィーを運転して森まで狩りに行く事にしている。

 

 俺たちの子供たちももう6歳になった。まだ幼いけど、もう銃の撃ち方は教え始めている。まだ狩りで撃たせるには早いだろうから自宅の地下室や騎士団の弓矢の訓練場を借りて訓練をさせている。

 

 今年で俺とエミリアは27歳。エリスは28歳だ。妻たちはあまり3年前から変わっていないから、なんだか俺だけ老けているような気がする。

 

 杖をつきながら王都の大通りを歩いていた俺は、懐から懐中時計を取り出し、ちらりと今の時刻を確認する。エミリアとデートした時にプレゼントしてもらったこの赤黒い色の懐中時計は、まだ動き続けてくれていた。俺の大切なお守りだ。

 

 今の時刻は午前9時40分。博士が研究所に来てくれと言っていた時刻まで、あと10分だ。

 

 遅れるわけにはいかない。俺は苦笑いしながら懐中時計をポケットの中にしまうと、杖を手にしたまま速足で歩き始める。

 

 この帝都の閉鎖的な街並みもあまり変わらない。建物が増えたりしているだけで、エミリアとデートに来た時とほとんど変わっていなかった。あの時彼女に時計を買ってもらったあの雑貨店も、まだあの場所で営業を続けている。

 

 大通りに並ぶ無数の露店。その通りの向こうでは、アパートを建築中の作業員たちが作業着姿で汗を拭い去りながら、忙しそうに担いだ大きな木材を上へと運んでいる。

 

 ネイリンゲンが壊滅してしまったため、ネイリンゲンで活動していたモリガンは、今ではエイナ・ドルレアンに拠点にするための屋敷を購入し、そっちで活動している。俺もたまに仲間たちの所に顔を出す事があるが、1ヵ月に1回程度だ。

 

 だが、まだ傭兵を引退したわけではない。こっちで依頼を引き受け、報酬の3割はギルドの本部があるエイナ・ドルレアンへと仕送りするようにしている。

 

 勇者を倒してからは、以前のように魔物が狂暴化することはなくなったという。相変わらずダンジョンの中には危険な魔物が生息しているから調査はなかなかできないんだが、街を襲撃する件数が大幅に減ってきているらしい。おかげで傭兵の仕事は減り、冒険者の仕事が反比例して増えている。

 

 きっとこれからは、傭兵の時代ではなく冒険者の時代になることだろう。タクヤとラウラがもし大きくなったら、傭兵ではなく冒険者になることをおすすめしよう。旅立つ子供たちには会えなくなってしまうけど、きっとたくましくなって帰ってきてくれる筈だ。

 

 エリスは大泣きするかもしれないけど、エミリアは賛成してくれるだろう。エリスは子供たちに甘いからなぁ・・・・・・。

 

 家族の事を考えながら歩いていると、もう大通りを通り抜けてその先の倉庫が並ぶ静かな通りへと到着していた。レンガ造りの巨大な倉庫がいくつも並ぶ防壁の近くのこの通りは、屈強な男たちが大きな木箱を運び込む時以外は静まり返っている。不気味な場所だからこの倉庫の辺りには幽霊が出るという都市伝説があるんだが、その話を聞く度に俺はいつも苦笑いをしている。

 

 だって、本当にこの倉庫には幽霊がいるのだから。

 

 メモ用紙にメモしておいた地図を確認し、この倉庫であることを確認した俺は、咳払いをしてから頭にかぶっていたシルクハットをかぶり直し、目の前にある少し湿った木製のドアを静かに押した。

 

 ドアが軋む音が広い倉庫の中を駆け回る。この倉庫で待っていてくれる博士を呼ぼうと思ったんだが、ひょっとしたらこの軋む音が俺の声の代わりに博士を呼んでくれるかもしれない。

 

 倉庫の中に足を踏み入れた俺は、黴の臭いとオイルの臭いが混じった奇妙な臭いのする空気を吸い込み、ここで研究を続けている博士を呼ぶことにした。

 

「フィオナ? フィオナ博士?」

 

『はーい! あっ、力也さん。お久しぶりですっ!』

 

 木箱が山積みにされた広い倉庫の向こうから聞こえた声は、博士と呼ぶには幼過ぎるような少女の声だった。きっと彼女の事を知らない人物がこの声を聞けば、博士本人の声ではなく博士の助手だと思ってしまうことだろう。

 

 木箱がずらりと並ぶ倉庫の奥から姿を現したのは、やっぱり真っ白なワンピースに身を包んだ白髪の少女だった。10年前に初めて出会った時から容姿が全く変わらない、幽霊の少女。

