異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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転生者と騎士が現代兵器で警備をするとこうなる

 

「不機嫌そうだなぁ………」

 

「仕方がないだろう。私たちが魔物を殆ど倒してしまったんだ」

 

 ネイリンゲンの街へと続く草原を歩きながら、俺は先頭を歩くカレンを見つめて呟いた。草原にはまだ俺たちが来るときに倒した魔物の死体が転がっていて、その死体にはほとんど風穴が空いている。その風穴を開けた武器は、俺とエミリアが背中に背負っているマークスマンライフルのドラグノフだった。

 

 廃墟にいた魔物は合計で30体。廃墟での戦いでは、ほとんどの魔物をエミリアがサーベルで倒してしまっている。俺はアンチマテリアルライフルでアラクネやゴーレムを狙撃して彼女を援護していた。

 

 カレンが不機嫌そうなのは、きっとあまり魔物を倒せなかったからだろう。彼女の背中の矢筒の中の矢はあまり減っていなかった。

 

『で、でも、護衛するっていう依頼でしたし………』

 

「仕方ないよな………」

 

 俺は背中からドラグノフを取り出してスコープを覗き込み、魔物が接近していないか確認すると、再びドラグノフを背中に背負った。カレンの前方には、俺たちがネイリンゲンの街を出発してから最初に倒したゴーレムの死体が見える。距離を詰めてから攻撃しようと言ったカレンの目の前で、俺たちが最初にマークスマンライフルを約400mからぶっ放して倒したゴーレムだろう。頭には弾丸に貫かれた穴がいくつか空き、弓矢や剣を弾く岩のような外殻には亀裂が入っている。

 

 ゴーレムの死体の向こうにネイリンゲンの街が見え始めた。段々と夕日で赤くなっていく空の下に、真っ白な建物が並ぶオルトバルカ王国の街が広がっている。

 

 俺は漆黒のオーバーコートのフードを取ると、左肩を回しながら深呼吸した。廃墟で魔物と戦った時は埃だらけのボロボロの廃墟の中でずっと狙撃してたからな。

 

「………ん?」

 

 ネイリンゲンの街の西側にある今朝俺たちが集合した水路のところに、鞘に納めたレイピアを腰に下げた男が待っているのが見えた。身に着けている金属製の防具には、少しだけ黄金の装飾がついている。

 

 カレンが俺たちに依頼をしに来た時に、俺に向かってレイピアを引き抜こうとしてた護衛の男だ。カレンを迎えに来たんだろうか。

 

 不機嫌そうなカレンを見た男が、レイピアの柄に手を近づけながら俺たちを睨みつけてくる。でも、引き抜こうとしても多分またカレンに止められるだろうな。俺もトマホークのグリップに手を近づけながら、護衛の男の待つ水路のところへとカレンたちと共に歩いた。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

「ただいま」

 

 ため息をついたカレンは、自分の金髪に少しだけ付着していた魔物の返り血に気が付くと、ポケットからハンカチを取り出してそれを拭き取った。

 

「魔物はほとんど彼らが倒しちゃったわ」

 

「………」

 

 カレンに目を向けていた護衛の男が、再び俺のことを睨みつけてきた。俺はさっきからトマホークのグリップに手を近づけた状態のままだ。もしあいつがレイピアを引き抜いて襲い掛かってきたならば、こいつでその刀身をへし折ってやるつもりだった。

 

 護衛の男と睨み合っていたその時だった。水路の反対側にある路地の方に、黒い服の男が隠れているのが見えたんだ。木箱や樽が散らかっている細い路地のところで、俺たちの方をその男はじっと見つめている。

 

 レイピアの柄に手をかけた護衛の男と、トマホークに手を近づけた俺の戦いを見物しようというつもりではないだろう。見物するつもりなら、どうしてあんなところに隠れるんだ? 

 

「ちょっと、やめなさいよ。確かに私は全く魔物を倒せなかったけど、彼らはちゃんと私のことを―――」

 

 カレンが護衛の男と俺の間に割って入ると、護衛の男の手をつかんでレイピアから引き離そうとする。その路地の方で木箱の陰に隠れている男は、今度は俺と護衛の男ではなくカレンをじっと見つめ始めた。

 

 どうしてカレンを見つめるんだ?