 

『ふふっ。まるで紳士ですね』

 

「ははははっ」

 

 もう既に死んでしまっているフィオナは、年を取ることが無い。だからずっと幼い少女の姿のままだ。

 

 ネイリンゲンの屋敷がなくなってしまってからは、彼女は俺が購入したこの倉庫で研究を行い、俺たちの家で寝泊まりしている。

 

「ところで、エリクサーの売れ行きはどうだ?」

 

『はい、絶好調です。冒険者や騎士団の方々がたくさん買ってくれますし、病気の薬代わりにも使われているみたいです』

 

 あの戦いの後、フィオナは自分の作ったエリクサーを冒険者や騎士団向けに販売し始めた。彼らが使っている従来のエリクサーは不味い上に、瓶の中に入っている液体を全て飲み干さなければ傷が治り始めることはないし、傷が治る速度も遅かったんだけど、フィオナが作った一瞬で傷を治せる高性能なこのエリクサーは、魔物と戦ったりダンジョンへと向かう騎士団や冒険者たちに大好評の商品となった。

 

 このおかげで騎士団や冒険者の生存率が40%も上がったらしい。今まではモリガンのメンバーにだけ渡していたんだけど、今後は大量生産する必要があるため、フィオナは俺たちが雇用した従業員たちと共にこのエリクサーを大量生産しながら、空いた時間にこうして研究を続けている。

 

「いつも頑張ってるな」

 

『いえいえ。社長さんのおかげですよ』

 

 社長さんと呼ばれるのも、なかなか慣れないなぁ・・・・・・。

 

 2年前から、俺は傭兵を続けながら会社の経営も始めている。インフラ整備、製薬、技術、警備の4つの分野を専門とする『モリガン・カンパニー』という名前の企業だ。最初はフィオナが管理する製薬分野と俺が管理する警備分野の2つだけを専門とする小規模企業だったんだが、最近では専門分野をさらに増やし、規模をどんどん大きくしている。

 

 今では警備分野をエミリアに任せ、俺は社長として巨大になった企業をまとめるようにしつつ、従業員の雇用を続けている。警備分野は警備を専門とする兵士を派遣する分野で、彼らは俺やエミリアの元で訓練を受けてから実戦へと参加する。武器は端末で生産した武器ではなく、社内の鍛冶職人が作った武器だけとなっている。

 

 何故銃を持たせないのかというと、その力を悪用しようとする奴が出てくる可能性があったからだ。従業員を信用していないわけではないんだが、かつて転生者が何人もこの世界を支配しようと力を振るい、人々を虐げたように、そのようなことを考える奴も出てくるかもしれない。俺が最も恐れているのは、俺たちの生み出した力がこの世界を破壊する事だ。

 

 だから、社員に渡す武器はこの世界の技術で作れるものばかりに制限している。ちなみに社員たちの中で一番人気の武器は、俺のこの仕込み杖らしい。警備分野の社員の制服は黒いスーツで、ほぼ全員が俺と同じく仕込み杖を装備している。しかもその格好で更にシルクハットをかぶるという悪ノリを始めたため、モリガン・カンパニーの社員は人々からは『紳士』と呼ばれている。

 

 ちなみに、4つの分野の指揮を執る社員たちは『四天王』と呼ばれ、そのモリガン・カンパニーをまとめる俺は『魔王』と呼ばれているらしい。随分と近代的な魔王だな。

 

 今は会社を経営しているため、モリガンの仲間たちの所になかなか顔を出す事ができない。でもちゃんと依頼を受けたら仲間たちの所に仕送りはしているし、様々な援助を続けている。

 

「ところで、その発明品は?」

 

『はい、ちゃんと完成していますよ』

 

 フィオナはにっこりと笑うと、俺を倉庫の奥へと案内し始めた。

 

 薄暗い倉庫の中に山積みになっているこの無数の木箱の中に入っているのは、おそらく出荷予定のエリクサーか彼女の発明品の試作品だろう。木箱の群れの奥には複雑な記号がいくつも描かれた黒板があって、その傍らにはビーカーや液体の入った試験管がずらりと並ぶ木製の机がある。ネイリンゲンの屋敷にあった彼女の研究室のものよりも広いから、彼女も研究がやりやすそうだ。

 

 その机の近くに、やけに大きな金属の塊が鎮座していた。ずんぐりした楕円形の燃料タンクのようなパーツがあって、その周囲をまるで骨組みのように無数の配管やケーブルが覆っている。配管には紅いバルブが取り付けられていて、その近くには圧力計のような計器が取り付けられていた。

 

 どうやらこのスチームパンクな感じの物体が、フィオナの新たな発明品らしい。こんな近代的な機械が出て来るとは思っていなかった俺は、目を見開いてからちらりとフィオナの方を見た。

 

 もしかすると、この機械が異世界で作られた世界初の機械かもしれない。この世界には機械が存在しない代わりに、俺たちの世界には存在しなかった魔術が実在している。魔力を使えば魔術でいろんな事ができるから、この世界の人々には何かを原動力にして動く装置を作るという発想がなかったんだ。おそらく機械がこの世界で全く発達していないのはそのせいだろう。

 

『力也さんたちが端末で作る兵器を見た時に思いついたんです。この世界でも、何かを動力源にして動く機械が作れないのかなって』

 

「こいつの動力源は何だ?」

 

『えっと、魔力ですね』

 

 魔力が原動力の機械か。魔力ならば人々もよく使うし、俺たちの世界の機械のように資源を消費するわけでもない。魔力さえあれば何度でも動かす事ができるだろう。

 

「今、動かせるか?」

 

『はい。少々お待ちくださいね』

 

 彼女は少し恥ずかしそうに胸を張ると、ふわりと浮き上がり、天井にぶら下がっていた鎖を引っ張り始めた。鎖同士がぶつかり合う音が倉庫の中で暴れ回る中で、真っ暗な天井から、まるで蒸気機関車の車輪のような物体がゆっくりと床へと下りてくるのが見えた。

 

 フィオナは鎖を引っ張るのを止めると、発明品の装置から伸びたケーブルを引っ張ってその車輪へと接続し、装置のバルブをいくつか開けてから白い小さな手を装置に描かれている魔法陣へと伸ばし始めた。

 

 すると、魔法陣が白く煌めき始めた。魔法陣が発する真っ白な燐光が圧力計にも伝染したかと思うと、その燐光の中で圧力計の針がゆっくりと右へと動き始める。

 

 魔力が流れ込んでいるという証拠だ。やがて、フィオナがケーブルを接続した車輪が、軋む音を立てながらゆっくりと回転を始めた。最初はゆっくりと進んでいる馬車の車輪のような速度だったんだけど、段々と回転の速度が上がっていき、全力疾走する馬車の車輪のような速度へと変わってしまう。

 

 その様子を見て驚いている俺を見たフィオナは、満足そうな表情で魔力を流し込むのを止めると、バルブをすべて閉じてから俺の方を振り返った。

 

『ど、どうですか・・・・・・?』

 

「・・・・・・す、すげぇ」

 

 ついに、この世界でも機械が発達するのか。

 

「すごいぞ、フィオナ・・・・・・! これが世界中に広がれば、産業革命が始まる・・・・・・・!!」

 

 この世界が変わる。彼女が生み出したこの装置は、それほどの大発明だ。魔力は魔術のためだけではなく、このように機械の動力源にもなる。きっとこれからは、この世界でも魔力を動力源とする機械が増えていく筈だ。

 

 フィオナはその発明の先駆者となった。

 

「やったな、フィオナ。これで100個目の特許だぞ!?」

 

『はっ、はいっ! では、すぐに技術分野の方に生産を・・・・・・』

 

「ああ、頼んでおく」

 

 この世界が変わる。

 

 フィオナのこの発明が、この世界を変えてしまうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィオナの発明は、この世界を変えてしまうことだろう。いつかはこの王都の街並みも、段々と俺たちが住んでいたあの世界のような街並みに変わっていくかもしれない。

 

 でも、俺たちが住む家は、変わる様子は全くなかった。普通の家にしてはやや大きな、まるで屋敷のような家。ネイリンゲンの森から引っ越して来た際に、国王が用意してくれた俺たちの家だ。出来るだけ質素な家が良いと言った通りにしてくれたらしく、家の中にはあまり装飾はついていない。

 

 シルクハットをかぶったまま、俺は廊下から下へと伸びる階段を下り始めた。壁のランタンがちゃんとついているため、ネイリンゲンの屋敷の階段のように薄暗いわけではない。これならば子供たちも転んで怪我をすることもないだろう。

 

 階段を下りて行くにつれて、段々と折れの足音よりも銃声の方が大きくなってくる。おそらく、この下で訓練をやっているのは子供たちだろう。2人とも早く銃の扱い方をマスターして狩りに行きたいらしく、毎日エリスやエミリアと一緒に訓練をやっている。

 