 

 木箱の陰に隠れ、背中から弓矢のようなものを取り出す男。はっとした俺は腰の右側にあるホルダーに収まっていたペレット・トマホークのグリップを掴むと、ホルダーから思い切り引き抜いた。俺が護衛の男を攻撃しようと勘違いしているカレンが「やめなさい、力也!」と叫んだけど、俺はトマホークから手を離さなかった。

 

 俺が攻撃しようとしているのは、カレンの護衛の男ではない。あの水路の反対側の路地で、カレンに弓矢を向けている黒い服の男だ!

 

 あいつは何者だ? 暗殺者なのか!?

 

「―――!」

 

 木箱の陰に隠れていた男の弓から、カレンへと向けて矢が放たれた。

 

 暗殺者らしき男に狙われたカレンを突き飛ばすべきだと思ったけど、俺たちの中であの木箱の陰に隠れている男の襲撃に気が付いているのはおそらく俺だけだ。もしカレンを突き飛ばせば、彼女が暗殺者らしき男に狙われていると気づいていない護衛の男がレイピアを引き抜いて攻撃してくるかもしれない。せっかくカレンを突き飛ばして弓矢の攻撃を回避させたのに、それでは第二射にまた狙われてしまうだろう。

 

 俺はペレット・トマホークの銃口をカレンへと向かって飛んでくる矢へと向けた。銃口からは既にライフルグレネードを取り外していたため、発射スイッチを押せば散弾が射出される。

 

 グリップにある発射スイッチを押し、俺は矢を迎撃するために散弾をぶっ放した。

 

 ペレット・トマホークに仕込まれている散弾はペレット・ブレードやエミリアのペレット・サーベルに仕込まれている小型の散弾ではなく、普通のショットガンで使用される12ゲージだ。

 

 カレンへと向かっていた矢が水路の上を通過する前に、俺がぶっ放した散弾が襲い掛かった。矢を散弾たちが簡単に食い破り、ズタズタにされた矢の残骸が水路へと向かって落下していく。

 

「え………!?」

 

「り、力也……お前、何を撃った………!?」

 

 散弾で撃墜され、水路へと落下した矢の残骸が水路を流れていく。グリップの中に潜り込んでいた撃鉄(ハンマー)を親指で元の位置まで戻した俺は、散弾を発射した際の轟音と、カレンを狙っていた矢が撃墜されたことに驚いて立ち上がってしまった暗殺者の男を睨みつけた。

 

「ひっ!」

 

「逃がすかぁッ!!」

 

 グリップの中の散弾は1発だけだ。薬莢を排出して次の散弾を装填しない限り、ペレット・トマホークからまた強烈な散弾を放つことはできない。

 

 俺は散弾を再装填(リロード)せずにトマホークを振り上げると、木箱の陰から飛び出した暗殺者らしき男へと向けて思いきり放り投げた。

 

 漆黒のトマホークが回転しながら水路の反対側へと飛んでいく。弓矢を手にした男が路地の陰に隠れようとした瞬間、木箱が積み重なった向こう側で真っ赤な血が吹き上がり、男の絶叫が聞こえた。

 

「みんなはここで待ってろ!」

 

『り、力也さんっ!』

 

 俺は左手でホルスターから12インチのレイジングブルを引き抜きながら水路の上の橋へと向かって突っ走る。

 

 さっきの銃声と絶叫のせいで、通りの方を歩いていた人々がざわついていた。俺は急いでさっき黒い服の男が隠れていた路地に飛び込むと、散らかっている木箱を次々に飛び越えていく。

 

 俺は血飛沫で真っ赤に汚れている木箱を見つけると、走るのをやめながらレイジングブルを構え直した。

 

 血飛沫で汚れた木箱の向こうで、真っ黒な服に身を包んだ1人の男がうつ伏せに倒れていたのが見えた。もしかしたらまだ生きているかもしれないと思ったけど、トマホークの刃を背中に突き立てられた男が生きている筈がない。明らかに背骨がトマホークの刃で粉砕されている。

 

 俺はリボルバーをホルスターへと戻すと、男の背中から漆黒のペレット・トマホークを引き抜き、ホルダーへと戻してからオーバーコートのフードをかぶった。

 

「………暗殺者なのか?」

 

 この男はカレンを狙っていたようだ。確か、彼女は領主の娘だったよな? 