 地下室のドアを開けると、火薬の臭いと共に銃声が階段の方へといきなり流れ込んできた。嗅ぎ慣れた臭いと聞き慣れた音に包まれながら、俺は地下室の中へと足を踏み入れる。

 

 訓練用の的に向かって銃を向けているのは、やはり俺の子供たちだった。

 

 右側の的に向かってアメリカ製リボルバーのスタームルガー・スーパーブラックホークを向けて射撃をしているのは、俺とエミリアの息子のタクヤだ。3歳の時から姉(ラウラ)と比べるとかなり大人びていた弟(タクヤ)は、射撃中も落ち着きながら的に照準を合わせ、シングルアクション式のリボルバーで正確に的を撃ち抜いている。

 

 左側の的に向かってボルトアクション式のライフルを向けているのは、俺とエリスの娘のラウラ。6歳になって少しだけ大人びた彼女は、エリスと同じ髪型にしながら、スコープを取り外した状態のSV-98のアイアンサイトを覗き込み、40m先にある的に向かって射撃を繰り返している。なんでスコープを取り外してるんだ? 照準が付け辛くなるんじゃないのか?

 

「お、帰ってきたか」

 

「あれ? ガルちゃん?」

 

 訓練する2人の様子を見守っていたのは、少し大きめのベレー帽を頭にかぶった赤毛の幼女だった。俺の遺伝子を参考にした姿であるため、顔立ちは俺やラウラに似ている。もし2人が並んで立ったらきっと姉妹のように見えるだろう。

 

 幼女の姿のガルちゃんは、紳士のような恰好で帰ってきた俺を見ると、にやりと笑ってから俺の隣へとやってきた。

 

「2人の様子はどうだ?」

 

「上達しておるぞ。タクヤは早撃ちの練習をしておったし、ラウラは狙撃が得意なようじゃな」

 

「狙撃? だが、スコープを付けてないじゃないか」

 

 40m程度の距離だからアイアンサイトでも命中させられるだろうが、遠距離を狙撃する時はさすがにスコープを付けた方が良いだろう。

 

「私もスコープを付けた方が良いのではないかとアドバイスしたんじゃが、スコープをつけると逆に見辛いらしくてのう」

 

「視力がいいのか?」

 

「分からん」

 

 ガルちゃんとそんな話をしていると、リボルバーで射撃をしていたタクヤがいきなりリボルバーをホルスターの中へと戻した。もう訓練を終えるのかと思ってエミリアにそっくりな彼の後姿を見守っていると、彼はいきなりホルスターの中のリボルバーのグリップを素早くつかむと、腰の脇でリボルバーを構え、そのままトリガーを引いた。

 

 早撃ちだ。俺は教えた覚えはないんだが、おそらく前に披露した時の早撃ちを真似しているんだろう。俺よりも銃を抜く速度がかなり遅かったが、訓練すればさらに素早い早撃ちを繰り出せるようになる筈だ。

 

「・・・・・・あっ、お父さん。お帰りなさい」

 

「おう、ただいま」

 

 タクヤは早撃ちを見られていると思っていなかったらしく、恥ずかしそうな顔をしながらリボルバーをホルスターへと戻した。

 

 隣でライフルの射撃を続けていたラウラも俺が帰ってきたことに気付いたらしい。びっくりしながら俺の方を振り向くと、ライフルを壁に立て掛けてから俺の方へと駆け寄ってきた。

 

「パパ、お帰りなさいっ!」

 

「ただいま、ラウラ。――――それにしても、2人とも上達したなぁ」

 

 タクヤのほうにある的には、いくつも風穴が開いている。前まではあまり風穴が開いていなかったんだが、最近は風穴が真ん中辺りにいくつも開くようになってきている。

 

 ラウラのほうにある的には――――風穴が1つしか開いていない。真ん中に風穴がいているだけで、それ以外に撃ち抜かれたと思われる風穴が開いていなかった。

 

 命中したのは1発だけか? スコープを付ければ当たるようになるんだけどなぁ・・・・・・。そう思った俺は的の後ろの方にある壁をちらりと確認してみたんだが、硬い壁には弾丸がめり込んだ跡が1ヵ所しか見当たらない。

 

 ま、まさか・・・・・・外したんじゃなくて、全部真ん中に命中させたから風穴が1つしかないってこと・・・・・・?

 

 す、すげぇ・・・・・・。ラウラはきっと、大きくなったら天才狙撃手になるぞ。

 

 娘の才能に驚いた俺は、抱き着いてきた彼女の頭を優しく撫でた。

 

 

 

 

 

 

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