 

 俺は仕留めた暗殺者の死体を木箱の中に隠すと、フードをかぶったまま木箱が散らばっている路地を突っ走り、エミリアたちのところへと戻ることにした。

 

 さっき走って渡ってきた水路の上の橋を渡り終えると、エミリアが俺の方へと走ってきた。

 

「仕留めたか?」

 

「ああ。………とりあえず、屋敷に戻った方がいいな。野次馬が来る」

 

 俺はかぶっていたフードを取ると、エミリアを連れてカレンたちの方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 俺たちがジャックさんから無料で購入した屋敷の2階には、書斎や応接室がある。真っ赤な絨毯が敷かれた部屋の中にはソファとテーブルと椅子が置かれていて、壁には3枚ほど絵画が掛けられている。これは俺たちが報酬で購入したものではなく、前にここに住んでいた人が置いていったものらしい。

 

 魔物が描かれている絵画を眺めるのをやめた俺は、ゆっくりとソファの方を振り返った。フィオナが紅茶を淹れてきてくれたらしく、真っ白なテーブルクロスの上には全員分の紅茶のカップが置かれている。

 

「………暗殺者だったのね?」

 

「多分な。帰るんだったら、もっと護衛の兵士を呼んだ方がいい」

 

「ええ。………お願いできる?」

 

「お任せを」

 

 カレンに頭を下げながら、彼女の傍らに立っていた護衛の男が言った。この世界で離れた位置にいる味方に情報を知らせる場合は、伝令が飛竜や馬に乗って伝えに行く必要がある。護衛の男は、どうやら彼女の屋敷まで護衛の兵士たちを呼びに行くつもりらしい。

 

「裏庭に馬小屋がある。そこの馬を使ってくれ」

 

「助かる」

 

 俺とエミリアが移動用に購入した馬を使うように部屋を出ていこうとしていた護衛の男に伝える。睨んでくると思ってたんだが、護衛の男は俺に礼を言うと、ドアのところに立っていたエミリアに頭を下げてから部屋を出ていった。

 

「………とりあえず、護衛の兵士たちが迎えに来るまでここにいてくれ。俺たちが警備する」

 

 もしかしたら、あの暗殺者の仲間が襲撃してくるかもしれないからな。

 

「………もう、魔物たちとの戦いは終わったのよ? どうしてまだ守ってくれるの?」

 

「―――俺たちが受けた依頼は、お前の護衛だ」

 

 警備に使う武器を端末で生産しながら俺は言った。昨日まき割りをしている最中に俺がカレンから受けた依頼は、一緒に魔物を倒しに行くという依頼じゃない。彼女を護衛するという依頼だ。

 

 だから彼女の護衛が兵士たちを連れてくるまで、暗殺者たちからお嬢様を守る。

 

「………力也」

 

「なんだ?」

 

 端末で新しく生産したばかりのAEK-971を手に持った俺は、ソファに腰掛けながらフィオナが淹れてきてくれた紅茶を飲んでいる彼女の方を振り返った。

 

「報酬、増やしておくわね」

 

「………ありがとう」

 

 ランタンの明かりに照らされながら、紅茶のカップを片手に持って俺に微笑むカレン。強気な彼女が俺に向けてくれた笑みに微笑み返した俺は、床に置いといたクレイモア地雷を手に取る。

 

 暗殺者が襲撃してこなければ問題ないんだが、もし襲撃してきたら叩きのめしてやる。俺はドアのところに立っていたエミリアに生産したばかりのAEK-971を手渡すと、クレイモア地雷を庭に仕掛けるため、ドアを開けて廊下を歩き出した。

 

 

 

 

 

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